悪役王女の跡継ぎはバッドエンドですか?

結月てでぃ

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紡ぎ編

7.足並み揃えぬ無法者たち

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 ──【神風兵】。

 それは【操縦士】と【兵士】の系統に分類される、いわゆる複合系統の最上位職。
 最低限、機械を用いた兵装が無ければ就けないそれは、今の時代では得られない職業。

 だが、過去にはそれに就いた者が居る。
 死した存在から、外付けの職業である超・極級職の器は剥離される──それでも、得たモノすべてが失われるわけではない。

  ◆   □   ◆   □   ◆

「……【神風兵】、これはこれは」

 俺も就職条件をいちおうは満たし、それでも就職せずに残していた極級職。
 渋っていた理由は至ってシンプル、就くことで得られるメリットが少なかったから。

 人数制限が存在する極級職、それを独占し過ぎると制裁が下される。
 それを行う当人から確認済みの情報もあって、避けることを元より選んでいた。

 それより何より、【神風兵】という職業そのものが導く末路を知って止めている。
 ──就職者多数、離職者多数、もっとも多くの原人が就き、死んでいった職業なのだ。

「目標、前方の人型範疇生物の殺害……一部変更を確認。魂魄の確保、あるいは星敵討滅アナウンスの拝聴──了解。これより【神風兵】、任務実行──“決死必敵”発動」

「っ──[アライバー]!」

 機械が魔力式のエンジンを噴かせ、宙に浮かび上がっていた少女。
 宣誓するのは俺の討滅、文字通り必ず敵である俺を決死で討つ意志。 

 対抗するべく俺が用意するのは、似て非なる機械仕掛けの巨人。
 呼び出しと同時に着装が行われ、体を一回りも二回りも大きくする。

 ……理由なんて、ロマンだからで充分。
 操作は基本『SEBAS』主導で行い、ほぼ完璧な動きを取る──だがおそらく、純粋なスペックで向こうと差が生じている。

 相手は極級職、無尽蔵にレベルを上げられその分だけ身・能力値が強化される。
 傾向として【神風兵】の強化で上がるのは魔力と速度──器用さは求められていない。

「──攻撃開始」

「──『ロックオンレーザー:ジェム弾』」

 バズーカ砲サイズの銃から、魔力で構築された弾丸が放たれる。
 俺は対抗するように、必中の光線を向けたうえで宝石の弾丸を撃ち放つ。

 速度は相手の方が上、しかし必中の性質による弾丸同士で衝突──相殺。
 その結果に思わず舌打ちをしたくなるが、そんな暇も無く[アライバー]が動く。

「『ビームブレード』、抜剣!」

「──」

 相手は弾丸の射出と共に近づいてきて、その手には槍が握られている。
 それに対抗するべく、近接武器である剣身がビームで構築された剣を持つ。

 やがてそれらはぶつかり合う──こともなく、『SEBAS』の超絶技巧によって槍を上手く躱し、【神風兵】を斬る。

 光熱の刃が彼女を襲い、兵装ごと裂く。
 それでも槍は、俺を狙おうと軋む腕を動かしこちらに迫ってくる……目標を達成するまで終わらない、悪夢のような戦いが始まる。

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