ファクト ~真実~

華ノ月

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第三章 愛を欲しがった悲しみの鳥

第10話

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 その場所は海の中だった。

「まさか……海に……」

 奏たちの顔が青ざめる。

「とりあえず、冴子さんに電話しよう」

 透がそう言って冴子に電話を掛ける。

「もしもし、冴子さん。茉理のスマートフォンの反応なんですが……」

 透がそう言って反応があった場所を説明する。

『……分かった。本山さんにも伝えておくわ。もし、海に身を投げたとしたら潮の流れを調べれば何処に辿り着いたか分かるはずだから……』

「分かりました。よろしくお願いします。一応、聞き込みはしてみます」

『頼んだわよ』

「はい!」

 透がそう返事して電話が終わる。そして、先程の冴子の話を奏たちに伝えて、自分たちはとりあえず聞き込みをすることになった。



「……うん。なんか、いつの間にか人の輪が出来ているわね。なんでそうなるのかはよく分からないけどね」

 茉理と美玖が昔の話をしていたら、高校の時に美玖にはよく人が集まっていたという話になり、その話の流れで茉理が今はどうなのかを聞くと、美玖からはそう返事が返ってきた。

「相変わらず美玖って人に好かれるよね。何か秘訣があるの?」

 茉理がそう問い掛ける。

「うーん……。特に何も……。ただ私は普通にしているだけだし……」

 茉理の問いかけに美玖はそう返事をする。

「いいなぁ……美玖は……。そこにいるだけで空気がなんか違うんだろうね……。私なんてそこら辺の石ころなのに……」

 茉理がそう言葉を綴る。

「何言っているのよ!茉理は可愛いじゃない!目もパッチリしていて顔立ちもどちらかというとアイドル顔だよ?」

 美玖が微笑みながらそう言葉を綴る。

(……でも、周りは美玖ばっかりに声かけてたんだよね……)

 茉理がそう心の中で呟く。

「茉理?どうしたの?」

 茉理の表情がどことなく暗く感じて心配した美玖が声を掛ける。

「何でもない……」

 茉理が浮かない顔でそう言葉を綴る。

「そういえばさ……」

 茉理がそう言葉を発してある事を美玖に聞いた。



「……男女の二人組ですか?」

 海の近くに住む人に聞き込みをしていたら、一人の老婆から話を聞くことが出来た。

「あぁ、そうじゃ。その二人組が一人の女性を抱えて車に乗せてたよ。ずぶ濡れだったから海に溺れた人を助けたのかと思ってな……」

「ちなみに車のナンバーは分かりますか?」

「いやぁ~……、そこまでは見とらんのぉ~……」

「では、車の色は何色でしたか?」

「青色じゃったよ。青と言っても明るい青じゃなくてな、なんか濃い色の青をしておったよ……」

 奏の言葉に老婆がそう言葉を綴る。

「お話、ありがとうございます」

 奏が話をしてくれた老婆にお礼の言葉を言うと、老婆はその場を去って行った。

「よし!とりあえずその車を探してみよう!」

 透がそう声を発する。

「あの老婆の話ではこの道を右に行ったんだよな?場合によってはどこかの防犯カメラで追跡できる可能性がある」

 槙がそう言葉を綴る。そして、奏たちは防犯カメラを頼りにその車を捜索することにした。



「そういえばさ……例の婚約者とはどこで出会ったの?」

 茉理が美玖にそう問い掛ける。

「あぁ。職場で仲良くなった人が紹介してくれたのよ。良かったら会ってみないかって言われてね。それで祐樹と出会ったんだ」

 美玖が笑顔でそう語る。

「……ふーん。そうなんだ……」

「うん!どうして?」

「んー……、優しそうな人だな~って思ってね……」

「そうだね。祐樹は優しさもあるし、芯がしっかりしていてぶれない人って感じかな?それに、凄く大人なんだけど、時々子供っぽい時もあってね。そうそうこの間なんか……」

 美玖が笑顔で祐樹の話を楽しそうにする。茉理はそれを見て腹の中が苛立ちで溢れてくる。


 なぜ、美玖にはあんな素敵な人ができるのか?

 なぜ、私の方にはそんな人が出来ないのか?

 そんな人に愛される美玖が羨ましい……。

 そんな人に愛される美玖が憎い……。

 憎い……。

 憎い……。

 憎い……。

 もし、美玖がいなくなったら……。


「……り?茉理?大丈夫?」

「……え?あ……うん……」

 美玖が心配して茉理の顔を覗き込む。

「もしかしてまだ体が辛い?なんなら横になる?」

「……そうだね。そうするよ……」

 茉理はそう言ってお布団が敷いてあるところに行くと横になった。目を閉じて、眠りにつこうとするが、黒い感情が溢れ出してきてなかなか寝付けない。顔を掌で覆い、ある事を考える。


(……美玖がいなくなれば、祐樹さんは私のものになってくれるかもしれない……)



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