義妹ビッチと異世界召喚

Merle

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2章

40-2. 兄妹 アルカ

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「わたしの母さんはというのだったんだと思います。で、育児放棄というのでもありました。

 父さんは最初からいないし、母さんもわたしが小学校に上がる前にとうとういなくなっちゃいました。いまにして思うと、わたし、よく生き延びましたね。あ、でもすぐに母さんのお兄さんが来て、わたしを引き取ってくれたんですよ。そのが、義兄さんの母さんと結婚したわたしの父さんです……ちょっとややこしいですね。理解できてます?
 あ、父さんはだから、じつは結婚歴も離婚歴もなかったんですよ。義兄さんの母さんとの結婚が初婚です。
 まあ、その前にも何度か女性から言い寄られたことはあるんですけど、わたしっていうお邪魔虫がいることを知ると、すーっとフェードアウトしていってましたよ……あっ、わたしはべつに威嚇とか牽制とかしたことないですよ。そんなことしなくても、わたし、大抵の同性から息をするように嫌われる子供でしたから。例外なのは似たものビッチと、アンちゃんみたいな極限状況で会った子だけですね……って、そんなこと聞いてないですよね。

 えっと……だから、わたしという邪魔者が自分から隅っこに逃げちゃうくらい、義兄さんの母さんはキラキラしていたってことです。光を避けて暗がりに逃げ込む虫の気持ち、ちょっと分かりましたもん。あ、太陽を恐れる吸血鬼の気持ち、って言ったほうが義兄さん好みです? ……あ、そういうのいいですか、はい。

 だからまあ、勝ち目ないなぁって思っちゃったんです……ん? 勝ち目? ……ああ、そっか。わたし、勝ちたかったんですね。勝っても結婚できるわけじゃないのに。不毛ですね。
 というか、そういう気持ちとは別のところで、わたしやっぱりエッチ大好きですし、ノーち○ぽノーライフですし、最初からどうにもならないって分かってたんですけどね。

 ……好きというか、独占したかったんだと思います。義兄さん好みの言い方だと、ずっと永遠に一番でいたかった、ですかね。
 いや、そんなの無理だって分かってましたし、いつかが来るのが正しいんだって分かってましたし、ちゃんと紹介される前から父さんの態度で好きなひとが出来ちゃったんだなって分かってましたし、それからずっと覚悟してましたし。
 だから……だから、披露宴だってちゃんと笑顔で通してたんですよ。でも、最後の最後で乗り切ったと思ったところで、あんな不意打ちでキスシーンですよ。ずるいじゃないですか。それに、なんでそんな一瞬を義兄さんは見ちゃうんですか。どうしてみんなして、わたしの頑張りを笑い飛ばすようなことばっかするんですかね!?

 そもそも、義兄さん。どうしてわたしが、義兄さんにビッチを隠さなかったか分かります? 分かってませんよね!
 普通、親の再婚相手の連れ子が教師から赤の他人から取っかえ引っかえのビッチだって知ったら、それとなく再婚に反対するものじゃないですか? 百歩譲って、見て見ぬ振りをするのは分かるとしても、アリバイ作りに協力するって頭どうかしてません? してますよ! おかげで助かりましたけど!
 ……何を言っているか分かんない、みたいな顔をしないでください。自爆覚悟のカミングアウトをド天然で切り返されてたのかと思うと、こっちが顔真っ赤ですよ。
 はぁ……義兄さんって本当、基本ダメダメですよね。なのにそのくせ、たまにものすごく嫌なタイミングで察しが良かったりするのが本当、困りものです。本当――義兄さんじゃなかったら襲ってましたよ。
 あっ、それは好きとか恋愛とかとは別腹の気持ちで、ってことですからね。勘違いしないでくださいね。

 ……ええ、そうですよ。わたしは気持ちとは別のところでセックスするんです。
 え……理由? そういうふうに生まれたからですよ。それで納得できないんなら、育児放棄されてた幼女が逃避行動としてオナニーを覚えたのでしたーとか、周りに媚びるためーとか、勝手に思ってたらいいんじゃないです?
 ……喧嘩腰にもなりますよ。わたしが悪い子みたいな言い方されたら。……いや、悪くないでしょ? だって、レイプしませんもん。あと、ちゃんと病気とか避妊とかにも気を遣ってきましたし。実際、そういうのなかったでしょ……え? だから、襲いませんって!
 義兄さんを襲ってたかも、というのは仮定の話です。つまり、現実にはありえない話ってことです。分かります? ……そう、分かればいいんです。

 ……襲うわけないじゃないですか。わたしたち、兄妹ですよ。この世界でたった二人の。
 もし、しちゃったら……もう兄妹に戻れなくなっちゃうじゃないですか。わたし、結構気に入ってるんですよ。義兄さんの妹っていう、このポジション。
 義兄さんはそうじゃないんですか? わたしの義兄さんでいられなくなっても、わたしとしたいですか? ……ですよね。じゃあ、この話は終わりです♥
 ……本当に思ってるんですよ。義兄さんが義兄さんで良かった、って。

 だから――だから、改めて謝ります。義兄さんがここに飛ばされてきたのは、あのストーカーが変な呪文を唱えたとき――あ、ううん。前に謝ったのとは別のことです。
 あのとき、義兄さんは逃げられたんですよ。でも、わたしが義兄さんに思いっきりしがみついちゃったから、義兄さんも逃げられなかった……じゃない。ちゃんと言いますね。
 わたしはあのとき、これヤバい死んじゃうって思ったけど、足が竦んで逃げられなくて……そうしたら、一人で死ぬの嫌だな、せめて義兄さんと一緒がいいなって思って……それで、義兄さんにしがみついて……。

 ……ごめんなさい。
 ごめんなさい。
 でも、虫のいい話だけど、許してほしいです……」

「ばーか。許すも何もないよ。もしあそこで俺だけ助かってたら、俺のほうが謝る側になってたっての。だから、いいんだよ。ほら――俺は兄だしな!」

 ……義兄さんがへたれのへっぽこじゃないときって、本当ムカつきます。
 あんまりムカつくから、シャツの胸元に思いっきり涙と鼻水を擦り付けててやりました。
 その間ずっと頭を撫でられていたのもムカついたので、顔をいっそうぐいぐい押しつけて、シャツをもっともっと、べしょべしょに濡らしてやるのでした。
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