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1-4. 小晴、兄の朝立ちを寸止めプレイする。
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「うぁ……」
大晴は肌寒さで目を覚ました。
起きたらまず、スマホを探して時刻を確認する。部屋の窓は西向きで、カーテンも遮光のやつなので、室内の明るさで時刻を推し量ることができないために身に付いた習慣だった。
いつもなら枕元に置いてから寝ているスマホが、今日は足元のほうに転がっていた。というか、なぜか全裸になっているし、シーツが尻の下で皺くちゃになっているし……なんだこのダイナミックな寝相は、と思いつつも惰性で時刻確認すると、まだ早朝と呼べる時間帯だ。これなら学校に遅刻しないで……
「……あっ!」
昨夜の記憶が一気に蘇った。
「そうだ、俺、女になって――なって……ない!」
全裸だから確認は簡単だった。大きく膨らんでいた胸は、単なる子でぶ男子の脂肪が乗った胸板に戻っていて、股間の割れ目も竹輪一本と鶉の卵二個セットに戻っていた。スマホのカメラを立ち上げて自分の顔も確認してみたけれど、上から下まで、見飽きるほどの見慣れた大晴自身の身体だった。
唯一の違和感と言えば、
「うぉ……毛が無ぇ……」
去年くらいからちょろちょろ生え始めてきていた陰毛や腋毛はおろか、脛毛も腕毛も腹毛も、綺麗さっぱり抜け落ちていた。毛がなくなった場所を一通り撫でてみるが、毛根がダメージを受けたことでのデコボコや痛みはない。ひたすらに滑々だ。
はっと気になって顎から頬まで撫でてみると、そこもやっぱり滑々だった。そこまで確認してまた、はっと慌てて眉毛と睫毛を確認したが、どちらも無事だった。
「ふぅ、良かった……あ、そういえば……」
大晴は安堵した後、改めてスマホの自撮りカメラを顔に向ける。でも確認したいのは顔ではなく、髪だ。
「こっちまで抜けていたりは……うん、してない。後ろも……うん、大丈夫」
手で触ってみた後、念のためにスマホをぐるっと一巡りさせて側頭部や後頭部にも変わりなく髪があることを確認して、またホッと安堵する。
「にしても、髪だけは女性になっても……」
変わらなかったな、と呟くつもりだったが、そうでもないことに気がついて言葉を途切れさせた。
気がついたのは、髪を触ってみたときの手触りだ。いまの手触りは、ごわごわした男の髪質だったが、女だったときはもっとさらさらしていたような気がする。
「というか、だ……」
大晴はまじまじと、スマホの中の自分を見つめる。そして、深い溜め息。
「……はあぁ」
「あ、お兄に戻ってる!」
「うおっ!」
隣から聞こえてきた声に驚いて振り向くと、パジャマ姿の小晴がベッドにぺたんとお座りしていた。
「こ、こ、小晴、おまえ、いっ、いつの間に……!」
大晴が盛大にどもったのは、彼がいま全裸だからだ。慌てて尻に敷いていた皺くちゃのシーツを羽織った。
「って、臭ぁ!」
そのシーツはじっとり湿っている上に生臭い匂いがぷんぷんに染みついていて、大晴はせっかく羽織ったのに即行で投げ捨てた。
「お兄、何やってんの……」
「いやっ、おまえが何やってるんだよ? なんで、部屋にまだいるんだよ!?」
「なんでって……昨日はお兄が気絶しちゃったから、心配で付き添ってあげていたんだけど、そのまま眠っちゃったんだよぅ」
「む、そうか。えっと……心配かけて悪かったな。ありがとう?」
「なんで聞き返すみたいに言うの……」
「悪い。心配してくれてありがとう」
「はい、よろしー。っていうか、ちゃんとお兄に戻ってて良かったよー」
「俺もだよー。ひと眠りしたのが良かったのかな。それか、単純に効果時間が切れたのか――」
妹とそんな会話をしているうちに、大晴も少し落ち着いてきた。……落ち着いてきたので、この状況でいることがあまり好ましくないことに、ようやく思い至る。
「……しまった。不味いぞ、小晴」
「うみゅ?」
「今日は始業式だ。ってことは、もうすでに母さんが起きているだろうってことだ」
「あー、もうそんな時間なんだー」
「そんな時間なんだよっ」
「でも、それが?」
「シーツをこっそり洗えない!」
「なんだ、そんなこと」
小晴があんまりあっさり言うから、大晴は鳩が豆鉄砲を食った顔になる。そこへ、小晴はさらに、なんでもないことのように続けて言った。
「いいよ、シーツはわたしがいま洗ってきてあげるから」
「え……いや、それだと色々ばれちゃうじゃん……あっ、もしかして、俺がおねしょしたことに――ッ!」
「しない、しない。そんな嘘を吐かなくても、【気にしないで】って言えばいいだけだし」
「あ……その手があったか……って、そういうのを親にやっちゃっていいもんなのか……?」
「えー、もう昨日やっちゃってるんだけどー。二階で騒いでも朝までぐっすりお休みしてね、って」
「お、おぅ……そうか。じゃあ、うぅん……いいのかな、うん。いいかぁ!」
小晴の言霊を昨晩たっぷりと身をもって体験した上で、大晴は大丈夫だろうと結論付けた。そういうことにしておいた。
「じゃ、行ってくるね」
「うん。頼んだ」
パジャマ姿の小晴が丸めたシーツを小脇に抱えて出ていくのを見送ると、大晴も部屋の換気と着替えを始めるのだが、
「うっ……べとべと……」
全身が汗でべっとり、股間はさらにべっとべとだった。しかも、抜けたムダ毛がそのべたべたに張り付いていて、意識したら全身がちくちく痒くなってきた。
大晴は結局、脱ぎ散らかしていたトランクスを穿き直して脱衣所に駆け込んだ。脱衣所に入ると、擦りガラスの向こうからシャワーを使う音が聞こえてくる。小晴が汚れたシーツを洗っているのだろうなぁと、とくに深く考えることなく再び素っ裸になった大晴が浴室に入ると、まあ……いた。シーツを下洗いするついでに自分自身もシャワーを浴びていた、全裸の小晴が。
「あ……」
「おー」
開け放ったガラス戸を挟んで、ばっちり目が合う。だけど固まったのは大晴だけで、小晴はとくに気にしたふうもない。
「お兄も一緒に入る?」
「いやいやいや!」
なんでもないことのように誘ってくる妹に、呆けていた大晴は正気に返って戸を閉めようとした――が、
「【お兄、入って】」
「えぇ……」
「お兄、今日から学校だよ。順番に入ってたら時間なくなっちゃうよ」
「お、おう。そうだな」
それなら仕方ないか、と自分を納得させた大晴は、言霊に抗うことを止めた。
真夏雨家の浴室はユニットバスではなく、詰めれば大人が三人は入れる広さがあるので、兄妹二人で入っても十分に余裕がある。ただしシャワーはひとつだけなので、結局は身を寄せ合って湯浴みすることになった。
「……お兄、ちんちん立ってる?」
「えっ、やっ……違――」
違わなかった。
大晴は小晴に背中に抱きつくような位置取りでシャワーを浴びていたのだが、昨夜のことをふと思い出してしまったのがいけなかった。兄として連続射精させられて、姉として連続絶頂させられて、とにかくどちらも気持ち良くて――などと考えていたら、それはもう朝起ちするのが摂理だった。
「んもー、お兄はしょーがないなー……いいよ♥」
「は……ッ!?」
虚を突かれた大晴の正面で、小晴はくるっと振り返る。そして、にやにやと悪戯っぽい笑顔で兄を見上げながら、自分の臍を両手で押さえるようにして――兄の勃起を両手とお腹で挟むように抱き締めた。
「あっ、小晴……!」
「ホントに時間ないけど、お兄のちんちん、昨日すぐにびゅーってしてたもんね。三分くらいあれば余裕でしょ」
「そっ、っ、そんなにっ……ぃ……!」
「あ、そんなに持たない?」
「違う! そんなに早くなっあぁ……ッ!!」
「いいよぉ、お兄。シャワーの音で誤魔化せると思うし、キモチイイって鳴いてもぉ♥」
小晴はにこにこ笑顔で大晴を見上げながら、両手とお腹で兄ちんぽをこすこすと扱いていく。
煌めくような肌艶の下腹部で、勃起ちんぽの裏側をぷにぷにと上下に擦る。しなやかな両手の指はちんぽの表側に宛がわれて、カリ首に掛かっていた余り皮をてゅるんと下方に剥いてしまうと、露わにさせたカリ首の出っ張りを、横向きの指でぷるっぷるっと上下に弾くようにして擦り立てていく。
「うあっ、あぁっ……きっ、気持ちいい……気持ちいい、気持ちいいっ……ッ……!」
昨夜のたった一度でそういう癖を付けられてしまったのか、大晴は小晴のお手々とお腹でサンドイッチされている勃起をひっくひっく嬉し泣きさせながら、キモチイイを上擦った声で呪文のように唱える。
「あっ♥ おちんちん、ぎゅーって力瘤みたくなってきたよ。もうイくんだよね?」
早朝の浴室で、互いに全裸で抱き合った体勢でシャワーを浴びながら、妹に朝起ちの処理をしてもらっている――その非日常感に、大晴の脳はバグを起こしたみたいに官能を煮え滾らせて、同じくらいぐつぐつに滾っている白濁汁を睾丸から陰茎の付け根へと、ぎゅるんぎゅるん唸りを上げて高速で汲み上げていく。
「いいよ、お兄。イっちゃえ、イっちゃ……あっ、待って!」
くすくす、にやにや、と笑いながら大晴の切なげな顔を見上げて、お腹と両手でのちんぽ愛撫を加速させていた小晴だが、唐突に声を上げると、両手もお腹も勃起ちんぽからパッと離してしまった。
「え、なんで――」
「駄目じゃん、お兄。射精したら、また女の子になっちゃうよ!」
「あっ」
言われてようやく、大晴もそのことを思い出した。
「昨日のあれって、お兄は射精したから女の子になっちゃった、ってことだよね? だったら、駄目じゃん。いまから学校だよ?」
「う、うん……やっ、でもさ、まだ分かんないだろ。他の原因で女子化したのかもしれないし、そういうの調べるためにも、いま射精してみる必要があるんじゃないか? いや、ある!」
「ないよぅ。あったとしても、いまじゃないから」
「いまでもいいだろ。どうせ今日は始業式だけなんだし!」
「お母もお父もいるんだよ。お兄がお姉になっちゃったら、さすがに誤魔化しきれるか分かんないもん。だから駄目!」
「そこをなんとか――ああ、もういい! 自分でやる!」
小晴に扱き出してもらうのを諦めた大晴は、寸前で放置されて切なさ臨界点の勃起ちんぽを自分の手で掴む。だが、大晴が扱くよりも、小晴が言い放つほうが早かった。
「お兄、【射精禁止!】」
「んな――ッ!?」
大晴は愕然とした顔をするも、その手はギンギンに膨れた陰茎を握って上下に扱きたくる――が、出ない。
「なっ、な、なぁ……んっだ、これぇッ!?」
扱くことで物理的な刺激による快感は発生しているのに、それが射精に繋がらない。そこを繋いでいた回路だけ、電源を落とされてしまったような感覚だった。
「あ、こらーっ! お兄、【ちんぽ扱くの禁止】。あと、もっかい【射精禁止】【絶対に禁止】【絶対、絶対に禁止】!」
「なんでそんな何回も!?」
「だってお兄、命令ちゃんと聞いてくれるか分かんないから」
「む……そうか。俺も小晴と同じ淫魔なんだったら、その催眠術みたいな力に抵抗力があるってこと……いやいや、でも昨日はすごい命令されまくったよな!?」
「それは、お兄が抵抗しなかったからでしょ」
「えっ」
「でもいまは、なんか抵抗してる感じでしょ。だから、いっぱい命令したのーっ」
「そ、そうか……いや、そんなことより――俺、昨日のあれやこれやは全部、全然抵抗しないで受け入れていたってことなの……?」
「分かんないけど、そうなんじゃないの? っていうか、お喋りしてる時間ないよ。ほら、上がるよっ」
「あ、おう」
小晴に急かされて、大晴も浴室を出た。二人して身体を拭くとき、バスタオルがちょいちょい勃起ちんぽに擦れて、そのたびに酷い快感と切なさに腰を震わされたけれど、大晴は我慢した。実際、少々のんびりし過ぎたせいで、もうオナニーしている時間もなかったからだ。
二人は時間差で脱衣所を出ると、それぞれの部屋に戻って着替えを済ませ、母が朝食を準備している居間兼食堂に向かった。なお、下洗いしたシーツは洗濯機に押し込んだ。
二人が居間に入ると、キッチンでは母が朝食を粗方作り終えたところで、二人で料理を食卓まで運ぶ。そこに父も寝ぼけ眼のパジャマ姿でやってきて、家族四人で食事開始だ。
いつも通りの朝の風景。その一部になることで、大晴の股間はいつの間にか昂るのを止めていた。いくらお年頃男子でも、両親と食事をしながら勃起できるものではなかった。妹では勃起できたわけだが。
いや、あれは淫魔の力に中てられたせいだから――と脳内で言い訳しているうちに、食事も終わって、歯磨きやらしているうちに家を出る時刻だ。兄妹で通う学校は違うのだけど、両者は道路を一本挟んで向かい合うように建っているので、家を出る時刻も二人だいたい同じなのだ。
「お兄も今日は午前中だけだよね?」
出がけに玄関先で小晴が訊いてくる。
「おう。始業式と、あとなんか軽いホームルームくらいのはずだし」
「わたしもそんな感じ。そんで、お父は仕事で、お母もPTAでランチ付きの親睦会するって言ってた。そんで夕飯も外食にするから、夕方にそのまま外で待ち合わせましょーって。だから……お兄、午後ならいいよ」
「え、何が?」
大晴がそう訊き返したら、じとっと睨み返された。
「おちんちん」
「はぁ?」
「学校から帰ってきたら射精禁止を解いて、午後いっぱい相手してあげるつもりだったんだけど、お兄がべつにいいんなら、いいよ。わたし、夕方までマリちゃんとこ行ってるもん」
「待って。お願い。午後、どうか時間をください。お願いします、頼みます!」
考えるよりも早く、大晴は九十度に腰を折って敬語で懇願していた。
「はぁ……そんなにお願いするくらいなら、最初から忘れないでよね、もうっ」
「うん、悪かった。だから、お願い。お願いお願い!」
「はいはい、分かったから。ほら、もう行こ?」
「おう」
二人は揃って家を出た。
二人の通学路は、大晴が最後の横断歩道を渡るところまで一緒なので、どちらかがよっぽど寝坊したり、あるいは日直で早く家を出るとかでもないかぎり、だいたいこうして一緒に歩くことになる。小晴が学校に通うようになってから二年ほど集団登校で毎日のようにそうしていたのが惰性でいまも続いている、という感じだった。
歩き始めて三分ほどしたところで、小晴は大晴の様子がおかしいことに気がつく。
「お兄、なんか歩き方、変だよ。背中丸めすぎ」
「うっ……仕方ないだろ。起ったままなんだから」
「起ったまま? 何が?」
「……んこ」
「え、うんこ!?」
「違う、ちんこ! って、大声で言わせんな!」
「あははっ……ん? でもなんで、ちんこ起ってると背中が丸くなるの?」
「これは背中を丸めているんじゃない。腰を引っ込めているんだ。なぜなら、大きくなったちんこがズボンに擦れて気持ちいいからだ」
「気持ちいいなら、いいんじゃん?」
「じゃあ小晴おまえ、クリ弄りながら歩いてみろよ」
「やだよ、そんな変態じゃん」
「そうだろ。だから俺も、なるべく擦れないように腰を引っ込めながら歩いているんだよ」
「ふぅん……理由は分かったけど、カッコ悪いから【背筋を伸ばせ】」
「あっ、それ反則うぅ……ッ!!」
無理やりシャキッとさせられた大晴は股間をもっこり膨らませ、寸でのところで喘ぎ声を嚙み殺した。
「う、うぅ……小晴、これ、きついぞ……!」
「だいじょーぶ。しゃせーは、わたしがいいよって言うまで出来ないからー」
「ひどい……全然大丈夫じゃないぞ、それ……」
「あははっ」
他愛もない会話をしていると、分かれ道の横断歩道まではすぐだった。
「じゃ、お兄。頑張ってね♥」
「はいはい、頑張るよっ」
大晴は笑顔で手を振る小晴に、やけくそ気味に言い捨てながら横断歩道を渡っていった。
大晴は肌寒さで目を覚ました。
起きたらまず、スマホを探して時刻を確認する。部屋の窓は西向きで、カーテンも遮光のやつなので、室内の明るさで時刻を推し量ることができないために身に付いた習慣だった。
いつもなら枕元に置いてから寝ているスマホが、今日は足元のほうに転がっていた。というか、なぜか全裸になっているし、シーツが尻の下で皺くちゃになっているし……なんだこのダイナミックな寝相は、と思いつつも惰性で時刻確認すると、まだ早朝と呼べる時間帯だ。これなら学校に遅刻しないで……
「……あっ!」
昨夜の記憶が一気に蘇った。
「そうだ、俺、女になって――なって……ない!」
全裸だから確認は簡単だった。大きく膨らんでいた胸は、単なる子でぶ男子の脂肪が乗った胸板に戻っていて、股間の割れ目も竹輪一本と鶉の卵二個セットに戻っていた。スマホのカメラを立ち上げて自分の顔も確認してみたけれど、上から下まで、見飽きるほどの見慣れた大晴自身の身体だった。
唯一の違和感と言えば、
「うぉ……毛が無ぇ……」
去年くらいからちょろちょろ生え始めてきていた陰毛や腋毛はおろか、脛毛も腕毛も腹毛も、綺麗さっぱり抜け落ちていた。毛がなくなった場所を一通り撫でてみるが、毛根がダメージを受けたことでのデコボコや痛みはない。ひたすらに滑々だ。
はっと気になって顎から頬まで撫でてみると、そこもやっぱり滑々だった。そこまで確認してまた、はっと慌てて眉毛と睫毛を確認したが、どちらも無事だった。
「ふぅ、良かった……あ、そういえば……」
大晴は安堵した後、改めてスマホの自撮りカメラを顔に向ける。でも確認したいのは顔ではなく、髪だ。
「こっちまで抜けていたりは……うん、してない。後ろも……うん、大丈夫」
手で触ってみた後、念のためにスマホをぐるっと一巡りさせて側頭部や後頭部にも変わりなく髪があることを確認して、またホッと安堵する。
「にしても、髪だけは女性になっても……」
変わらなかったな、と呟くつもりだったが、そうでもないことに気がついて言葉を途切れさせた。
気がついたのは、髪を触ってみたときの手触りだ。いまの手触りは、ごわごわした男の髪質だったが、女だったときはもっとさらさらしていたような気がする。
「というか、だ……」
大晴はまじまじと、スマホの中の自分を見つめる。そして、深い溜め息。
「……はあぁ」
「あ、お兄に戻ってる!」
「うおっ!」
隣から聞こえてきた声に驚いて振り向くと、パジャマ姿の小晴がベッドにぺたんとお座りしていた。
「こ、こ、小晴、おまえ、いっ、いつの間に……!」
大晴が盛大にどもったのは、彼がいま全裸だからだ。慌てて尻に敷いていた皺くちゃのシーツを羽織った。
「って、臭ぁ!」
そのシーツはじっとり湿っている上に生臭い匂いがぷんぷんに染みついていて、大晴はせっかく羽織ったのに即行で投げ捨てた。
「お兄、何やってんの……」
「いやっ、おまえが何やってるんだよ? なんで、部屋にまだいるんだよ!?」
「なんでって……昨日はお兄が気絶しちゃったから、心配で付き添ってあげていたんだけど、そのまま眠っちゃったんだよぅ」
「む、そうか。えっと……心配かけて悪かったな。ありがとう?」
「なんで聞き返すみたいに言うの……」
「悪い。心配してくれてありがとう」
「はい、よろしー。っていうか、ちゃんとお兄に戻ってて良かったよー」
「俺もだよー。ひと眠りしたのが良かったのかな。それか、単純に効果時間が切れたのか――」
妹とそんな会話をしているうちに、大晴も少し落ち着いてきた。……落ち着いてきたので、この状況でいることがあまり好ましくないことに、ようやく思い至る。
「……しまった。不味いぞ、小晴」
「うみゅ?」
「今日は始業式だ。ってことは、もうすでに母さんが起きているだろうってことだ」
「あー、もうそんな時間なんだー」
「そんな時間なんだよっ」
「でも、それが?」
「シーツをこっそり洗えない!」
「なんだ、そんなこと」
小晴があんまりあっさり言うから、大晴は鳩が豆鉄砲を食った顔になる。そこへ、小晴はさらに、なんでもないことのように続けて言った。
「いいよ、シーツはわたしがいま洗ってきてあげるから」
「え……いや、それだと色々ばれちゃうじゃん……あっ、もしかして、俺がおねしょしたことに――ッ!」
「しない、しない。そんな嘘を吐かなくても、【気にしないで】って言えばいいだけだし」
「あ……その手があったか……って、そういうのを親にやっちゃっていいもんなのか……?」
「えー、もう昨日やっちゃってるんだけどー。二階で騒いでも朝までぐっすりお休みしてね、って」
「お、おぅ……そうか。じゃあ、うぅん……いいのかな、うん。いいかぁ!」
小晴の言霊を昨晩たっぷりと身をもって体験した上で、大晴は大丈夫だろうと結論付けた。そういうことにしておいた。
「じゃ、行ってくるね」
「うん。頼んだ」
パジャマ姿の小晴が丸めたシーツを小脇に抱えて出ていくのを見送ると、大晴も部屋の換気と着替えを始めるのだが、
「うっ……べとべと……」
全身が汗でべっとり、股間はさらにべっとべとだった。しかも、抜けたムダ毛がそのべたべたに張り付いていて、意識したら全身がちくちく痒くなってきた。
大晴は結局、脱ぎ散らかしていたトランクスを穿き直して脱衣所に駆け込んだ。脱衣所に入ると、擦りガラスの向こうからシャワーを使う音が聞こえてくる。小晴が汚れたシーツを洗っているのだろうなぁと、とくに深く考えることなく再び素っ裸になった大晴が浴室に入ると、まあ……いた。シーツを下洗いするついでに自分自身もシャワーを浴びていた、全裸の小晴が。
「あ……」
「おー」
開け放ったガラス戸を挟んで、ばっちり目が合う。だけど固まったのは大晴だけで、小晴はとくに気にしたふうもない。
「お兄も一緒に入る?」
「いやいやいや!」
なんでもないことのように誘ってくる妹に、呆けていた大晴は正気に返って戸を閉めようとした――が、
「【お兄、入って】」
「えぇ……」
「お兄、今日から学校だよ。順番に入ってたら時間なくなっちゃうよ」
「お、おう。そうだな」
それなら仕方ないか、と自分を納得させた大晴は、言霊に抗うことを止めた。
真夏雨家の浴室はユニットバスではなく、詰めれば大人が三人は入れる広さがあるので、兄妹二人で入っても十分に余裕がある。ただしシャワーはひとつだけなので、結局は身を寄せ合って湯浴みすることになった。
「……お兄、ちんちん立ってる?」
「えっ、やっ……違――」
違わなかった。
大晴は小晴に背中に抱きつくような位置取りでシャワーを浴びていたのだが、昨夜のことをふと思い出してしまったのがいけなかった。兄として連続射精させられて、姉として連続絶頂させられて、とにかくどちらも気持ち良くて――などと考えていたら、それはもう朝起ちするのが摂理だった。
「んもー、お兄はしょーがないなー……いいよ♥」
「は……ッ!?」
虚を突かれた大晴の正面で、小晴はくるっと振り返る。そして、にやにやと悪戯っぽい笑顔で兄を見上げながら、自分の臍を両手で押さえるようにして――兄の勃起を両手とお腹で挟むように抱き締めた。
「あっ、小晴……!」
「ホントに時間ないけど、お兄のちんちん、昨日すぐにびゅーってしてたもんね。三分くらいあれば余裕でしょ」
「そっ、っ、そんなにっ……ぃ……!」
「あ、そんなに持たない?」
「違う! そんなに早くなっあぁ……ッ!!」
「いいよぉ、お兄。シャワーの音で誤魔化せると思うし、キモチイイって鳴いてもぉ♥」
小晴はにこにこ笑顔で大晴を見上げながら、両手とお腹で兄ちんぽをこすこすと扱いていく。
煌めくような肌艶の下腹部で、勃起ちんぽの裏側をぷにぷにと上下に擦る。しなやかな両手の指はちんぽの表側に宛がわれて、カリ首に掛かっていた余り皮をてゅるんと下方に剥いてしまうと、露わにさせたカリ首の出っ張りを、横向きの指でぷるっぷるっと上下に弾くようにして擦り立てていく。
「うあっ、あぁっ……きっ、気持ちいい……気持ちいい、気持ちいいっ……ッ……!」
昨夜のたった一度でそういう癖を付けられてしまったのか、大晴は小晴のお手々とお腹でサンドイッチされている勃起をひっくひっく嬉し泣きさせながら、キモチイイを上擦った声で呪文のように唱える。
「あっ♥ おちんちん、ぎゅーって力瘤みたくなってきたよ。もうイくんだよね?」
早朝の浴室で、互いに全裸で抱き合った体勢でシャワーを浴びながら、妹に朝起ちの処理をしてもらっている――その非日常感に、大晴の脳はバグを起こしたみたいに官能を煮え滾らせて、同じくらいぐつぐつに滾っている白濁汁を睾丸から陰茎の付け根へと、ぎゅるんぎゅるん唸りを上げて高速で汲み上げていく。
「いいよ、お兄。イっちゃえ、イっちゃ……あっ、待って!」
くすくす、にやにや、と笑いながら大晴の切なげな顔を見上げて、お腹と両手でのちんぽ愛撫を加速させていた小晴だが、唐突に声を上げると、両手もお腹も勃起ちんぽからパッと離してしまった。
「え、なんで――」
「駄目じゃん、お兄。射精したら、また女の子になっちゃうよ!」
「あっ」
言われてようやく、大晴もそのことを思い出した。
「昨日のあれって、お兄は射精したから女の子になっちゃった、ってことだよね? だったら、駄目じゃん。いまから学校だよ?」
「う、うん……やっ、でもさ、まだ分かんないだろ。他の原因で女子化したのかもしれないし、そういうの調べるためにも、いま射精してみる必要があるんじゃないか? いや、ある!」
「ないよぅ。あったとしても、いまじゃないから」
「いまでもいいだろ。どうせ今日は始業式だけなんだし!」
「お母もお父もいるんだよ。お兄がお姉になっちゃったら、さすがに誤魔化しきれるか分かんないもん。だから駄目!」
「そこをなんとか――ああ、もういい! 自分でやる!」
小晴に扱き出してもらうのを諦めた大晴は、寸前で放置されて切なさ臨界点の勃起ちんぽを自分の手で掴む。だが、大晴が扱くよりも、小晴が言い放つほうが早かった。
「お兄、【射精禁止!】」
「んな――ッ!?」
大晴は愕然とした顔をするも、その手はギンギンに膨れた陰茎を握って上下に扱きたくる――が、出ない。
「なっ、な、なぁ……んっだ、これぇッ!?」
扱くことで物理的な刺激による快感は発生しているのに、それが射精に繋がらない。そこを繋いでいた回路だけ、電源を落とされてしまったような感覚だった。
「あ、こらーっ! お兄、【ちんぽ扱くの禁止】。あと、もっかい【射精禁止】【絶対に禁止】【絶対、絶対に禁止】!」
「なんでそんな何回も!?」
「だってお兄、命令ちゃんと聞いてくれるか分かんないから」
「む……そうか。俺も小晴と同じ淫魔なんだったら、その催眠術みたいな力に抵抗力があるってこと……いやいや、でも昨日はすごい命令されまくったよな!?」
「それは、お兄が抵抗しなかったからでしょ」
「えっ」
「でもいまは、なんか抵抗してる感じでしょ。だから、いっぱい命令したのーっ」
「そ、そうか……いや、そんなことより――俺、昨日のあれやこれやは全部、全然抵抗しないで受け入れていたってことなの……?」
「分かんないけど、そうなんじゃないの? っていうか、お喋りしてる時間ないよ。ほら、上がるよっ」
「あ、おう」
小晴に急かされて、大晴も浴室を出た。二人して身体を拭くとき、バスタオルがちょいちょい勃起ちんぽに擦れて、そのたびに酷い快感と切なさに腰を震わされたけれど、大晴は我慢した。実際、少々のんびりし過ぎたせいで、もうオナニーしている時間もなかったからだ。
二人は時間差で脱衣所を出ると、それぞれの部屋に戻って着替えを済ませ、母が朝食を準備している居間兼食堂に向かった。なお、下洗いしたシーツは洗濯機に押し込んだ。
二人が居間に入ると、キッチンでは母が朝食を粗方作り終えたところで、二人で料理を食卓まで運ぶ。そこに父も寝ぼけ眼のパジャマ姿でやってきて、家族四人で食事開始だ。
いつも通りの朝の風景。その一部になることで、大晴の股間はいつの間にか昂るのを止めていた。いくらお年頃男子でも、両親と食事をしながら勃起できるものではなかった。妹では勃起できたわけだが。
いや、あれは淫魔の力に中てられたせいだから――と脳内で言い訳しているうちに、食事も終わって、歯磨きやらしているうちに家を出る時刻だ。兄妹で通う学校は違うのだけど、両者は道路を一本挟んで向かい合うように建っているので、家を出る時刻も二人だいたい同じなのだ。
「お兄も今日は午前中だけだよね?」
出がけに玄関先で小晴が訊いてくる。
「おう。始業式と、あとなんか軽いホームルームくらいのはずだし」
「わたしもそんな感じ。そんで、お父は仕事で、お母もPTAでランチ付きの親睦会するって言ってた。そんで夕飯も外食にするから、夕方にそのまま外で待ち合わせましょーって。だから……お兄、午後ならいいよ」
「え、何が?」
大晴がそう訊き返したら、じとっと睨み返された。
「おちんちん」
「はぁ?」
「学校から帰ってきたら射精禁止を解いて、午後いっぱい相手してあげるつもりだったんだけど、お兄がべつにいいんなら、いいよ。わたし、夕方までマリちゃんとこ行ってるもん」
「待って。お願い。午後、どうか時間をください。お願いします、頼みます!」
考えるよりも早く、大晴は九十度に腰を折って敬語で懇願していた。
「はぁ……そんなにお願いするくらいなら、最初から忘れないでよね、もうっ」
「うん、悪かった。だから、お願い。お願いお願い!」
「はいはい、分かったから。ほら、もう行こ?」
「おう」
二人は揃って家を出た。
二人の通学路は、大晴が最後の横断歩道を渡るところまで一緒なので、どちらかがよっぽど寝坊したり、あるいは日直で早く家を出るとかでもないかぎり、だいたいこうして一緒に歩くことになる。小晴が学校に通うようになってから二年ほど集団登校で毎日のようにそうしていたのが惰性でいまも続いている、という感じだった。
歩き始めて三分ほどしたところで、小晴は大晴の様子がおかしいことに気がつく。
「お兄、なんか歩き方、変だよ。背中丸めすぎ」
「うっ……仕方ないだろ。起ったままなんだから」
「起ったまま? 何が?」
「……んこ」
「え、うんこ!?」
「違う、ちんこ! って、大声で言わせんな!」
「あははっ……ん? でもなんで、ちんこ起ってると背中が丸くなるの?」
「これは背中を丸めているんじゃない。腰を引っ込めているんだ。なぜなら、大きくなったちんこがズボンに擦れて気持ちいいからだ」
「気持ちいいなら、いいんじゃん?」
「じゃあ小晴おまえ、クリ弄りながら歩いてみろよ」
「やだよ、そんな変態じゃん」
「そうだろ。だから俺も、なるべく擦れないように腰を引っ込めながら歩いているんだよ」
「ふぅん……理由は分かったけど、カッコ悪いから【背筋を伸ばせ】」
「あっ、それ反則うぅ……ッ!!」
無理やりシャキッとさせられた大晴は股間をもっこり膨らませ、寸でのところで喘ぎ声を嚙み殺した。
「う、うぅ……小晴、これ、きついぞ……!」
「だいじょーぶ。しゃせーは、わたしがいいよって言うまで出来ないからー」
「ひどい……全然大丈夫じゃないぞ、それ……」
「あははっ」
他愛もない会話をしていると、分かれ道の横断歩道まではすぐだった。
「じゃ、お兄。頑張ってね♥」
「はいはい、頑張るよっ」
大晴は笑顔で手を振る小晴に、やけくそ気味に言い捨てながら横断歩道を渡っていった。
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