27 / 29
地上の大華国 篇
目覚めない女神を迎えに訪れる者
しおりを挟む
いつの間に現れたのか?
それすらもわからない程、その人物は気配を感じさせない。
ゆっくりと振り向くその人物の相貌に、驚きを隠せない皇帝王華。そして、全てを納得する。
目の前の人物こそが寵妃華妃の「真の相手」で、己れはただの身代わりでしかないのだとー。
日々、皇帝王華は朝議を終えれば、必ず寵妃華妃が眠る己れの寝所へと足早に戻る。
もはや何も受けつけない華妃。それでも不思議と胎の子は問題なく育つ。さすがは女神たる所以か。
何も出来ないままいたずらに過ぎて行く日々も、皇帝王華は出来るだけ華妃の側に寄り添う。
皇帝王華の知らない間に「儚くなってしまうー」のだけは避けたい。それはあまりにも酷。
その一方で、それ程に華妃の容態が芳しくないとも。
「余には、やはり……どうあってもそなたが愛しいー……再び、その愛らしい声音を聞かせて欲しい……」
そう願ってやまない。
もはや華妃が誰を求め、誰を愛そうが構わない。
己れが寵愛する華妃が、「兄神ー」と呼ぶ者に恋情を抱き、その心を求めるように、皇帝王華も華妃を愛し、求めてやまない。
そう、その想いこそが大事。それこそが本質。
「ーだから、何も聞かないー……ただ、そなたが側にいてくれさえすれば良い。余の元からは去らないでくれ、愛しい華妃……そなたをどうしようもなく愛している」
何も出来ない無情な日々にも、やがて終わりは来る。
その日は今朝方から妙に心が騒つく。後ろ髪を引かれながらも朝議へと赴き、やはり急ぎ戻る皇帝王華。
何故か胸騒ぎを覚える皇帝王華の予感は当たり、己れの寝所には人影が。
寝台に眠る華妃の側へと寄り添う一人の人物。皇帝王華の寵妃華妃の頬へと平然と触れている。
長く艶やかな黒曜の髪を垂らし、およそ上質な衣装を纏う人物は気配なく佇むも、こちらを振り向いた瞬間、凄まじい威圧感を放ち、端然と告げる。
「……ようやく見つけた。我の彩華を返してもらうぞ」
「おまえはー……いったいー」
「ーすでに察しているはず。我は天上の華界を統べる最高神華王ー……そして彩華は我の生命そのものー……大切な我の宝だ。華界へと連れ帰り、今度こそ正式に我の妃に迎える」
そうして皇帝王華の相貌を見つめれば、薄っすらと笑みを湛え、さも愉しげに告げる。
「ふふっ、これは面白いー……まさか我と似た相貌の者に出逢えるとはー……だから彩華は、おまえ如き人間にもかかわらず、心を寄せたのか? 我の身代わりとしてー……実に哀れな」
無慈悲な現実を突き付け、皇帝王華の目の前にもかかわらず、平然と「女神彩華」をその胸に抱きかかえ、連れ去ろうとする。
「ー待て!!」
皇帝王華か制止しようとするも、この場から一歩も動けない。それでも動かないわけにはいかない。
ここで愛しい華妃を奪われてしまえば、おそらくはもう二度と逢えない想いがひしめく。
「……貴様! 奪われてなるものかっーーー! それは余のものー……!」
皇帝王華が叫ぶ。
それすらもわからない程、その人物は気配を感じさせない。
ゆっくりと振り向くその人物の相貌に、驚きを隠せない皇帝王華。そして、全てを納得する。
目の前の人物こそが寵妃華妃の「真の相手」で、己れはただの身代わりでしかないのだとー。
日々、皇帝王華は朝議を終えれば、必ず寵妃華妃が眠る己れの寝所へと足早に戻る。
もはや何も受けつけない華妃。それでも不思議と胎の子は問題なく育つ。さすがは女神たる所以か。
何も出来ないままいたずらに過ぎて行く日々も、皇帝王華は出来るだけ華妃の側に寄り添う。
皇帝王華の知らない間に「儚くなってしまうー」のだけは避けたい。それはあまりにも酷。
その一方で、それ程に華妃の容態が芳しくないとも。
「余には、やはり……どうあってもそなたが愛しいー……再び、その愛らしい声音を聞かせて欲しい……」
そう願ってやまない。
もはや華妃が誰を求め、誰を愛そうが構わない。
己れが寵愛する華妃が、「兄神ー」と呼ぶ者に恋情を抱き、その心を求めるように、皇帝王華も華妃を愛し、求めてやまない。
そう、その想いこそが大事。それこそが本質。
「ーだから、何も聞かないー……ただ、そなたが側にいてくれさえすれば良い。余の元からは去らないでくれ、愛しい華妃……そなたをどうしようもなく愛している」
何も出来ない無情な日々にも、やがて終わりは来る。
その日は今朝方から妙に心が騒つく。後ろ髪を引かれながらも朝議へと赴き、やはり急ぎ戻る皇帝王華。
何故か胸騒ぎを覚える皇帝王華の予感は当たり、己れの寝所には人影が。
寝台に眠る華妃の側へと寄り添う一人の人物。皇帝王華の寵妃華妃の頬へと平然と触れている。
長く艶やかな黒曜の髪を垂らし、およそ上質な衣装を纏う人物は気配なく佇むも、こちらを振り向いた瞬間、凄まじい威圧感を放ち、端然と告げる。
「……ようやく見つけた。我の彩華を返してもらうぞ」
「おまえはー……いったいー」
「ーすでに察しているはず。我は天上の華界を統べる最高神華王ー……そして彩華は我の生命そのものー……大切な我の宝だ。華界へと連れ帰り、今度こそ正式に我の妃に迎える」
そうして皇帝王華の相貌を見つめれば、薄っすらと笑みを湛え、さも愉しげに告げる。
「ふふっ、これは面白いー……まさか我と似た相貌の者に出逢えるとはー……だから彩華は、おまえ如き人間にもかかわらず、心を寄せたのか? 我の身代わりとしてー……実に哀れな」
無慈悲な現実を突き付け、皇帝王華の目の前にもかかわらず、平然と「女神彩華」をその胸に抱きかかえ、連れ去ろうとする。
「ー待て!!」
皇帝王華か制止しようとするも、この場から一歩も動けない。それでも動かないわけにはいかない。
ここで愛しい華妃を奪われてしまえば、おそらくはもう二度と逢えない想いがひしめく。
「……貴様! 奪われてなるものかっーーー! それは余のものー……!」
皇帝王華が叫ぶ。
53
お気に入りに追加
161
あなたにおすすめの小説
慰み者の姫は新皇帝に溺愛される
苺野 あん
恋愛
小国の王女フォセットは、貢物として帝国の皇帝に差し出された。
皇帝は齢六十の老人で、十八歳になったばかりのフォセットは慰み者として弄ばれるはずだった。
ところが呼ばれた寝室にいたのは若き新皇帝で、フォセットは花嫁として迎えられることになる。
早速、二人の初夜が始まった。
大事な姫様の性教育のために、姫様の御前で殿方と実演することになってしまいました。
水鏡あかり
恋愛
姫様に「あの人との初夜で粗相をしてしまうのが不安だから、貴女のを見せて」とお願いされた、姫様至上主義の侍女・真砂《まさご》。自分の拙い閨の経験では参考にならないと思いつつ、大事な姫様に懇願されて、引き受けることに。
真砂には気になる相手・檜佐木《ひさぎ》がいたものの、過去に一度、檜佐木の誘いを断ってしまっていたため、いまさら言えず、姫様の提案で、相手役は姫の夫である若様に選んでいただくことになる。
しかし、実演の当夜に閨に現れたのは、檜佐木で。どうも怒っているようなのだがーー。
主君至上主義な従者同士の恋愛が大好きなので書いてみました! ちょっと言葉責めもあるかも。
【R18】騎士団長は××な胸がお好き 〜胸が小さいからと失恋したら、おっぱいを××されることになりました!~
おうぎまちこ(あきたこまち)
恋愛
「胸が小さいから」と浮気されてフラれた堅物眼鏡文官令嬢(騎士団長補佐・秘書)キティが、真面目で不真面目な騎士団長ブライアンから、胸と心を優しく解きほぐされて、そのまま美味しくいただかれてしまう話。
※R18には※
※ふわふわマシュマロおっぱい
※もみもみ
※ムーンライトノベルズの完結作
【R18】助けてもらった虎獣人にマーキングされちゃう話
象の居る
恋愛
異世界転移したとたん、魔獣に狙われたユキを助けてくれたムキムキ虎獣人のアラン。襲われた恐怖でアランに縋り、家においてもらったあともズルズル関係している。このまま一緒にいたいけどアランはどう思ってる? セフレなのか悩みつつも関係が壊れるのが怖くて聞けない。飽きられたときのために一人暮らしの住宅事情を調べてたらアランの様子がおかしくなって……。
ベッドの上ではちょっと意地悪なのに肝心なとこはヘタレな虎獣人と、普段はハッキリ言うのに怖がりな人間がお互いの気持ちを確かめ合って結ばれる話です。
ムーンライトノベルズさんにも掲載しています。
悪役令嬢は王太子の妻~毎日溺愛と狂愛の狭間で~
一ノ瀬 彩音
恋愛
悪役令嬢は王太子の妻になると毎日溺愛と狂愛を捧げられ、
快楽漬けの日々を過ごすことになる!
そしてその快感が忘れられなくなった彼女は自ら夫を求めるようになり……!?
※この物語はフィクションです。
R18作品ですので性描写など苦手なお方や未成年のお方はご遠慮下さい。
【R18】寡黙で大人しいと思っていた夫の本性は獣
おうぎまちこ(あきたこまち)
恋愛
侯爵令嬢セイラの家が借金でいよいよ没落しかけた時、支援してくれたのは学生時代に好きだった寡黙で理知的な青年エドガーだった。いまや国の経済界をゆるがすほどの大富豪になっていたエドガーの見返りは、セイラとの結婚。
だけど、周囲からは爵位目当てだと言われ、それを裏付けるかのように夜の営みも淡白なものだった。しかも、彼の秘書のサラからは、エドガーと身体の関係があると告げられる。
二度目の結婚記念日、ついに業を煮やしたセイラはエドガーに離縁したいと言い放ち――?
※ムーンライト様で、日間総合1位、週間総合1位、月間短編1位をいただいた作品になります。
年上彼氏に気持ちよくなってほしいって 伝えたら実は絶倫で連続イキで泣いてもやめてもらえない話
ぴんく
恋愛
いつもえっちの時はイきすぎてバテちゃうのが密かな悩み。年上彼氏に思い切って、気持ちよくなって欲しいと伝えたら、実は絶倫で
泣いてもやめてくれなくて、連続イキ、潮吹き、クリ責め、が止まらなかったお話です。
愛菜まな
初めての相手は悠貴くん。付き合って一年の間にたくさん気持ちいい事を教わり、敏感な身体になってしまった。いつもイきすぎてバテちゃうのが悩み。
悠貴ゆうき
愛菜の事がだいすきで、どろどろに甘やかしたいと思う反面、愛菜の恥ずかしい事とか、イきすぎて泣いちゃう姿を見たいと思っている。
【R18】国王陛下に婚活を命じられたら、宰相閣下の様子がおかしくなった
ほづみ
恋愛
国王から「平和になったので婚活しておいで」と言われた月の女神シアに仕える女神官ロイシュネリア。彼女の持つ未来を視る力は、処女喪失とともに失われる。先視の力をほかの人間に利用されることを恐れた国王からの命令だった。好きな人がいるけどその人には好かれていないし、命令だからしかたがないね、と婚活を始めるロイシュネリアと、彼女のことをひそかに想っていた宰相リフェウスとのあれこれ。両片思いがこじらせています。
あいかわらずゆるふわです。雰囲気重視。
細かいことは気にしないでください!
他サイトにも掲載しています。
注意 ヒロインが腕を切る描写が出てきます。苦手な方はご自衛をお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる