ファクト ~真実~

華ノ月

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第四章 黒い鴉に尽くしていた白い鳥

第12話

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「広ちゃん?!どうしたの?!」

 突然の広斗の登場に孝が驚きの声を出す。

「母さんが良かったら野菜を持っていくといいよって言われて届けに来たんだ」

 広斗がそう言って野菜が入った袋を孝に渡す。

「たかやん、今から出掛けるの?良かったら送って行こうか?」

「えっと……」

 広斗の言葉に孝が戸惑う。

「あれ?もしかしてデート?」

 孝が答えにくそうにしていることから広斗がそう推測して声を発する。

「いや……その……」

 孝がどう言うべきか頭をぐるぐると回転させるが、上手く言葉が見つからない。

 その時だった。


 ――――トゥルル……トゥルル……。


 孝のスマートフォンが鳴り響く。その音に驚き、慌てて電話に出ると、絵美からだった。

『もしもし、孝君?あとどれくらいで着く?』

 通話の音量を大きくしてあるせいで相手の声が広斗にも聞こえる。

「えっと……」

 この作戦の事を広斗には言わないで欲しいという事を絵美から奏伝えで聞いているので、どうこの電話の内容に対応すればいいか、頭をぐるぐると働かせる。

『奏、もう基頼さんの部屋に入ったよ』

「……え?」

 電話から聞こえた言葉に広斗が声を出す。

「たかやん……、どういうこと……?」

 広斗が何処か唖然としたようにそう言葉を発する。

『え?誰かいるの?』

 絵美が電話越しに聞こえてきた声にそう尋ねる。

「その……そばに広ちゃんが……」

『えぇっ?!』

 孝が観念してそう言うと、絵美は電話越しに驚きの声を上げる。

 そして、孝が今回の作戦を広斗に話す。

「たかやん!そこに連れてってくれ!!」

 話を聞いた広斗が血相を変えてそう言葉を発する。そして、広斗の車に孝が乗り、その場所に車を走らせた。



「どうしたの?大丈夫?」

 電話を終えた絵美の様子を見て紅蓮がそう声を掛ける。

「ちょっと、一人増えます……」

 絵美が呆然としながらそう言葉を発する。

「他に誰が来るんだ?」

 槙がそう尋ねる。

「奏の彼氏さんが……」

「あぁ、広斗って人か……」

 槙が「そら心配だから来るだろ」と言う感じで言う。

「その……、奏から広斗さんにはこの事を言わないようにって事になっていたんですけど……」

「彼氏なのに??」

 絵美の言葉に紅蓮が疑問を唱える。

「心配させたくないからって……」

「……まぁ、奏の性格上、あり得るかもな」

 絵美の言葉を聞いて槙がそう言葉を綴る。

「うーん……。俺はちょっと腑に落ちないけどな……。心配かけさせたくないのも分かるけど、それって逆に相手は不安にならないか?」

 紅蓮がそう言葉を綴る。

「多分……、奏は広斗さんの事が大好きだから大好きな広斗さんに迷惑かけちゃダメって思ってると思います……。私も広斗さんにはその事を話してもいいと思うけど、奏の中ではしちゃいけないって感じるみたいです……。心配かけさせたり、迷惑を掛けたら嫌われるって思っているんじゃないかな……?」

「……奏の彼氏はそういう事を言うと嫌うタイプなのか?」

 絵美の言葉に槙がそう問いかける。

「うぅぅん……。孝君から聞いた話でも広斗さんはそういうタイプじゃないよ。ただ、奏がそう感じちゃうんだろうね……。広斗さんと別れるのが嫌だから……」

(あの事……気にしているんだろうな……)

 絵美がそう言った後、心でそう呟く。

「なんか……」

 そこへ、紅蓮が声を震わせる。

「なんか……奏ちゃんって彼氏大好き人間なの?!ここにも……ここにもいい男はいるぞぉ~!!」

「へ?」

 突然、紅蓮が発した言葉に絵美が呆けた声を出す。

「気にするな。いつもの事だ」

「はぁ……」

 紅蓮の言葉の意味がよく分からなくてあんぐりと口を空けて放心していた絵美に槙がそう声を掛ける。

「まぁ、奏に何があってそうやって人に気を使い過ぎているのは分からんが、その性格が今まででも事件解決に役立ったことはある。だから、それはそれでいいんじゃないか?」

 槙がそう言葉を綴る。

「おい、紅蓮。今は任務中だぞ」

 槙が「俺の方がいい男だー!」と叫ぶように言っている紅蓮にそう声を掛けて、引き続き、張り込みに集中した。



「……とりあえず、今のところ動きはないな」

 透が単独である場所に待機しながらそう言葉を呟いた。
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