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第三章 愛を欲しがった悲しみの鳥
第18話&エピローグ
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「茉理!ここから出るぞ!!」
敦成がそう言って茉理の手を引き、部屋を飛び出す。
敦成が窓から見たのはパトカーだった。茉理を捕まえるために来たのだと瞬時に察知して、捕まらないために逃げることを選ぶ。
「警察のものですが、客の中にこの女性は居ませんでしたか?」
杉原が店員にそう声を掛ける。
「はい……。利用しておりますが……」
店員が警察が来たことに戸惑いの表情を見せる。そして、その客がいる部屋を案内するように店長に言われて、その部屋に案内しようとした時だった。
――――ガシャーン!!
店の奥から大きな音が響き、それと同時に叫び声も聞こえた。
「店長!大変です!二人組のお客様が……!!」
その話を聞いて、奏たちがその店員に話を聞く。
どうやら、二人組の客は慌てた様子で部屋から出てきて、店員が「どうかされましたか?」と声を掛けたところ、その店員を突き飛ばし、店の裏口に続く「立ち入り禁止」の場所に入り、裏口から出て行ったということだった。
「その二人組のうちの一人はこの女性ですか?!」
奏がその店員に茉理の写真を見せる。すると、店員が「間違いありません」と言ったので、奏たちは自分たちが来たことで逃げたのだと思い、急いでその店から飛び出す。
「追うぞ!!」
本山の言葉で奏たちが一斉に車に乗り込む。
その時だった。
一台の青い車が駐車場から慌てて飛び出して行くのが見える。車のナンバーを確認すると、美玖の車だということが分かり、急いでその後を追う。
「前の青い車!止まりなさい!!」
杉原が拡張機を使ってそう声を張り上げる。しかし、車はその応答に答えずに、物凄いスピードで飛ばしていく。
「おいおい!下手したら大事故になるぞ?!」
槙が運転する車で助手席に座っている紅蓮がそう言葉を綴る。
「まずは、車の動きを制止させないとな……」
後ろの座席で透がそう言葉を綴る。
「そうですね。下手したら被害が拡大します」
透の隣に座っている奏がそう声を発する。
「槙……、お前のドライバーテクニックであの車に近付けるか?」
紅蓮が何かを思いついたのか、怖い笑みを湛えながら運転する槙にそう問いかける。
「……俺を誰だと思っているんだ?」
紅蓮の言葉に槙もにやりと笑ってそう言葉を発する。
そして……。
「透!奏!しっかり掴まっていろ!!」
「あぁ!!」
「え?」
槙の言葉に透は返事をし、奏は何のことか分からなくて間の抜けたような声を出す。
――――キュイィィィィィィン!!!
奏たちの乗っている車がものすごいスピードで加速する。
「きゃあっ!!」
あまりのスピードに奏が声を上げる。
奏たちの車が青い車と徐々に距離を詰めていく。奏たちの乗っている車の前を走っている車たちを槙が蛇行運転でうまく交わしながら青い車に近付く。
「なんだよ?!あの車?!」
敦成がどんどんと近付いてくる車を見て声を上げる。
「くそっ!捕まるかよ!!」
敦成がそう言って更にスピードを上げる。
「杉原!別の道で挟み撃ちにするぞ!!」
本山がそう言葉を発する。
カーチェイスをしている二台の車の先を見て別の道でその道を塞ぐ作戦に出る。
槙の運転で青い車との距離が詰められていく。
その時だった。
青い車が急に道を反れて右に曲がる。奏たちもその道を曲がる。あまり広い道ではないので対向車が来たら道が塞がれる可能性がある。
「……紅蓮、やるか?」
「あぁ……」
槙の言葉に紅蓮がそう返事をして、車から身を乗り出す。
「ぐ……紅蓮さん?!」
奏がその状況に声を上げる。
「心配ないよ。大丈夫さ」
透が「いつものことだ」と言わんばかりの口調でそう言葉を綴る。
青い車との距離が次第に迫ってくる。
紅蓮が銃を取り出し、何かに標準を向ける。
そして……。
――――パァァァァァァン!!!
銃口を引き、青い車のタイヤに当てる。
「きゃあ!!」
「なんだ?!」
車がスリップして、茉理たちが声を上げる。
――――ガシャーン!!
そのまま車がスリップした状態で電柱にぶつかる。
「うわっ!」
「きゃあっ!!」
大きな衝撃音がしてその衝撃に茉理たちが声を上げる。
「大人しく車から降りろ!!」
紅蓮が強い口調でそう言葉を発する。
その言葉に茉理と敦成は観念したのか大人しく車から降りた。
「……もう、終わりにしようって話をしていたのよ……」
取調室で茉理がそうぽつりと呟く。
あの後、茉理と敦成は署に連れて行かれて、それぞれ事情聴取を行うことになった。二人とも幸いケガは無かったので、署に着くなり茉理の取り調べを杉原が行うことになり、なぜ、敦成までいたのかを茉理に問う。そして、どうしようとしていたのか話を聞くと、茉理の口からそう言葉が漏れた。
「もう……死んでも良かったのよ……。お母さんだけじゃなく、美玖も殺しちゃったし……」
茉理が涙を流しながらそう言葉を綴る。
「二人とも生きているよ……」
「え……?」
杉原の言葉に茉理が小さく声を上げる。
「お母さんは片足に少し不自由が残るけど、生活にはそこまで支障はないそうだ……。美玖さんに関しては、目を覚ました後検査をしたが、脳に特に異常はなかった」
「じゃあ……、二人とも生きている……の?」
「あぁ……。そうだよ……」
杉原の言葉に茉理が掌で顔を覆いながら声を上げて泣く。
「ごめんなさい……ごめんなさい……。お母さん……美玖……ごめんね……」
茉理が泣きながらそう言葉を綴る。
「……じゃあ、説明してもらえるかな?なぜ、こんな事をしたのか……」
そう問われて、茉理が今回の事件を話した。
~エピローグ~
「……じゃあ、やっぱり母親を殺せば敦成さんの暴力が止まるかもしれないと思ったのですね……」
冴子から話を聞いて奏がそう言葉を綴る。
翌日、杉原が取り調べをして茉理から聞いた話を冴子が奏たちに伝えた。母親をなぜ刺したのかは、奏たちの予想が当たっており、美玖に関しては美玖がいなくなれば祐樹が自分を見てくれるかもしれないという理由だった。
「……なんか、どう言っていいか分からない事件だな……」
透が目を伏せる感じでそう言葉を綴る。
「ただ、茉理は誰かに強く愛されたかったってことだな……」
槙がそう言葉を綴る。
「そうかもな……。まっ!だからと言って、俺もあんな女はごめんだわ!!」
紅蓮が神妙な顔でそう言った後で、おちゃらけた感じでそう言葉を綴る。
「女好きのお前が珍しいな」
「俺だって女なら誰でもいいわけじゃねぇよ!!」
「見境が無いのかと思っていた」
「失礼な!!俺の一番の女は奏ちゃんだ!!」
「へ……?」
紅蓮と槙の言い合いで、紅蓮の口から奏の名前が出てきて奏が変な声を出す。
「というわけで奏ちゃん!!」
紅蓮が奏に詰め寄り手を取る。
「俺を是非、セカンドダーリンに!!」
――――ガッコーン!!!
「ガフッ!!」
冴子が傍にあった大きなアルミ缶を手に紅蓮の頭をはたく。
「いい加減にしろ……。ホントに埋めるわよ……」
冴子が鬼の顔で紅蓮に言葉を投げつける。
「すみません!すみません!!」
紅蓮が頭から血をプシュ―と噴き出しながら必死で謝る。
「まっ!無事に事件も解決したことだし、今日もいつもの店に行くわよ!!」
冴子が「レッツゴー!」と言う感じで瞳をキラーンとさせながら言葉を綴る。
こうして、いつもの店に奏たちは向った。
「「「お疲れさまでしたー!!!」」」
いつものようにみんなで乾杯をする。
奏は日本酒を飲むときに、一杯目はいつも甘めのチューハイで胃を鳴らしてから日本酒を飲むと言うので、一杯目はマンゴーサワーを選んで乾杯した。
「へい!手羽先特盛お待ちどうさん!!」
「ありがとう!難波さん!」
冴子が難波にお礼の言葉を述べる。
「そうだ!奏ちゃん、今日は新しい日本酒が手に入ってね。桜町と言うところで作られている「ふきい」という日本酒なんだが、飲んでみるかい?」
難波が奏にそう声を掛ける。
「わぁ~!良いですね!飲んでみたいです!!」
日本酒と言う言葉が出て奏の目がキラキラと輝く。
「じゃあ、持ってくるよ!」
難波がそう言ってその日本酒を取りに行く。しばらくして、その日本酒を手に戻ってくると、升を用意してその中にグラスを入れると、その日本酒を注いだ。
「はい!どうぞ!」
「いただきます!」
奏が日本酒に口を付ける。
「……すっきりしていて飲みやすいですね!少し甘さもあって美味しいです!なんだか飲みやすくてクイクイいっちゃいそうですね!!」
「ははっ!そうだろ!」
「ただ甘いだけじゃなく、何と言うのでしょうか……。ナッツのような甘さがある感じがします。苦みや酸味はあまり感じられないですね。あまり日本酒を飲んだことのない方でも飲みやすそうです!」
奏が饒舌に語る。
「おっ!いい評価だね!その通りだよ!」
難波が嬉しそうに言葉を綴る。
「日本酒……語れるのね……」
「すごいな……」
「日本酒でコメンテーターが出来そうだな……」
奏のコメントに透たちが驚いた様子で口々にそう言葉を綴る。
――――ガラガラガラっ……。
「おー、お前らも来てたのか」
店の扉が開き、入ってきたのは本山と杉原だった。
「今回もお手柄だったな。まぁ、あの時に反対の道を塞げばと思って待機していたら、まさか横道に反れたとはな……」
あの時、本山と杉原はカーチェイスの車がそのまま大通りを走るものだと思ったので、その道の先で待機をしていたが、なかなか車が現れないことに不思議がっていた。そしたら、無線で茉理たちを捕まえたという連絡が入り、その場に急いで駆け付け、茉理と敦成を署に連れて行った。
「良かったら一緒に飲む?」
冴子が本山達にそう声を掛ける。
「そうだな……。今日はそうするか……」
冴子の誘いに本山が素直に返事をして、一緒に飲み交わすことになった。
「それにしても、槙くんは相変わらずいい腕をしていますね」
運ばれてきたビールを飲みながら杉原がそう言葉を綴る。
「別に……」
その言葉に槙が「それほどでもない」と言う感じで淡々と返事をする。
「そんなことないですよ!すごくカッコ良かったです!運転、上手なんですね!!」
奏が少し興奮気味に言葉を綴る。その言葉に、槙は虚を突かれたのか、少し顔を赤らめているように見える。
「それは……どうも……」
ちょっと、たどたどしくなりながら槙がそう答える。
「……な……なんで……槙がカッコイイんだよ……」
紅蓮が奏の言った「カッコイイ」と言う言葉に反応して恨めしそうな顔で言葉を綴る。
「あ……あの……紅蓮さんの銃の腕もカッコ良かったですよ?!」
奏が慌ててそう言葉を綴る。
「そんな取って付けたように言われても……」
紅蓮がどこか泣きそうな顔をしながらそう言葉を綴る。
「ほっとけ、奏。構って欲しいだけだから」
透が「興味ない」と言う感じで言葉を綴る。
「……本山さん?どうしたんですか?」
奏が本山の視線に気付いてそう声を掛ける。
「いや……。なんでもない……」
本山はそう言うと、ビールに口を付ける。
(……あの話……本当なんかな……)
本山がそう心の中で呟く。
こうして、楽しい打ち上げは終わり、店を出る。
「じゃあ、また三日後からよろしく頼むわよ!」
冴子の言葉に奏たちがそれぞれ返事をする。
「あれ……?」
一人の男がある店から出てきたある人物を見て、そう声を出す。しかし、そうだという確信が無いので声を掛けずにその場を離れた。
「……俺を捨てたくせに……」
男が一枚の写真を見ながら小さく言葉を吐く。
「幸せそうにしやがって……。許さない……。ぶっ壊してやる……」
男がそう言葉を綴りながら写真を握りつぶし、灰皿に捨てるとライターで火を付けて写真を燃やしていく。
「俺を捨てたことを思い知らせてやる……」
燃えていく写真を眺めながら、不気味な笑みを浮かべてそう言葉を綴った……。
(第四章につづく)
敦成がそう言って茉理の手を引き、部屋を飛び出す。
敦成が窓から見たのはパトカーだった。茉理を捕まえるために来たのだと瞬時に察知して、捕まらないために逃げることを選ぶ。
「警察のものですが、客の中にこの女性は居ませんでしたか?」
杉原が店員にそう声を掛ける。
「はい……。利用しておりますが……」
店員が警察が来たことに戸惑いの表情を見せる。そして、その客がいる部屋を案内するように店長に言われて、その部屋に案内しようとした時だった。
――――ガシャーン!!
店の奥から大きな音が響き、それと同時に叫び声も聞こえた。
「店長!大変です!二人組のお客様が……!!」
その話を聞いて、奏たちがその店員に話を聞く。
どうやら、二人組の客は慌てた様子で部屋から出てきて、店員が「どうかされましたか?」と声を掛けたところ、その店員を突き飛ばし、店の裏口に続く「立ち入り禁止」の場所に入り、裏口から出て行ったということだった。
「その二人組のうちの一人はこの女性ですか?!」
奏がその店員に茉理の写真を見せる。すると、店員が「間違いありません」と言ったので、奏たちは自分たちが来たことで逃げたのだと思い、急いでその店から飛び出す。
「追うぞ!!」
本山の言葉で奏たちが一斉に車に乗り込む。
その時だった。
一台の青い車が駐車場から慌てて飛び出して行くのが見える。車のナンバーを確認すると、美玖の車だということが分かり、急いでその後を追う。
「前の青い車!止まりなさい!!」
杉原が拡張機を使ってそう声を張り上げる。しかし、車はその応答に答えずに、物凄いスピードで飛ばしていく。
「おいおい!下手したら大事故になるぞ?!」
槙が運転する車で助手席に座っている紅蓮がそう言葉を綴る。
「まずは、車の動きを制止させないとな……」
後ろの座席で透がそう言葉を綴る。
「そうですね。下手したら被害が拡大します」
透の隣に座っている奏がそう声を発する。
「槙……、お前のドライバーテクニックであの車に近付けるか?」
紅蓮が何かを思いついたのか、怖い笑みを湛えながら運転する槙にそう問いかける。
「……俺を誰だと思っているんだ?」
紅蓮の言葉に槙もにやりと笑ってそう言葉を発する。
そして……。
「透!奏!しっかり掴まっていろ!!」
「あぁ!!」
「え?」
槙の言葉に透は返事をし、奏は何のことか分からなくて間の抜けたような声を出す。
――――キュイィィィィィィン!!!
奏たちの乗っている車がものすごいスピードで加速する。
「きゃあっ!!」
あまりのスピードに奏が声を上げる。
奏たちの車が青い車と徐々に距離を詰めていく。奏たちの乗っている車の前を走っている車たちを槙が蛇行運転でうまく交わしながら青い車に近付く。
「なんだよ?!あの車?!」
敦成がどんどんと近付いてくる車を見て声を上げる。
「くそっ!捕まるかよ!!」
敦成がそう言って更にスピードを上げる。
「杉原!別の道で挟み撃ちにするぞ!!」
本山がそう言葉を発する。
カーチェイスをしている二台の車の先を見て別の道でその道を塞ぐ作戦に出る。
槙の運転で青い車との距離が詰められていく。
その時だった。
青い車が急に道を反れて右に曲がる。奏たちもその道を曲がる。あまり広い道ではないので対向車が来たら道が塞がれる可能性がある。
「……紅蓮、やるか?」
「あぁ……」
槙の言葉に紅蓮がそう返事をして、車から身を乗り出す。
「ぐ……紅蓮さん?!」
奏がその状況に声を上げる。
「心配ないよ。大丈夫さ」
透が「いつものことだ」と言わんばかりの口調でそう言葉を綴る。
青い車との距離が次第に迫ってくる。
紅蓮が銃を取り出し、何かに標準を向ける。
そして……。
――――パァァァァァァン!!!
銃口を引き、青い車のタイヤに当てる。
「きゃあ!!」
「なんだ?!」
車がスリップして、茉理たちが声を上げる。
――――ガシャーン!!
そのまま車がスリップした状態で電柱にぶつかる。
「うわっ!」
「きゃあっ!!」
大きな衝撃音がしてその衝撃に茉理たちが声を上げる。
「大人しく車から降りろ!!」
紅蓮が強い口調でそう言葉を発する。
その言葉に茉理と敦成は観念したのか大人しく車から降りた。
「……もう、終わりにしようって話をしていたのよ……」
取調室で茉理がそうぽつりと呟く。
あの後、茉理と敦成は署に連れて行かれて、それぞれ事情聴取を行うことになった。二人とも幸いケガは無かったので、署に着くなり茉理の取り調べを杉原が行うことになり、なぜ、敦成までいたのかを茉理に問う。そして、どうしようとしていたのか話を聞くと、茉理の口からそう言葉が漏れた。
「もう……死んでも良かったのよ……。お母さんだけじゃなく、美玖も殺しちゃったし……」
茉理が涙を流しながらそう言葉を綴る。
「二人とも生きているよ……」
「え……?」
杉原の言葉に茉理が小さく声を上げる。
「お母さんは片足に少し不自由が残るけど、生活にはそこまで支障はないそうだ……。美玖さんに関しては、目を覚ました後検査をしたが、脳に特に異常はなかった」
「じゃあ……、二人とも生きている……の?」
「あぁ……。そうだよ……」
杉原の言葉に茉理が掌で顔を覆いながら声を上げて泣く。
「ごめんなさい……ごめんなさい……。お母さん……美玖……ごめんね……」
茉理が泣きながらそう言葉を綴る。
「……じゃあ、説明してもらえるかな?なぜ、こんな事をしたのか……」
そう問われて、茉理が今回の事件を話した。
~エピローグ~
「……じゃあ、やっぱり母親を殺せば敦成さんの暴力が止まるかもしれないと思ったのですね……」
冴子から話を聞いて奏がそう言葉を綴る。
翌日、杉原が取り調べをして茉理から聞いた話を冴子が奏たちに伝えた。母親をなぜ刺したのかは、奏たちの予想が当たっており、美玖に関しては美玖がいなくなれば祐樹が自分を見てくれるかもしれないという理由だった。
「……なんか、どう言っていいか分からない事件だな……」
透が目を伏せる感じでそう言葉を綴る。
「ただ、茉理は誰かに強く愛されたかったってことだな……」
槙がそう言葉を綴る。
「そうかもな……。まっ!だからと言って、俺もあんな女はごめんだわ!!」
紅蓮が神妙な顔でそう言った後で、おちゃらけた感じでそう言葉を綴る。
「女好きのお前が珍しいな」
「俺だって女なら誰でもいいわけじゃねぇよ!!」
「見境が無いのかと思っていた」
「失礼な!!俺の一番の女は奏ちゃんだ!!」
「へ……?」
紅蓮と槙の言い合いで、紅蓮の口から奏の名前が出てきて奏が変な声を出す。
「というわけで奏ちゃん!!」
紅蓮が奏に詰め寄り手を取る。
「俺を是非、セカンドダーリンに!!」
――――ガッコーン!!!
「ガフッ!!」
冴子が傍にあった大きなアルミ缶を手に紅蓮の頭をはたく。
「いい加減にしろ……。ホントに埋めるわよ……」
冴子が鬼の顔で紅蓮に言葉を投げつける。
「すみません!すみません!!」
紅蓮が頭から血をプシュ―と噴き出しながら必死で謝る。
「まっ!無事に事件も解決したことだし、今日もいつもの店に行くわよ!!」
冴子が「レッツゴー!」と言う感じで瞳をキラーンとさせながら言葉を綴る。
こうして、いつもの店に奏たちは向った。
「「「お疲れさまでしたー!!!」」」
いつものようにみんなで乾杯をする。
奏は日本酒を飲むときに、一杯目はいつも甘めのチューハイで胃を鳴らしてから日本酒を飲むと言うので、一杯目はマンゴーサワーを選んで乾杯した。
「へい!手羽先特盛お待ちどうさん!!」
「ありがとう!難波さん!」
冴子が難波にお礼の言葉を述べる。
「そうだ!奏ちゃん、今日は新しい日本酒が手に入ってね。桜町と言うところで作られている「ふきい」という日本酒なんだが、飲んでみるかい?」
難波が奏にそう声を掛ける。
「わぁ~!良いですね!飲んでみたいです!!」
日本酒と言う言葉が出て奏の目がキラキラと輝く。
「じゃあ、持ってくるよ!」
難波がそう言ってその日本酒を取りに行く。しばらくして、その日本酒を手に戻ってくると、升を用意してその中にグラスを入れると、その日本酒を注いだ。
「はい!どうぞ!」
「いただきます!」
奏が日本酒に口を付ける。
「……すっきりしていて飲みやすいですね!少し甘さもあって美味しいです!なんだか飲みやすくてクイクイいっちゃいそうですね!!」
「ははっ!そうだろ!」
「ただ甘いだけじゃなく、何と言うのでしょうか……。ナッツのような甘さがある感じがします。苦みや酸味はあまり感じられないですね。あまり日本酒を飲んだことのない方でも飲みやすそうです!」
奏が饒舌に語る。
「おっ!いい評価だね!その通りだよ!」
難波が嬉しそうに言葉を綴る。
「日本酒……語れるのね……」
「すごいな……」
「日本酒でコメンテーターが出来そうだな……」
奏のコメントに透たちが驚いた様子で口々にそう言葉を綴る。
――――ガラガラガラっ……。
「おー、お前らも来てたのか」
店の扉が開き、入ってきたのは本山と杉原だった。
「今回もお手柄だったな。まぁ、あの時に反対の道を塞げばと思って待機していたら、まさか横道に反れたとはな……」
あの時、本山と杉原はカーチェイスの車がそのまま大通りを走るものだと思ったので、その道の先で待機をしていたが、なかなか車が現れないことに不思議がっていた。そしたら、無線で茉理たちを捕まえたという連絡が入り、その場に急いで駆け付け、茉理と敦成を署に連れて行った。
「良かったら一緒に飲む?」
冴子が本山達にそう声を掛ける。
「そうだな……。今日はそうするか……」
冴子の誘いに本山が素直に返事をして、一緒に飲み交わすことになった。
「それにしても、槙くんは相変わらずいい腕をしていますね」
運ばれてきたビールを飲みながら杉原がそう言葉を綴る。
「別に……」
その言葉に槙が「それほどでもない」と言う感じで淡々と返事をする。
「そんなことないですよ!すごくカッコ良かったです!運転、上手なんですね!!」
奏が少し興奮気味に言葉を綴る。その言葉に、槙は虚を突かれたのか、少し顔を赤らめているように見える。
「それは……どうも……」
ちょっと、たどたどしくなりながら槙がそう答える。
「……な……なんで……槙がカッコイイんだよ……」
紅蓮が奏の言った「カッコイイ」と言う言葉に反応して恨めしそうな顔で言葉を綴る。
「あ……あの……紅蓮さんの銃の腕もカッコ良かったですよ?!」
奏が慌ててそう言葉を綴る。
「そんな取って付けたように言われても……」
紅蓮がどこか泣きそうな顔をしながらそう言葉を綴る。
「ほっとけ、奏。構って欲しいだけだから」
透が「興味ない」と言う感じで言葉を綴る。
「……本山さん?どうしたんですか?」
奏が本山の視線に気付いてそう声を掛ける。
「いや……。なんでもない……」
本山はそう言うと、ビールに口を付ける。
(……あの話……本当なんかな……)
本山がそう心の中で呟く。
こうして、楽しい打ち上げは終わり、店を出る。
「じゃあ、また三日後からよろしく頼むわよ!」
冴子の言葉に奏たちがそれぞれ返事をする。
「あれ……?」
一人の男がある店から出てきたある人物を見て、そう声を出す。しかし、そうだという確信が無いので声を掛けずにその場を離れた。
「……俺を捨てたくせに……」
男が一枚の写真を見ながら小さく言葉を吐く。
「幸せそうにしやがって……。許さない……。ぶっ壊してやる……」
男がそう言葉を綴りながら写真を握りつぶし、灰皿に捨てるとライターで火を付けて写真を燃やしていく。
「俺を捨てたことを思い知らせてやる……」
燃えていく写真を眺めながら、不気味な笑みを浮かべてそう言葉を綴った……。
(第四章につづく)
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