義妹ビッチと異世界召喚

Merle

文字の大きさ
上 下
90 / 150
3章

47-3. 愛の玉子 アルカ

しおりを挟む
 身体中の水分を吸い尽くされそうなクンニを受けて何度も絶頂しながら、喉奥に一番搾りの濃厚な精液を流し込まれたユタカちゃんは、そのままぐったり動かなくなりました。

「え……ユタカちゃん?」
「……」

 返事がないのはいつも通りです。だから、心配する必要はありません。そう、ないのです――例え、ユタカちゃんが突っ伏したまま身動ぎひとつしなくなっていても。揺すってみても反応しないとしても。

「そ……そうですよ。大丈夫ですよ。だって……そう、ほら、息はしていますもん……脈だって、ほら、ちゃんとありますし……」

 ユタカちゃんの口元に耳を寄せてみると、本当に微かだけど呼吸している音が聞こえてきます。首筋に指を押し当ててみれば、こちらも微かだけど規則正しい脈拍が感じられ……る気がします。
 本当は胸に耳を押し当てて、ちゃんと鼓動が聞こえることを確認したいのですけど、ユタカちゃんは土下座で突っ伏したまま動かなくなった後、さらに丸まって体育座りの姿勢で固まってしまったために、膝が邪魔で胸に顔を寄せることができませんでした。
 最初は仰向けに寝かせようとも思ったのですけど、ユタカちゃんの手足は接着剤で固めたみたいに動かなくなっていて、無理やり力をかけたら折ってしまいそうで、怖くてそのままになっています。

 ――怖い。
 怖いです。
 ユタカちゃんがこのままずっと動かなかったら、わたし、あぁ――

「有瓜、おい。しっかりしろ!」
「わっ……義兄さん?」

 いきなり肩を揺さぶられて、びっくりして振り返ると、義兄さんが立っていました。
 どうしてここに……という疑問は、義兄さんの後ろに立っている忍者さんを見て自己解決しました。わたしが動揺している間に、この忍者さんが義兄さんを呼んできてくれたのでした。
 もっとも、ここは洞窟前広場の端っこで、義兄さんが朝食の準備をしていた広場中央付近からも見えていたはずですから、呼ばれずとも異変に気づいて駆けつけてくれていたかもしれませんけど。

「有瓜、大丈夫か。顔が真っ青だぞ」
「……はい、わたしは大丈夫です。でも、ユタカちゃんが……」
「大まかなことは忍者こいつから聞いた。俺にもちょっと診させてくれ」
「はい」

 わたしが場所を譲ると、義兄さんはわたしがしたのと同じようにしてユタカちゃんの呼吸や脈を確かめて、ううむと唸りました。

「義兄さん……」
「いや、大丈夫だろう」

 義兄さんは難しい顔ながらも、はっきりと頷きました。

「ユタカちゃん、死んじゃいませんか……?」
「死ぬんだったら、もう死んでいるだろ。いま死んでないということは、この状態で安定しているということだ……たぶん」
「たぶん……」
「さすがに断言はできん。でも、なんとなく納得はいくんだ」
「納得ですか?」
「ほら、見るからにあれだろ。植物状態」
「……、……は?」
「だから植物――」
「は!?」

 いくら義兄さんでも、この状況で親父ギャグって不謹慎じゃありませんかね!? いまのわたし、そういうのを笑って流せる心境じゃないのですけど!

「あ……すまない。おまえが思い詰めているようだったから、少しでも緊張を解そうと思ってだな……」
「だったら、もっと笑えることを言うようにしてください!」
「すまん、努力する……」

 義兄さんは頭を下げると、おほん、と咳払いをして改めて口を開きます。

「まあとにかく、だ。ユタカの生態は分かっていないことのほうが多い。だから何となくでしか言えないけれど、俺はこいつのことをなんだと考えている」
「……つまり?」
「つまり、動かなくなったこの状態は、問題があるからこうなったわけではなく、植物が冬になったら枯れて死んだみたいに見えるようになっただけ――くらいの自然で一時的なこととして、この状態になったんだと思う」
「……つまり?」
「だからつまり、しばらくは静観だな」
「何もしないってことですか!?」
「水分補給はさせるよ。もしかしたら、単純に干上がっているだけかもしれないしな。ただ、いきなり水をぶっかけても身体に悪そうだから、少しずつ湿らせるようにな。霧吹きがあればいいんだけど、無いものは仕方がないから、濡れタオルを肩にかけておくとかにしておくか。……あ、その前に、口に水を含ませたら飲んでくれるかどうかを確認するのが先か」

 義兄さんが思案しながら話すのを聞いているうちに、わたしも段々と落ち着いてきました。

「だったら、お水をあげたりするのはわたしがやります」
「分かった」
「お水をあげるだけじゃなくて、日当たりのいいところに座らせたりしたほうがいいんですよね?」
「うん……今日はそんなに暑くないし、それがいいかもな。あ、でもユタカを運ぶのは戦士の誰かに任せろよ」
「……分かりました」

 本当はわたし一人で全部お世話したかったのですけれど、抱き上げたときにうっかり落としちゃいました、なんてことになっては笑い話にもなりません。ユタカちゃんのためにも、ここは素直に男手を頼りましょう。

「他に、わたしにできることってありますか?」
「……分からん」
「えぇー……」

 義兄さんにジト目を向けたら、睨み返されました。

「仕方ないだろ。俺だって、こいつに何が起こってるのか分かってないんだ。というか、こいつが何者なのかも分かってないんだ。おまけに、ここには点滴も心電図モニターもないんだ。植物っぽいから、日を浴びせて水分を摂らせろ、くらいしか言えないよ!」
「……ですよね。ごめんなさい」
「分かってくれたらいいんだ……悪い。俺もちょっとテンパってるんだ」
「……ですよね」

 誰かに頼りたいのは、わたしだけではない――そんな当たり前のことにようやく気がつけたのは、冷静でいようとしてくれた義兄さんのおかげです。
 わたしって本当、いざという時は役立たずですね……。

「……とかって自虐ネタは要りません!」
「うぉっ、なんだいきなり?」
「自分に活を入れたんです。義兄さん、後はわたしが頑張ります。任せてください!」
「お、おぅ」
「あっでも、手に負えない感じのときは手伝ってくださいね!」
「……おう、任せとけ」

 義兄さんは、やっぱりはっきり頷いてくれました。

 でも結局、ユタカちゃんの介護は一日で終了しました。
 この翌日の朝早く、朝日が広場に差し込む中で、ユタカちゃんは出産し、目を覚ましたのでした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

男女比1:10。男子の立場が弱い学園で美少女たちをわからせるためにヒロインと手を組んで攻略を始めてみたんだけど…チョロいんなのはどうして?

ファンタジー
貞操逆転世界に転生してきた日浦大晴(ひうらたいせい)の通う学園には"独特の校風"がある。 それは——男子は女子より立場が弱い 学園で一番立場が上なのは女子5人のメンバーからなる生徒会。 拾ってくれた九空鹿波(くそらかなみ)と手を組み、まずは生徒会を攻略しようとするが……。 「既に攻略済みの女の子をさらに落とすなんて……面白いじゃない」 協力者の鹿波だけは知っている。 大晴が既に女の子を"攻略済み"だと。 勝利200%ラブコメ!? 既に攻略済みの美少女を本気で''分からせ"たら……さて、どうなるんでしょうねぇ?

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

少年神官系勇者―異世界から帰還する―

mono-zo
ファンタジー
幼くして異世界に消えた主人公、帰ってきたがそこは日本、家なし・金なし・免許なし・職歴なし・常識なし・そもそも未成年、無い無い尽くしでどう生きる? 別サイトにて無名から投稿開始して100日以内に100万PV達成感謝✨ この作品は「カクヨム」にも掲載しています。(先行) この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。 この作品は「ノベルアップ+」にも掲載しています。 この作品は「エブリスタ」にも掲載しています。 この作品は「pixiv」にも掲載しています。

アーティファクトコレクター -異世界と転生とお宝と-

一星
ファンタジー
至って普通のサラリーマン、松平善は車に跳ねられ死んでしまう。気が付くとそこはダンジョンの中。しかも体は子供になっている!? スキル? ステータス? なんだそれ。ゲームの様な仕組みがある異世界で生き返ったは良いが、こんな状況むごいよ神様。 ダンジョン攻略をしたり、ゴブリンたちを支配したり、戦争に参加したり、鳩を愛でたりする物語です。 基本ゆったり進行で話が進みます。 四章後半ごろから主人公無双が多くなり、その後は人間では最強になります。

処理中です...