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地上の大華国 篇

心騒ぐ皇帝は美しい女神と出逢う

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時はさかのぼる。

皇帝王華おうかが住まう〈帝宮ていぐう〉。

そこに造られた壮麗そうれいな〈帝宮庭園ていぐうていえん〉。皇帝王華おうかの心をわずかなりにでも「いやす為ー」とばかりに造られた美しい庭園。

ほんの気紛きまぐれともー、心がさわいだともー。

どちらにしても自然と足が向いた事は確か。

帝宮庭園ていぐうていえん〉には見事なあか牡丹ぼたん大華たいかが咲きほこるも、意外にも皇帝王華おうかの気を引いたのは、泉水せんすいかたわらに、楚々そそとして咲くあわ薄桃うすもも色の優美な芍薬しゃくやくの花。

虚栄きょえいほこるように咲くあか牡丹ぼたんの花よりは、しとやかにりんと咲く芍薬しゃくやくの方が、存外ぞんがい心惹こころひかれる皇帝王華おうか

あわ薄桃うすもも色が愛らしく、「守ってやりたいー」そう思わせる。

「ふっ、がらにもないー」

一心に芍薬しゃくやくの花を見つめる皇帝王華おうか

「ー陛下、宜しければ、ご寝所にでもお飾りしましょうか?」

気を利かせる側仕そばつかえ。

「ー良い。せっかくだー……ありのままに咲いて散る方が美しい。あえてむ必要はない」

そうのたまう皇帝王華おうかが、芍薬しゃくやくの側へと歩み寄れば、そこにはー。

「これはー……!」

咲きほこ芍薬しゃくやくの根本には、美しい女神が一人横たわる。

皇帝王華おうかがそう思うのも無理はない。

美しい女神の身体からだあわい光がおおい、周囲の芍薬しゃくやくの花は、まるで女神を隠し守る様に、背丈せたけを伸ばし咲き乱れている。

皇帝王華おうか近侍武官きんじぶかんが声を掛ける。

如何いかがなされました、陛下ー」

奇異きいな事があるものだー……まさかの庭園に女神とはー……どうやらの元へ女神が舞い降りたようだ。面白いー……これぞまさしく吉兆きっちょう

皇帝の〈帝宮庭園ていぐうていえん〉に部外者が立ち入る事はまずあり得ない。ましてやか弱きおなご

美しい女神は、柔肌やわはだを透かす程のおよそ上質の薄衣うすぎぬだけをまとい、どこか心許こころもとなげなそのさま庇護欲ひごよくをそそる。更には、そのはかなげな様子に皇帝王華おうかの支配欲が湧き起こる。

ましてや、これまで出逢った中ではるいを見ないほどの極上の美しさをたたえる姫。

美しいものは、その全てが皇帝の所有物。

「ー急ぎみやへと戻る」

美しい女神を抱き上げる皇帝王華おうか

久しぶりに食指しょくしが動く。沸々ふつふつと湧き起こる欲情に下腹部が熱くなる。欲しくなる。

(今すぐ、そなたが欲しいー……)

そう告げる心にあらがう必要はない。

かくして、美しい女神は皇帝王華おうかの手の中へととらわれ、そのはなを摘み取られる。









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