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3章
47-3. 愛の玉子 アルカ
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身体中の水分を吸い尽くされそうなクンニを受けて何度も絶頂しながら、喉奥に一番搾りの濃厚な精液を流し込まれたユタカちゃんは、そのままぐったり動かなくなりました。
「え……ユタカちゃん?」
「……」
返事がないのはいつも通りです。だから、心配する必要はありません。そう、ないのです――例え、ユタカちゃんが突っ伏したまま身動ぎひとつしなくなっていても。揺すってみても反応しないとしても。
「そ……そうですよ。大丈夫ですよ。だって……そう、ほら、息はしていますもん……脈だって、ほら、ちゃんとありますし……」
ユタカちゃんの口元に耳を寄せてみると、本当に微かだけど呼吸している音が聞こえてきます。首筋に指を押し当ててみれば、こちらも微かだけど規則正しい脈拍が感じられ……る気がします。
本当は胸に耳を押し当てて、ちゃんと鼓動が聞こえることを確認したいのですけど、ユタカちゃんは土下座で突っ伏したまま動かなくなった後、さらに丸まって体育座りの姿勢で固まってしまったために、膝が邪魔で胸に顔を寄せることができませんでした。
最初は仰向けに寝かせようとも思ったのですけど、ユタカちゃんの手足は接着剤で固めたみたいに動かなくなっていて、無理やり力をかけたら折ってしまいそうで、怖くてそのままになっています。
――怖い。
怖いです。
ユタカちゃんがこのままずっと動かなかったら、わたし、あぁ――
「有瓜、おい。しっかりしろ!」
「わっ……義兄さん?」
いきなり肩を揺さぶられて、びっくりして振り返ると、義兄さんが立っていました。
どうしてここに……という疑問は、義兄さんの後ろに立っている忍者さんを見て自己解決しました。わたしが動揺している間に、この忍者さんが義兄さんを呼んできてくれたのでした。
もっとも、ここは洞窟前広場の端っこで、義兄さんが朝食の準備をしていた広場中央付近からも見えていたはずですから、呼ばれずとも異変に気づいて駆けつけてくれていたかもしれませんけど。
「有瓜、大丈夫か。顔が真っ青だぞ」
「……はい、わたしは大丈夫です。でも、ユタカちゃんが……」
「大まかなことは忍者から聞いた。俺にもちょっと診させてくれ」
「はい」
わたしが場所を譲ると、義兄さんはわたしがしたのと同じようにしてユタカちゃんの呼吸や脈を確かめて、ううむと唸りました。
「義兄さん……」
「いや、大丈夫だろう」
義兄さんは難しい顔ながらも、はっきりと頷きました。
「ユタカちゃん、死んじゃいませんか……?」
「死ぬんだったら、もう死んでいるだろ。いま死んでないということは、この状態で安定しているということだ……たぶん」
「たぶん……」
「さすがに断言はできん。でも、なんとなく納得はいくんだ」
「納得ですか?」
「ほら、見るからにあれだろ。植物状態」
「……、……は?」
「だから植物――」
「は!?」
いくら義兄さんでも、この状況で親父ギャグって不謹慎じゃありませんかね!? いまのわたし、そういうのを笑って流せる心境じゃないのですけど!
「あ……すまない。おまえが思い詰めているようだったから、少しでも緊張を解そうと思ってだな……」
「だったら、もっと笑えることを言うようにしてください!」
「すまん、努力する……」
義兄さんは頭を下げると、おほん、と咳払いをして改めて口を開きます。
「まあとにかく、だ。ユタカの生態は分かっていないことのほうが多い。だから何となくでしか言えないけれど、俺はこいつのことを動物みたいな植物なんだと考えている」
「……つまり?」
「つまり、動かなくなったこの状態は、問題があるからこうなったわけではなく、植物が冬になったら枯れて死んだみたいに見えるようになっただけ――くらいの自然で一時的なこととして、この状態になったんだと思う」
「……つまり?」
「だからつまり、しばらくは静観だな」
「何もしないってことですか!?」
「水分補給はさせるよ。もしかしたら、単純に干上がっているだけかもしれないしな。ただ、いきなり水をぶっかけても身体に悪そうだから、少しずつ湿らせるようにな。霧吹きがあればいいんだけど、無いものは仕方がないから、濡れタオルを肩にかけておくとかにしておくか。……あ、その前に、口に水を含ませたら飲んでくれるかどうかを確認するのが先か」
義兄さんが思案しながら話すのを聞いているうちに、わたしも段々と落ち着いてきました。
「だったら、お水をあげたりするのはわたしがやります」
「分かった」
「お水をあげるだけじゃなくて、日当たりのいいところに座らせたりしたほうがいいんですよね?」
「うん……今日はそんなに暑くないし、それがいいかもな。あ、でもユタカを運ぶのは戦士の誰かに任せろよ」
「……分かりました」
本当はわたし一人で全部お世話したかったのですけれど、抱き上げたときにうっかり落としちゃいました、なんてことになっては笑い話にもなりません。ユタカちゃんのためにも、ここは素直に男手を頼りましょう。
「他に、わたしにできることってありますか?」
「……分からん」
「えぇー……」
義兄さんにジト目を向けたら、睨み返されました。
「仕方ないだろ。俺だって、こいつに何が起こってるのか分かってないんだ。というか、こいつが何者なのかも分かってないんだ。おまけに、ここには点滴も心電図モニターもないんだ。植物っぽいから、日を浴びせて水分を摂らせろ、くらいしか言えないよ!」
「……ですよね。ごめんなさい」
「分かってくれたらいいんだ……悪い。俺もちょっとテンパってるんだ」
「……ですよね」
誰かに頼りたいのは、わたしだけではない――そんな当たり前のことにようやく気がつけたのは、冷静でいようとしてくれた義兄さんのおかげです。
わたしって本当、いざという時は役立たずですね……。
「……とかって自虐ネタは要りません!」
「うぉっ、なんだいきなり?」
「自分に活を入れたんです。義兄さん、後はわたしが頑張ります。任せてください!」
「お、おぅ」
「あっでも、手に負えない感じのときは手伝ってくださいね!」
「……おう、任せとけ」
義兄さんは、やっぱりはっきり頷いてくれました。
でも結局、ユタカちゃんの介護は一日で終了しました。
この翌日の朝早く、朝日が広場に差し込む中で、ユタカちゃんは出産し、目を覚ましたのでした。
「え……ユタカちゃん?」
「……」
返事がないのはいつも通りです。だから、心配する必要はありません。そう、ないのです――例え、ユタカちゃんが突っ伏したまま身動ぎひとつしなくなっていても。揺すってみても反応しないとしても。
「そ……そうですよ。大丈夫ですよ。だって……そう、ほら、息はしていますもん……脈だって、ほら、ちゃんとありますし……」
ユタカちゃんの口元に耳を寄せてみると、本当に微かだけど呼吸している音が聞こえてきます。首筋に指を押し当ててみれば、こちらも微かだけど規則正しい脈拍が感じられ……る気がします。
本当は胸に耳を押し当てて、ちゃんと鼓動が聞こえることを確認したいのですけど、ユタカちゃんは土下座で突っ伏したまま動かなくなった後、さらに丸まって体育座りの姿勢で固まってしまったために、膝が邪魔で胸に顔を寄せることができませんでした。
最初は仰向けに寝かせようとも思ったのですけど、ユタカちゃんの手足は接着剤で固めたみたいに動かなくなっていて、無理やり力をかけたら折ってしまいそうで、怖くてそのままになっています。
――怖い。
怖いです。
ユタカちゃんがこのままずっと動かなかったら、わたし、あぁ――
「有瓜、おい。しっかりしろ!」
「わっ……義兄さん?」
いきなり肩を揺さぶられて、びっくりして振り返ると、義兄さんが立っていました。
どうしてここに……という疑問は、義兄さんの後ろに立っている忍者さんを見て自己解決しました。わたしが動揺している間に、この忍者さんが義兄さんを呼んできてくれたのでした。
もっとも、ここは洞窟前広場の端っこで、義兄さんが朝食の準備をしていた広場中央付近からも見えていたはずですから、呼ばれずとも異変に気づいて駆けつけてくれていたかもしれませんけど。
「有瓜、大丈夫か。顔が真っ青だぞ」
「……はい、わたしは大丈夫です。でも、ユタカちゃんが……」
「大まかなことは忍者から聞いた。俺にもちょっと診させてくれ」
「はい」
わたしが場所を譲ると、義兄さんはわたしがしたのと同じようにしてユタカちゃんの呼吸や脈を確かめて、ううむと唸りました。
「義兄さん……」
「いや、大丈夫だろう」
義兄さんは難しい顔ながらも、はっきりと頷きました。
「ユタカちゃん、死んじゃいませんか……?」
「死ぬんだったら、もう死んでいるだろ。いま死んでないということは、この状態で安定しているということだ……たぶん」
「たぶん……」
「さすがに断言はできん。でも、なんとなく納得はいくんだ」
「納得ですか?」
「ほら、見るからにあれだろ。植物状態」
「……、……は?」
「だから植物――」
「は!?」
いくら義兄さんでも、この状況で親父ギャグって不謹慎じゃありませんかね!? いまのわたし、そういうのを笑って流せる心境じゃないのですけど!
「あ……すまない。おまえが思い詰めているようだったから、少しでも緊張を解そうと思ってだな……」
「だったら、もっと笑えることを言うようにしてください!」
「すまん、努力する……」
義兄さんは頭を下げると、おほん、と咳払いをして改めて口を開きます。
「まあとにかく、だ。ユタカの生態は分かっていないことのほうが多い。だから何となくでしか言えないけれど、俺はこいつのことを動物みたいな植物なんだと考えている」
「……つまり?」
「つまり、動かなくなったこの状態は、問題があるからこうなったわけではなく、植物が冬になったら枯れて死んだみたいに見えるようになっただけ――くらいの自然で一時的なこととして、この状態になったんだと思う」
「……つまり?」
「だからつまり、しばらくは静観だな」
「何もしないってことですか!?」
「水分補給はさせるよ。もしかしたら、単純に干上がっているだけかもしれないしな。ただ、いきなり水をぶっかけても身体に悪そうだから、少しずつ湿らせるようにな。霧吹きがあればいいんだけど、無いものは仕方がないから、濡れタオルを肩にかけておくとかにしておくか。……あ、その前に、口に水を含ませたら飲んでくれるかどうかを確認するのが先か」
義兄さんが思案しながら話すのを聞いているうちに、わたしも段々と落ち着いてきました。
「だったら、お水をあげたりするのはわたしがやります」
「分かった」
「お水をあげるだけじゃなくて、日当たりのいいところに座らせたりしたほうがいいんですよね?」
「うん……今日はそんなに暑くないし、それがいいかもな。あ、でもユタカを運ぶのは戦士の誰かに任せろよ」
「……分かりました」
本当はわたし一人で全部お世話したかったのですけれど、抱き上げたときにうっかり落としちゃいました、なんてことになっては笑い話にもなりません。ユタカちゃんのためにも、ここは素直に男手を頼りましょう。
「他に、わたしにできることってありますか?」
「……分からん」
「えぇー……」
義兄さんにジト目を向けたら、睨み返されました。
「仕方ないだろ。俺だって、こいつに何が起こってるのか分かってないんだ。というか、こいつが何者なのかも分かってないんだ。おまけに、ここには点滴も心電図モニターもないんだ。植物っぽいから、日を浴びせて水分を摂らせろ、くらいしか言えないよ!」
「……ですよね。ごめんなさい」
「分かってくれたらいいんだ……悪い。俺もちょっとテンパってるんだ」
「……ですよね」
誰かに頼りたいのは、わたしだけではない――そんな当たり前のことにようやく気がつけたのは、冷静でいようとしてくれた義兄さんのおかげです。
わたしって本当、いざという時は役立たずですね……。
「……とかって自虐ネタは要りません!」
「うぉっ、なんだいきなり?」
「自分に活を入れたんです。義兄さん、後はわたしが頑張ります。任せてください!」
「お、おぅ」
「あっでも、手に負えない感じのときは手伝ってくださいね!」
「……おう、任せとけ」
義兄さんは、やっぱりはっきり頷いてくれました。
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