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4章
58-1. 魔術の話と新作料理 ロイド
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火傷は驚くほどあっさり治った。そこだけ肉が厚くなっていて痕は残ったのだけど、それも時間が経てば分からないくらいになるだろう。
治療のために支払った精神的な代償は、犬に舐められたとでも思って忘れようと思う。
「舐められた、じゃなくて、しゃぶられた、ですよね」
「うるさい。有瓜、うるさい」
しばらくこうやって馬鹿にされるだろうけど、耳を貸さないでいれば、みんなそのうち飽きる……はずだ。飽きてくれ。
それはそうと――。
開門式で魔術の才能を示したのは、ラヴィニエと神官を除けばミソラだけだった。
「ミソラちゃんはまだ零歳……あ、こっちだと数え年なんでしたっけ。ええと、まだ一歳なんですが、魔術をうっかり暴発させると大変なことになっちゃうのが分かったので、いまのうちから正しい魔術の使い方を習わせたほうがいいと思うのです」
有瓜の提案に反対する者はいなかった。俺も同意だった。
とはいえ、相手は生後半年も経っていない赤ん坊だ。すでに二歳児くらいの風格を漂わせているとはいえ、それでも二歳児だ。まだぎりぎり、ハイハイしているお年頃だ。そんな赤ん坊にものを教えるのは、分からないけれどきっととても大変なことだろう。
「大変であろうとも、ミソラ殿は魔力の放ち方を覚えてしまいました――私が覚えさせたのです。であるならば、私は命に代えてでもミソラ殿に正しい魔術の使い方を手解きしなければなりません。その義務が、私にはあるのです」
ラヴィニエは瞳に決意を宿して、そう宣言してくれた。
もう一人の魔術師である神官ゴブリンが、他人に手解きできるほど魔術を――とくに制御技術を論理的に理解しているわけではない以上、ミソラに魔術の制御技術を教えられるのはラヴィニエしかいない。その彼女がやる気になってくれているのは心強いことだった。
「頼みました、ラヴィニエさん」
「はっ、お任せください」
そうして始まったラヴィニエによるミソラへの英才教育は熾烈を極めた――ということもなく、ほどほど和やかに、しかして粛々と始められた。
なにせ、相手は幼児だ。言葉は(伝わっている気もするけれど)伝わらないし、すぐに飽きるし、叱れば泣く。そんな相手にものを教えようとしたら、必要なのは激しさではなく根気と忍耐だ。
言葉の(たぶん)通じないミソラに、手取り足取りで魔術の制御を教えようとするラヴィニエの姿は、実にサリバン先生だった。
「そのうちミソラちゃん、ウォーターって叫びますかね?」
「嘘だろ、おまえと同じことを考えていたなんて……!」
「義兄さんはときどきわたしに失礼ですねっ」
そんな軽口を叩き合ったのはともかく、ミソラのことはラヴィニエに任せておけば大丈夫そうだった。
……冷静に考えると、生後半年未満の赤ん坊に大の大人が大真面目に魔術を教えている光景は中々に超現実的”シュールだ。しかも赤ん坊のほうでも、赤ん坊らしく飽きたり愚図ったりしながらも、それでも日々着実に魔術制御を身につけつつあるのだから、現実の超現実っぷりに笑うしかなかった。
ラヴィニエの魔術教室についてもうひとつ付け加えることがあるとすると、ミソラと一緒に神官も生徒になっていることか。
神官はこれまで、俺が伝えた現代日本の高校生レベルの科学常識から思いついた発想を魔術で実践してきた。従って、神官の魔術は理論派だと言えるのだけど、それを実践する段階になると「なんとなく」でしかやっていないのだという。つまり、こと制御技術について、神官は全くの感覚派なのだった。
その感覚に、人間魔術師が長い歴史の中で研鑽されてきた具体的な技術が上乗せされることで、神官の魔術はこれまで以上の精度に錬磨されたのだった。
「……ゴブリンというのは魔術に適性のある魔物だったのだな」
神官とミソラが揃って魔術の腕を上げたことに、ラヴィニエが憮然とした顔でそんなことを呟いていた。
「そうか? 大勢いるなかでたった二人しか魔術の素養がないのだから、ゴブリンの魔術適性は低いと思うんだけど」
偶々、彼女の独り言が聞こえるところにいた俺がそう言ったら、冷たい視線を向けられた後、短い溜め息を吐かれた。
「たったこれだけの集団に、位階にして五位以上の魔術師が二人もいるのです。世間ではそれを、適性のある集団、と呼ぶのです」
お分かりいただけますか、と諭すように言われたのだった。
――と言ったわけでミソラが魔術の英才教育を受けていた頃、もう一人の赤ん坊であるダイチは静かに臍を曲げていた。
ダイチ本人がそう言ったわけではないが、ミソラばかりが構われているように思えて、拗ねてしまったようだった。
「ダイチ、取り柄は人それぞれだぞ」
シャーリーがそう言って抱っこしたり撫でまわしたりしたけれど、ダイチは頑なだった。
いつもだったら、日中は暴走ハイハイで森の中に飛び込もうとするのを止めるので大変なのに、拗ねたダイチは尻に根が生えたみたいに動かなくなるのだ。要するに、座り込みの抗議行動なのだ。
「……こいつ、拗ねてるほうが扱いやすいな」
俺が思わず呟いたら、向こうを見ていたダイチがくるっと振り返って睨んできた。距離があったのに耳聡い赤ん坊だ……というか、やっぱり言葉を理解しているよな!?
「……」
そんなことはいいからご機嫌取りしろ、という目でいっそうキツく睨まれた。
「はいはい、ご飯な。ちょうど昼時だし、なんか作るか」
ダイチの睨みに負けたわけではないけれど、俺は両手を挙げて伸びをしながら背中の具合を確かめると、昼食作りに取りかかった。
最近は料理のときになると、専属の助手が付くようになった。
ゴブリンたちは全員、食材を料理して食う美味さに目覚めたのだけど、料理を作るほうに興味を持ったのはたった一人だけだ。
その貴重なたった一人は、元は忍者ゴブリンの一人だった。忍者たち全員に言えることでもあるが、そいつは寡黙なやつだ。そして、これもまた忍者全員に言えることだが、顔が怖かった。
戦士の顔は目鼻の造作が大雑把で、狛犬や仁王像みたいな迫力のある顔だ。それに対して忍者の顔は、歌舞伎の隈取りを思わせる厳ついものだ。料理に興味を示したそいつも寡黙な強面だった。
「なあ、不器用ですから、って言ってみて」
初めて料理を手伝ってもらったとき、思わずそうお願いしてしまったものだ。当然、無言で見つめ返されたが。
俺の言うことを聞いて愚直に、無言で包丁を使う姿は、手伝いを初めて数日も経つともう、ベテラン料理人の風格を漂わせていた。まあ当然ながら、実際の腕前はそれほどでもなかったので、作るところを見てから実食すると、予想していたものより数段落ちる味しかしなくて余計に損した気分になったりもしたものだ。
こいつが料理修業を始めたのは今年に入ってすぐ、まだ冬の真っ直中だった頃だから、かれこれ半年近くは経っていることになる。
本物の板前は、板前と呼ばれるまでに年単位で修行するのだから、半年なんてものはたった半年でしかないかもしれないけれど、それでも半年は半年だ。それにここのゴブリンたちは、現在の戦士や忍者と呼び分けるしかないほど急激に変態したくらいの成長力を秘めた、本当にゴブリンなのか疑わしいゴブリンたちだ。
たった半年、されど半年。板前ゴブリンは、その名に恥じない料理人に成長していた……かどうかは、俺自身が料理人でも何でもない一介の元高校生でしかないので請け負えないけれど、少なくとも「俺に教えられることはもうない!」と宣言できるくらいには料理のできる、一角の料理人になっていた。
さて、有瓜の食事は専ら、ユタカの実を用いた料理ばかりだ。ユタカの実をジャムにしたり、最近はゼリーにすることもある。
最初こそ、ユタカの実に何らかの毒性や依存性があったりしないか、と注意していたけれど、最近はもうあまり気にしていない。むしろ、食べれば食べるほど体調が良くなっていくようでさえあった。
なので、ユタカから毎日多くても二個までしか供給されないユタカの実は全て、有瓜の食事になっている。そしてその分、俺たちの食事はユタカの実以外の食材を使ったものになっていた。それはつまり、有瓜用の食事と、それ以外用の食事との二種類を毎日作らないといけないということだ。
板前ゴブリンが俺たち用の食事を一手に引き受けられるようになっていなかったら、さすがに俺一人では不可能だっただろう。
自分の飯を誰かが作ってくれるというのは半年以上振りのことだ。そのことに嬉しさよりも物足りなさを覚えている自分に気づいて、苦笑してしまったりもした。
「さて、今朝のご飯は……うん、手巻き寿司風のクレープか」
水溶きの小麦粉を獣脂で薄焼きにして、肉と野菜をくるっと巻いたものだ。ソースはかかっていないけれど、塩と香草や香辛料っぽいものの取り合わせが良い味を創り出している。
これはさほど珍しい献立ではない。食材と調理器具に限度がある以上、毎度そこまで違った料理を出せるわけではないのだ。もちろん、俺も板前も創意工夫を凝らした新作料理の開発に取りかかってはいるけれど、まだまだ他人様に出せるものは出来ていない。
まあ、別にその料理で金を取るわけではないのだから、四の五の言わずに出してやってもいいのだけれども――とくに戦士どもが「御託はいいから食わせろ」と言ってきたから食わせてやったというのに、「好みじゃない。作り直しで」とか言ってくるのだ。図体もでかけりゃ態度もでかいってか、この野郎!
……少し話が逸れたが、要するに、だ。
料理という文化に触れた大食らいどもが、いつも同じ飯じゃ飽きる、とせっついてくるので、俺と板前とときどき神官は日々、新作料理の開発に追われていた。
そして、その試行の果てに行き着く思考はいつも、これだ。
「ああ……醤油があれば……!」
異世界召喚によくある醤油欠乏症が、とうとうやって来てしまったのだった。
治療のために支払った精神的な代償は、犬に舐められたとでも思って忘れようと思う。
「舐められた、じゃなくて、しゃぶられた、ですよね」
「うるさい。有瓜、うるさい」
しばらくこうやって馬鹿にされるだろうけど、耳を貸さないでいれば、みんなそのうち飽きる……はずだ。飽きてくれ。
それはそうと――。
開門式で魔術の才能を示したのは、ラヴィニエと神官を除けばミソラだけだった。
「ミソラちゃんはまだ零歳……あ、こっちだと数え年なんでしたっけ。ええと、まだ一歳なんですが、魔術をうっかり暴発させると大変なことになっちゃうのが分かったので、いまのうちから正しい魔術の使い方を習わせたほうがいいと思うのです」
有瓜の提案に反対する者はいなかった。俺も同意だった。
とはいえ、相手は生後半年も経っていない赤ん坊だ。すでに二歳児くらいの風格を漂わせているとはいえ、それでも二歳児だ。まだぎりぎり、ハイハイしているお年頃だ。そんな赤ん坊にものを教えるのは、分からないけれどきっととても大変なことだろう。
「大変であろうとも、ミソラ殿は魔力の放ち方を覚えてしまいました――私が覚えさせたのです。であるならば、私は命に代えてでもミソラ殿に正しい魔術の使い方を手解きしなければなりません。その義務が、私にはあるのです」
ラヴィニエは瞳に決意を宿して、そう宣言してくれた。
もう一人の魔術師である神官ゴブリンが、他人に手解きできるほど魔術を――とくに制御技術を論理的に理解しているわけではない以上、ミソラに魔術の制御技術を教えられるのはラヴィニエしかいない。その彼女がやる気になってくれているのは心強いことだった。
「頼みました、ラヴィニエさん」
「はっ、お任せください」
そうして始まったラヴィニエによるミソラへの英才教育は熾烈を極めた――ということもなく、ほどほど和やかに、しかして粛々と始められた。
なにせ、相手は幼児だ。言葉は(伝わっている気もするけれど)伝わらないし、すぐに飽きるし、叱れば泣く。そんな相手にものを教えようとしたら、必要なのは激しさではなく根気と忍耐だ。
言葉の(たぶん)通じないミソラに、手取り足取りで魔術の制御を教えようとするラヴィニエの姿は、実にサリバン先生だった。
「そのうちミソラちゃん、ウォーターって叫びますかね?」
「嘘だろ、おまえと同じことを考えていたなんて……!」
「義兄さんはときどきわたしに失礼ですねっ」
そんな軽口を叩き合ったのはともかく、ミソラのことはラヴィニエに任せておけば大丈夫そうだった。
……冷静に考えると、生後半年未満の赤ん坊に大の大人が大真面目に魔術を教えている光景は中々に超現実的”シュールだ。しかも赤ん坊のほうでも、赤ん坊らしく飽きたり愚図ったりしながらも、それでも日々着実に魔術制御を身につけつつあるのだから、現実の超現実っぷりに笑うしかなかった。
ラヴィニエの魔術教室についてもうひとつ付け加えることがあるとすると、ミソラと一緒に神官も生徒になっていることか。
神官はこれまで、俺が伝えた現代日本の高校生レベルの科学常識から思いついた発想を魔術で実践してきた。従って、神官の魔術は理論派だと言えるのだけど、それを実践する段階になると「なんとなく」でしかやっていないのだという。つまり、こと制御技術について、神官は全くの感覚派なのだった。
その感覚に、人間魔術師が長い歴史の中で研鑽されてきた具体的な技術が上乗せされることで、神官の魔術はこれまで以上の精度に錬磨されたのだった。
「……ゴブリンというのは魔術に適性のある魔物だったのだな」
神官とミソラが揃って魔術の腕を上げたことに、ラヴィニエが憮然とした顔でそんなことを呟いていた。
「そうか? 大勢いるなかでたった二人しか魔術の素養がないのだから、ゴブリンの魔術適性は低いと思うんだけど」
偶々、彼女の独り言が聞こえるところにいた俺がそう言ったら、冷たい視線を向けられた後、短い溜め息を吐かれた。
「たったこれだけの集団に、位階にして五位以上の魔術師が二人もいるのです。世間ではそれを、適性のある集団、と呼ぶのです」
お分かりいただけますか、と諭すように言われたのだった。
――と言ったわけでミソラが魔術の英才教育を受けていた頃、もう一人の赤ん坊であるダイチは静かに臍を曲げていた。
ダイチ本人がそう言ったわけではないが、ミソラばかりが構われているように思えて、拗ねてしまったようだった。
「ダイチ、取り柄は人それぞれだぞ」
シャーリーがそう言って抱っこしたり撫でまわしたりしたけれど、ダイチは頑なだった。
いつもだったら、日中は暴走ハイハイで森の中に飛び込もうとするのを止めるので大変なのに、拗ねたダイチは尻に根が生えたみたいに動かなくなるのだ。要するに、座り込みの抗議行動なのだ。
「……こいつ、拗ねてるほうが扱いやすいな」
俺が思わず呟いたら、向こうを見ていたダイチがくるっと振り返って睨んできた。距離があったのに耳聡い赤ん坊だ……というか、やっぱり言葉を理解しているよな!?
「……」
そんなことはいいからご機嫌取りしろ、という目でいっそうキツく睨まれた。
「はいはい、ご飯な。ちょうど昼時だし、なんか作るか」
ダイチの睨みに負けたわけではないけれど、俺は両手を挙げて伸びをしながら背中の具合を確かめると、昼食作りに取りかかった。
最近は料理のときになると、専属の助手が付くようになった。
ゴブリンたちは全員、食材を料理して食う美味さに目覚めたのだけど、料理を作るほうに興味を持ったのはたった一人だけだ。
その貴重なたった一人は、元は忍者ゴブリンの一人だった。忍者たち全員に言えることでもあるが、そいつは寡黙なやつだ。そして、これもまた忍者全員に言えることだが、顔が怖かった。
戦士の顔は目鼻の造作が大雑把で、狛犬や仁王像みたいな迫力のある顔だ。それに対して忍者の顔は、歌舞伎の隈取りを思わせる厳ついものだ。料理に興味を示したそいつも寡黙な強面だった。
「なあ、不器用ですから、って言ってみて」
初めて料理を手伝ってもらったとき、思わずそうお願いしてしまったものだ。当然、無言で見つめ返されたが。
俺の言うことを聞いて愚直に、無言で包丁を使う姿は、手伝いを初めて数日も経つともう、ベテラン料理人の風格を漂わせていた。まあ当然ながら、実際の腕前はそれほどでもなかったので、作るところを見てから実食すると、予想していたものより数段落ちる味しかしなくて余計に損した気分になったりもしたものだ。
こいつが料理修業を始めたのは今年に入ってすぐ、まだ冬の真っ直中だった頃だから、かれこれ半年近くは経っていることになる。
本物の板前は、板前と呼ばれるまでに年単位で修行するのだから、半年なんてものはたった半年でしかないかもしれないけれど、それでも半年は半年だ。それにここのゴブリンたちは、現在の戦士や忍者と呼び分けるしかないほど急激に変態したくらいの成長力を秘めた、本当にゴブリンなのか疑わしいゴブリンたちだ。
たった半年、されど半年。板前ゴブリンは、その名に恥じない料理人に成長していた……かどうかは、俺自身が料理人でも何でもない一介の元高校生でしかないので請け負えないけれど、少なくとも「俺に教えられることはもうない!」と宣言できるくらいには料理のできる、一角の料理人になっていた。
さて、有瓜の食事は専ら、ユタカの実を用いた料理ばかりだ。ユタカの実をジャムにしたり、最近はゼリーにすることもある。
最初こそ、ユタカの実に何らかの毒性や依存性があったりしないか、と注意していたけれど、最近はもうあまり気にしていない。むしろ、食べれば食べるほど体調が良くなっていくようでさえあった。
なので、ユタカから毎日多くても二個までしか供給されないユタカの実は全て、有瓜の食事になっている。そしてその分、俺たちの食事はユタカの実以外の食材を使ったものになっていた。それはつまり、有瓜用の食事と、それ以外用の食事との二種類を毎日作らないといけないということだ。
板前ゴブリンが俺たち用の食事を一手に引き受けられるようになっていなかったら、さすがに俺一人では不可能だっただろう。
自分の飯を誰かが作ってくれるというのは半年以上振りのことだ。そのことに嬉しさよりも物足りなさを覚えている自分に気づいて、苦笑してしまったりもした。
「さて、今朝のご飯は……うん、手巻き寿司風のクレープか」
水溶きの小麦粉を獣脂で薄焼きにして、肉と野菜をくるっと巻いたものだ。ソースはかかっていないけれど、塩と香草や香辛料っぽいものの取り合わせが良い味を創り出している。
これはさほど珍しい献立ではない。食材と調理器具に限度がある以上、毎度そこまで違った料理を出せるわけではないのだ。もちろん、俺も板前も創意工夫を凝らした新作料理の開発に取りかかってはいるけれど、まだまだ他人様に出せるものは出来ていない。
まあ、別にその料理で金を取るわけではないのだから、四の五の言わずに出してやってもいいのだけれども――とくに戦士どもが「御託はいいから食わせろ」と言ってきたから食わせてやったというのに、「好みじゃない。作り直しで」とか言ってくるのだ。図体もでかけりゃ態度もでかいってか、この野郎!
……少し話が逸れたが、要するに、だ。
料理という文化に触れた大食らいどもが、いつも同じ飯じゃ飽きる、とせっついてくるので、俺と板前とときどき神官は日々、新作料理の開発に追われていた。
そして、その試行の果てに行き着く思考はいつも、これだ。
「ああ……醤油があれば……!」
異世界召喚によくある醤油欠乏症が、とうとうやって来てしまったのだった。
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