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本編
美しい御子の誕生と喜びに湧く皇帝夫妻
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遡れば、一年ほど前。
皇家主催の仮面舞踏会の夜に、皇帝アレクシスとの奇跡の出逢いを果たした元伯爵令嬢セレーナ。元より、皇帝アレクシスの運命の伴侶として存在した伯爵令嬢セレーナだからこそ「一夜の夢」は夢として終わらず。
起こるべくして起こった“奇跡”とも。
それは“必然の出逢い”とも。
今の彼女はルーカニア帝国最高位の皇后セレーナにして、元の身分はブレイディ王国の王女。誰もが羨む「申し分のない身分と肩書き」を得た皇后セレーナ、そして、その最たる至福。
今や美しい双子星の“慈悲深き母后セレーナ”として、皇帝アレクシスの“最愛の伴侶”として、まさに至福の刻を迎える。
* * * * * * * * * *
しとしと……と、恵みの雨が降る明け方。
〈帝宮〉の皇帝アレクシスの豪華な寝所に集う面々。
皇后セレーナの母ともする王妃アラナはもちろんのこと、皇帝アレクシスさえも皇后セレーナの手を握り締め、ずっと側を離れずに寄り添う。
御子を産み落とす大変さは、皇帝アレクシスが思う以上に筆舌に尽くし難く、それでも「私達の大切な宝だから……」と懸命に御産に挑む皇后セレーナに、自然と胸が詰まる皇帝アレクシス。
いよいよその刻。
皇家専属の医官長に介助され、皇后セレーナが無事に“小さな生命の煌めき”を産み落とす。
かくも美しい双子星。
大きな産声を上げ、自らの存在を誇示する愛らしい皇子と皇女。
その刹那、皇帝アレクシスの蒼い瞳には涙が滲み、その頬を幾重にも伝い落ちる。
「アレク様……どうか泣かないで……」
そう告げる皇后セレーナの美しい琥珀色の瞳にも涙が滲む。
新たな美しい“生命の煌めき”の誕生。
その“奇跡”を目の当たりにする皇帝アレクシスと皇后セレーナは共に、言葉には言い尽くせない想いが溢れ出し、互いの胸を詰まらせる。
「セレーナ……セレーナ……嗚呼っ! なんと言えば良いのか……愛しいセレーナ、私達の御子を無事に産み落としてくれてありがとう。心から礼を言う。まさか……これ程の歓びがあるとは思わなかった。愛するセレーナに出逢えた私こそ帝国一の果報者に違いない。愛している、私のセレーナ……」
もたらされた最高の至福に、人目も憚らず感涙に咽び泣く皇帝アレクシス。それを見つめる皇后セレーナの瞳は限りなく優しい。
「それは私もです、アレク様。こうしてアレク様の后となり愛され、美しい御子達まで授かる事ができた私の方こそ果報者です。アレク様……これまでもこの先も変わらず、貴方様を愛しております……どうか永久にセレーナをよろしくお願い致します」
柔らかな微笑えみ浮かべ、愛する夫君アレクシスへと至上の愛を捧げる皇后セレーナ。
「セレーナ……おまえが愛おしい……」
皇后セレーナを抱き寄せる皇帝アレクシス。そしてしばらく抱き合う二人。
仲睦まじい皇帝アレクシス夫妻のしばしの抱擁の最中、王妃アラナを始め、その場へと控える医官長らは、そっと皇帝の寝所を後にする。
其処には至上の歓びに包まれる親子四人の姿だけが残る。
折しもこの日。
皇帝アレクシスの治世化のルーカニア帝国中が、世継ぎ誕生の素晴らしい慶事の歓びに湧いたとも。
* * * * * * * * * *
皇后セレーナが産み落とした美しい双子星。
凛々しい皇子と愛らしい皇女。
初産にして「二つもの宝」を皇家にもたらした皇后セレーナ。紛れもなく皇帝アレクシスの運命の伴侶だからこその“奇跡”。
皇家に新しく仲間入りしたのは、父帝アレクシス似の世継ぎ皇子と母后セレーナ似の美しい皇女。
皇帝アレクシスにより、美しい双子星がそれぞれに「皇家の光りとなるように……」との願いを込められ、名を授けられる。
父帝アレクシスと同じ「黄金の髪」に「蒼い瞳」を併せ持つ世継ぎ皇子ルーク。
母后セレーナと同じく「黒曜の艶髪」に「琥珀色の瞳」を併せも持つ皇女エレナ。
皇家に誕生した皇子ルークと皇女エレナは、共に愛らしく美しい双子星。
ルーカニア帝国に歓びをもたらす至高の存在なれば、その「誕生の祝い」に訪れる者達が、ルーカニア帝国皇帝アレクシスの元へと現れるのは、もはや必然。
* * * * * * * * * *
ブレイディ王国の国王レナルドの代理として、誕生の祝いの品と共に我先に現れたのは嫡太子ロイ。
この日を何よりも望んでいたとも。
「私の愛しいお姫様……早く大きくなって……」
皇女エレナの小さな手指へとそっと口付けを落とす嫡太子ロイは、明らかな含みを持たす。それに追随するかの如く、弟王子ロニーも含みのある言葉を投げ掛ける。
「ふふっ、凄いね! まさか本当にセレーナ義姉上に生写しの美しい皇女が生まれるなんて……ロイ! これはまさに運命だよね?」
「ああっ、もちろんそうだ。美しい皇女エレナは私達の宝であり、私達の皇女だ。小さな姫君、君が愛おしい……」
ブレイディ王国の兄弟王子ロイとロニー共に顔を見合せ、頷き合う。
更には、予期していない王国の御仁までもが、皇子ルークと皇女エレナの誕生の祝いに駆けつけ、特に王妃アラナを驚嘆させる。
果たして、その御仁とはー……。
皇家主催の仮面舞踏会の夜に、皇帝アレクシスとの奇跡の出逢いを果たした元伯爵令嬢セレーナ。元より、皇帝アレクシスの運命の伴侶として存在した伯爵令嬢セレーナだからこそ「一夜の夢」は夢として終わらず。
起こるべくして起こった“奇跡”とも。
それは“必然の出逢い”とも。
今の彼女はルーカニア帝国最高位の皇后セレーナにして、元の身分はブレイディ王国の王女。誰もが羨む「申し分のない身分と肩書き」を得た皇后セレーナ、そして、その最たる至福。
今や美しい双子星の“慈悲深き母后セレーナ”として、皇帝アレクシスの“最愛の伴侶”として、まさに至福の刻を迎える。
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しとしと……と、恵みの雨が降る明け方。
〈帝宮〉の皇帝アレクシスの豪華な寝所に集う面々。
皇后セレーナの母ともする王妃アラナはもちろんのこと、皇帝アレクシスさえも皇后セレーナの手を握り締め、ずっと側を離れずに寄り添う。
御子を産み落とす大変さは、皇帝アレクシスが思う以上に筆舌に尽くし難く、それでも「私達の大切な宝だから……」と懸命に御産に挑む皇后セレーナに、自然と胸が詰まる皇帝アレクシス。
いよいよその刻。
皇家専属の医官長に介助され、皇后セレーナが無事に“小さな生命の煌めき”を産み落とす。
かくも美しい双子星。
大きな産声を上げ、自らの存在を誇示する愛らしい皇子と皇女。
その刹那、皇帝アレクシスの蒼い瞳には涙が滲み、その頬を幾重にも伝い落ちる。
「アレク様……どうか泣かないで……」
そう告げる皇后セレーナの美しい琥珀色の瞳にも涙が滲む。
新たな美しい“生命の煌めき”の誕生。
その“奇跡”を目の当たりにする皇帝アレクシスと皇后セレーナは共に、言葉には言い尽くせない想いが溢れ出し、互いの胸を詰まらせる。
「セレーナ……セレーナ……嗚呼っ! なんと言えば良いのか……愛しいセレーナ、私達の御子を無事に産み落としてくれてありがとう。心から礼を言う。まさか……これ程の歓びがあるとは思わなかった。愛するセレーナに出逢えた私こそ帝国一の果報者に違いない。愛している、私のセレーナ……」
もたらされた最高の至福に、人目も憚らず感涙に咽び泣く皇帝アレクシス。それを見つめる皇后セレーナの瞳は限りなく優しい。
「それは私もです、アレク様。こうしてアレク様の后となり愛され、美しい御子達まで授かる事ができた私の方こそ果報者です。アレク様……これまでもこの先も変わらず、貴方様を愛しております……どうか永久にセレーナをよろしくお願い致します」
柔らかな微笑えみ浮かべ、愛する夫君アレクシスへと至上の愛を捧げる皇后セレーナ。
「セレーナ……おまえが愛おしい……」
皇后セレーナを抱き寄せる皇帝アレクシス。そしてしばらく抱き合う二人。
仲睦まじい皇帝アレクシス夫妻のしばしの抱擁の最中、王妃アラナを始め、その場へと控える医官長らは、そっと皇帝の寝所を後にする。
其処には至上の歓びに包まれる親子四人の姿だけが残る。
折しもこの日。
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皇后セレーナが産み落とした美しい双子星。
凛々しい皇子と愛らしい皇女。
初産にして「二つもの宝」を皇家にもたらした皇后セレーナ。紛れもなく皇帝アレクシスの運命の伴侶だからこその“奇跡”。
皇家に新しく仲間入りしたのは、父帝アレクシス似の世継ぎ皇子と母后セレーナ似の美しい皇女。
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母后セレーナと同じく「黒曜の艶髪」に「琥珀色の瞳」を併せも持つ皇女エレナ。
皇家に誕生した皇子ルークと皇女エレナは、共に愛らしく美しい双子星。
ルーカニア帝国に歓びをもたらす至高の存在なれば、その「誕生の祝い」に訪れる者達が、ルーカニア帝国皇帝アレクシスの元へと現れるのは、もはや必然。
* * * * * * * * * *
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この日を何よりも望んでいたとも。
「私の愛しいお姫様……早く大きくなって……」
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更には、予期していない王国の御仁までもが、皇子ルークと皇女エレナの誕生の祝いに駆けつけ、特に王妃アラナを驚嘆させる。
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