上 下
162 / 195
紡ぎ編

4.絆されて、ご主人様✦︎

しおりを挟む
※軽い性描写あり。前戯のみ

 扉を引いてもらって中に入ったエディスは、ふう~っと息を吐き出した。熱いシャワーを浴びたばかりの体はまだ湯気が立っていそうなくらいの温かさで、気持ちがいい。
「まっさか列車の中にシャワーと寝室があるなんてな。すげーよなあ」
 真新しい白いバスローブまで用意されていて、しかも列車旅なのにベッドまで付いているのだ。至れり尽くせりすぎて怖くなってくる。
 レウがカーテンを下ろしに行ったのを見送り、髪をタオルで拭いながらベッドに腰かけた。
「明日の朝早くには要塞に着くんだろ。早く寝ようぜ」
 遅くなったのは、エディスの軍部での仕事があって出発が夕方になったせいだ。夕方と朝、どちらが要塞にとって都合がいいかは分からないが、ハイデ側の動きが読めないのでなるべく早く着いておきたかったなと渋面になる。
「なあ、レウは要塞に……」
 肩を押され、ベッドにひっくり返った。柔らかいベッドマットと枕に体を受け止められたエディスの視界には、白い天井と控えめな明かりが入ってくる。
 どうして天井が? とのん気に考えていたが、眉間に皺を寄せて口を引き結んだレウの顔が映り込んできて、彼に押し倒されたのだと気が付く。つくづく顔形の整った奴だなと、怪訝な顔をしている彼を見上げて思う。
「魔物相手に気を許さないでほしいんですが」
 なにを難しい顔をしているのかと思えば、ギールのことが気に食わないらしい。なんだそんなことかと緊張を解いたエディスは笑ってレウの頭を撫でた。
「俺にはお前しかいないって」
 レウの前で宣言したし、最後までしていないとはいえベッドも共にした仲になったというのにまだ不安に感じることがあるのか。困った奴だなと首に手を回して抱き締めようとしたエディスだったが、レウの薄い唇に口を奪われて目を大きく見開く。
 キスが好きな奴だなと思いつつ目を閉じ、口は開ける。潜り込んできた舌に、たどたどしいながらも舌を絡ませる。
「んんぅっ!?」
 だが、バスローブの紐が解かれて目も開けた。頭を振って逃げ、「なっ、なにを」と声を上げる。
「ぁッや……急に、なんだよ。今日は早く寝ないと」
 止めようとしたが、いきなり乳首を吸われ下着の中に手を入れられまさぐられて艶めいた声が出ていく。ギールに嫉妬しているにしても、急すぎて考えが上手く纏まらない。
 ホテルに行った日からキスをする時は乳首も一緒に触られていたせいで感度が上がっている気がする。勃ってもいなかった性器を擦り上げられ、駄目だと膝を擦り合わせた。
「あ、あぁ……っ、ゃ、レウ、だめっ駄目だ!」
 無理矢理に快感を引きずり出すような動きを、腕を掴んで抑え込む。けれど、レウは舌を打って上体を下げる。エディスの脚を両肩にのせたレウに腰を抱かれ、咥えこまれる。頭を掴むが、大きな音を立てて吸われると力が抜けてしまう。
「あうぅッ、ひ、でる、出ちゃうって」
 亀頭に吸い付いて、舌で鈴口をほじくるように舐め回す。早く出せとばかりに玉を親指で押し上げられたエディスが果てると、レウは口に吐き出された精液を飲み干した。
「ぁ、は……はーっ、は、な、なに。なんで?」
 かく、かく、と震える脚を解放したレウはサイドテーブルに置かれた水を飲む。精液の味を口から洗い流すのは気持ち悪さからではないと、エディスはベッドに手を突く。けれど、肩を抑え込まれてキスをされてしまう。
(うぅ、うえぇ……っ)
 自分の精液の味が薄っすらすると、胃から上ってくる吐き気を感じたエディスは早く退いてくれと彼の肩を押した。
「この間の紳士的なレウくんはどこにやったんだよ」
 息が荒いまま睨むと、すみませんと謝ってくる。落ち着いたかと背を擦ろうと上体を起こそうとすると、抱きしめてきたレウにベッドの上に戻された。
「……抱かせてほしい」
 懇願を滲ませた声色に、エディスは弱ったなーー……と目を閉じる。
「慰め合いはよくないって考えはあっても、他の男に嫉妬して~ってのはお前の中では許容範囲なのか」
 これで相手がレウではないか、押し倒されているのが自分ではなく義弟やリスティーであったなら有無を言わさずぶん殴っていたに違いない。
 けれど相手がレウで、押し倒されているのが自分なのでーーどんな理由であったとしても許せてしまうのだ。
「アンタを俺のものにしたい」
 レウらしくないストレートな物言いに顔が熱くなるのを感じた。惚れた男に求められて嬉しくないはずがない。
「ギールと張り合ってどうすんだよ」
 けれど素直ではない自分が先に出ていって、小憎たらしい言葉ばかり口にする。
「アイツは俺の愛人でもなけりゃ恋人でもないんだぞ」
 そう言いながらレウの頭を撫でるが、胸元に顔を押し付けたままで一音も返してこない。枕に頭を落ち着かせたエディスは、天井を見上げて考えた。
(まあ……最悪、明日はそんなに動けなくても問題ない……か? いやでもなあ)
 股関節や腰を痛めると困ったことになるかもしれないと唸って、下を見る。子どものように抱き付いて離れない人が愛おしく、胸が締め付けられていく。
「……レウ、顔上げろって」
 そろそろと起き上ったレウの顔を両手で包み込んで笑う。腹に力を入れて起き上ったエディスはレウの額に口づけて「抱いてくれ」と囁きかけた。
「いいのか、こんな大切な時に」
「言い始めたのお前だろ~、だから俺が使い物にならなかったらレウが怒られろ」
 額同士を押し当てると、レウに力強く身体を引き寄せられる。責任を取ると言われたエディスは声を立てて笑った。
「フェリオネルとか俺の私兵団の奴らとは喧嘩するし、ギールとも相性悪いし困った奴だな」
「鬱陶しいか」
「いいや、満更でもねえよ」
 だから来いよと背中からひっくり返っていく。足を開いて恐る恐る腰を挟み込むと、今日のレウはなにも言わずに太ももを撫でてくる。やっぱり足なのかよと息を漏らしたエディスは、先にキスのひとつでもしたらどうなんだよと首に腕を回して引っ張った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

光る穴に落ちたら、そこは異世界でした。

みぃ
BL
自宅マンションへ帰る途中の道に淡い光を見つけ、なに? と確かめるために近づいてみると気付けば落ちていて、ぽん、と異世界に放り出された大学生が、年下の騎士に拾われる話。 生活脳力のある主人公が、生活能力のない年下騎士の抜けてるとこや、美しく格好いいのにかわいいってなんだ!? とギャップにもだえながら、ゆるく仲良く暮らしていきます。 何もかも、ふわふわゆるゆる。ですが、描写はなくても主人公は受け、騎士は攻めです。

紹介なんてされたくありません!

mahiro
BL
普通ならば「家族に紹介したい」と言われたら、嬉しいものなのだと思う。 けれど僕は男で目の前で平然と言ってのけたこの人物も男なわけで。 断りの言葉を言いかけた瞬間、来客を知らせるインターフォンが鳴り響き……?

【BL】男なのになぜかNo.1ホストに懐かれて困ってます

猫足
BL
「俺としとく? えれちゅー」 「いや、するわけないだろ!」 相川優也(25) 主人公。平凡なサラリーマンだったはずが、女友達に連れていかれた【デビルジャム】というホストクラブでスバルと出会ったのが運の尽き。 碧スバル(21) 指名ナンバーワンの美形ホスト。博愛主義者。優也に懐いてつきまとう。その真意は今のところ……不明。 「僕の方がぜってー綺麗なのに、僕以下の女に金払ってどーすんだよ」 「スバル、お前なにいってんの……?」 冗談? 本気? 二人の結末は? 美形病みホスと平凡サラリーマンの、友情か愛情かよくわからない日常。

とある金持ち学園に通う脇役の日常~フラグより飯をくれ~

無月陸兎
BL
山奥にある全寮制男子校、桜白峰学園。食べ物目当てで入学した主人公は、学園の権力者『REGAL4』の一人、一条貴春の不興を買い、学園中からハブられることに。美味しい食事さえ楽しめれば問題ないと気にせず過ごしてたが、転入生の扇谷時雨がやってきたことで、彼の日常は波乱に満ちたものとなる──。 自分の親友となった時雨が学園の人気者たちに迫られるのを横目で見つつ、主人公は巻き込まれて恋人のフリをしたり、ゆるく立ちそうな恋愛フラグを避けようと奮闘する物語です。

【完結】異世界行ったら龍認定されました

北川晶
BL
溺愛系ハイスペックイケメン×非モテ極悪ノラ猫顔主人公の、シリアス、ラブ、エロ、スマイルも、全部乗せ、異世界冒険譚。庭に現れた、大きな手に掴まれた、間宮紫輝は。気づくと、有翼人種が住む異世界にいた。背中に翼が生えていない紫輝は、怒る村人に追いたてられる。紫輝は黒い翼を持つ男、安曇眞仲に助けられ。羽のない人物は龍鬼と呼ばれ、人から恐れられると教えてもらう。紫輝は手に一緒に掴まれた、金髪碧眼の美形弟の天誠と、猫のライラがこの地に来ているのではないかと心配する。ライラとはすぐに合流できたが、異世界を渡ったせいで体は巨大化、しゃべれて、不思議な力を有していた。まさかのライラチート? あれ、弟はどこ? 紫輝はライラに助けてもらいながら、異世界で、弟を探す旅を始める。 戦争話ゆえ、痛そうな回には▲、ラブシーン回には★をつけています。 紫輝は次々に魅力的な男性たちと出会っていくが。誰と恋に落ちる?(登場順) 黒い髪と翼の、圧倒的包容力の頼れるお兄さん、眞仲? 青い髪と翼の、快活で、一番初めに紫輝の友達になってくれた親友、千夜? 緑髪の龍鬼、小柄だが、熊のような猛者を従える鬼強剣士、廣伊? 白髪の、龍鬼であることで傷つき切った繊細な心根の、優しく美人なお兄さん、堺? 黒髪の、翼は黒地に白のワンポイント、邪気と無邪気を併せ持つ、俺様総司令官の赤穂? 桃色の髪と翼、きゅるんと可愛い美少女顔だが、頭キレキレの参謀、月光? それとも、金髪碧眼のハイパーブラコンの弟、天誠? まさかのラスボス、敵の総帥、手裏基成? 冒頭部はちょっとつらいけど、必ずラブラブになるからついてきてくださいませ。性描写回は、苦手でも、大事なことが書いてあるので、薄目で見てくださると、ありがたいです。

【完結】婚約破棄したのに幼馴染の執着がちょっと尋常じゃなかった。

天城
BL
子供の頃、天使のように可愛かった第三王子のハロルド。しかし今は令嬢達に熱い視線を向けられる美青年に成長していた。 成績優秀、眉目秀麗、騎士団の演習では負けなしの完璧な王子の姿が今のハロルドの現実だった。 まだ少女のように可愛かったころに求婚され、婚約した幼馴染のギルバートに申し訳なくなったハロルドは、婚約破棄を決意する。 黒髪黒目の無口な幼馴染(攻め)×金髪青瞳美形第三王子(受け)。前後編の2話完結。番外編を不定期更新中。

君なんか求めてない。

ビーバー父さん
BL
異世界ものです。 異世界に召喚されて見知らぬ獣人の国にいた、佐野山来夏。 何かチートがありそうで無かった来夏の前に、本当の召喚者が現われた。 ユア・シノハラはまだ高校生の男の子だった。 人が救世主として召喚したユアと、精霊たちが召喚したライカの物語。

愛玩人形

誠奈
BL
そろそろ季節も春を迎えようとしていたある夜、僕の前に突然天使が現れた。 父様はその子を僕の妹だと言った。 僕は妹を……智子をとても可愛がり、智子も僕に懐いてくれた。 僕は智子に「兄ちゃま」と呼ばれることが、むず痒くもあり、また嬉しくもあった。 智子は僕の宝物だった。 でも思春期を迎える頃、智子に対する僕の感情は変化を始め…… やがて智子の身体と、そして両親の秘密を知ることになる。 ※この作品は、過去に他サイトにて公開したものを、加筆修正及び、作者名を変更して公開しております。

処理中です...