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王妃の訃報と嘆く国王と側妃の誤算

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※一部、残酷な描写があるかもしれません。長めの回となります。

※誤字・脱字などの修正は後程のちほど致します。




* * * * * * * * * *


「国王陛下っーーー!! 王妃様がっ……!!」

その訃報ふほうがもたらされたのは、まだ夜が開け切らない時分じぶん

護衛騎士ごえいきしの一人が国王カルロスの側仕そばつかえへと知らせれば、そのまま就寝する国王カルロスの元へと急報を知らせに入る一人の側仕そばつかえ。他の側仕そばつかは、寝所の外にて静かに控え待つ。

「国王陛下……ご就寝中のところ申し訳ございませんが、実は取り急ぎご報告致したい事がー……!」

「いったい何事だ? さわがしいー……」

天蓋てんがいに覆われた寝台の中からは、間違いなくのクラウン王国の国王カルロスの声が響く。

「国王陛下っ! 実は王妃様がっ……王妃アリーヤ様がっ……! 〈離宮〉のご寝所にいて身罷みまかられました!!」

その刹那せつな、国王カルロスからは「ひゅっ!」と息をむ音がれる。

「……何だ、とー……」

慌てて飛び起きる国王カルロスは驚愕きょうがくに目を見開き、急ぎ天蓋てんがいを開ければ、控える側仕そばつかえの身前みまえへとおどり出る。あまつさえ国王カルロスの手には、就寝時でさえ常に身元に置く〈黄金のつるぎ〉がしかと握られ、いささか物騒とも。

「……そんな、馬鹿なっ!! そのような事があってたまるものかっ! 貴様きさまのような側仕そばつかえ如きが馬鹿を申すなっ! 戯言たわごとを申せばたたき斬るぞ……!!」

すらりと〈黄金のつるぎ〉を抜き去る国王カルロスは、そのまま側仕そばつかえの喉元のどもとへと突き付ける。

「……へっ、陛下……?!」

突然の仕打ちに恐れおのの側仕そばつかえには、国王カルロスがこれ程に憤慨ふんがいする理由もの意味すらも理解出来ない。


何がー……これ程に国王カルロスの逆鱗げきりんに触れたのかは、おそらく誰にもわからない。わかるはずもない。

国王カルロスの胸中などを誰が推し量れると云うのか? 


まさしく知るのは当人のみ。それは当然とも。




* * * * * * * * * *


さかのぼれば。

クラウン王国の若き国王カルロスは、婚姻当初から他国アメジスト王国から政略結婚の為に輿入こしいれした王妃アリーヤを冷遇れいぐうしていた節がある。それと云うのも国王カルロスには、既に王妃アリーヤを迎え入れる以前から寵愛ちょうあいする側妃ベリンダが存在していた。

美しく愛らしい側妃ベリンダは、の国の高位貴族出身の娘であり、国王カルロスとは幼馴染おさななじみに当たる。幼い頃から甘え上手で無邪気むじゃきなベリンダは、国王カルロスの庇護欲ひごよくそそるには充分。

口約束とは云え、王妃となる事を約束されていた側妃ベリンダ。それを信じて疑わない。

ーだが、無情むじょうにも国王カルロスの突然の政略結婚により、王妃の座は王女アリーヤに奪われる事となる側妃ベリンダ。それでも国王カルロスからの寵愛ちょうあいは揺るぎない。

所為せいとも。

おかげで家臣らも他国アメジスト王国の王妃アリーヤよりも、国王カルロスが寵愛ちょうあいする自国の令嬢に重きを置き、愛らしい側妃ベリンダにこそ敬意を払っていた経緯いきさつがある。




* * * * * * * * * *


王妃アリーヤの訃報ふほうを伝えただけの側仕そばつかえ。何か粗相そそうをしたわけでもない。ーしかし、目の前の国王カルロスは明らかに憤慨ふんがいしている。

意味もわからず、国王カルロスの不興を買いながらも、やはり聞かずにはいられない側仕そばつかえは、不敬だとは承知していながらも恐る恐る物申す。

「こっ、国王陛下?! おそれながらも申し上げれば、何故なぜそのようにお怒りになられるのでしょうか?! 国王陛下は以前より王妃様を冷遇れいぐうなされておいででした。その為に王妃様を〈離宮〉へと追いー……」

「黙れっ!」

「ひっ!!」

側仕そばつかえの喉元のどもとには〈黄金のつるぎ〉の剣先が軽く刺さり、血が一雫ひとしずしたたり落ちる。

の王妃アリーヤが亡くなっただとー……そのような事があってたまるものかっ!!」

握り締めるこぶしを震わせ、思わず激昂げっこうする国王カルロス。

「こっ、国王陛下……どっ、どうかおゆるし下さい……!」

身を震わせては平伏へいふくする側仕そばつかえ。

その刹那せつな、まさに助け船を出したのが、国王カルロスが寵愛ちょうあいする側妃ベリンダに他ならない。

豪華な天蓋てんがい付きの寝台から降り立つ側妃ベリンダは、薄い夜着やぎまとっただけの悩ましい姿を平然とさらす。「美しい黄金の巻き髪」を長く垂らし、うるう「翡翠ひすいの瞳」はまさに魅惑的。

さすがは国王カルロスの寵愛ちょうあいを授かる側妃ベリンダ。おかげで「王国一の美姫びき」と称されるのもうなずける。

ーだが、それ以上に美しいと称されるのが、クラウン王国の若き国王カルロス。

側妃ベリンダと同じく「輝く黄金の髪」をさらりとなびかせ、鋭い眼差まなざしは「深いあお」。見るも鮮やかな「金髪碧眼きんぱつへきがん」はクラウン王国の王族のあかし。見事な〈王色おうしょく〉をまとう若き国王カルロスは、いやおうでも一目を引く。

まさに紳士淑女しんししゅくじょ羨望せんぼうの的とも云える国王カルロスの側へと歩み寄る側妃ベリンダは、甘い声音こわねで優雅に告げる。

「陛下……そのようにお怒りにならずとも良いではありませんかー……どうかおしずまり下さい。私のいとしいカルロス陛下……ご覧下さい、忠実な側仕そばつかえがおびえております」

側仕そばつかえの前でも国王カルロスを平然と愛称あいしょうで呼び、ぴたりと寄り掛かっては甘い声音こわねささやくように告げる側妃ベリンダ。ついで聖母のような優しい笑みさえ向ける。

「私のカル……そうお怒りになられては側仕そばつかえが可哀想かわいそうですわー……それに王妃アリーヤ様をうとましく思われておられたのは陛下ご自身なのですから、それこそみずから毒をあおって命を絶たれたのであれば、余計な手間が省けてむしろ良かったのではー……?」

無慈悲むじひ言動げんどうとも取れるような事をさらりと告げる側妃ベリンダ。聖母の微笑ほほえみと云うよりは悪女の微笑ほほえみかもしれない。

国王カルロスの気の所為せいでなければ、一瞬だが側妃ベリンダの口角がかなり上がり、不遜ふそんな笑みさえこぼれていたとも。

「おまえは何を言っている? 王妃アリーヤが亡くなった事が良かったとでも言いたいのかー……」

「ええ、それは勿論もちろんですわ」

事もなげに告げる側妃ベリンダは、悪びれる様子もなく更に続ける。

「王妃アリーヤ様は政略結婚の為に仕方なく据えたお飾りの王妃様でしょう? 私……知っているのよ、カル。王妃アリーヤ様とは〈初夜の儀〉さえ済ませていない事もー……それに貴方あなたが王妃アリーヤ様を冷遇れいぐうしているのは、もはや誰もが知る周知の事実ではなくて……?」

「それはー……違う、本当は……はアリーヤのことをー……」

何事かを呟く国王カルロス。意図せず、その表情かおには悲壮感ひそうかんが漂う。

「陛下? 如何いかがなされましたのー……」

怪訝けげんそうに国王カルロスを見遣みやる側妃ベリンダだが、それも一瞬の事と消え、更に言葉を続ける。

「ねぇ、カル……厄介者の王妃アリーヤ様がみずから毒をあおったのであれば、王妃アリーヤ様の母国アメジスト王国にも言い訳が立つと云うもの。それにー……」

今度こそ、目に見えてはっきりと不遜ふそんな笑みを浮かべる側妃ベリンダ。

「これで心置きなく私が王妃になれっー……ひぃっ!!」

思わず見苦しい悲鳴を上げる側妃ベリンダの喉元のどもとには、国王カルロスが差し向けた〈黄金のつるぎ〉が容赦なく触れる所為せいで、すでに薄い皮膚ひふを裂き、今にも首を落とさないばかりにあてがわれたまま。

「カっ、カル……」

おののく側妃ベリンダの首筋からは、赤い鮮血がしたたり落ちる。

「ベリンダ、何故なぜだ? 何故なぜおまえが王妃アリーヤの 理由が毒だと知っている? しかも先程から王妃アリーヤが自死したとも言っていたなー……王妃アリーヤが自死したと決めつける要因は何だ?」

「そっ、それは側仕そばつかえがー……?!」

側仕そばつかえは一言も毒をあおったなどとは口にしてはいないー……自死したともな? それを知ると云うことはー……ベリンダ、おまえが王妃アリーヤに毒を盛ったと言っているようなものだ」

「……カルっ!!」

みるみると青褪あおざめる側妃ベリンダの首筋にあてがわれた〈黄金のつるぎ〉が更に食い込む。

「カっ、カル……痛いわ。お、お願いだからー……やめ、やめて……」

懇願する側妃ベリンダ。

冷めた眼差まなざしの国王カルロスは、ようやくにして側妃ベリンダの首筋から〈黄金のつるぎ〉を離す。

その途端にわめき始める側妃ベリンダには、もはや優雅さの一欠片ひとかけらも見当たらない。やはり側妃ベリンダとて命が惜しい所為せいで、もはや構ってはいられない様子。

普段の優雅ゆうがで愛らしい側妃ベリンダからは、およそ想像も出来ない程に見苦しくも必死にすがってみせる。あまつさえ国王カルロスの両足へとしがみついては、ただただひたすらに懇願する姿は滑稽こっけいとも。

「カル、カル! 違う……違うのよ! 私はあやめてなどいないわ! 本当よ! カルロス、お願いだから信じてー……私は毒を渡しただけなの……あの女が勝手に死んだのよ! 本当なのよ! どうか信じてっ……!!」

けたたましくわめき散らす側妃ベリンダ。

「黙れっーーー!!」

恫喝どうかつする国王カルロスは、側妃ベリンダを容赦なく足蹴あしげにする。

「ぎゃあっ!!」

奇声を上げては床へと転がる側妃ベリンダ。

「……わ、私は……あやめてはー……本当なの……よ……」

呟く側妃ベリンダの声は国王カルロスには届かない。




* * * * * * * * * *


そう、確かに側妃ベリンダが言うように、手を下してはいない。

ーただ、国王カルロスに冷遇れいぐうされ続けるみじめな王妃アリーヤへと毒の小瓶こびんを渡し、そっとささやいただけのこと。

其処そこには王妃アリーヤへと平然と毒を吐く、まさかの裏の顔を持つ側妃ベリンダの姿がある。

「ねぇ、冷遇妃れいぐうひ様? 邪魔な貴女あなたには是非ぜひ死んで頂きたいのー……貴女あなたがこの世から去っても国王陛下はおろか誰一人だれひとりとして悲しむ者はいない。何故なぜだかわかる? 元より私こそが王妃として望まれていたからなの。そう、貴女あなたはただの余所者よそもの盗人ぬすっとでしかないー……邪魔なのよ、みじめな王妃様?」

不遜ふそんな笑みを浮かべる側妃ベリンダへと何の感情も見せない王妃アリーヤ。

「あらっ? もう心が壊れているのかしら? お気の毒様」

そして「ー良ければれを差し上げるわ」と笑みを浮かべては、毒の小瓶こびんを王妃アリーヤへと手渡す。

まさに、側妃ベリンダは毒の小瓶こびんを渡しただけの事。


実は、みずから命を絶ったのは王妃アリーヤ自身。

更に云えば、「冷遇妃れいぐうひ」とさげすまれていようとも王妃アリーヤ自身は一向に気にしてはいない。周囲が勝手にそうさわいでいただけの事で、むしろ都合が良かったとも。

王女としてのしがらみを捨て、自由になりたかった王妃アリーヤ。

ただ、せつに願うのはー……心より愛する者と共に生きること。

生国しょうごくアメジスト王国の父王により決められた政略結婚に、実は誰よりも嫌がっていたのは他でもない王妃アリーヤ自身。

みずから命を絶った今となっては、もはや今更な話。




* * * * * * * * * *


一方。

そのような事とは露知つゆしらず。

最早もはや、怒りに湧く国王カルロスには経緯いきさつなどは瑣末さまつなこと。

何よりも側妃ベリンダの毒により王妃アリーヤが「この世からもおのれからも去った事」に、意外にも心が打ちのめさる国王カルロスがいる。

衛兵えいへいーーーっ!! 王妃殺しだ! 大罪人の側妃ベリンダを捕らえよ!」

国王カルロスの怒号どごうと共に捕縛ほばくされた側妃ベリンダ。

一瞬、自分の身に何が起こったのかさえわからず、唖然あぜんとする側妃ベリンダだが、流石に近衛騎士このえきしに捕縛されればいやおうでもこの状況の悲惨ひさんさを理解する。

それは控える側仕そばつかえらも同様で、目の前で捕縛される国王カルロスの寵妃ちょうひベリンダの姿には「まさかっ、ご寵愛ちょうあいを受ける側妃ベリンダ様が罪人などとはあり得ない……」と誰もが驚愕きょうがくする有様ありさま

「国王陛下はご乱心なされたのであろうかー……」

そうした声さえもまことしやかにささやかれる。

王妃アリーヤを冷遇れいぐうしていた
国王カルロスのいきどおりが、当然ながら臣下らには、やはり到底理解出来ないとも。


加えて、国王カルロスへと更なる追い討ちを掛けるような出来事が起こる。

国王カルロス自身の下命かめいにより、以前から〈離宮〉へと追いやられていた王妃アリーヤ。今や自死した王妃アリーヤの居室きょしつが、そのまま突然の火災に見舞われ、業火に包まれては焼け落ちたのである。

後には、本人とは判別出来ない程に無惨むざんにも焼けただれた王妃アリーヤらしき者の亡骸なきがらだけが見つかる。


その後。

悲壮感ひそうかんに打ちのめされる国王カルロスの下命かめいもと、王妃アリーヤの盛大な葬儀が営まれる事になるとは、自死した王妃アリーヤでさえも予想もしていない。

更には、寵愛ちょうあうされていはずの側妃ベリンダが、まさかの憂目うきめうとは誰が思う?







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