113 / 127
三章/夏歌えど、冬踊らず
森に解ける灰・四
しおりを挟む ボートを降りて、代わりに浮き輪を取り出して、湖の中に入る。
冷たい湖水に一度身体を震わせるアシュリンだったが、すぐに慣れてバシャバシャと音を立てて泳ぎ出した。
「気持ちいいー!」
やっぱりこの湖で泳ぐのは格別だと感じる。小さい頃はあまりにも大きな湖で怖かったが、一度湖に入ってしまえばその冷たさと浮遊感のとりこになった。
「ラルフ、こっちこっち!」
大きく手を振ってラルフを誘う。
ラルフは辺りを見渡して、浮き輪を使ってアシュリンのほうにゆっくり移動した。
「……あれ、もしかして、泳いだことない?」
「うん。なんかこの浮遊感、不思議な感じ」
ぷかぷかと浮いているのは浮き輪のおかげだ。だが、まだ浅いところだから危険ではないだろうと判断して、アシュリンのあとを追ったラルフ。
アシュリンの質問に軽く頬をかくのを見て、「そっかぁ」と小さく言葉をこぼした。
「海では泳がなかったの?」
「見ただけで、入りはしなかったな。そういえば」
ラルフは以前見た海を思い出し、目を閉じた。今でもハッキリとあの日見た海の光景がよみがえる。
「じゃあ、今度行ったら泳いでみようよ! わたしも泳いでみたいし」
当たり前のように未来のことを言われて、ラルフはぽかんと口を開け、それからふっと笑みを浮かべた。
「そうだね。今度行ったらそうしてみよう」
一緒に海ではしゃいでいる姿を想像して、アシュリンはきっとすっごく目を輝かせるんだろうなぁと考えていると、それは今もかと考えを改める。
「アシュリンは泳ぐの好き?」
「うん! だってぷかぷか浮いていると、気持ち良いもん!」
「アシュリンはお風呂でもぷかぷか浮いてるにゃ」
「温泉も好きそう」
「温泉は行ったことないなぁ。いつか行ってみたい!」
その言葉は少し意外だった。ラルフは目を瞬かせ、それからぴっと人差し指を立てる。
「じゃあ、神殿都市の近くに温泉があるから、まずはそこを目指そうよ」
「さんせーいっ!」
アシュリンが右手を高く上げた。
ノワールは「どんどん目的地が増えていくにゃあ」と言葉をこぼし、アシュリンの頭の上に乗る。
ルプトゥムは湖水の冷たさが気に入ったのか、バシャバシャと音を立てて泳いでいて、楽しそうだ。
たくさん泳いで、遊んで、メイソンとロッティに「そろそろ帰るよー」と声をかけられるまで、アシュリンとラルフは湖で遊んだ。こんなに遊んだことは初めてかもしれないとラルフは思う。
「楽しかった?」
「……うん、アシュリン、ありがとう」
「どういたしまして?」
ラルフがどうしてアシュリンにお礼を伝えたのか、彼女にはわからなくて首をかしげながらも答えて、メイソンとロッティが待っている湖岸までいそいで戻った。
冷たい湖水に一度身体を震わせるアシュリンだったが、すぐに慣れてバシャバシャと音を立てて泳ぎ出した。
「気持ちいいー!」
やっぱりこの湖で泳ぐのは格別だと感じる。小さい頃はあまりにも大きな湖で怖かったが、一度湖に入ってしまえばその冷たさと浮遊感のとりこになった。
「ラルフ、こっちこっち!」
大きく手を振ってラルフを誘う。
ラルフは辺りを見渡して、浮き輪を使ってアシュリンのほうにゆっくり移動した。
「……あれ、もしかして、泳いだことない?」
「うん。なんかこの浮遊感、不思議な感じ」
ぷかぷかと浮いているのは浮き輪のおかげだ。だが、まだ浅いところだから危険ではないだろうと判断して、アシュリンのあとを追ったラルフ。
アシュリンの質問に軽く頬をかくのを見て、「そっかぁ」と小さく言葉をこぼした。
「海では泳がなかったの?」
「見ただけで、入りはしなかったな。そういえば」
ラルフは以前見た海を思い出し、目を閉じた。今でもハッキリとあの日見た海の光景がよみがえる。
「じゃあ、今度行ったら泳いでみようよ! わたしも泳いでみたいし」
当たり前のように未来のことを言われて、ラルフはぽかんと口を開け、それからふっと笑みを浮かべた。
「そうだね。今度行ったらそうしてみよう」
一緒に海ではしゃいでいる姿を想像して、アシュリンはきっとすっごく目を輝かせるんだろうなぁと考えていると、それは今もかと考えを改める。
「アシュリンは泳ぐの好き?」
「うん! だってぷかぷか浮いていると、気持ち良いもん!」
「アシュリンはお風呂でもぷかぷか浮いてるにゃ」
「温泉も好きそう」
「温泉は行ったことないなぁ。いつか行ってみたい!」
その言葉は少し意外だった。ラルフは目を瞬かせ、それからぴっと人差し指を立てる。
「じゃあ、神殿都市の近くに温泉があるから、まずはそこを目指そうよ」
「さんせーいっ!」
アシュリンが右手を高く上げた。
ノワールは「どんどん目的地が増えていくにゃあ」と言葉をこぼし、アシュリンの頭の上に乗る。
ルプトゥムは湖水の冷たさが気に入ったのか、バシャバシャと音を立てて泳いでいて、楽しそうだ。
たくさん泳いで、遊んで、メイソンとロッティに「そろそろ帰るよー」と声をかけられるまで、アシュリンとラルフは湖で遊んだ。こんなに遊んだことは初めてかもしれないとラルフは思う。
「楽しかった?」
「……うん、アシュリン、ありがとう」
「どういたしまして?」
ラルフがどうしてアシュリンにお礼を伝えたのか、彼女にはわからなくて首をかしげながらも答えて、メイソンとロッティが待っている湖岸までいそいで戻った。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説

BL短編まとめ(甘い話多め)
白井由貴
BL
BLの短編詰め合わせです。
主に10000文字前後のお話が多いです。
性的描写がないものもあればがっつりあるものもあります。
性的描写のある話につきましては、各話「あらすじ」をご覧ください。
(※性的描写のないものは各話上部に書いています)
もしかすると続きを書くお話もあるかもしれません。
その場合、あまりにも長くなってしまいそうな時は別作品として分離する可能性がありますので、その点ご留意いただければと思います。
【不定期更新】
※性的描写を含む話には「※」がついています。
※投稿日時が前後する場合もあります。
※一部の話のみムーンライトノベルズ様にも掲載しています。
■追記
R6.02.22 話が多くなってきたので、タイトル別にしました。タイトル横に「※」があるものは性的描写が含まれるお話です。(性的描写が含まれる話にもこれまで通り「※」がつきます)
誤字脱字がありましたらご報告頂けると助かります。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
はじまりの朝
さくら乃
BL
子どもの頃は仲が良かった幼なじみ。
ある出来事をきっかけに離れてしまう。
中学は別の学校へ、そして、高校で再会するが、あの頃の彼とはいろいろ違いすぎて……。
これから始まる恋物語の、それは、“はじまりの朝”。
✳『番外編〜はじまりの裏側で』
『はじまりの朝』はナナ目線。しかし、その裏側では他キャラもいろいろ思っているはず。そんな彼ら目線のエピソード。
俺の闇ごと愛して欲しい
pino
BL
大学一年生の河井晃は同じ大学一年生の如月泉に悩まされていた。愛想を振りまきながら転々といろんな人の家に泊まり歩く泉に一週間近く居座られてそろそろ限界を迎えていた。何を言っても晃の住むアパートに泊まりたがり家に帰ろうとしない泉に、とうとう友達以上の事をされてしまう。ノンケだった晃は断ろうと説得を試みるが全然通じる気配がなく、夕飯代と酒に釣られて結局また家に招き入れていた。そんな日々を繰り返す内に晃の泉に対する意識も変わって行く……
BLです。
ワンコ×ノンケ(デレ×ツンデレ)のお話です。

ヤンデレだらけの短編集
八
BL
ヤンデレだらけの1話(+おまけ)読切短編集です。
全8話。1日1話更新(20時)。
□ホオズキ:寡黙執着年上とノンケ平凡
□ゲッケイジュ:真面目サイコパスとただ可哀想な同級生
□アジサイ:不良の頭と臆病泣き虫
□ラベンダー:希死念慮不良とおバカ
□デルフィニウム:執着傲慢幼馴染と地味ぼっち
ムーンライトノベル様に別名義で投稿しています。
かなり昔に書いたもので芸風(?)が違うのですが、楽しんでいただければ嬉しいです!

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる