【R-18】一夜の奇跡は仮面舞踏会から

ゆきむらさり

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本編

美しい御子の誕生と喜びに湧く皇帝夫妻

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遡れば、一年ほど前。

皇家主催の仮面舞踏会の夜に、皇帝アレクシスとの奇跡の出逢いを果たした元伯爵令嬢セレーナ。元より、皇帝アレクシスの運命の伴侶つがいとして存在した伯爵令嬢セレーナだからこそ「一夜の夢」は夢として終わらず。

起こるべくして起こった“奇跡”とも。

それは“必然の出逢い”とも。


今の彼女セレーナはルーカニア帝国最高位の皇后セレーナにして、元の身分はブレイディ王国の王女。誰もが羨む「申し分のない身分と肩書き」を得た皇后セレーナ、そして、その最たる至福。

今や美しい双子星の“慈悲深き母后セレーナ”として、皇帝アレクシスの“最愛の伴侶つがい”として、まさに至福のときを迎える。




* * * * * * * * * *


しとしと……と、恵みの雨が降る明け方。

帝宮ていぐう〉の皇帝アレクシスの豪華な寝所に集う面々。

皇后セレーナの母ともする王妃アラナはもちろんのこと、皇帝アレクシスさえも皇后セレーナの手を握り締め、ずっと側を離れずに寄り添う。

御子おこを産み落とす大変さは、皇帝アレクシスが思う以上に筆舌に尽くし難く、それでも「私達の大切な宝だから……」と懸命に御産おさんいどむ皇后セレーナに、自然と胸が詰まる皇帝アレクシス。

いよいよそのとき

皇家専属の医官長に介助され、皇后セレーナが無事に“小さな生命いのちきらめき”を産み落とす。

かくも美しい双子星。

大きな産声を上げ、自らの存在を誇示する愛らしい皇子と皇女。

その刹那、皇帝アレクシスの蒼い瞳には涙が滲み、その頬を幾重にも伝い落ちる。

「アレク様……どうか泣かないで……」

そう告げる皇后セレーナの美しい琥珀色の瞳にも涙が滲む。

新たな美しい“生命いのちきらめき”の誕生。

その“奇跡”をの当たりにする皇帝アレクシスと皇后セレーナは共に、言葉には言い尽くせない想いが溢れ出し、互いの胸を詰まらせる。

「セレーナ……セレーナ……嗚呼っ! なんと言えば良いのか……いとしいセレーナ、私達の御子おこを無事に産み落としてくれてありがとう。心から礼を言う。まさか……これ程の歓びがあるとは思わなかった。愛するセレーナに出逢えた私こそ帝国一の果報者に違いない。愛している、私のセレーナ……」

もたらされた最高の至福に、人目も憚らず感涙にむせび泣く皇帝アレクシス。それを見つめる皇后セレーナの瞳は限りなく優しい。

「それは私もです、アレク様。こうしてアレク様の后となり愛され、美しい御子おこ達まで授かる事ができた私の方こそ果報者です。アレク様……これまでもこの先も変わらず、貴方あなた様を愛しております……どうか永久とこしえにセレーナをよろしくお願い致します」

柔らかな微笑えみ浮かべ、愛する夫君アレクシスへと至上の愛を捧げる皇后セレーナ。

「セレーナ……おまえがいとおしい……」

皇后セレーナを抱き寄せる皇帝アレクシス。そしてしばらくいだき合う二人。

仲睦まじい皇帝アレクシス夫妻のしばしの抱擁の最中さなか、王妃アラナを始め、その場へと控える医官長らは、そっと皇帝の寝所を後にする。

其処には至上の歓びに包まれる親子四人の姿だけが残る。


折しもこの日。

皇帝アレクシスの治世化のルーカニア帝国中が、世継ぎ誕生の素晴らしい慶事のよろこびに湧いたとも。




* * * * * * * * * * 


皇后セレーナが産み落とした美しい双子星。

凛々しい皇子と愛らしい皇女。

初産ういざんにして「二つもの宝」を皇家にもたらした皇后セレーナ。紛れもなく皇帝アレクシスの運命の伴侶つがいだからこその“奇跡”。

皇家に新しく仲間入りしたのは、父帝アレクシス似の世継ぎ皇子と母后セレーナ似の美しい皇女。

皇帝アレクシスにより、美しい双子星がそれぞれに「皇家の光りとなるように……」との願いを込められ、名を授けられる。

父帝アレクシスと同じ「黄金の髪」に「蒼い瞳」をあわせ持つ世継ぎ皇子ルーク。

母后セレーナと同じく「黒曜の艶髪」に「琥珀色の瞳」をあわせも持つ皇女エレナ。

皇家に誕生した皇子ルークと皇女エレナは、共に愛らしく美しい双子星。

ルーカニア帝国に歓びをもたらす至高の存在なれば、その「誕生の祝い」に訪れる者達が、ルーカニア帝国皇帝アレクシスの元へと現れるのは、もはや必然。




* * * * * * * * * * 


ブレイディ王国の国王レナルドの代理として、誕生の祝いの品と共に我先われさきに現れたのは嫡太子ロイ。

この日を何よりも望んでいたとも。

「私のいとしいお姫様……早く大きくなって……」

皇女エレナの小さな手指へとそっと口付けを落とす嫡太子ロイは、明らかな含みを持たす。それに追随するかの如く、弟王子ロニーも含みのある言葉を投げ掛ける。

「ふふっ、凄いね! まさか本当にセレーナ義姉上あねうえに生写しの美しい皇女ひめが生まれるなんて……ロイ! これはまさに運命だよね?」

「ああっ、もちろんそうだ。美しい皇女おうじょエレナは私達の宝であり、私達の皇女ひめだ。小さな姫君、君がいとおしい……」

ブレイディ王国の兄弟王子ロイとロニー共に顔を見合せ、頷き合う。

更には、予期していない王国の御仁までもが、皇子ルークと皇女エレナの誕生の祝いに駆けつけ、特に王妃アラナを驚嘆させる。


果たして、その御仁とはー……。






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