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地上の大華国 篇

皇帝の寵妃と帝国庭園での仲睦まじい二人

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「……陛下、私なら自分の足で歩けますー……皆が見ている前で恥ずかしいですー……どうか降ろして下さい……」

愛らしくほほを染めては、皇帝王華おうかの腕にいだかれる妃がいる。その相貌そうぼうは、はっきりとはうかがい知ることはできないまでも、透き通るような美しい声音こわねが、為人ひととなりを物語る。

淡い薄桃うすももの重ね合わせの衣装をまとい、高く結われた頭位には黄金の宝冠ほうかんが載せられ、そこから掛かる面紗めんしゃにより、その妃の美しい相貌そうぼうは隠されている。

寵愛ちょうあいしてやまない妃を「おのれだけのものー」とのたまう皇帝王華おうかは、あまり人の目にはおおやけさらしたくない所為せい故意こいにそうしているとも。

帝宮庭園ていぐうていえん〉の中を四阿しあに向かい歩く皇帝王華おうかは、見るからに機嫌が良い。

「安心しろー……誰もわれらを見ていない」

皇帝王華おうかが振り向けば、ともをする側仕そばつかえは良くできたもので、一斉に後ろを向く。

「ーほら、誰も見てはいない。そう恥ずかしがるな、華妃かひ

「……ですが、陛下ー……」

その刹那せつな、皇帝王華おうか面紗めんしゃからわずかにのぞく妃の愛らしい唇へと接吻せっぷんをし、華妃かひと呼ぶおのれの妃の唇を塞ぐ。次いで舌まで差し込めば、くちゅりと淫靡いんびな音が響く。

くちゅりくちゅりと接吻せっぷんを浴びせる皇帝王華おうかは、しかと華妃かひいだいたまま離そうとはしない。どうにか羞恥しゅうちえる華妃かひ

皇帝王華おうかは、常に自由気儘じゆうきままで強引なたち

寵愛ちょうあいする華妃かひでたい時にで、奪いたい時に奪う。

今も強引に接吻せっぷんを受ける華妃かひには、あらがう選択しは存在しない為、皇帝王華おうかに成されるがまま。

皇帝王華おうかの妃と封じられた者は、もはや皇帝のとされ、皇帝のめいには逆らわず、意に反すれば、それこそ寵愛ちょうあいする妃でも罰を課され、慈悲じひが無ければ即日処罰される。

長い長い接吻せっぷん

「……ふぅっ……あっ……」

皇帝王華おうかの唇が離れれば、華妃かひの唇からは、自然と甘い吐息といきこぼれる。

最早もはや側仕そぼつかえの誰しもが後ろを向いたまま沈黙を守る。

これまでも数多あまた美姫びきが、皇帝王華おうかへと献上されるも、誰一人として皇帝王華おうかの興味を引く者はいない。

中には、皇帝王華おうかの寝所へと忍び込み、夜這よばいをかける者もいたが、手引きした者と共に拷問ごうもんにかけられ、車裂くるまざきの刑に処されている。

その皇帝王華おうかが、〈帝宮ていぐう〉のおのれの寝所にかぅまうほどの寵愛ちょうあいぶりをみせる初めての寵妃ちょうひ華妃かひ

側仕そばつかえの誰しもがたたえるの当然。

なにせ〈大華国たいかこく〉に舞い降りた極上の美しさをまとう女神は、光彩こうさいの美しい瞳で皆を魅了みりょうし、微笑ほほえみ一つで花々を芽吹めぶかせる。

その「御業みわざ」を誰しもが忘れてはいない。

更には、皇帝王華おうかの激しいまでの恩寵おんちょうをその身に注がれ、すでに皇帝の御子おこまで宿している華妃かひ

の子までしたいとしいそなたに、万に一つの事があっても困るー……大切に大切にいだいて行こう」

「陛下ー……」

華奢きゃしゃなそなただー……には心配でならない」

思わず顔を赤らめる側仕そばつかえもいる程に仲睦なかむつまじい二人は、四阿しあへと辿たどり着けば、ゆるりと茶の湯をたしなむ。

当然ながら、華妃かひの腰を据える場所は、常に皇帝王華おうかひざの上と決まっている。そのまま共に腰を据える二人。


おだやかなひと時が流れれば、その一方では、それを荒らす者が現れるのは偶然ではなく、もはや必然とも。

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