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第三章 愛を欲しがった悲しみの鳥
第8話
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「何かあるんですか?」
槙がそう問う。
「その……元旦那に対して異常なまでの執着があったそうなのよ。元旦那が会社の社長というだけでなく、元旦那の仕事の付き合いや会社の会合にもよく口を挟んでいたみたいね……。それが原因で元旦那が耐えられなくなって離婚したそうよ……」
「……ということは、娘の茉理にもそのような異常な執着があった可能性があるというわけですね」
冴子の言葉に透がそう言葉を綴る。
「そうかもしれないわね……」
冴子がそう答える。
淳子の元旦那に対する異常な執着。それを茉理にも向けていたのだとしたら、茉理もそんな母親から逃げ出したい気持ちがどこかにあったのかもしれない。だから、母親を刺して葬る事でその異常な執着から逃げ出したかったのか……。そして、刺された母親も事件にしたくないのは、事件にしないことで茉理を手放さなくてもいい様にするためかもしれない……。そんな心理が垣間見える……。
「この事件はかなり闇が深いかもしれないですね……」
奏が神妙な顔でそう言葉を綴る。
「……あら?紅蓮?どうしたの?」
いつもなら紅蓮は捜査に関して一言二言話すのに、紅蓮の口から言葉を発していないことに冴子が気付き、そう声を出す。
「心配ないですよ、冴子さん。いつものバカなことが暴走しているだけです」
槙が呆れた口調でそう言葉を綴る。冴子はその言葉に頭にはてなマークを浮かべたが特に聞くことはしなかった。
「とりあえず、仕事中は仕事に専念することだな」
透が紅蓮にそう言葉を掛ける。
「わ……分かってるよ……」
紅蓮がどこか落ち着かない様子でそう言葉を綴る。
その時だった。
――――ガチャ……。
特殊捜査室の扉が開いて本山と杉原が部屋に入ってくる。
「何か分かったか?」
捜査室に入るなり、本山が第一声にそう言葉を発する。
「特には……。ただ……」
冴子がそう言って、先程までにみんなで話していたことを本山と杉原に話す。
「……成程な。だから母親を刺した可能性があるというわけか……」
本山が先程の話を聞いてそう言葉を綴る。
「とにかく、茉理を一刻も早く見つけ出しましょう……」
杉原がそう言葉を綴る。
こうして、行方知れずの茉理を探すために何処をどう探していくかを話し合う。そして、聞き込みは基本タブーだが、事件の事は伏せて「家族から捜索願が出されている」という形で聞き込みをすることにして、茉理の行方を探すことになった。
「ただいまー」
仕事から帰ってきた奏が玄関を開けるとそう言葉を発する。
「おかえり、奏」
「広斗さん?!」
玄関で出迎えてくれたのが広斗だったので奏が驚きの声を上げる。
「……あら、奏、おかえりなさい」
玄関に奏の母親である雫が顔を出してそう言葉を掛ける。
「なんで広斗さんが家に??」
奏は何が起こっているか分からなくて、頭にはてなマークを浮かべながらそう声を発する。
「夜デートしようっていう話だったから家に奏を迎えに来たんだけど、雫さんが「まだ帰ってきていないから上がって」って言ってくれて、それでお邪魔したんだよ」
広斗の言葉を聞いて昨日の話を思い出す。今の事件で頭がいっぱいでその事を半分忘れていた……ということは広斗に言えないが……。
「とりあえず夕飯にする?良かったら広斗さんも食べてくといいわよ」
雫の言葉に広斗がお礼を言って、奏の家族と共に夕飯を囲む。そこには、和やかな食卓が繰り広げられていた。
「あっ!おはよう、茉理。朝ごはん食べる?」
美玖がキッチンに顔を出した茉理にそう声を掛ける。
昨夜、茉理は夕飯に作ってくれたお粥を食べ終わるとシャワーを浴びて美玖のパジャマを借りて、再度眠りについた。
「……例の婚約者の人は?」
祐樹の姿が見えないので茉理が美玖にそう尋ねる。
「もう仕事に行ったよ。帰りはいつもの時間に帰ってくるって」
「ふーん……。美玖は仕事してないの?」
「私は会社に電話してしばらくお休みを貰ったよ。まぁ、有休が溜まっていていい加減消費しなきゃいけなかったからね」
美玖が笑顔で言葉を綴る。その顔を見て、茉理はなんだか不快な気分が襲い掛かってくる。
「出来たよ!はい、どうぞ!」
美玖がそう言ってテーブルに朝食を並べる。トーストにハムエッグ。そして、温かなコーンスープが並べられる。
「お腹空いているでしょ?トーストは足りなかったらもう一枚焼くからね」
「……いただきます」
茉理がそう言ってコーンスープを啜る。
「……美味しい」
暖かなコーンスープを飲んで自然とそう声が漏れる。
「あ……美玖。良かったら後でメイク道具貸してくれる?」
「それはいいけど……。茉理、その痣って……」
美玖が思い切って痣の事を茉理に尋ねる。
「あぁ……。転んだだけだよ」
茉理はそう誤魔化して朝食を淡々と食べていく。「それ以上は聞かないで」という雰囲気を醸し出しているので美玖は口を閉ざす。
朝食を食べ終えると、茉理はメイク道具を借りて洗面所に消えていった。その間に美玖がスマートフォンを開き、祐樹にメッセージを送る。
『痣のこと、聞いたけどやっぱり転んだだけって言って話してくれないよ』
しばらく返事を待つと、祐樹から返信があった。
『そうか……。まぁ、とりあえず本人が話すまではそっとしておいてあげよう』
『分かった』
美玖がそう返事を送り、メッセージを閉じる。そこへ、メイクをした茉理が戻ってきた。
「テレビ、見ていい?」
茉理がそう言ったので、美玖にテレビを付けてもらい、地域のニュース番組をぼんやりと眺める。ニュースでは最近起こった事件や出来事などをアナウンサーが読み上げていた。
(……お母さん、どうなったのかな……?)
ニュースを眺めながらぼんやりとあの時の事を考える。淳子は生きているのか……死んでいるのか……。敦成に連絡をして安否を知る事は出来る。しかし、下手に連絡を取れば自分は警察に捕まるかもしれない……。
(敦成があんな事を言わなければお母さんを刺すことしなかったのに……)
全部敦成が悪いということにして、自分がしたことを正当化しようとする。美玖はまだ事件の事は知らない。それは祐樹も同様だった。
(祐樹さんみたいないい人だったら、私も幸せになれるのかな……)
茉理がそう心で呟く。
その時、テレビが置かれている台の隅っこの方にあるプレートの上にあるものが置いてあり、茉理がそれに気付く。
「……あれ?あれって……」
槙がそう問う。
「その……元旦那に対して異常なまでの執着があったそうなのよ。元旦那が会社の社長というだけでなく、元旦那の仕事の付き合いや会社の会合にもよく口を挟んでいたみたいね……。それが原因で元旦那が耐えられなくなって離婚したそうよ……」
「……ということは、娘の茉理にもそのような異常な執着があった可能性があるというわけですね」
冴子の言葉に透がそう言葉を綴る。
「そうかもしれないわね……」
冴子がそう答える。
淳子の元旦那に対する異常な執着。それを茉理にも向けていたのだとしたら、茉理もそんな母親から逃げ出したい気持ちがどこかにあったのかもしれない。だから、母親を刺して葬る事でその異常な執着から逃げ出したかったのか……。そして、刺された母親も事件にしたくないのは、事件にしないことで茉理を手放さなくてもいい様にするためかもしれない……。そんな心理が垣間見える……。
「この事件はかなり闇が深いかもしれないですね……」
奏が神妙な顔でそう言葉を綴る。
「……あら?紅蓮?どうしたの?」
いつもなら紅蓮は捜査に関して一言二言話すのに、紅蓮の口から言葉を発していないことに冴子が気付き、そう声を出す。
「心配ないですよ、冴子さん。いつものバカなことが暴走しているだけです」
槙が呆れた口調でそう言葉を綴る。冴子はその言葉に頭にはてなマークを浮かべたが特に聞くことはしなかった。
「とりあえず、仕事中は仕事に専念することだな」
透が紅蓮にそう言葉を掛ける。
「わ……分かってるよ……」
紅蓮がどこか落ち着かない様子でそう言葉を綴る。
その時だった。
――――ガチャ……。
特殊捜査室の扉が開いて本山と杉原が部屋に入ってくる。
「何か分かったか?」
捜査室に入るなり、本山が第一声にそう言葉を発する。
「特には……。ただ……」
冴子がそう言って、先程までにみんなで話していたことを本山と杉原に話す。
「……成程な。だから母親を刺した可能性があるというわけか……」
本山が先程の話を聞いてそう言葉を綴る。
「とにかく、茉理を一刻も早く見つけ出しましょう……」
杉原がそう言葉を綴る。
こうして、行方知れずの茉理を探すために何処をどう探していくかを話し合う。そして、聞き込みは基本タブーだが、事件の事は伏せて「家族から捜索願が出されている」という形で聞き込みをすることにして、茉理の行方を探すことになった。
「ただいまー」
仕事から帰ってきた奏が玄関を開けるとそう言葉を発する。
「おかえり、奏」
「広斗さん?!」
玄関で出迎えてくれたのが広斗だったので奏が驚きの声を上げる。
「……あら、奏、おかえりなさい」
玄関に奏の母親である雫が顔を出してそう言葉を掛ける。
「なんで広斗さんが家に??」
奏は何が起こっているか分からなくて、頭にはてなマークを浮かべながらそう声を発する。
「夜デートしようっていう話だったから家に奏を迎えに来たんだけど、雫さんが「まだ帰ってきていないから上がって」って言ってくれて、それでお邪魔したんだよ」
広斗の言葉を聞いて昨日の話を思い出す。今の事件で頭がいっぱいでその事を半分忘れていた……ということは広斗に言えないが……。
「とりあえず夕飯にする?良かったら広斗さんも食べてくといいわよ」
雫の言葉に広斗がお礼を言って、奏の家族と共に夕飯を囲む。そこには、和やかな食卓が繰り広げられていた。
「あっ!おはよう、茉理。朝ごはん食べる?」
美玖がキッチンに顔を出した茉理にそう声を掛ける。
昨夜、茉理は夕飯に作ってくれたお粥を食べ終わるとシャワーを浴びて美玖のパジャマを借りて、再度眠りについた。
「……例の婚約者の人は?」
祐樹の姿が見えないので茉理が美玖にそう尋ねる。
「もう仕事に行ったよ。帰りはいつもの時間に帰ってくるって」
「ふーん……。美玖は仕事してないの?」
「私は会社に電話してしばらくお休みを貰ったよ。まぁ、有休が溜まっていていい加減消費しなきゃいけなかったからね」
美玖が笑顔で言葉を綴る。その顔を見て、茉理はなんだか不快な気分が襲い掛かってくる。
「出来たよ!はい、どうぞ!」
美玖がそう言ってテーブルに朝食を並べる。トーストにハムエッグ。そして、温かなコーンスープが並べられる。
「お腹空いているでしょ?トーストは足りなかったらもう一枚焼くからね」
「……いただきます」
茉理がそう言ってコーンスープを啜る。
「……美味しい」
暖かなコーンスープを飲んで自然とそう声が漏れる。
「あ……美玖。良かったら後でメイク道具貸してくれる?」
「それはいいけど……。茉理、その痣って……」
美玖が思い切って痣の事を茉理に尋ねる。
「あぁ……。転んだだけだよ」
茉理はそう誤魔化して朝食を淡々と食べていく。「それ以上は聞かないで」という雰囲気を醸し出しているので美玖は口を閉ざす。
朝食を食べ終えると、茉理はメイク道具を借りて洗面所に消えていった。その間に美玖がスマートフォンを開き、祐樹にメッセージを送る。
『痣のこと、聞いたけどやっぱり転んだだけって言って話してくれないよ』
しばらく返事を待つと、祐樹から返信があった。
『そうか……。まぁ、とりあえず本人が話すまではそっとしておいてあげよう』
『分かった』
美玖がそう返事を送り、メッセージを閉じる。そこへ、メイクをした茉理が戻ってきた。
「テレビ、見ていい?」
茉理がそう言ったので、美玖にテレビを付けてもらい、地域のニュース番組をぼんやりと眺める。ニュースでは最近起こった事件や出来事などをアナウンサーが読み上げていた。
(……お母さん、どうなったのかな……?)
ニュースを眺めながらぼんやりとあの時の事を考える。淳子は生きているのか……死んでいるのか……。敦成に連絡をして安否を知る事は出来る。しかし、下手に連絡を取れば自分は警察に捕まるかもしれない……。
(敦成があんな事を言わなければお母さんを刺すことしなかったのに……)
全部敦成が悪いということにして、自分がしたことを正当化しようとする。美玖はまだ事件の事は知らない。それは祐樹も同様だった。
(祐樹さんみたいないい人だったら、私も幸せになれるのかな……)
茉理がそう心で呟く。
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