10 / 29
地上の大華国 篇
心騒ぐ皇帝は美しい女神と出逢う
しおりを挟む
時は遡る。
皇帝王華が住まう〈帝宮〉。
そこに造られた壮麗な〈帝宮庭園〉。皇帝王華の心を僅かなりにでも「癒す為ー」とばかりに造られた美しい庭園。
ほんの気紛れともー、心が騒いだともー。
どちらにしても自然と足が向いた事は確か。
〈帝宮庭園〉には見事な紅い牡丹の大華が咲き誇るも、意外にも皇帝王華の気を引いたのは、泉水の傍らに、楚々として咲く淡い薄桃色の優美な芍薬の花。
虚栄を誇るように咲く紅い牡丹の花よりは、淑やかに凜と咲く芍薬の方が、存外心惹かれる皇帝王華。
淡い薄桃色が愛らしく、「守ってやりたいー」そう思わせる。
「ふっ、柄にもないー」
一心に芍薬の花を見つめる皇帝王華。
「ー陛下、宜しければ、ご寝所にでもお飾りしましょうか?」
気を利かせる側仕え。
「ー良い。せっかくだー……ありのままに咲いて散る方が美しい。あえて摘む必要はない」
そう宣う皇帝王華が、芍薬の側へと歩み寄れば、そこにはー。
「これはー……!」
咲き誇る芍薬の根本には、美しい女神が一人横たわる。
皇帝王華がそう思うのも無理はない。
美しい女神の身体を淡い光が覆い、周囲の芍薬の花は、まるで女神を隠し守る様に、背丈を伸ばし咲き乱れている。
皇帝王華の近侍武官が声を掛ける。
「如何なされました、陛下ー」
「奇異な事があるものだー……まさか余の庭園に女神とはー……どうやら余の元へ女神が舞い降りたようだ。面白いー……これぞまさしく吉兆」
皇帝の〈帝宮庭園〉に部外者が立ち入る事はまずあり得ない。ましてやか弱き女。
美しい女神は、柔肌を透かす程のおよそ上質の薄衣だけを纏い、どこか心許なげなその様は庇護欲をそそる。更には、その儚げな様子に皇帝王華の支配欲が湧き起こる。
ましてや、これまで出逢った中では類を見ないほどの極上の美しさを讃える姫。
美しいものは、その全てが皇帝の所有物。
「ー急ぎ宮へと戻る」
美しい女神を抱き上げる皇帝王華。
久しぶりに食指が動く。沸々と湧き起こる欲情に下腹部が熱くなる。欲しくなる。
(今すぐ、そなたが欲しいー……)
そう告げる心に抗う必要はない。
かくして、美しい女神は皇帝王華の手の中へと囚われ、その華を摘み取られる。
皇帝王華が住まう〈帝宮〉。
そこに造られた壮麗な〈帝宮庭園〉。皇帝王華の心を僅かなりにでも「癒す為ー」とばかりに造られた美しい庭園。
ほんの気紛れともー、心が騒いだともー。
どちらにしても自然と足が向いた事は確か。
〈帝宮庭園〉には見事な紅い牡丹の大華が咲き誇るも、意外にも皇帝王華の気を引いたのは、泉水の傍らに、楚々として咲く淡い薄桃色の優美な芍薬の花。
虚栄を誇るように咲く紅い牡丹の花よりは、淑やかに凜と咲く芍薬の方が、存外心惹かれる皇帝王華。
淡い薄桃色が愛らしく、「守ってやりたいー」そう思わせる。
「ふっ、柄にもないー」
一心に芍薬の花を見つめる皇帝王華。
「ー陛下、宜しければ、ご寝所にでもお飾りしましょうか?」
気を利かせる側仕え。
「ー良い。せっかくだー……ありのままに咲いて散る方が美しい。あえて摘む必要はない」
そう宣う皇帝王華が、芍薬の側へと歩み寄れば、そこにはー。
「これはー……!」
咲き誇る芍薬の根本には、美しい女神が一人横たわる。
皇帝王華がそう思うのも無理はない。
美しい女神の身体を淡い光が覆い、周囲の芍薬の花は、まるで女神を隠し守る様に、背丈を伸ばし咲き乱れている。
皇帝王華の近侍武官が声を掛ける。
「如何なされました、陛下ー」
「奇異な事があるものだー……まさか余の庭園に女神とはー……どうやら余の元へ女神が舞い降りたようだ。面白いー……これぞまさしく吉兆」
皇帝の〈帝宮庭園〉に部外者が立ち入る事はまずあり得ない。ましてやか弱き女。
美しい女神は、柔肌を透かす程のおよそ上質の薄衣だけを纏い、どこか心許なげなその様は庇護欲をそそる。更には、その儚げな様子に皇帝王華の支配欲が湧き起こる。
ましてや、これまで出逢った中では類を見ないほどの極上の美しさを讃える姫。
美しいものは、その全てが皇帝の所有物。
「ー急ぎ宮へと戻る」
美しい女神を抱き上げる皇帝王華。
久しぶりに食指が動く。沸々と湧き起こる欲情に下腹部が熱くなる。欲しくなる。
(今すぐ、そなたが欲しいー……)
そう告げる心に抗う必要はない。
かくして、美しい女神は皇帝王華の手の中へと囚われ、その華を摘み取られる。
54
お気に入りに追加
162
あなたにおすすめの小説
妻のち愛人。
ひろか
恋愛
五つ下のエンリは、幼馴染から夫になった。
「ねーねー、ロナぁー」
甘えん坊なエンリは子供の頃から私の後をついてまわり、結婚してからも後をついてまわり、無いはずの尻尾をブンブン振るワンコのような夫。
そんな結婚生活が四ヶ月たった私の誕生日、目の前に突きつけられたのは離縁書だった。
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
慰み者の姫は新皇帝に溺愛される
苺野 あん
恋愛
小国の王女フォセットは、貢物として帝国の皇帝に差し出された。
皇帝は齢六十の老人で、十八歳になったばかりのフォセットは慰み者として弄ばれるはずだった。
ところが呼ばれた寝室にいたのは若き新皇帝で、フォセットは花嫁として迎えられることになる。
早速、二人の初夜が始まった。
恋人に捨てられた私のそれから
能登原あめ
恋愛
* R15、シリアスです。センシティブな内容を含みますのでタグにご注意下さい。
伯爵令嬢のカトリオーナは、恋人ジョン・ジョーに子どもを授かったことを伝えた。
婚約はしていなかったけど、もうすぐ女学校も卒業。
恋人は年上で貿易会社の社長をしていて、このまま結婚するものだと思っていたから。
「俺の子のはずはない」
恋人はとても冷たい眼差しを向けてくる。
「ジョン・ジョー、信じて。あなたの子なの」
だけどカトリオーナは捨てられた――。
* およそ8話程度
* Canva様で作成した表紙を使用しております。
* コメント欄のネタバレ配慮してませんので、お気をつけください。
* 別名義で投稿したお話の加筆修正版です。
【完結】誰にも相手にされない壁の華、イケメン騎士にお持ち帰りされる。
三園 七詩
恋愛
独身の貴族が集められる、今で言う婚活パーティーそこに地味で地位も下のソフィアも参加することに…しかし誰にも話しかけらない壁の華とかしたソフィア。
それなのに気がつけば裸でベッドに寝ていた…隣にはイケメン騎士でパーティーの花形の男性が隣にいる。
頭を抱えるソフィアはその前の出来事を思い出した。
短編恋愛になってます。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
《R18短編》優しい婚約者の素顔
あみにあ
恋愛
私の婚約者は、ずっと昔からお兄様と慕っていた彼。
優しくて、面白くて、頼りになって、甘えさせてくれるお兄様が好き。
それに文武両道、品行方正、眉目秀麗、令嬢たちのあこがれの存在。
そんなお兄様と婚約出来て、不平不満なんてあるはずない。
そうわかっているはずなのに、結婚が近づくにつれて何だか胸がモヤモヤするの。
そんな暗い気持ちの正体を教えてくれたのは―――――。
※6000字程度で、サクサクと読める短編小説です。
※無理矢理な描写がございます、苦手な方はご注意下さい。
公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-
猫まんじゅう
恋愛
そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。
無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。
筈だったのです······が?
◆◇◆
「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」
拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」
溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない?
◆◇◆
安心保障のR15設定。
描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。
ゆるゆる設定のコメディ要素あり。
つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。
※妊娠に関する内容を含みます。
【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】
こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる