義妹ビッチと異世界召喚

Merle

文字の大きさ
上 下
58 / 150
2章

33-3. 子守の随に ロイド

しおりを挟む
「頑張らないとな」

 独り言のつもりで呟いたのに、返事があった。

「何をです?」
「えっ……!?」

 いきなり声をかけられて、俺は座ったままびくっと肩を跳ねさせた。

「きゃっ、ごめんなさい。そんなに驚くと思わなくって」
「あ……アンか。いや、悪い。こいつらを寝かしつけているうちに考え込んでた」

 俺はいま、赤ん坊二人に姉妹二人と一緒に、洞窟前の広場に敷いた毛皮に寝転がって、日向ぼっこしながら昼寝する赤ん坊二人を眺めているところだった。
 心地好い日差しと風の中、赤ん坊二人とも安らかな寝顔をしているけれど、うっかり目を覚まそうものなら、どこへハイハイしていくか分かったものではない。この子たちから片時も目を離すわけにはいかないのだ。
 ――というわけで、身体能力が衰えてしまってゴブリンたちについていけなくなった俺は、狩りと警邏の行動隊長を辞任して子守役に就任し、こうして赤ん坊の番をしているというわけだった。
 シャーリーとアンの母親姉妹も赤ん坊たちと一緒に寝ているけれど、夜中何度も起こされては授乳させていたから、いまは赤ん坊のことを俺に任せて熟睡していた――いや、アンは目を覚ましたわけだが。

「もしかして、俺の独り言で起こしてしまったか?」
「いえいえ。十分に休ませてもらいましたから、声がしなくても起きていたと思います」
「そう言ってもらえると助かるよ」

 小声で問いかけた俺に、アンも同じく小声で返して頬笑んだ。その微笑みに俺も自然と笑みを誘われ――

「……アン?」
「はい、なんですか?」
「なんで近寄ってきてるんだ?」
「起き抜けって妙にムラムラしません?」
「それ、答えになって……なってるな!」

 そんなことを言っている間にも、アンは四つん這いで近づいてきて、横臥している俺に胸元に潜り込んできた。赤ん坊と俺の間に割り込んできた形だ。

「……アン、なぜわざわざ抱きつく?」
「人肌って落ち着くんですよね」
「山賊に掠われていた娘とは思えない発言だな」
「あっ、いまのはデリカシーなさすぎです。アルカさんに言いますよ?」
「……止めてくれ。俺が悪かった。全面的に謝るから」

 アルカから白い目で見られるということは、ゴブリンたち全員から白い目を向けられるということだ。ただでさえ、できる仕事が子守とシェフしかなくなって忸怩たる思いをしているというのに、これ以上の心労は負いたくない。いや、子守だって立派な仕事だと思うけれど、それはそれだ。

「ロイドさん……謝るということは、わたしの言うこと、なんでもひとつ聞いてくれるということですよね」

 俺の胸元に顔を顔を埋めたアンが、その位置から上目遣いで俺を見つめてくる。押しつけられた華奢な身体がもぞりと揺らめき、細いが健康的な太ももが俺の足に絡みついてくる。
 お互いに簡素なシャツを着ているけれど、その肌触りさえ艶めかしく感じさせられるほど、俺を見つめるアンの瞳は蠱惑的だった。

「アン……」
「いまから言うこと、聞いてくれますよね?」
「……この前みたいなことをしろ、か?」
「この前? ……ああ、しゃぶらせてもらったときのことですか」
「まあ、うん」
「そういうの期待してるんですね」
「そういうわけじゃないが!」
「本当に?」

 俺の胸元から、ずいっと顔を寄せてきたアンが囁く。悪戯っ子のように楽しげな瞳と、あどけない顔立ちとは不釣り合いに淫靡な表情での舌舐めずり。

「……っ」

 無意識に喉が、ごくりと鳴る。

「あ……ロイドさん、心臓がどくどく言ってます。身体は素直だな、と言うんですよね、こういうの」
「どこでそういう言葉――ああ、聞くまでもなかったよな」

 アルカ以外の誰が教えるというのか。

「それで……いいんですよね、しても」

 ぎゅっと押しつけられるアンの胸。授乳中で張っているその胸から、アンの鼓動の高鳴りが俺にも伝わってくる。
 潤んだ瞳、渇きを癒そうとして何度も唇を舐める舌の艶めかしさ。上がっていく体温と、温められて漂ってくる甘い体臭――。
 こんな蠱惑的な誘いに堪えきれるわけがない――が、それを良しとしない高楊枝な矜持が嫌味を言わせた。

「アンさ、妊娠してから淫乱になったよな」

 するとアンは、きょとんとした後、真面目な顔をする。

「あ……言われてみると、そうですね。最初は悪阻のせいでムラムラするのかと思ってましたけど、もう悪阻はないですし……赤ちゃんを授かるとムラムラするようになるんですね」
「えっ……女の子って、みんなそうなるの?」

 危うく大声を出しそうになった俺に、アンは小首を傾げる。

「ん……お姉ちゃんはなっていないから、わたしだけかもですね」
「……それは単に、アンが淫乱だってだけでは?」
「本当、デリカシーがないですね」

 にっこりと、それはもうにっこりと頬笑まれた。

「ごめんなさい」

 反射的に謝ってしまった俺は、何もおかしくないと思う。

「まあ、そんなことより――」

 アンの手が俺の脇腹から腰へと撫でながら下りていき、股間をふわりとくすぐる。

「んぁ」

 ……反射的に高い声を出してしまった俺は、やはり何もおかしくない。というか、いい感じに話題を逸らせたなと思ったのだけど、回り込まれてしまったようだ。

「ロイドさん、しますよ」

 アンはだった。

「赤ちゃんが見て――」
「寝てるから見てません」
「シャーリーもそこで寝てるんだが――」
「お姉ちゃんは起きても寝たふりします」

 それはそれでどうなんだ。いや、アンとしては、寝たふりする姉に見せつけたいのか? そういうのが興奮するのか? とにかく、もうスイッチの入ってしまっているアンを止めるのは無理そうだ。いや、俺だってもう、股間のレバースイッチを引き起こされてしまっている。
 だから、俺に言えたのはこれだけだった。

「この子たちやシャーリーを起こさないよう、静かに、な」

 それに対するアンの返事は、

「はい。お互い、気をつけましょう……ふふっ♥」

 最後の“ふふっ”が非常に身構えさせるものだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

俺に懐いてる美少女姪っ子姉妹(JC1,JS4)が可愛すぎで我慢できない

レディX
恋愛
俺には可愛い姪っ子がいる。一人は摩耶、中学1年にして推定Dカップのおっぱいの持ち主。バレーボールを愛するスポーツ美少女。純粋にスポーツに打ち込んでいるためか、ユニフォームや制服で自分のおっぱいがぶるぶる揺れてるのを見て、周りの男子がおちんちんおっきくしてしこしこしてたりするなんて想像もつかない。 もう一人は咲弥、小学4年生。小悪魔系の耳年増。お風呂上がりに裸でリビングをうろつき俺に縦筋おまんこを見せつける。周囲の友達から聞かされてこっそり自分でおまんこやお尻の穴をいじって気持ちよくなったりしてる変態娘。 見た目の美少女ぶりと中身のギャップがたまらない。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

【18禁】ゴブリンの凌辱子宮転生〜ママが変わる毎にクラスアップ!〜

くらげさん
ファンタジー
【18禁】あいうえおかきくけこ……考え中……考え中。 18歳未満の方は読まないでください。

令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました

フルーツパフェ
大衆娯楽
 とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。  曰く、全校生徒はパンツを履くこと。  生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?  史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。

処理中です...