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後日譚
皇女は仮面舞踏会で奇跡を手にする・前
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今宵は皇家主催の仮面舞踏会。
皇帝アレクシスが、元々は「己れの伴侶探し」の為に半年ごとに始めた粋な催し。それが、その後も続いている。
皇帝アレクシスが「唯一無二の伴侶」との“奇跡の出逢い”を果たした仮面舞踏会。
今やブレイディ王国の王女セレーナと皇帝アレクシスの出逢いは、まるでお伽話のように、貴族達の間には伝わっている。
おかげで皇家主催の仮面舞踏会は、紳士淑女の出逢いと逢瀬の場となり、今も続く。
その反面、成人を迎えていない者や身元の確かではない者の来場は許されてはいない。
* * * * * * * * * *
今年は特に盛況を見せている仮面舞踏会。
奇しくも此度の仮面舞踏会は、皇后セレーナ主催とあり、優美で洗練された催しとなっている。
豪華な大広間は、品よく白い薔薇や百合の花々で統一され、まるで夜を思わせるように、窓には黒を基調とした垂れ幕が掛けられ、そこには黄金の星々が散りばめられている。
いつもとは違う大広間の神秘的な装いに、来場した貴族達からは「素晴らしい……!」と感嘆の吐息が彼方此方から漏れる。
更には、皇后セレーナが参加する貴族達に命を下す。
参加者が皇家の色ともする黄金色は避けるのは当然ながら「此度の舞踏会の衣装には、“青“や“銀色”を使う事は控えるようにー」との的を得ない通達。
その理由は後に知れる。
* * * * * * * * * *
此度の仮面舞踏会。
皇后セレーナが主催するに至ったのは、成人を迎えた「皇家の宝」と云われる双子星の皇太子ルークと皇女エレナが、父帝アレクシスから参加を許されている為とも。
そして皇城の煌々たる豪華な大広間では、艶やかな装いに身を包み、煌びかな仮面で素顔を隠しては、夢のような一夜を求めて続々と集う貴族達。
優美な調べが流れる中、歌や舞踏を愉しみ、美酒や美食を味わう。そして密かに戯れる。
有意義な時の中、突如として優美な調べが止み、次第に静けさが襲う。
この場へと集う貴族達が騒つき、その視線は正面の大階段へと自然と注がれ始める。
まさに、その最中の事。
大広間へと続く大階段へと優雅な仕草で降りてきたのは、輝くばかりの青銀の衣装を身に纏い、軽く結い上げた艶やかな黒曜の髪には、「純潔を表す白い百合の生花」が挿さり、皇家の色ともする黄金の装飾品で着飾る煌々しい淑女の姿。
その手を引くのは、青銀の髪を靡かせる貴公子。帯刀する青銀の剣には、と或る公爵家の紋章が彫られている。
二人共に“黄金の仮面“と“青銀の仮面”で素顔を隠すも、その人物が「誰か?」などは、誰の目から見ても明らか。
そしてー……その淑女が「誰であるのかー」などは一目瞭然。
もはや云わずがな。
「皇家の宝」と謳われる皇女エレナと皇帝アレクシスの近衛騎士エヴァンに他ならない。
そして、大階段の中央への踊り場へと着けば、皇女エレナの足が止まる。自然と近衛騎士エヴァンの足も。
* * * * * * * * * *
二人のその様子を見守るのは、皇家専用の隠し窓から覗く皇帝アレクシスと皇后セレーナ夫妻。
「アレク様……愛しい我が子エレナの想いが叶うと良いのですがー……私達に出来るのは、その場を設ける事ぐらいー……」
「ふふっ、心配ないー……セレーナ。エヴァンは、ああ見えてもエレナの事を好いているのは確かー……本人は気付いていないが、エレナの事となると必要以上に感情が露わになるー……だからエレナの想いを受け入れるはずだよ、愛しいセレーナ……」
傍らの愛する皇后セレーナの腰を抱く皇帝アレクシス。その頬へと口付けを落とす。
「私達のように素晴らしい伴侶となるよ、まぁ、見ててごらん」
確信を持って明言する。
皇帝アレクシス夫妻は、そっと愛しい我が子エレナとその伴侶となる近衛騎士エヴァンの二人を身守る。
そして遂にその時。
まさかの皇女エレナの方が深く腰を折り、見事な拝礼をして見せる。
自身の艶やかな黒曜の髪に挿した「一輪の白百合」を手に取れば、目の前の近衛騎士エヴァンへと差し出し、更には素顔を覆う仮面すら取り去る。
途端に、露わになる皇女エレナ。
「ヴァレリア公爵家が嫡子エヴァン様ー……どうか、ルーカニア帝国が皇女エレナを貴方様の伴侶へとお迎え頂けませんでしょうか? 私の愛と純潔を貴方様だけにお捧げします。貴方様こそが、私の“唯一無二の伴侶”なのです」
恋情を抱く近衛騎士エヴァンへと「一輪の白百合」を差し出した皇女エレナ。
見惚れるほどに美しい笑みを湛えては、近衛騎士エヴァンを一心に見つめる。
* * * * * * * * * *
このルーカニア帝国では、淑女の間でまことしやかに伝わる稀有な「婚姻の申し入れ」が存在する。
奇しくも、淑女の方から「純潔を表す一輪の白百合」と同時に、想う相手へと恋情を捧げ、その相手がその想いを受け取れば、二人は「永久に至福に包まれる」と伝えられている。
皇家主催の仮面舞踏会の場を利用して、皇后セレーナは愛しい娘エレナへの後押しとして「婚姻申し入れ」の機会を授ける。
皇帝アレクシスが、元々は「己れの伴侶探し」の為に半年ごとに始めた粋な催し。それが、その後も続いている。
皇帝アレクシスが「唯一無二の伴侶」との“奇跡の出逢い”を果たした仮面舞踏会。
今やブレイディ王国の王女セレーナと皇帝アレクシスの出逢いは、まるでお伽話のように、貴族達の間には伝わっている。
おかげで皇家主催の仮面舞踏会は、紳士淑女の出逢いと逢瀬の場となり、今も続く。
その反面、成人を迎えていない者や身元の確かではない者の来場は許されてはいない。
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今年は特に盛況を見せている仮面舞踏会。
奇しくも此度の仮面舞踏会は、皇后セレーナ主催とあり、優美で洗練された催しとなっている。
豪華な大広間は、品よく白い薔薇や百合の花々で統一され、まるで夜を思わせるように、窓には黒を基調とした垂れ幕が掛けられ、そこには黄金の星々が散りばめられている。
いつもとは違う大広間の神秘的な装いに、来場した貴族達からは「素晴らしい……!」と感嘆の吐息が彼方此方から漏れる。
更には、皇后セレーナが参加する貴族達に命を下す。
参加者が皇家の色ともする黄金色は避けるのは当然ながら「此度の舞踏会の衣装には、“青“や“銀色”を使う事は控えるようにー」との的を得ない通達。
その理由は後に知れる。
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此度の仮面舞踏会。
皇后セレーナが主催するに至ったのは、成人を迎えた「皇家の宝」と云われる双子星の皇太子ルークと皇女エレナが、父帝アレクシスから参加を許されている為とも。
そして皇城の煌々たる豪華な大広間では、艶やかな装いに身を包み、煌びかな仮面で素顔を隠しては、夢のような一夜を求めて続々と集う貴族達。
優美な調べが流れる中、歌や舞踏を愉しみ、美酒や美食を味わう。そして密かに戯れる。
有意義な時の中、突如として優美な調べが止み、次第に静けさが襲う。
この場へと集う貴族達が騒つき、その視線は正面の大階段へと自然と注がれ始める。
まさに、その最中の事。
大広間へと続く大階段へと優雅な仕草で降りてきたのは、輝くばかりの青銀の衣装を身に纏い、軽く結い上げた艶やかな黒曜の髪には、「純潔を表す白い百合の生花」が挿さり、皇家の色ともする黄金の装飾品で着飾る煌々しい淑女の姿。
その手を引くのは、青銀の髪を靡かせる貴公子。帯刀する青銀の剣には、と或る公爵家の紋章が彫られている。
二人共に“黄金の仮面“と“青銀の仮面”で素顔を隠すも、その人物が「誰か?」などは、誰の目から見ても明らか。
そしてー……その淑女が「誰であるのかー」などは一目瞭然。
もはや云わずがな。
「皇家の宝」と謳われる皇女エレナと皇帝アレクシスの近衛騎士エヴァンに他ならない。
そして、大階段の中央への踊り場へと着けば、皇女エレナの足が止まる。自然と近衛騎士エヴァンの足も。
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二人のその様子を見守るのは、皇家専用の隠し窓から覗く皇帝アレクシスと皇后セレーナ夫妻。
「アレク様……愛しい我が子エレナの想いが叶うと良いのですがー……私達に出来るのは、その場を設ける事ぐらいー……」
「ふふっ、心配ないー……セレーナ。エヴァンは、ああ見えてもエレナの事を好いているのは確かー……本人は気付いていないが、エレナの事となると必要以上に感情が露わになるー……だからエレナの想いを受け入れるはずだよ、愛しいセレーナ……」
傍らの愛する皇后セレーナの腰を抱く皇帝アレクシス。その頬へと口付けを落とす。
「私達のように素晴らしい伴侶となるよ、まぁ、見ててごらん」
確信を持って明言する。
皇帝アレクシス夫妻は、そっと愛しい我が子エレナとその伴侶となる近衛騎士エヴァンの二人を身守る。
そして遂にその時。
まさかの皇女エレナの方が深く腰を折り、見事な拝礼をして見せる。
自身の艶やかな黒曜の髪に挿した「一輪の白百合」を手に取れば、目の前の近衛騎士エヴァンへと差し出し、更には素顔を覆う仮面すら取り去る。
途端に、露わになる皇女エレナ。
「ヴァレリア公爵家が嫡子エヴァン様ー……どうか、ルーカニア帝国が皇女エレナを貴方様の伴侶へとお迎え頂けませんでしょうか? 私の愛と純潔を貴方様だけにお捧げします。貴方様こそが、私の“唯一無二の伴侶”なのです」
恋情を抱く近衛騎士エヴァンへと「一輪の白百合」を差し出した皇女エレナ。
見惚れるほどに美しい笑みを湛えては、近衛騎士エヴァンを一心に見つめる。
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このルーカニア帝国では、淑女の間でまことしやかに伝わる稀有な「婚姻の申し入れ」が存在する。
奇しくも、淑女の方から「純潔を表す一輪の白百合」と同時に、想う相手へと恋情を捧げ、その相手がその想いを受け取れば、二人は「永久に至福に包まれる」と伝えられている。
皇家主催の仮面舞踏会の場を利用して、皇后セレーナは愛しい娘エレナへの後押しとして「婚姻申し入れ」の機会を授ける。
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