義妹ビッチと異世界召喚

Merle

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3章

50-1. 竜が啼き、騎士は堕ち、家族は増えない ロイド

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 河原へ洗濯をしにいって戻ってきたら、女騎士が変わり果てた姿になっていた。どういうこと?

 洗濯はいつもならシャーリーたちがやってくれるのだけど、今日は洞窟前の広場に余所者ラヴィニエがいたから、あまり意味はないと思いつつも二人には洞窟内で赤ん坊の面倒を見ていてもらうことにして、河原での洗濯は俺がやることにしたのだった。

 洗濯は大事だ。なぜなら、俺たちは服に関して物持ちではないからだ。
 二十一世紀の日本でなら、着回しするにしても一週間に一度も同じ着こなしをしないで済む程度の服を持っているのは普通だろう。ところがここでは、そうならない。都の富豪や貴族はどうだか知らないけれど、山村の住人レベルでは年がら年中同じ服を着ているというのもだ。下着でさえも同様だ。
 もっとも、最近は俺たちが危険地帯の獣を村を通して行商人に売っているおかげで村全体の羽振りが良くなり、みんなの身形が少しずつ良くなっているようだ。その波に乗って、俺たちも新しい服を……と思うのだけど、幸か不幸か、いまは春。夏の気配もそこまで来ているおかげで、有瓜が裸族に復帰してしつつある。そうなると、もともと腰布一枚が民族衣装のようなゴブリンたちも服を欲しがらなくなる。で、そうなると、俺やシャーリーたちの裸族ではない人間勢は少数派になってしまって、「新しい調味料もいいけれど、新しい服も欲しいですよね」と言いづらくなってしまうのだ。
 いや、言えば普通に了承してもらえるとは思うのだけど。なら普通に言えよ、という話だけども。
 ……秋口になって、有瓜が服を羽織り始めたら、ちゃんと言おうと思う。

 さて――とにかくそいうわけで、洗濯は大事なのだ。
 洗濯をすれば服は傷む。でも、洗濯をしなければ服は汚れる。なので、村人たちは服が少し汚れたくらいでは洗わないのだけど、現代日本の感覚が染みついている俺と有瓜には耐え難いので「できるだけ小まめに、できるだけ優しく」を心懸けて洗濯していた。
 といっても、具体的には「石鹸石を服に直接擦りつけたりせず、手で泡立てから手洗いする」だとか「水気を切るときはさっと伸すだけで、絞ったり引っ張ったりしない」くらいのことを実践しているだけだ。この程度でどれほどの効果があるのかを考えると空しくなるけれど、まあきっと、何も考えず洗うよりは効果があるだろう――と思っておくことにしている。

 ちなみに、女性陣の下着もゴブリンたちの腰布も一緒くたにして洗っているけれど、今のところ文句は出ていない。俺に下着を洗われるのが嫌だという女性陣もいない。
 なお、ゴブリンたちに洗濯を任せないのは、戦士は論外として、忍者でも力任せになってしまうからだった。どうにも服というものに、それほどの重要性を見いだせていないようだ。それもこれも有瓜が裸族だからだろう。あと、彼らの肌は天然の鎧にして防寒具になっていて、基本的に服を着なくても平気な生き物だからだろう。

 さてさて――とにかくそういうわけで、俺は川での洗濯を終えて、洞窟前に戻ってきた。そうしたら、女騎士ラヴィニエが変わり果てた姿になっていたのだった。改めて言うけれど、どういうことだよ。

「あ……はっ♥ 好っきいぃ……っすううぅ……ん、ん……っふはあぁ……♥」

 彼女が縛られて箱詰めにされたところまでは俺も見ていた。そのときは確かに正気で、怯えたり喚いたりしていたと思う。そんな彼女に戦士たちが肉棒を押しつけ始めたあたりで、これを眺めていても仕方ないな、と洗濯に出かけたのだった。

 あれから時間にして一時間が経ったかどうか、くらいだと思うのだが……どうして一時間前は怯えていた彼女が、いまは言いながら深呼吸して善がっているのだろうか。一体どういうプレイをしたら、あの毅然としていた女騎士が、アヘ顔だかトロ顔だかを晒すような出来上がりっぷりになるのだろうか……。
 ゴブリンたちの陵辱? 調教? その技術がすごというより、ゴブリンたちに指示を出した有瓜がすごいのだろうな……。

「すぅ……っきぃ……好っ、きいぃ……♥」

 戦士たちの精液を頭からバケツで浴びたような、ぐっしょりどろどろの姿で、息も絶え絶えに呟いている女騎士ラヴィニエ。
 いやもう、騎士には見えない。では何に見えるのかと言われたら……黒髭?
 樽から海賊が頭だけを出している玩具のだ。樽の隙間にナイフを刺していくと、ぽーんと飛んでいくだ。
 ……いや、言うほど似ていないかもしれないけれど、少なくとも姿という意味で、黒髭そっくりだった。いまのラヴィニエはにしか見えなかった。

「というか、これ、放置でいいのか……?」

 ゴブリンたちはもう十分に射精したようで、髪から顔からどろどろにして惚けているラヴィニエを放置している。昼寝をしたり、狩りに行く準備を始めていたり、洞窟に入って赤ん坊をからかいに行く奴もいたり……自由にしている。

「あぁ……すっ……ん、ふっ……ふぁ……、……♥」

 ラヴィニエはと呟く気力もなくして、鼻の穴をふごふご拡げて呼吸しているだけになっている。いや本当、これを放置していていいのか? ……でも、分厚い精液パックで分かりにくいけれど、幸せそうな顔に見えるんだよな。ここで手を出しても、プレイの邪魔をするな、と言われそうにも思える。
 さて、どうしたものか……あっ、神官に相談してみるのがいいか?

 ――その思索は途中で打ち切られた。
 肌を打ち、鼓膜を圧する轟音が森全体に響き渡ったからだ。
 それからやや間があった後、森の上空に翼を広げた竜が飛び上がり、二度目の咆吼を轟かせるとともに、太陽へと目がけて巨大な火球を噴射した。
 それはまるで、竜がもうひとつの太陽を生み出して、古い太陽を吹き飛ばそうとしているかのような光景だった。
 遙か上空で爆ぜた火球は空を白い輝きで染め、反射的に目を閉じたのにも関わらず、しばらくは何も見えないほどだった。

 その約三十分後、定期巡回に行っていた忍者のひとりが戻ってきて、「人間の軍勢がやってきたけれど、竜が火球を吐いたら、急に引き返していった」と報告した。
 有瓜が帰ってきたのは、それから小一時間後のことだった。
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