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海の王国編
伝承と異形の者と幼き王女との出逢い
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※残酷な描写があります。苦手な方はご注意下さい。
* * * * * * * * * *
遡れば。
海の王国メーリンの王ディランと王女アリーヤの出逢いは、王女アリーヤの幼い頃。それもアメジスト王国の〈王女宮〉へと紛れ込んだ一匹の蒼い蜥蜴と云えば語弊があるが、その様なものの姿であったとも思われる王ディラン。所謂、それは彼の化身とも。
あまねく大海原には、古から存在し続ける美しい蒼き海を守護する蒼き竜が住むと云うが、嘘か誠か誰にもわからず、ただのお伽話とも伝承ともされるが、意外にも真実が隠されていたりするもの。
この世には、常識では推し量れない事実も存在する事も確か。
地上の人間だけが、この世の支配者ではない。
* * * * * * * * * *
ある折、アメジスト王家が所有する書物庫で、何故か心惹かれた一冊の古びた絵物語を手にした幼き王女アリーヤ。
日々、〈王女宮〉で捨て置かれて暮らす幼き王女アリーヤの唯一の愉しみと云えば、王家の書物庫から拝借した絵物語を読むことぐらい。そこに描かれた物語だけが、王女アリーヤを自由な世界へと連れ出し、父王イーサンから愛されることのない淋しさの慰めにも。
一方、気の遠くなるような永い時を生きれば、もはや己れが「何者」なのかさえも考えることもない王ディランは、小さな海の王国メーリンで眷属と共に悪戯に日々を過ごすことに、多少のなりとも飽いていたとも。
ちょうどそんな折かもしれない。
海の王国メーリンの王ディランが、助けを呼ぶ幼な子の切実な声を聞いたのは……。
* * * * * * * * * *
大なり小なり流れる水脈や水が溜まるところであれば、水の恩恵を受ける王ディランには何処へなりとも行き来が出来る。
一方では、アメジスト王国の〈王女宮〉に造られた池泉へと落ち、踠きながらも沈みゆく王女アリーヤ。身に纏う衣装の重たさが、余計に王女アリーヤを水底へと誘う。
「……誰か、誰か……助け、て……」
王女アリーヤの切なる声を聞いた王ディラン。
これまでもそうした声を聞くことはあっても、およそ人間の世界に興味もない王ディランが動くことはない。
だが、その時は違ったとも。
変わり映えのない日常に飽きていた王ディランの気紛れだったのかもしれない。だが、動機などあってないようなもの。ただ、そうしたいからそうしたまでのこと。
池泉に溺れる王女アリーヤの元へと飛んだ王ディランが、幼い王女アリーヤを救い出せば地上へと降り立つ。見れば、池泉のほとりには突如現れた王ディランの姿を目にし「ひぃっ!!」と驚愕する一人の侍女の姿。
「女、おまえの仕業か? 幼な子を池泉へと突き落としたのは……」
突如現れた王ディランに、やはり驚愕したままの侍女は言葉を失い、腰を抜かしてはたじろぐばかり。
「もう一度だけ聞くが、おまえの仕業だろう? まだ幼い子ども相手によくも酷な事ができるものだ」
王ディランが池泉の水面を指差せば、まるで水鏡のように何かが映し出される。
其処には、池泉のほとりで一人花摘みをする無防備な王女アリーヤへと近付く一人の侍女の姿。次の瞬間には、思い切り王女アリーヤの背を押し、池泉へと突き落とす侍女の非情な姿が映し出される。
王ディランは己れの腕に抱きかかえられては意識を失う王女アリーヤ見遣れば、次には侍女へと視線を滑らせる。明らかな嫌悪感を抱いている王ディランの珍しい金眼が鋭く光り、侍女を一心に睨み付ける。
「ばっ、化け物……!」
侍女が叫べば、幼な子の王女アリーヤを抱いたままの王ディランは、一瞬にして侍女の目の前へと行き、そのまま侍女の細い首へと片手を掛ける。
「どちらが化け物だ? 幼い子どもを池泉へと突き落とす方が余程に化け物だ。これだから人間は好きになれない。自分らとは異なる者を受け入れず、異形の者として排除する。それ程におまえ達が偉いのか?」
王ディランの指先には力がこもる。おかげで命を奪われかねない恐怖に慄く侍女は、呻きながらも言葉を発する。
「罪な子を……罰して、何が……悪い」
「罪な子だと……?」
その刹那、侍女の首へと掛けられた王ディランの手の力が緩む。そのせいで逃れる侍女は、激しく咳き込みながらも必死に叫ぶ。
「そうよ! 王妃アマラ様の命を奪ってまで生まれ子など……もはや罪でしかない! 慈悲深くお優しいアマラ様を返せ……!」
泣き叫ぶ侍女の顔は、堪え切れない怒りに塗れている。
聞けば、貧しさに喘ぐ侍女を救い出してくれた王妃アマラに、多大な恩義と敬愛を捧げる侍女には、王妃アマラの命と引き換えに生まれた赤子などは、もはや咎人にしか映らない。
「この王女は不吉でしかない……!!」
尚も酷く罵る侍女。
当然、これには国王イーサンの影響が大いに関係している。
王女アリーヤの実の父である国王イーサンが、愛する王妃アマラの命と引き換えに生まれた娘アリーヤを疎外するせいで、それが臣下らへと伝播しては悪影響を及ぼし、まさに弊害が起きている。
王国で最高位に在る国王イーサンが、無慈悲にも実の娘アリーヤを突き放すせいで、それを良しと受け止め、嬉々として倣うのが臣下ら。
最早、国王イーサンのせいと言わざるを得ない。
これには深く溜息を付く王ディラン。
「何を云うかと思えば……愚かな事を……」
己れの腕の中で意識なく眠る幼い王女アリーヤ。こうも愛らしい王女アリーヤに何の咎があると云うのか。
「人間と云う生き物がこうも浅ましいとは……やはり好きにはなれない」
「はっ! 化け物のおまえに好かれたいとは思わない。異形の者になど何がわかる!」
王ディランの腕から逃れ、命を脅かされる危険が去ったと捉える侍女は虚勢を取り戻す。
「女、そういきがるな。小賢しい……」
王ディランが釘をさし、しかと言い放つ。
「幼な子の母が命を賭して産み落とした我が子なら、余計に慈しみ育てる事こそ望ましいものを……母后もそれを望んでいるはず。それを……」
「ふんっ! 国王陛下にすら見捨てられた役立たずの王女! 其の王女が生きていることの方が罪よ! 王妃様の為にも何度でも葬ってやる!」
驕り高ぶる人間にも、そうした人間の世界にも興味も関心すら抱けない王ディランながら、この幼い王女アリーヤが哀れに思えてならない。それにこの王女に呼ばれた事には、何かしらの意味があるはずと捉える。
逆に、目の前の侍女への嫌悪感が拭えないでいる王ディラン。
「俺は、どうにもおまえだけは赦せないらしい……嗚呼っ、国王とやらもか……」
だから、この後も王女アリーヤに危害を加えるであろう侍女を池泉へと深く深く沈めた王ディラン。慈悲など授けない。もはや浮いてすら来ない侍女の骸は、深い水底からは這い上がれず、やがて朽ちていくのみ。
* * * * * * * * * *
その後。
人知れず王女アリーヤを介抱し、〈王女宮〉の寝台へと運べば、そっと横たえる王ディランは王女アリーヤの幼い寝顔を見つめながら独り呟く。
「幼な子、おまえが俺を呼んだのだ……」
(面白い……俺自らが側にいて見極めてやろう……)
小さな蒼き竜とも蜥蜴ともする姿へと身を窶す王ディランは、暫くの間〈王女宮〉へとこっそりと住み着く。
一度、小さな蒼き竜の姿で隠れ住む王ディランは、図らずも王女アリーヤに見つけられてしまう。怖がるどころか嬉しそうな王女アリーヤ。
「あなたはとても綺麗な蜥蜴ね」
そう言っては嬉しそうに背を撫でる。
「綺麗な蜥蜴さん……良かったら私のお友達になってくれる?」
(何を馬鹿なことを……! それに俺は蜥蜴ではないのだが……)
王ディランの心の声などが聞こえるはずもなく、ひたすら背を撫でつける王女アリーヤ。見れば紫水晶の瞳がきらきらと輝き、その様子から余程に嬉しいらしい。尚も王ディランの化身を構い倒す王女アリーヤ。これが存外に心地が良い。
(この幼な子だからなのか……?)
そうなのかもしれない……と思う王ディラン。
一度確信すれば、もはや王女アリーヤが己れにとって特別な存在として認識する。
こうして出逢った王女アリーヤと王ディラン。その出逢いは偶然とも必然とも。
* * * * * * * * * *
王ディランが出逢った王女アリーヤは、王家の姫として生まれながらも捨て置かれている不遇な身の上。誰も王女アリーヤに敬意を払わない。
日々、〈王女宮〉でひっそりと暮らす王女アリーヤの元へと訪れるのは、純粋に義姉姫を慕う歳の離れた義弟王子ジェームスだけ。あとは一匹の蒼い蜥蜴とも竜とも。やがてその蒼き蜥蜴も姿を消す。
図らずも、健気に生きる幼き王女アリーヤに同情しつつも執着したのは王ディランが先とも。
そして月日は流れる。
やがて美しく花開く無垢な王女アリーヤに再び逢う為、王ディランは旅商人の姿に身を窶し、海の恩恵から生み出される珍しい宝飾品を携え、アメジスト王国の王女アリーヤの元へと行商人として参上する。
王女アリーヤを連れ出そうとした王ディラン。敢えて囚われの身へとなったのは、アメジスト王国の国王イーサンの人となりを試す為とも。
「俺のアリーヤを捨て置いた非情な父王をどうするか?」
不遜な笑みを湛える王ディラン。
しかしながら、その想いに待ったを掛ける人物が現れる。
* * * * * * * * * *
遡れば。
海の王国メーリンの王ディランと王女アリーヤの出逢いは、王女アリーヤの幼い頃。それもアメジスト王国の〈王女宮〉へと紛れ込んだ一匹の蒼い蜥蜴と云えば語弊があるが、その様なものの姿であったとも思われる王ディラン。所謂、それは彼の化身とも。
あまねく大海原には、古から存在し続ける美しい蒼き海を守護する蒼き竜が住むと云うが、嘘か誠か誰にもわからず、ただのお伽話とも伝承ともされるが、意外にも真実が隠されていたりするもの。
この世には、常識では推し量れない事実も存在する事も確か。
地上の人間だけが、この世の支配者ではない。
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ある折、アメジスト王家が所有する書物庫で、何故か心惹かれた一冊の古びた絵物語を手にした幼き王女アリーヤ。
日々、〈王女宮〉で捨て置かれて暮らす幼き王女アリーヤの唯一の愉しみと云えば、王家の書物庫から拝借した絵物語を読むことぐらい。そこに描かれた物語だけが、王女アリーヤを自由な世界へと連れ出し、父王イーサンから愛されることのない淋しさの慰めにも。
一方、気の遠くなるような永い時を生きれば、もはや己れが「何者」なのかさえも考えることもない王ディランは、小さな海の王国メーリンで眷属と共に悪戯に日々を過ごすことに、多少のなりとも飽いていたとも。
ちょうどそんな折かもしれない。
海の王国メーリンの王ディランが、助けを呼ぶ幼な子の切実な声を聞いたのは……。
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大なり小なり流れる水脈や水が溜まるところであれば、水の恩恵を受ける王ディランには何処へなりとも行き来が出来る。
一方では、アメジスト王国の〈王女宮〉に造られた池泉へと落ち、踠きながらも沈みゆく王女アリーヤ。身に纏う衣装の重たさが、余計に王女アリーヤを水底へと誘う。
「……誰か、誰か……助け、て……」
王女アリーヤの切なる声を聞いた王ディラン。
これまでもそうした声を聞くことはあっても、およそ人間の世界に興味もない王ディランが動くことはない。
だが、その時は違ったとも。
変わり映えのない日常に飽きていた王ディランの気紛れだったのかもしれない。だが、動機などあってないようなもの。ただ、そうしたいからそうしたまでのこと。
池泉に溺れる王女アリーヤの元へと飛んだ王ディランが、幼い王女アリーヤを救い出せば地上へと降り立つ。見れば、池泉のほとりには突如現れた王ディランの姿を目にし「ひぃっ!!」と驚愕する一人の侍女の姿。
「女、おまえの仕業か? 幼な子を池泉へと突き落としたのは……」
突如現れた王ディランに、やはり驚愕したままの侍女は言葉を失い、腰を抜かしてはたじろぐばかり。
「もう一度だけ聞くが、おまえの仕業だろう? まだ幼い子ども相手によくも酷な事ができるものだ」
王ディランが池泉の水面を指差せば、まるで水鏡のように何かが映し出される。
其処には、池泉のほとりで一人花摘みをする無防備な王女アリーヤへと近付く一人の侍女の姿。次の瞬間には、思い切り王女アリーヤの背を押し、池泉へと突き落とす侍女の非情な姿が映し出される。
王ディランは己れの腕に抱きかかえられては意識を失う王女アリーヤ見遣れば、次には侍女へと視線を滑らせる。明らかな嫌悪感を抱いている王ディランの珍しい金眼が鋭く光り、侍女を一心に睨み付ける。
「ばっ、化け物……!」
侍女が叫べば、幼な子の王女アリーヤを抱いたままの王ディランは、一瞬にして侍女の目の前へと行き、そのまま侍女の細い首へと片手を掛ける。
「どちらが化け物だ? 幼い子どもを池泉へと突き落とす方が余程に化け物だ。これだから人間は好きになれない。自分らとは異なる者を受け入れず、異形の者として排除する。それ程におまえ達が偉いのか?」
王ディランの指先には力がこもる。おかげで命を奪われかねない恐怖に慄く侍女は、呻きながらも言葉を発する。
「罪な子を……罰して、何が……悪い」
「罪な子だと……?」
その刹那、侍女の首へと掛けられた王ディランの手の力が緩む。そのせいで逃れる侍女は、激しく咳き込みながらも必死に叫ぶ。
「そうよ! 王妃アマラ様の命を奪ってまで生まれ子など……もはや罪でしかない! 慈悲深くお優しいアマラ様を返せ……!」
泣き叫ぶ侍女の顔は、堪え切れない怒りに塗れている。
聞けば、貧しさに喘ぐ侍女を救い出してくれた王妃アマラに、多大な恩義と敬愛を捧げる侍女には、王妃アマラの命と引き換えに生まれた赤子などは、もはや咎人にしか映らない。
「この王女は不吉でしかない……!!」
尚も酷く罵る侍女。
当然、これには国王イーサンの影響が大いに関係している。
王女アリーヤの実の父である国王イーサンが、愛する王妃アマラの命と引き換えに生まれた娘アリーヤを疎外するせいで、それが臣下らへと伝播しては悪影響を及ぼし、まさに弊害が起きている。
王国で最高位に在る国王イーサンが、無慈悲にも実の娘アリーヤを突き放すせいで、それを良しと受け止め、嬉々として倣うのが臣下ら。
最早、国王イーサンのせいと言わざるを得ない。
これには深く溜息を付く王ディラン。
「何を云うかと思えば……愚かな事を……」
己れの腕の中で意識なく眠る幼い王女アリーヤ。こうも愛らしい王女アリーヤに何の咎があると云うのか。
「人間と云う生き物がこうも浅ましいとは……やはり好きにはなれない」
「はっ! 化け物のおまえに好かれたいとは思わない。異形の者になど何がわかる!」
王ディランの腕から逃れ、命を脅かされる危険が去ったと捉える侍女は虚勢を取り戻す。
「女、そういきがるな。小賢しい……」
王ディランが釘をさし、しかと言い放つ。
「幼な子の母が命を賭して産み落とした我が子なら、余計に慈しみ育てる事こそ望ましいものを……母后もそれを望んでいるはず。それを……」
「ふんっ! 国王陛下にすら見捨てられた役立たずの王女! 其の王女が生きていることの方が罪よ! 王妃様の為にも何度でも葬ってやる!」
驕り高ぶる人間にも、そうした人間の世界にも興味も関心すら抱けない王ディランながら、この幼い王女アリーヤが哀れに思えてならない。それにこの王女に呼ばれた事には、何かしらの意味があるはずと捉える。
逆に、目の前の侍女への嫌悪感が拭えないでいる王ディラン。
「俺は、どうにもおまえだけは赦せないらしい……嗚呼っ、国王とやらもか……」
だから、この後も王女アリーヤに危害を加えるであろう侍女を池泉へと深く深く沈めた王ディラン。慈悲など授けない。もはや浮いてすら来ない侍女の骸は、深い水底からは這い上がれず、やがて朽ちていくのみ。
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その後。
人知れず王女アリーヤを介抱し、〈王女宮〉の寝台へと運べば、そっと横たえる王ディランは王女アリーヤの幼い寝顔を見つめながら独り呟く。
「幼な子、おまえが俺を呼んだのだ……」
(面白い……俺自らが側にいて見極めてやろう……)
小さな蒼き竜とも蜥蜴ともする姿へと身を窶す王ディランは、暫くの間〈王女宮〉へとこっそりと住み着く。
一度、小さな蒼き竜の姿で隠れ住む王ディランは、図らずも王女アリーヤに見つけられてしまう。怖がるどころか嬉しそうな王女アリーヤ。
「あなたはとても綺麗な蜥蜴ね」
そう言っては嬉しそうに背を撫でる。
「綺麗な蜥蜴さん……良かったら私のお友達になってくれる?」
(何を馬鹿なことを……! それに俺は蜥蜴ではないのだが……)
王ディランの心の声などが聞こえるはずもなく、ひたすら背を撫でつける王女アリーヤ。見れば紫水晶の瞳がきらきらと輝き、その様子から余程に嬉しいらしい。尚も王ディランの化身を構い倒す王女アリーヤ。これが存外に心地が良い。
(この幼な子だからなのか……?)
そうなのかもしれない……と思う王ディラン。
一度確信すれば、もはや王女アリーヤが己れにとって特別な存在として認識する。
こうして出逢った王女アリーヤと王ディラン。その出逢いは偶然とも必然とも。
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王ディランが出逢った王女アリーヤは、王家の姫として生まれながらも捨て置かれている不遇な身の上。誰も王女アリーヤに敬意を払わない。
日々、〈王女宮〉でひっそりと暮らす王女アリーヤの元へと訪れるのは、純粋に義姉姫を慕う歳の離れた義弟王子ジェームスだけ。あとは一匹の蒼い蜥蜴とも竜とも。やがてその蒼き蜥蜴も姿を消す。
図らずも、健気に生きる幼き王女アリーヤに同情しつつも執着したのは王ディランが先とも。
そして月日は流れる。
やがて美しく花開く無垢な王女アリーヤに再び逢う為、王ディランは旅商人の姿に身を窶し、海の恩恵から生み出される珍しい宝飾品を携え、アメジスト王国の王女アリーヤの元へと行商人として参上する。
王女アリーヤを連れ出そうとした王ディラン。敢えて囚われの身へとなったのは、アメジスト王国の国王イーサンの人となりを試す為とも。
「俺のアリーヤを捨て置いた非情な父王をどうするか?」
不遜な笑みを湛える王ディラン。
しかしながら、その想いに待ったを掛ける人物が現れる。
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