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Merle

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拗らせ聖女とパンしゃぶ天使 2/3

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「そういえばさー、天使の召喚は上手くいったの?」

 通称「コボルト庄」と呼ばれる草原マップに向かう道中の、敵もまばらな野原マップを歩きながら、アイナがナナカセに尋ねた。

「あ、うん。おかげさまで、無事に召喚できたわ」
「おー」
「あたし、天使って見たことないんだよね」

 ユイがそう言うと、アイナも大きく頷いて同意する。

「悪魔召喚よりレアだよね!」
「あっちは男性人気、高いからね」
「悪魔が、っていうか、淫魔が、だねー」
「でも、天使は女性人気が高いってわけでもない?」

 首を傾げたユイに、ナナカセは宙を見上げつつ説明をする。

「ん……わたしみたいなには人気が高い、というところかしら」
「ナナさんみたいな……」
生ものリアル興味なしのVR専ブイせん夢女子クラスタ、だねっ」
「アイナ、言い方!」
「あははっ」

 笑い出したアイナを、ナナカセがひと睨みする。そのナナカセに、ユイが興味を隠さず尋ねかけた。

「ね、ちょっと呼んでみせて」
「え?」
「天使、見てみたい。召喚したってことは、そのときに契約して、もういつでも呼べるんだよね?」
「呼べるけど……」
「えっ、見たい見たい!」

 と、アイナも乗ってくる。
 二人に好奇心満々の目で迫られては、ナナカセも拒否できなかった。

「……じゃあ呼ぶけど、何があっても自己責任だからね」
「え?」
「なにその不穏な単語。わくわくするっ」
「あ……確かに、ちょっとわくわくするかも」

 エルフ二人はかえって興味を掻き立てられたようだ。ナナカセは溜め息をひとつ零すと、先だって召喚した天使との契約により取得した【喚起:天使】を使用コールした。

「我が守護天使マシェリエル、現れ出でよ」

 その言葉に呼応して、ナナカセが突き出した片手の先で、ごぉ、と風が逆巻き、光が膨れ上がって、ふわっと無音で弾けた。
 風と光が消えたそこには、背中から大鷲の翼を生やし、純白のトーガと銀の鎧をまとった美丈夫が佇んでいた。くるくる天然パーマの金髪ショートカットと、澄んだ碧い瞳が、純真な少年っぽさを醸している。

「おぉ、天使だ」
「いかにも天使ぃ」

 ユイもアイナも、初めて直に見る天使に感嘆している。
 見られているほうの天使は二人を一顧だにすることなく、契約者であるナナカセを身長差15センチ分だけ見下ろして、瑞々しい唇を内側から押し開けた。

「――パンツを所望する」

 沈黙が落ちた。

「……」
「……え?」

 絶句するユイと、辛うじて一言発したアイナ。

「契約の名の下に、我はパンツを所望する」

 まるで大事なことを言って聞かせるように、天使マシェリエルは純真無垢な瞳で厳かに告げた。

「はぁ……それ、後からじゃ駄目なのよね?」

 溜め息混じりのナナカセは、質問しつつも最初から諦めている。

「契約の名の下、我はパン――」
「分かったわ。あげるから、もう言わなくていいから!」

 ナナカセは天使マシェリエルの言葉を遮ると、もうひとつ溜め息を吐いた後、ロングスカートの裾を捲り上げていった。
 ちなみにナナカセの装いは、ノースリーブでタートルネックのタイトニットに、足首までのロングスカート。剥き出しの両肩から二の腕を、アラベスク模様の大判ストールでぐるりと包み込んでいる――といった服装だ。
 得物は、ソロのときだったら鈍器メイスを持つところ、今日は三人編成なので杖にしている。
 その杖をいったん下草の上に置いて、両手でそろりそりろとスカートの裾をたくし上げていっているのだった。

「えーと、ナナちん。公開露出プレイ?」

 アイナがようやく声を発する。

「というか、パンツを所望する……って、なに?」

 ユイも、ぽかんとした顔のままだが、問いかける。

「……アイナに貰ったあのパンツで召喚すると、天使の性格がパンツ偏愛者ホリックになるんだって」
「えぇ……」

 ナナカセが、後になってから改めて攻略サイトで確認した情報である。
 エンジョイ勢でも、とりあえず【召喚:天使】が使えるようにするため実装された「古代のパンツ」には、デメリットが設定されていた。それが、天使の性格を極めて高い確率でパンツ狂にしてしまう、というものだった。

「パンツ。パンツを――」
「はいはいはい!」

 催促してくる天使の前で、両手でくしゃくしゃっとスカートをたくし上げて、ナナカセは下着に手をかける。べつにメニュー画面からの操作でも装備解除できるけれど、手作業で脱がないと、天使はとして認めてくれないのだ。
 スカート裾が落ちてくるのと一緒に、しゅるしゅると丸まりながら脱げていく下着。右足、左足と足踏みするように下着を足から抜いて、白いクロワッサンになったそれを右手に収める。

「はい、パンツ」

 突き出した右手の下に、さっと差し出される天使の両手。聖体拝領のような光景で、パンツはぽとりと落とされた。
 お皿にした両手でパンツを受け止めた天使の顔に、満開の笑顔が咲き誇る。

「パンツ、ああパンツ……ああ! ああッ!! すぅ……っ、ん、んんッ! んおッ! んおぉッ!!」

 パンツを押し頂いた両手を鼻に宛がい、大きく仰け反りながらが鼻から全力で息を吸い込み、雄鶏のように嘶いた。
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