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デート編
3.冬の一等星しか輝かない
しおりを挟む俺を咲樹から受け取ったレイは、下へは降ろさずに、そのまま自分の腕に座らせるように俺を抱える。
咲樹は、自力でガルムからヒラリと降りた。
「何であの状況で普通にしてられるのよ」
咲樹がレイを睨む。
あの状況?
「獣化してると、風の抵抗とかあまり感じなくなるんです」
風の抵抗?話が全然見えないのだが。
とりあえず、そろそろ降ろして欲しい。
「新幹線の車外かと思ったわよ!」
「目も開けてられないって、危うく首から上がなくなるとこだったじゃん!」
「あのスピードじゃ、ただの枝も凶器よ!」
「貧弱な召喚師じゃ、呼吸困難必至じゃんか!オレの事も少しは考えてあげて!」
けたたましく話すミロとココアに、何かはわからないが大変だった事だけは理解した。
でもミロ、貧弱ではないよな。前に舞闘家からサモナーに転職したって言ってたし。
「オレちゃんの舞闘家は、ココアの武闘家と違って、優雅に舞うように戦うんだよ」と自慢げに言ってたよな。
その後、ココアが自分の一撃必殺の素晴らしさを延々と語って、二人で戦闘談義してたよな。
ウザい酔っ払い二人の面倒を、オーベに押し付けたのでよく覚えている。
ワイワイと四人が話していると、衛兵が一人、コッソリと近付いて来る。
目が合った。
「あの~、それで話を聞いても良いですかね?」
多分責任者なのだろう。他の衛兵よりも鎧がちょっと豪華だ。
頷いてみせると、衛兵の視線がリルへ向く。
そうだよな。見た事のない魔獣だし、ガルムよりも大きい魔獣なんてここでは見ないだろう。
「すまん。もっと街から離れた所で一度止まるつもりだったのだが……」
俺の予想以上に速かった。車位のスピードかと思いきや、ココアの言葉を引用すると新幹線並みだったらしい。
「これは、俺の従魔だ。これからギルドに登録する」
俺の言葉に合わせて、リルがペコリと頭を下げる。空気を読む事はできるらしい。
「身分証はお持ちでいらっしゃいますでしょうか?」
ちょ、言葉遣いが更に馬鹿丁寧に!
ギルドカードを渡すと、既に見慣れた行動をされる。だから、何度見直しても年齢は変わらないっての。
いっそ現実の免許証みたいに、写真付きにした方が良いのじゃないか?
「お返しいたします」
両手でカードを返された。
「このまま冒険者ギルドの方へ、おいでになられますでしょうか?」
「そのつもりだ。それから、俺はただの冒険者だから、その言葉遣いはやめてくれ」
背筋がムズムズするから、その馬鹿丁寧な言葉遣いはやめて欲しい。
「いや、しかし……」
衛兵の視線がチラリとリルを見る。ガルムは先程の伏せ状態で大人しくしているからか、衛兵の今の関心はリルだけだ。
そのリルは、初めて見るものに興味津々なのか、お座り状態で周りをキョロキョロ見回し、目をキラキラさせている。
これが傍から見たら、獲物を狙うギラギラした目に見えているのかもしれんが……
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