60 / 150
2章
34. ファンタジーの代名詞 アルカ
しおりを挟む
アンちゃんと義兄さんがたまにヤってます。これは見て見ぬふりを貫くべきなのでしょうか?
いえ、べつに恋愛もセックスも自由だと思うんですけど、義兄さんが「姉妹の味比べ美味しいです」なんて鼻の下を伸ばしているのかと思うと、なんとも名状しがたいもやもや感に見舞われるのです。
もういっそ、二人で正面切って「僕たち、わたしたち、セックスしてます」って言いにきてくれませんかね? そうしてくれたら、このもやもやもすっきりすると思うんですけど。
「……って、そんなことより名前ですよ、名前」
自分の頬をぴしゃんと叩いて、非生産的なもやもやを頭の中から振り落とします。
「っていうか、もう……ええと、一ヶ月くらい経つんですか? ……うわぁ」
一ヶ月も赤ちゃんを名無しのままにしちゃってるとか、わたしってこんなに優柔不断だったんですね……と言いますか、なんでわたしが考える流れになっているのでしょうか?
「一番偉いひとに名付けてもらうと長生きできるって言うじゃねっすか」
というのがシャーリーさんの意見で、
「わすらぁ、名前っちゅうのがねぇだすば、アルカ様ぁ決めるんがええ思いますだ」
ゴブさんたちも似たようなものでした。
義兄さんに助けを求めてみると、
「名前を考えるのは吝かじゃないけれど、みんながおまえに名付けてもらうことを望んでいるからなぁ」
そう言われちゃうと、義兄さんに丸投げするわけにもいきません。わたしが考えたのでなきゃ……ああ、重圧感で胃が重いです。
「……あ、胃が痛いのって初めての経験かも?」
ちょっと得した気分になりました。
……なぁんて冗談めかしてみたところで、お腹にずっしり来ている胃もたれ感がなくなるわけではありません。とにかく名前を考えないと、です。
「ああ、シャワーが欲しいです……」
久々に日本が懐かしいです。
無い物ねだりをしても仕方がないので、川での水浴びで満足していますけど、熱いシャワーを頭から浴びる快感が欲しくなります。シャワーを考えた人は天才でした。
「アンちゃんかシャーリーさんか、誘えばよかった……」
姉妹のどちらかに髪を洗ってもらえたら、シャワーがなくても、もっと気分転換できたでしょうに。
いまは昼時で、姉妹二人は赤ちゃん二人に義兄さんと一緒にお昼寝タイムです。ゴブさんたちは狩りと見回りで森に行っていて、わたしの傍には護衛役の忍者ゴブさんと戦士ゴブさんが一人ずついるだけです。
わたしの護衛役は、戦士さんと忍者さんから数日交替で各一名ずつが受け持ってくれています。村から請け負う形で山賊退治をするようになった頃から、そういうシステムになっていました。
まあ、護衛と言っても、ここにはわたしたち以外に誰も住んでいないし、猛獣が迷い込んでくる可能性がもしかしたらゼロではないのかも、くらいの危険しかないので、護衛という名のセックス相手です。
なんですが……ここ最近はセックスしてません。赤ちゃんの名前を考えるのに頭と胃がいっぱいで、ち○ぽに集中できそうにないのでした。期待していた護衛役の二人には申し訳ないのですが、惰性でするセックスほど後で空しくなるものはないですからね。
「というか、もう一ヶ月……よし! もう今日、決める!」
川面の水を掬った両手で頬をぴしゃっと叩いて、自分で自分に宣言です。
何も今日まで悩んでいるふりをしていたわけじゃありません。ちゃんと、名前の候補はいくつか出しているんです。でも、絶対にこれ以外なしっ、という気持ちになるものがもっと他にありそうで、なかなか決められないのです。みんなの期待が重いんです。
でも、そんな言い訳も、もう面倒。今日、決めると決めたら、もう決めます。今夜、みんなでご飯を食べるときに発表します。それで、変更は受け付けません。わたしに決めさせるんだから、余計なことは言わせません!
「……よしっ!」
もう一度、頬にぱしゃっと水を浴びせて気合いを入れたそのとき、春の盛りの麗らかな日差しがさっと陰りました。
その瞬間は、太陽が雲に隠れたのかなと思っただけで気にしなかったのですが、間もなく、ばっさばっさと大きな布が風に翻っているような音が頭上からしてきました。
それでもまだ、大きな鳥が飛んでいるのかな、と思っただけでしたが……川縁で待機していた護衛のゴブさん二人が急に喚き始めたのを見て、何かおかしいなと思ったときに気がつきました。
ゴブさんたちが喚いているのが見えているのに、聞こえてこないのです。鳥の羽ばたきかと思っていたばっさばっさが、ゴブさんたちの声を掻き消すくらいに大きくなっていたのです。
ヘリコプターの発着場、飛行機の滑走路。そんなところに立っているような錯覚。そして、陰ったままの日差し。
とても嫌な気がして見上げたわたしが見つけたものは――
――ドラゴンでした。
いえ、べつに恋愛もセックスも自由だと思うんですけど、義兄さんが「姉妹の味比べ美味しいです」なんて鼻の下を伸ばしているのかと思うと、なんとも名状しがたいもやもや感に見舞われるのです。
もういっそ、二人で正面切って「僕たち、わたしたち、セックスしてます」って言いにきてくれませんかね? そうしてくれたら、このもやもやもすっきりすると思うんですけど。
「……って、そんなことより名前ですよ、名前」
自分の頬をぴしゃんと叩いて、非生産的なもやもやを頭の中から振り落とします。
「っていうか、もう……ええと、一ヶ月くらい経つんですか? ……うわぁ」
一ヶ月も赤ちゃんを名無しのままにしちゃってるとか、わたしってこんなに優柔不断だったんですね……と言いますか、なんでわたしが考える流れになっているのでしょうか?
「一番偉いひとに名付けてもらうと長生きできるって言うじゃねっすか」
というのがシャーリーさんの意見で、
「わすらぁ、名前っちゅうのがねぇだすば、アルカ様ぁ決めるんがええ思いますだ」
ゴブさんたちも似たようなものでした。
義兄さんに助けを求めてみると、
「名前を考えるのは吝かじゃないけれど、みんながおまえに名付けてもらうことを望んでいるからなぁ」
そう言われちゃうと、義兄さんに丸投げするわけにもいきません。わたしが考えたのでなきゃ……ああ、重圧感で胃が重いです。
「……あ、胃が痛いのって初めての経験かも?」
ちょっと得した気分になりました。
……なぁんて冗談めかしてみたところで、お腹にずっしり来ている胃もたれ感がなくなるわけではありません。とにかく名前を考えないと、です。
「ああ、シャワーが欲しいです……」
久々に日本が懐かしいです。
無い物ねだりをしても仕方がないので、川での水浴びで満足していますけど、熱いシャワーを頭から浴びる快感が欲しくなります。シャワーを考えた人は天才でした。
「アンちゃんかシャーリーさんか、誘えばよかった……」
姉妹のどちらかに髪を洗ってもらえたら、シャワーがなくても、もっと気分転換できたでしょうに。
いまは昼時で、姉妹二人は赤ちゃん二人に義兄さんと一緒にお昼寝タイムです。ゴブさんたちは狩りと見回りで森に行っていて、わたしの傍には護衛役の忍者ゴブさんと戦士ゴブさんが一人ずついるだけです。
わたしの護衛役は、戦士さんと忍者さんから数日交替で各一名ずつが受け持ってくれています。村から請け負う形で山賊退治をするようになった頃から、そういうシステムになっていました。
まあ、護衛と言っても、ここにはわたしたち以外に誰も住んでいないし、猛獣が迷い込んでくる可能性がもしかしたらゼロではないのかも、くらいの危険しかないので、護衛という名のセックス相手です。
なんですが……ここ最近はセックスしてません。赤ちゃんの名前を考えるのに頭と胃がいっぱいで、ち○ぽに集中できそうにないのでした。期待していた護衛役の二人には申し訳ないのですが、惰性でするセックスほど後で空しくなるものはないですからね。
「というか、もう一ヶ月……よし! もう今日、決める!」
川面の水を掬った両手で頬をぴしゃっと叩いて、自分で自分に宣言です。
何も今日まで悩んでいるふりをしていたわけじゃありません。ちゃんと、名前の候補はいくつか出しているんです。でも、絶対にこれ以外なしっ、という気持ちになるものがもっと他にありそうで、なかなか決められないのです。みんなの期待が重いんです。
でも、そんな言い訳も、もう面倒。今日、決めると決めたら、もう決めます。今夜、みんなでご飯を食べるときに発表します。それで、変更は受け付けません。わたしに決めさせるんだから、余計なことは言わせません!
「……よしっ!」
もう一度、頬にぱしゃっと水を浴びせて気合いを入れたそのとき、春の盛りの麗らかな日差しがさっと陰りました。
その瞬間は、太陽が雲に隠れたのかなと思っただけで気にしなかったのですが、間もなく、ばっさばっさと大きな布が風に翻っているような音が頭上からしてきました。
それでもまだ、大きな鳥が飛んでいるのかな、と思っただけでしたが……川縁で待機していた護衛のゴブさん二人が急に喚き始めたのを見て、何かおかしいなと思ったときに気がつきました。
ゴブさんたちが喚いているのが見えているのに、聞こえてこないのです。鳥の羽ばたきかと思っていたばっさばっさが、ゴブさんたちの声を掻き消すくらいに大きくなっていたのです。
ヘリコプターの発着場、飛行機の滑走路。そんなところに立っているような錯覚。そして、陰ったままの日差し。
とても嫌な気がして見上げたわたしが見つけたものは――
――ドラゴンでした。
0
こちらのサイトにも色々置いてます。
お気に入りに追加
224
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。


美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない
一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。
クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。
さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。
両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。
……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。
それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。
皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。
※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~
月
恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん)
は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。
しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!?
(もしかして、私、転生してる!!?)
そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!!
そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる