55 / 152
第三章 愛を欲しがった悲しみの鳥
第10話
しおりを挟む
その場所は海の中だった。
「まさか……海に……」
奏たちの顔が青ざめる。
「とりあえず、冴子さんに電話しよう」
透がそう言って冴子に電話を掛ける。
「もしもし、冴子さん。茉理のスマートフォンの反応なんですが……」
透がそう言って反応があった場所を説明する。
『……分かった。本山さんにも伝えておくわ。もし、海に身を投げたとしたら潮の流れを調べれば何処に辿り着いたか分かるはずだから……』
「分かりました。よろしくお願いします。一応、聞き込みはしてみます」
『頼んだわよ』
「はい!」
透がそう返事して電話が終わる。そして、先程の冴子の話を奏たちに伝えて、自分たちはとりあえず聞き込みをすることになった。
「……うん。なんか、いつの間にか人の輪が出来ているわね。なんでそうなるのかはよく分からないけどね」
茉理と美玖が昔の話をしていたら、高校の時に美玖にはよく人が集まっていたという話になり、その話の流れで茉理が今はどうなのかを聞くと、美玖からはそう返事が返ってきた。
「相変わらず美玖って人に好かれるよね。何か秘訣があるの?」
茉理がそう問い掛ける。
「うーん……。特に何も……。ただ私は普通にしているだけだし……」
茉理の問いかけに美玖はそう返事をする。
「いいなぁ……美玖は……。そこにいるだけで空気がなんか違うんだろうね……。私なんてそこら辺の石ころなのに……」
茉理がそう言葉を綴る。
「何言っているのよ!茉理は可愛いじゃない!目もパッチリしていて顔立ちもどちらかというとアイドル顔だよ?」
美玖が微笑みながらそう言葉を綴る。
(……でも、周りは美玖ばっかりに声かけてたんだよね……)
茉理がそう心の中で呟く。
「茉理?どうしたの?」
茉理の表情がどことなく暗く感じて心配した美玖が声を掛ける。
「何でもない……」
茉理が浮かない顔でそう言葉を綴る。
「そういえばさ……」
茉理がそう言葉を発してある事を美玖に聞いた。
「……男女の二人組ですか?」
海の近くに住む人に聞き込みをしていたら、一人の老婆から話を聞くことが出来た。
「あぁ、そうじゃ。その二人組が一人の女性を抱えて車に乗せてたよ。ずぶ濡れだったから海に溺れた人を助けたのかと思ってな……」
「ちなみに車のナンバーは分かりますか?」
「いやぁ~……、そこまでは見とらんのぉ~……」
「では、車の色は何色でしたか?」
「青色じゃったよ。青と言っても明るい青じゃなくてな、なんか濃い色の青をしておったよ……」
奏の言葉に老婆がそう言葉を綴る。
「お話、ありがとうございます」
奏が話をしてくれた老婆にお礼の言葉を言うと、老婆はその場を去って行った。
「よし!とりあえずその車を探してみよう!」
透がそう声を発する。
「あの老婆の話ではこの道を右に行ったんだよな?場合によってはどこかの防犯カメラで追跡できる可能性がある」
槙がそう言葉を綴る。そして、奏たちは防犯カメラを頼りにその車を捜索することにした。
「そういえばさ……例の婚約者とはどこで出会ったの?」
茉理が美玖にそう問い掛ける。
「あぁ。職場で仲良くなった人が紹介してくれたのよ。良かったら会ってみないかって言われてね。それで祐樹と出会ったんだ」
美玖が笑顔でそう語る。
「……ふーん。そうなんだ……」
「うん!どうして?」
「んー……、優しそうな人だな~って思ってね……」
「そうだね。祐樹は優しさもあるし、芯がしっかりしていてぶれない人って感じかな?それに、凄く大人なんだけど、時々子供っぽい時もあってね。そうそうこの間なんか……」
美玖が笑顔で祐樹の話を楽しそうにする。茉理はそれを見て腹の中が苛立ちで溢れてくる。
なぜ、美玖にはあんな素敵な人ができるのか?
なぜ、私の方にはそんな人が出来ないのか?
そんな人に愛される美玖が羨ましい……。
そんな人に愛される美玖が憎い……。
憎い……。
憎い……。
憎い……。
もし、美玖がいなくなったら……。
「……り?茉理?大丈夫?」
「……え?あ……うん……」
美玖が心配して茉理の顔を覗き込む。
「もしかしてまだ体が辛い?なんなら横になる?」
「……そうだね。そうするよ……」
茉理はそう言ってお布団が敷いてあるところに行くと横になった。目を閉じて、眠りにつこうとするが、黒い感情が溢れ出してきてなかなか寝付けない。顔を掌で覆い、ある事を考える。
(……美玖がいなくなれば、祐樹さんは私のものになってくれるかもしれない……)
「まさか……海に……」
奏たちの顔が青ざめる。
「とりあえず、冴子さんに電話しよう」
透がそう言って冴子に電話を掛ける。
「もしもし、冴子さん。茉理のスマートフォンの反応なんですが……」
透がそう言って反応があった場所を説明する。
『……分かった。本山さんにも伝えておくわ。もし、海に身を投げたとしたら潮の流れを調べれば何処に辿り着いたか分かるはずだから……』
「分かりました。よろしくお願いします。一応、聞き込みはしてみます」
『頼んだわよ』
「はい!」
透がそう返事して電話が終わる。そして、先程の冴子の話を奏たちに伝えて、自分たちはとりあえず聞き込みをすることになった。
「……うん。なんか、いつの間にか人の輪が出来ているわね。なんでそうなるのかはよく分からないけどね」
茉理と美玖が昔の話をしていたら、高校の時に美玖にはよく人が集まっていたという話になり、その話の流れで茉理が今はどうなのかを聞くと、美玖からはそう返事が返ってきた。
「相変わらず美玖って人に好かれるよね。何か秘訣があるの?」
茉理がそう問い掛ける。
「うーん……。特に何も……。ただ私は普通にしているだけだし……」
茉理の問いかけに美玖はそう返事をする。
「いいなぁ……美玖は……。そこにいるだけで空気がなんか違うんだろうね……。私なんてそこら辺の石ころなのに……」
茉理がそう言葉を綴る。
「何言っているのよ!茉理は可愛いじゃない!目もパッチリしていて顔立ちもどちらかというとアイドル顔だよ?」
美玖が微笑みながらそう言葉を綴る。
(……でも、周りは美玖ばっかりに声かけてたんだよね……)
茉理がそう心の中で呟く。
「茉理?どうしたの?」
茉理の表情がどことなく暗く感じて心配した美玖が声を掛ける。
「何でもない……」
茉理が浮かない顔でそう言葉を綴る。
「そういえばさ……」
茉理がそう言葉を発してある事を美玖に聞いた。
「……男女の二人組ですか?」
海の近くに住む人に聞き込みをしていたら、一人の老婆から話を聞くことが出来た。
「あぁ、そうじゃ。その二人組が一人の女性を抱えて車に乗せてたよ。ずぶ濡れだったから海に溺れた人を助けたのかと思ってな……」
「ちなみに車のナンバーは分かりますか?」
「いやぁ~……、そこまでは見とらんのぉ~……」
「では、車の色は何色でしたか?」
「青色じゃったよ。青と言っても明るい青じゃなくてな、なんか濃い色の青をしておったよ……」
奏の言葉に老婆がそう言葉を綴る。
「お話、ありがとうございます」
奏が話をしてくれた老婆にお礼の言葉を言うと、老婆はその場を去って行った。
「よし!とりあえずその車を探してみよう!」
透がそう声を発する。
「あの老婆の話ではこの道を右に行ったんだよな?場合によってはどこかの防犯カメラで追跡できる可能性がある」
槙がそう言葉を綴る。そして、奏たちは防犯カメラを頼りにその車を捜索することにした。
「そういえばさ……例の婚約者とはどこで出会ったの?」
茉理が美玖にそう問い掛ける。
「あぁ。職場で仲良くなった人が紹介してくれたのよ。良かったら会ってみないかって言われてね。それで祐樹と出会ったんだ」
美玖が笑顔でそう語る。
「……ふーん。そうなんだ……」
「うん!どうして?」
「んー……、優しそうな人だな~って思ってね……」
「そうだね。祐樹は優しさもあるし、芯がしっかりしていてぶれない人って感じかな?それに、凄く大人なんだけど、時々子供っぽい時もあってね。そうそうこの間なんか……」
美玖が笑顔で祐樹の話を楽しそうにする。茉理はそれを見て腹の中が苛立ちで溢れてくる。
なぜ、美玖にはあんな素敵な人ができるのか?
なぜ、私の方にはそんな人が出来ないのか?
そんな人に愛される美玖が羨ましい……。
そんな人に愛される美玖が憎い……。
憎い……。
憎い……。
憎い……。
もし、美玖がいなくなったら……。
「……り?茉理?大丈夫?」
「……え?あ……うん……」
美玖が心配して茉理の顔を覗き込む。
「もしかしてまだ体が辛い?なんなら横になる?」
「……そうだね。そうするよ……」
茉理はそう言ってお布団が敷いてあるところに行くと横になった。目を閉じて、眠りにつこうとするが、黒い感情が溢れ出してきてなかなか寝付けない。顔を掌で覆い、ある事を考える。
(……美玖がいなくなれば、祐樹さんは私のものになってくれるかもしれない……)
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
夜の動物園の異変 ~見えない来園者~
メイナ
ミステリー
夜の動物園で起こる不可解な事件。
飼育員・えまは「動物の声を聞く力」を持っていた。
ある夜、動物たちが一斉に怯え、こう囁いた——
「そこに、"何か"がいる……。」
科学者・水原透子と共に、"見えざる来園者"の正体を探る。
これは幽霊なのか、それとも——?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】共生
ひなこ
ミステリー
高校生の少女・三崎有紗(みさき・ありさ)はアナウンサーである母・優子(ゆうこ)が若い頃に歌手だったことを封印し、また歌うことも嫌うのを不審に思っていた。
ある日有紗の歌声のせいで、優子に異変が起こる。
隠された母の過去が、二十年の時を経て明らかになる?
カフェ・シュガーパインの事件簿
山いい奈
ミステリー
大阪長居の住宅街に佇むカフェ・シュガーパイン。
個性豊かな兄姉弟が営むこのカフェには穏やかな時間が流れる。
だが兄姉弟それぞれの持ち前の好奇心やちょっとした特殊能力が、巻き込まれる事件を解決に導くのだった。
【毎日更新】教室崩壊カメレオン【他サイトにてカテゴリー2位獲得作品】
めんつゆ
ミステリー
ーー「それ」がわかった時、物語はひっくり返る……。
真実に近づく為の伏線が張り巡らされています。
あなたは何章で気づけますか?ーー
舞台はとある田舎町の中学校。
平和だったはずのクラスは
裏サイトの「なりすまし」によって支配されていた。
容疑者はたった7人のクラスメイト。
いじめを生み出す黒幕は誰なのか?
その目的は……?
「2人で犯人を見つけましょう」
そんな提案を持ちかけて来たのは
よりによって1番怪しい転校生。
黒幕を追う中で明らかになる、クラスメイトの過去と罪。
それぞれのトラウマは交差し、思いもよらぬ「真相」に繋がっていく……。
中学生たちの繊細で歪な人間関係を描く青春ミステリー。

物言わぬ家
itti(イッチ)
ミステリー
27年目にして、自分の出自と母の家系に纏わる謎が解けた奥村祐二。あれから2年。懐かしい従妹との再会が新たなミステリーを呼び起こすとは思わなかった。従妹の美乃利の先輩が、東京で行方不明になった。先輩を探す為上京した美乃利を手伝ううちに、不可解な事件にたどり着く。
そして、それはまたもや悲しい過去に纏わる事件に繋がっていく。
「✖✖✖Sケープゴート」の奥村祐二と先輩の水野が謎を解いていく物語です。

秘められた遺志
しまおか
ミステリー
亡くなった顧客が残した謎のメモ。彼は一体何を託したかったのか!?富裕層専門の資産運用管理アドバイザーの三郷が、顧客の高岳から依頼されていた遺品整理を進める中、不審物を発見。また書斎を探ると暗号めいたメモ魔で見つかり推理していた所、不審物があると通報を受けた顔見知りであるS県警の松ケ根と吉良が訪れ、連行されてしまう。三郷は逮捕されてしまうのか?それとも松ケ根達が問題の真相を無事暴くことができるのか!?
強制憑依アプリを使ってみた。
本田 壱好
ミステリー
十八年間モテた試しが無かった俺こと童定春はある日、幼馴染の藍良舞に告白される。
校内一の人気を誇る藍良が俺に告白⁈
これは何かのドッキリか?突然のことに俺は返事が出来なかった。
不幸は続くと言うが、その日は不幸の始まりとなるキッカケが多くあったのだと今となっては思う。
その日の夜、小学生の頃の友人、鴨居常叶から当然連絡が掛かってきたのも、そのキッカケの一つだ。
話の内容は、強制憑依アプリという怪しげなアプリの話であり、それをインストールして欲しいと言われる。
頼まれたら断れない性格の俺は、送られてきたサイトに飛んで、その強制憑依アプリをインストールした。
まさかそれが、運命を大きく変える出来事に発展するなんて‥。当時の俺は、まだ知る由もなかった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる