義妹ビッチと異世界召喚

Merle

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5章

68. ルピスの(たぶん)歓迎会 ロイド ★

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 隣国の姫(あるいは女王)だったルピスが俺たちの暮らしに合流してから一ヶ月が経つ。
 ルピスは腐っても一国の姫だった女性だ。こんな野外生活の毎日に馴染めるのだろうかと心配していたのも最初の数日ばかりのことだ。ルピスはあっさりと馴染んだ。

「あっ……っ……♥」

 俺たちと言えば日々欠かすことなく行われている御乱交だが、ルピスは何よりもそこに、まず真っ先に順応した。というか、背中から臀部にかけて負った火傷の治療が終わった日の夜にはもう、自分からエッチなことに首を突っ込みに行っていた。
 ゴブリンたちは毎晩のように女性陣とのセックスに勤しんでいるが、その晩は病み上がりのルピスを饗応するためにもセックスはお休みしましょう、と有瓜が言ったので、ゴブリンたちも我慢するつもりになっていたのだけど……饗される側のルピスが強請ねだったのだ。

「あの……食事も良いのですけど、その……しないのですか? その、ほら……昼間にしていたような、ほら……」

 言葉にするのも恥ずかしい、というように顔を赤らめながらも、はっきりとセックスをお強請りしたルピス。
 彼女の初めての相手、俺なんです。三日前の昼下がり、小さな泉でのことでした。あのときの恥じらいながらも身を委ねてくるルピスの姿態はひたすらに初々しくて、日差しを浴びてきらめく硝子杯グラスのようで、壊さないようにそっと抱きしめることで肌を重ねたものだった。
 俺が守ってやれたら……なんて柄にもないことを思いつつ、きっとこれっきり二度とまみえることはないのだろうと予感しながら別れたのだったっけ。
 その直後に大火傷を負った彼女と再会することになったときは只々、彼女が死んでしまうのではないかと焦ったけれど……それがまあ、どうだ。
 神官ゴブリンが灯す魔術の灯り(白っぽく発光させた石を山積みにしたもの)に照らされる中で、恥ずかしげに頬を染めつつ、ちらちらと有瓜やゴブリンたちに流し目を向けている。性の喜びを知ってしまった女の目だ。
 ……その知ってしまった喜びが、俺との初体験のことであったなら、俺はもう少しマシな顔をしていられたのだろうか? 今日の昼間、三日ぶりに目を覚ましたルピスに、有瓜が軽い気持ちでをかけて失禁しながら失神するほどの快感を叩き込んでくれやがったのが性欲に開眼することになった原因だと知っていなければ、俺はもっと純粋な気持ちで「恥じらいながらも欲しがるお姫さま、えろ可愛いな!」とか思っていられただろうに……!

 ――そして始まった、いつもの饗宴セックス
 竜の子を孕んで久しい有瓜を例のごとくにお預けだが、他の面子は白い灯りを取り囲んで、組んず解れつ乱れ始める。
 季節は晩夏と呼べる頃で、日が落ちてもまだ肌寒さを感じることはなく、早々に服を脱ぎ散らかしていく女性陣三名――赤毛の村娘姉妹、ちょっとがさつな姉のシャーリーと、意外に計算している妹のアン。それから、普段は凛々しい女騎士のラヴィニエ――この三名だ。
 ちなみに、明かり採りは魔術でやっているけれど、それとは別に小さな焚き木をしていて、そこで除虫菊のような草花を焚いて虫除けにしている。ときどき神官が魔術で微風を起こして煙を周りに散らしてくれるおかげもあってか、夏場の野外乱交でも我慢できなくなるほど藪蚊に悩まされることはない。そりゃ、毎度の如くやっていれば多少の虫刺されはできるけれど、そのくらいなら謎の幼女型植物ユタカ由来汁を塗っておけば、だいたい治る。あれは飲んでも美味しいけれど、塗っておけば火傷でも虫刺されでも治してくれてしまう。薬効成分が凄いとか、そういう範疇を超えすぎだとも思うのだけど、いまのところ副作用は確認できていないし、今更手放せないし……で、まあ大丈夫だろうよ、と難しく考えないことにしている。

「ん……あっ……ッ♥ キス……んっ、っ……♥」
「きつっ……ん……大丈夫、このくらいなら苦しくない……ふぁ……♥」

 赤毛の姉シャーリーが、小柄な(といっても典型的なゴブリン並の背丈の)忍者ゴブリンと代わる代わるにキスしている横で、女性陣の中でも一番小柄な妹のアンが身長170センチ超の俺と同じくらい上背のある大柄な戦士ゴブリンに抱き竦められて喘いでいる。
 なお、ゴブリンたちは全員、夏でも冬でも基本的には腰布一枚スタイルなので、女性陣が脱いだとき一緒に結び目を解いて、生まれたままの姿になっている。

「んんっ♥ ふ、ふっ……ふはっ♥ はっ、あっ♥」

 最初から咳き込まんばかりの激しさで喘ぎ散らしているのは、女性陣の最年長(はっきりと年齢を尋ねたことはないが)のラヴィニエだ。彼女の鼻先には仁王立ちする戦士ゴブリンの逸物が突きつけられて、まだ柔らかく先端を垂れ下がらせたそれを、ラヴィニエは自ら擦り付けた鼻面でずりずりと愛撫している。

「はっ♥ ふっは♥ はっ、はっ……あっ♥ あっ♥」

 息を弾ませ、明るい飴色の髪を振り乱してゴブリンの股間に顔を擦り付けている痴態からは、凛々しさの欠片も見つけ出せない。なまじ筋肉質な裸体をしているだけに、ドーベルマンやサラブレッドのような逞しい獣に見えてくる。発情期の牝犬、あるいは牝馬だ。
 そんな彼ら彼女らを、服を着たまま座っている有瓜が、ぎりぎりと歯軋りしていそうな表情で見つめている。

「うぅ……羨ましい……!」

 俺の義妹にして、何の因果か俺と一緒に異世界転移だか召喚だかされてしまった元JKだ。そして、このゴブリン集団の頭領リーダーであり、竜の子を身籠っているプレママだ。その容姿は控え目に言って天使、率直に言って女神なので、俺は初対面で初恋に落ちたこともあったのだけど、有瓜は秒でビッチな本性をバラしてくれやがったので、俺の初恋も秒で終わったのだった。俺と有瓜が初対面してから義兄妹になるまでの短い時間にあったことで、いまとなっては懐かしいだけだ。
 ……というか、有瓜よ。どうしてダイチとミソラを抱っこしているんだ?

「あいっ」
「あーっ」

 ゴブリンと女三人の乱交を見学している有瓜は二人の赤ん坊を抱いていた。正確には、女児ミソラのほうを胸に抱っこして、男児ダイチのほうを膝に載せている。どちらも一歳児くらいに見えるけれど、実際にはまだ生後半年くらいだ。
 この赤ん坊二人はそれぞれ赤毛姉妹の子供で、ダイチは姉のシャーリーが、ミソラは妹のアンが生んだ。どちらも父親はゴブリンたちの誰か(ゴブリンは全体主義なので、職能以上の個人性を)で――そう、ダイチもミソラも正確には人間ではないのだ。ゴブリンと人間の混血ダブルなのだ。
 ゴブリンというのは牝がいない牡のみの生物で、多種族の牝の腹を使って繁殖するという、どうしてそんな生物に進化したのか疑問しかない生態をしている。何が言いたいのかというと、普通はゴブリンが人間女性を孕ませた場合、生まれてくるのはゴブリンの赤ん坊(もちろん、牡のみ)になるのだそうだ。
 ところが、ダイチとミソラは、ゴブリンではない。さりとて人間でもないことは、見た目で一目瞭然だ。
 ダイチは黒味がかった肌をして、額の真ん中に一本角がちょこんと生えている。ミソラは白味の強い肌に、額の左右端から二本角がちょこん、だ。肌の色もそうだけど、額の角が、この二人がただの人間ではないことを在々ありありと物語っていた。
 まあ、角が云々うんぬん以上に――妊娠三ヶ月か四ヶ月くらいで生まれてきた上、生後半年にして人間の一歳児並の体格をして、山野をハイハイで駆け回る運動能力を見せる一方で、どうにも俺たちの話す言葉を理解しているような節があり、果てはこの間まで人間社会で騎士をやっていたラヴィニエが舌を巻くほどの魔術を使ってみせたりもする――という中身のほうが、よっぽど人間離れしているのだが。
 ――とはいえ、だ。

「なあ、有瓜。ダイチもミソラもすっごくマセてる子だけどさ、言ってもまだ零歳児だぞ。を見せるのは十年……いや、十五年は早いんじゃないかと思うんだがな」
「あはは、義兄さんってば教育パパさん」
「誰がパパじゃい!」
「なにそれツッコミ! あははっ!」
「いや、笑い事じゃなく」

 楽しげに笑っている有瓜の腕の中と膝の上で、赤ん坊二人は乱交中の母親姉妹をまったりと鑑賞している。
 あらあら、うちのママったらぁ。ぼく、今年中にお兄ちゃんかなぁ――そんなことを言っていそうな顔の見た目は一歳、中身は生後半年の赤ん坊たち。
 ……なんか、こうして言語化してみると軽くホラーだな、この子ら。いや、わりと愛嬌あるし、可愛い顔立ちをしているんだけどさ。

「でも……シャーリーさんとアンちゃんは、あれもお仕事みたいなところがあるわけじゃないですか。なら、ほら、この子たちにもお母さんのお仕事頑張ってる姿を見せてあげるのは大事なことなんじゃないかなぁと思うわけですよぅ」
「おう……」

 有瓜は当たり前のように、自分よりも年下の姉妹がゴブリンたちの性欲の捌け口、繁殖用の苗床となることをと言った。そこに欠片ほどの葛藤も躊躇いも見つけられない。
 こういうふとした会話で、だから有瓜はゴブリンたちの長になれるのだ、と思い知らされる。
 有瓜は日本にいたときからビッチだった。見た目は完全に清純派(胸は有るほうだが)なのに、息をするようにセックスしていた。裏路地で男性教師とヤッているところを俺に見られてからは、隠すことなく――というかむしろ、俺に尻拭いを押し付けるくらい明け透けに、あっちでヤッてはそっちでヤッてとヤリまくり三昧だった。
 あるいは生い立ちに原因があったりするのかもしれないけれど、理由はどうあれ、その淫奔さが有瓜なのだ。そんな有瓜だからこそ、ゴブリンたちの女王でいられるのだ。もっとも、有瓜は自分が女王ではなくセフレみたいなものだと思っているようだけど。

「あっ、来まし……んんっ♥」

 俺が口籠っていると、有瓜が突然、甘えた喘ぎ声を上げた。俺はギョッとさせられたけれど、すぐに察した。

「有瓜……おまえ、触っていたのか」
「えへ♥ ……っへぅう♥」

 あざとい笑顔で俺の呆れ顔に答えた有瓜だけど、その笑顔もまた不意の喘ぎで、くしゃっと淫らな感じに歪む。
 有瓜の身に何が起きているのかと言えば、ただいま絶賛ゴブリンたちと性交中の女性陣らが味わっている感覚がその身に流れ込んできているのだ。
 妊娠中のために性行為を自粛している有瓜が欲求不満を爆発させて開眼させた、感覚同調の魔術を使ったのだ。同調の対象とする相手には肌を触れ合わせる必要があるけれど、いったん触れて発動させれば、後は離れても問題なく同調させっぱなしにできる。また、同時に複数人を同調の対象にもできるため、たぶん今は女性陣三人全員の快感をいっぺんに味わっているのだろう。
 同調とは言ったが、コピペというほうが正しいのかもしれない。あと、の同調とは言ったものの、実際のところ以外の感覚については水で溶かしたみたいに薄まってしまって実用性は無いに等しい。結局この魔術はどこまでも、セックスしたいけどできないジレンマを解消するために生み出された魔術なのだった。
 余談になるのだが、ラヴィニエと神官ゴブリンに言わせれば、「巫女様のあれは魔術ではなく、魔術に似て非なる別の何かかもしれない」だそうだ。魔術というのは使うのにも維持するのにも体内の魔力を消費するもので、有瓜がいまやっているような複数対象に使ったものを維持し続けるなんてことをすれば、どんな大魔術師でも十分と保たずに力尽きてしまうはずだ――というのが二人の見解だった。
 例外的に、血筋で遺伝する【巫術テールギア】と呼ばれる魔術は、ほとんど気にならない程度の消耗で使いまくれるものが多いらしい。ラヴィニエの十八番おはこである【過去視】がその巫術だけど、じゃあ有瓜の感覚同調も巫術なのかと言うと……

「そうかもしれないし、そうでないかもしれません。よく分かりません」

 ……とのことだった。
 それが巫術かどうかの判断は「その血筋以外の者には使えないこと」と、「その血筋の者なら使えること」の二点が満たされるかどうかで為されるけれど、いまのところ有瓜一人しか使えないのでは、後者の点が不明だから巫術だとは言い切れないというわけだ。
 まあ……小難しいことはぶん投げて俺の直感だけで決めつけるのなら、有瓜が欲求不満を解消したくて生み出した唯一無二の巫術、だろう。
 なんというか、有瓜ならそのくらいのチート系ムーブをかましていても違和感ないなぁと思うのだ。ラヴィニエと神官も同じ意見だったようで、俺がこの無根拠な思いつきを口にしたら、二人とも神妙な顔でこくこく頷いたものだった。
 ――とか言っているうちに、有瓜の悶えっぷりは激しくなっていく。

「あ……んっ……に、義兄さん……この子たち、お願い、しま……あ、あっ♥ はっふぁ♥」

 背中をぞわんぞわんくねらせて悶える有瓜が、胸に抱いていたミソラを俺のほうに差し出してくる。

「はいはい。落とす前に渡してこれて偉いな」
「あ、なんかそれ馬鹿にされてまっあぁ♥ あっ、にゃあぁッ♥♥」
「おっとと」

 ぶるっと大きく震えた有瓜の手から、落っこちる前にミソラを受け取る。その間に、有瓜の膝に座っていたダイチも、お尻の下が震えるのは居心地悪かったのか、自主的に膝を降りて、ハイハイで場所移動を始めていた。

「えっ、私?」

 移動した先は、俺たちと一緒の茣蓙に座って乱交風景を食い入るように鑑賞していたルピスの膝だ。ハイハイからシームレスで攀じ登ると、くるっと寝返りを打つように仰向けになって、お尻をルピスの膝の隙間にでぇんとフィットさせる。一連の動きに淀みはなく、そこにあるのは自分が無際限に受け入れられる存在だという確信。この赤ん坊、自分おのれが赤ん坊であるという事実を使い熟しているッ!!
 ――ところが、だがしかし、

「ロイド、この子もお願い」

 ルピスは膝の上で寛ぐ気満々になっていたダイチをあっさり抱き上げると、俺のほうに差し出してきた。

「え、あ、おう」

 差し出されれば条件反射で受け取ってしまうもので、俺は両腕にそれぞれダイチとミソラを抱っこすることになった。
 右腕に抱いたダイチは、やんわりと邪魔な子扱いされたことに愕然とした顔だ。それを左腕に抱いているミソラが、ざまぁ! 格好悪いの受けるわ、ぷぷーっ! ……みたいな顔で嘲っている。まあこれも、二人の仲が良いからこそのやり取りだ。
 で、ダイチを俺にパスして自由になったルピスは、有瓜の隣にずずいと躙り寄っていく。

「巫女様、巫女様」
「んぁ……あ、はい、なんでしょ……ぉ♥」
、私もいただきとうございます」
「それ? どれっええぇ♥」
「それです、それ。その気持ちよくなるやつですっ!」

 太ももと太ももがくっつくまで近寄ってもまだ足りないとばかりに、頬擦りを迫るようにして有瓜に詰め寄るルピス。一国の王女として育てられてきたにしては礼儀作法がなっていないようにも見えるけれど、王族ともなれば傅くよりも傅かれるほうが圧倒的に多かったのだろうから、かえってあまり礼法を気にしないのかもしれない。

「あー……ってのことでっ、っ……あぁ♥ はいはい、やってあげますっ、よっ、おぉっ♥」

 有瓜は小刻みに喘ぎながらもルピスの頬に手を伸ばし、ぺとぺとと撫でた。魔術をかける相手に触れる場合、触れる場所は肌だったらどこでもいいらしい。

「――っはああぁッ♥♥」

 有瓜に頬を撫でられたルピスは、刺激物を塗られたかのようにビクッと震えを背筋に走らせながら裏声でいなないた。有瓜が感じている乱交三人娘の快感が、ルピスにも同調されたのだ。
 任意の相手が感じている快感を自分自身に同調コピーさせるだけでなく、それをまた別の相手に同調ペーストさせることもできる。それが有瓜の開眼した感覚同調魔術の真価なのだ。

「はあぁ……♥ あ、あっ、あぁ……すごい、これ、あぁ……ッ♥」
「ルピスさん、顔がヤバいですねぇ。それ、お姫さまがしていい顔なんでしょうか?」
「もっ、元だから、いいんですっ♥ うっ♥ うむうぅッ♥♥」

 自分で自分のお腹を抱きしめて身悶えるルピスの顔は、有瓜が苦笑したように、淑女にあるまじきことになっている。頬を触られてから数十秒で、泥酔者より酷い蕩け顔だ。

「おっおぉあっ♥ まっ♥ あまっ、前よりっ、つよっ♥ おっ♥ おぉっ♥」
「前よりも……あぁ、昼間にちょっと快感のお裾分けしたときですね。あのときはシャーリーさんとアンちゃんの二人分だったんですけど、いまはラヴィニエさんもプラスした三人分でっ……んううぅっ♥ あ、あっ♥ そこぉッ♥ 三人揃って最奥そこトントンはああぁッ♥♥」

 それまで顔を上気させながらもお喋りする余裕を見せていた有瓜が、不意に座ったまま尻で茣蓙を蹴って跳び上がるように痙攣して盛大に悶え始めた。
 いつの間にか全裸の三人娘は、揃ってゴブリンの男根を秘所に咥え込んでいた。最年少のアンは背面座位、その姉のシャーリーは正常位、最年長のラヴィニエは背面騎乗位、と体位はそれぞれ違っていたけれど、戦士の太いものや忍者の反り返ったものを根本まで深々と押し込まれて、ずっこずっこと腰を振られているのは三人同じだ。あ、いや、ラヴィニエは自分から腰を振っているけれど。
 ともかく、亀頭の肉で膣奥を捏ね拡げられる快感を三人分一気に味わわされては、さすがの有瓜も快感を御してお喋りに興じるのは無理のようだった。

「んおおっ♥ おっ、おっ♥ おぉあッ……あ、これ、まさかしてっ……ゴブさんたちっ、狙ってタイミング合わせっ……へぇっ♥ あ、あ、合わせましたねえぇッ♥♥」

 有瓜は乱交中のゴブリンたちを震える右手で指差して糾弾する。でも、その顔はどんなに崩れても天使か女神にしか見えない艶やかな蕩け顔になっているから、それが糾弾に見せかけた歓喜なのは丸分かりだが。
 そして、嬉しげに文句を付けていた口も唐突に開きっぱなしとなって、もがもが、あうあうと言葉未満の呻き声を出すだけの器官に成り下がる。

「――んぅああぁッ♥ おぅ、んぅお♥ お、おにょおぉ……♥」

 あ、唇の端から涎を垂らす機能も残っていたか。
 どうして有瓜がお口開けっぱ女になってしまったのかといえば、乱交中の三人がお口にもゴブリンたちの暗緑色をした勃起棒を押し込められたからだ。
 有瓜はあくまでも、口に肉棒を押し込まれたを受け取っているだけで、実際に口を塞がれたわけではない。なので、話そうと思えば話せるはずなのだけど、膣奥をノックされる快感で酔ったのか、与えられる感覚にすっかり没入しきってしまっていた。

「んおおぉ♥ おっ、おごっ……ごっ、っ、お、おっ♥ お、うぅ……ぉおッ♥」

 有瓜は茣蓙に横座りしたまま、ぐでぇんと脱力した身体を前後左右に揺らして、かぱっと開けた口からおごおごと喘ぎ混じりの涎を垂らす。まるで終電で揺られる泥酔したOLだ。いや、実際に見たことはないのでイメージの話だが。
 なお、有瓜の隣ではルピスが仰向けでひっくり返っていて、腰だけブリッジや背泳ぎのパントマイムをしながら、上下の口から体液を断続的に繁吹しぶかせていた。
 ルピスも有瓜と同じ快感を送り込まれているはずなのに、感じ方はもっと大袈裟だ。……って、ルピスはついこの間まで処女だったのだ。言うなれば、レベル1。百戦錬磨のレベル90はあるだろう有瓜が陶然となるほどの快感に抗いようもないのは道理というものだ……って、いやいや、待てよ。ネットで聞き齧った情報だけど、性感帯って開発しないとあんまり快感を感じないものではなかったっけ? だとすると、ルピスはレベル1相当の快感しか感じられないことになるのでは……あ、そうか。
 ルピスがいま感じているのは、未開発な自分の身体と脳で処理した感覚情報ではない。有瓜を経由して転送されてきた、実際に性交している三人娘が感じている情報だ。彼女ら三人の十分に開発された性感帯と、そこへの刺激を快感として受け入れることに習熟した脳神経によって処理された上質の情報かいかん――ルピスはそれをいま、脳神経に送り込まれているのだ。
 俺も有瓜に、男では感じられるはずのないを送り込まれたことがある。つまりは、そういうことだ。有瓜の同調魔術は、その相手が知らない感覚や、対応する感覚器がないので実体験することの不可能な感覚でも問題なく、そして問答無用に送りつけてしまえるのだ。
 これも実体験からくる理解だけど、いっぺんコピペ先の対象にされてしまうと、送られてくる快感を自分の意思で弱めたり遮断したりすることは、おそらくできない。有瓜が接続を切ってくれるまで、無防備に快感を受け止めるしかないのだ。
 ……やっぱりこの魔術、戦闘に転用できたら相当に凶悪だよな。そんな魔術に、欲求不満を改善したいがためだけに開眼した(俺はもう、それで確信している)あたり、有瓜は本当に有瓜だと思う。

「おひゅっ♥ んっ、っ……ん、んっんううぅッ♥♥」

 おっと、有瓜が喉を鳴らしながら身震いしている。向こうに目をやれば、ちょうど三人揃って口内射精されているところだった。あ、いや、ラヴィニエは射精の途中で肉棒を吐き出して、そのまま顔面シャワーされにいったか。

「ひゃっ……あ、あっ……熱ぃ……ッ♥」

 仰向けで、喉を震わせながら悶えるというかがいていたルピスが、驚いたように閉じた両目の瞼もひくひくと震わせる。顔射される感覚を脳に叩き込まれて、反射で目を瞑ったのだろう。

「顔に……顔に、なにか……あっ、匂い……っふあ♥」

 ……ルピス、おまえもか。ラヴィニエと同じ道へ堕ちていくというのか?
 いやまあ、性癖は人それぞれで別に良いんだけれど、この前まで処女だった娘に野外乱交やら顔射やらのノーマルとは言い難い性癖を脳に刻みつけるようなプレイをさせてしまうのは如何なものか。ゴブリンたちとのプレイはある意味で仕事のようなものだから、本人にその気があるのならプレイに混ざってもらうのは歓迎するべきだとは思うけれど、もっと段階を踏んで始めるべきだったのでは? 少なくとも、いきなり多人数プレイしている女性三人分の快感を味わわせて脳を直接内側から開発していくような上級者コースに突き落とすのは騙し討ちもいいところなのでは?

「ひゅにゃあぁ……♥ こりぇ、しゃーこぉ♥ 巫女しゃまぁ、これ、あたし、しゅきぃ♥ しゅきにゃにょおぉ……ッ♥♥」

 ルピス本人が喜んでいるのが、せめてもの救いか……救いか?

「んんんうぅッ♥♥ まっ、あぁッ♥ また来ちゃあっ、あっ……あにゃああぁッ♥♥」

 シャーリーたち三人の身体に中出ししたゴブリンが肉棒を抜いて、次のゴブリンと入れ替わる。三人を休ませないつもりだとかではなく、ただのルーティンワークだ。三人も慣れたもので、身を強張らせたりすることなく、ゴブリンたちに身を任せきっている。

「ふぅああぁ……ッ♥ おぉ、お腹ぁ……とろっとろぉ♥ お、おぉ……っふうぅー……ッ♥♥」

 その感覚を三人分まとめて受け取っている有瓜も慣れたもので、まるで檜風呂に肩どころか首まで浸かっているみたいな寛ぎっぷりで、洪水の如く流れ込んでいるのだろう快楽を満喫している。
 でも、快感にも性交にもほとんど経験値がないルピスは、そうもいかない。

「にゃっ♥ あっ♥ あぁはッ♥ からだ、にゃかっ……あぁっ♥ ぐちゃ、ぐちゃっ……溶けちゃ♥ ああぁッ♥♥」

 いっそ完全に脱力してしまえば、風に煽られても折れない柳のように快楽の圧を受け流すこともできるだろう。でも、不慣れなルピスにとってはきっと、それは梯子の上で両手を広げて目を閉じるくらい不安になることで、どうしてもそこまで脱力することができないのだ。結果、いたずらに力んでしまった分だけ快感の奔流をまともに叩きつけられてしまって――こうなってしまっているわけだ。

「ああぁッ♥♥ あっ……ひゅうぁああッ♥♥ らっ、りゃめへえぇッ♥ もっ、おっ、おっ♥ おっ♥ おぉっ、おっ♥ おおおぉ……ッ♥ ……ぉおおッ♥♥」

 電池の切れかけた玩具のロボットみたいに、腰や手足を不規則にカクカクと痙攣させて悶えるルピス。その顔はまあ、控え目な表現でとしておこう。仮にも初めてを俺に捧げてくれた女子なのだから、酷くは言いたくない。
 ……とは言うものの、俺としたときはもっと少女漫画に掲載できる程度の顔しかしなかったのに、こんなでたらめな非接触性ヴァーチャルセックスでアヘアヘしているのを見せられるのは、すごく悔しい。
 べ、べつに俺が下手だったわけじゃないやい。俺はルピスが初めてだっていうから、優しくするのを第一に考えてやったんだい。

「きっ、きもっ、ちいぃ♥ 気持ち良いっ、っ……ぁああッ♥ こっ、こりぇが、本物ほぉもにょにょ、性交しぇーこぉ……おっ♥ おおぉッ♥♥」

 ……偽物認定されてしまった俺との初体験。あ、ちょっと泣きそう。
 俺は大きく天を見上げて、上がってくる涙を眼窩の奥に飲み込んだ。

「あ……月、ふたつもありやがる」

 見上げた夜空に浮かぶのは、いつもの月と、滅多に見えないふたつ目の月。いま乱交を満喫中の女子三名から聞いた話では、ふたつ目の月だけが出ているのを凶兆だけど、ふたつの月が揃っているのは吉兆だという。

「ふぁ……ちゅき、ふたちゅ……えへ♥ えへへぇ♥」

 仰向けで悶えているルピスも、つがいになったふたつの月を見つけたようだ。既にして緩みきっていた表情筋がさらに緩まる。
 ――なるほど。ルピスにとっては間違いなく、吉兆の月であるようだった。
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