ファクト ~真実~

華ノ月

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第二章 沼に足を取られた鳥は愛を知る

第13話

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「君は……確か……」

 突然声を掛けてきた奏に徳二は驚きの顔をした。

「突然申し訳ありません。あの……何かあったのですか?」

 奏がどこか焦っている徳二を見てそう言葉を掛ける。

「あ……あの写真の女性を見なかったか?!」

 徳二が奏の肩を掴みながらどこか切羽詰まった様子で言う。

「……やはり、絵梨佳さんの事を知っているのですね?」

「っ……」

 奏の言葉に徳二が言葉を詰まらす。

「実は――――」

 徳二はそう言うと、絵梨佳を匿っていたことを話しだした。

「――――というわけなんだ。それに……」

 徳二は話し終えるともう一つの話を始める。その話に奏と透は驚きを隠せない。

「絵梨佳さんを探しましょう!!」

 奏がそう言い、徳二と共に絵梨佳を捜索することにした。



「少し出掛けてきます……」

 新形がそう言葉を綴る。

「なんだ?急用か?まぁ、いいだろう……」

 新形の言葉に神明がそう問いかける。

「ちょっと、野暮用が出来たので……」

 新形はそう言うと、部屋を出て行った。そして、手下数人に声を掛けて、その人たちと共にあるところに向かった。



「……後、絵梨佳が行きそうなところと言えば……」

 政明が呟く。絵梨佳が行きそうな場所は殆ど探したが、絵梨佳は見つからない。後どこか絵梨佳が行きそうな場所を必死で考える。

「もしかして……」

 政明はある一つの場所を思い浮かべ、その場所に急いで駆け出していった。



「……ここがその場所か……」

 紅蓮と槙が女性から聞いた場所に足を踏み入れる。そこは噴水のある一つの広場のような場所だった。

「ここにいるかどうかは分からないがな」

 槙が淡々と言葉を綴る。

「とりあえず、捜索してみようぜ」

 紅蓮の言葉に槙が頷く。

 それなり敷地がある広場にはベンチが点在しているが、時間が夕刻のためか人通りはほとんどない。

 その時だった。

 一人の女性が広場に入ってくるのが見えて、そちらに顔を向ける。その女性は広場に入ると、あるベンチに一直線に進み、そこに腰を下ろした。

「近場の人間か?何も持っていないし……」

 槙が女性の手に何も持っていないことにそう呟く。

「……まさかとは思うが……」

 紅蓮が女性を見ながらそう言葉を呟く。

「絵梨佳……じゃないか?」

「え?」

 紅蓮の言葉に槙が声を出す。

「格好はそんなことをしていそうだが、顔が違うじゃないか」

 槙が呆れたようにそう言葉を綴る。

「確信はないが、あれ……すっぴんなんじゃないか?」

 紅蓮が遠目でその女性を見ながらそう答える。

「ほら、奏ちゃんが言ってただろ?買い物の中にクレンジングシートがあったって……。もし、それを買ってくるように頼んだのが絵梨佳だとしたら、あれはメイクを落とした状態じゃないのか?」

 紅蓮がそう言葉を綴る。

「……それであんなにも顔が変わるものなのか?」

 槙が半ば驚いた様子でそう言葉を綴り、「メイクって怖いな」と呟く。

「とりあえず、ちょっと様子を伺おうぜ?」

 紅蓮がそう言って槙と共に隠れるように絵梨佳の様子を見ていた。



 辺りが薄暗くなっていく中、政明はある場所を目指して駆けていく。その姿を見失わないように本山と杉原が後を追う。

(……頼む……そこにいてくれ……絵梨佳……)

 政明が懇願するように心で祈る。


「……何処に向っているのでしょうかね?」

「わからん……。見失わないようにするぞ」

「はい」

 杉原の言葉に本山がそう答える。そして、政明の後姿を追っていった。



「あの場所から動かないな……」

 紅蓮がポツリと呟く。

 メイクを落としている状態なので絵梨佳かどうかの核心はないが、可能性は高いとしてその女性を見張る。

「……誰かを待っているのか?」

 槙がその場所から動かない女性を見てそう言葉を綴った。



「……一体どこに行ったのでしょうか?」

 奏たちが絵梨佳を探しているが、絵梨佳は何処にも見当たらない。何処に行ったのか見当もつかない。

「佐崎さん、他に絵梨佳が行きそうな場所はあるか?」

 透が徳治にそう問う。

「いや……、分からん……。絵梨佳のことは殆ど知らないんだ……」


 ――――トゥルル……トゥルル……。


 そこへ、透の携帯が鳴り響いた。

「はい、もしもし……。……何?!」

 透が電話の相手から伝えられたことを聞いて声を上げる。そして、奏たちにそれを伝え、その場所に急いで足を運んだ。



(……私、何のために生きてるんだろ……)

 噴水の前のベンチに座りながら絵梨佳が心でそう呟く。

(このまま、ここで死ぬのも悪くないかな……。体が冷えて……意識が遠くなって……死んでいく方がいいかも……)

 そんなことをぼんやりと考えながら、体を丸めて顔を埋める。

 その時だった。


「見つけた!」

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