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二章/少年よ、明日に向かって走れ!!
愛とか愛じゃないとか・六
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ぴょんと地面に足がついても、二人は走り続ける。結局、アクガミはあまり倒せていない。身の安全は全く保証させていないのだ。
「なあっ、これ誰が倒すんだよ!?」
「京都支部に要請を頼んでいただろう。誰か救援が来るんじゃないのか!?」
手を握りあって逃げる。ロマンチックなようでいて、全くそうではない。わあわあと叫びながら全力で走る二人の目の前に、黒いワゴン車が止まる。
勢いよく後ろのドアが開き、中から四葉が叫ぶ。
「乗って!!」
「助かった……!」
慌てて駆け寄って乗り込むと、扉を閉める前から急発進した。シートベルトをつけようとするが跳びはねてしまい、悪戦苦闘する。
「あなたたち、無茶ばっかりすると司令から怒られるわよ」
心配してるんだからね、と明らかに車道ではない所を猛スピードで車を走らせている早川には言われたくないとは思いつつも、その通りではあるので押し黙った。
「二人が無事で良かったよ」
穏やかに四葉は言い、真ん中に座っている徹の手を握る。
「……すみません、ありがとうございます」
「怪我をしてないなら、それでいいのさ」
緩衝材の役割をしてくれようとする四葉に申し訳なく感じている徹のもう片方の手を当夜が握った。
「こら、話している最中だろう。お前は僕よりももっと反省すべきなんだぞ」
そう徹が眉を吊り上げて怒るも、当夜はへへっと笑うだけだ。
「はい、早川。……えっ、桜鶴さんもう着いたんですか!? え、近くにちこちゃんと涯くんが? それはもう、なんというか……奇跡ですね」
有り難いです、と早川は安心したように表情を和らげる。
「皆、もう大丈夫ですよ! とっても強いお兄さんたちが来てくれたので任せましょう。岩草くんも機体ごと回収されたんですって」
そう言うと、四葉も良かったと安堵した。ほんわかと、車内に温かい空気が満ちてくる。
「このまま家まで送りますね」
「えっ、アマテラス機関に戻らないのか!?」
「もう遅いので。また今度来てください」
親御さんが心配するでしょうと早川が言うと、当夜はなにか言いたげに腰を上げて口を開く。だが、なにも言えずに座り直して、膝の上にのせた左手をぎゅっと握りしめた。
「当夜、今日は僕の家に来るといい。母さんがいるはずだから……」
「ううん、いいよ。ちゃんと自分の家に帰る」
徹の両親は、夜遅くではあるが週に三日は必ず帰ってくる。当夜の家はそうではない。
だからこそ、幼なじみだからといっても邪魔はしたくなかった。
(昨日、俺も父さんと話したかった……二ヶ月ぶりだったのに。高校の入学式も、誰も来なかったのに)
キツく目を閉じ、当夜は車のドアにもたれ掛かる。初夏になりかかりの時期なのに、氷のように冷たく感じられた。
(愛とか、そんなの……全然分かんないよ、俺)
「なあっ、これ誰が倒すんだよ!?」
「京都支部に要請を頼んでいただろう。誰か救援が来るんじゃないのか!?」
手を握りあって逃げる。ロマンチックなようでいて、全くそうではない。わあわあと叫びながら全力で走る二人の目の前に、黒いワゴン車が止まる。
勢いよく後ろのドアが開き、中から四葉が叫ぶ。
「乗って!!」
「助かった……!」
慌てて駆け寄って乗り込むと、扉を閉める前から急発進した。シートベルトをつけようとするが跳びはねてしまい、悪戦苦闘する。
「あなたたち、無茶ばっかりすると司令から怒られるわよ」
心配してるんだからね、と明らかに車道ではない所を猛スピードで車を走らせている早川には言われたくないとは思いつつも、その通りではあるので押し黙った。
「二人が無事で良かったよ」
穏やかに四葉は言い、真ん中に座っている徹の手を握る。
「……すみません、ありがとうございます」
「怪我をしてないなら、それでいいのさ」
緩衝材の役割をしてくれようとする四葉に申し訳なく感じている徹のもう片方の手を当夜が握った。
「こら、話している最中だろう。お前は僕よりももっと反省すべきなんだぞ」
そう徹が眉を吊り上げて怒るも、当夜はへへっと笑うだけだ。
「はい、早川。……えっ、桜鶴さんもう着いたんですか!? え、近くにちこちゃんと涯くんが? それはもう、なんというか……奇跡ですね」
有り難いです、と早川は安心したように表情を和らげる。
「皆、もう大丈夫ですよ! とっても強いお兄さんたちが来てくれたので任せましょう。岩草くんも機体ごと回収されたんですって」
そう言うと、四葉も良かったと安堵した。ほんわかと、車内に温かい空気が満ちてくる。
「このまま家まで送りますね」
「えっ、アマテラス機関に戻らないのか!?」
「もう遅いので。また今度来てください」
親御さんが心配するでしょうと早川が言うと、当夜はなにか言いたげに腰を上げて口を開く。だが、なにも言えずに座り直して、膝の上にのせた左手をぎゅっと握りしめた。
「当夜、今日は僕の家に来るといい。母さんがいるはずだから……」
「ううん、いいよ。ちゃんと自分の家に帰る」
徹の両親は、夜遅くではあるが週に三日は必ず帰ってくる。当夜の家はそうではない。
だからこそ、幼なじみだからといっても邪魔はしたくなかった。
(昨日、俺も父さんと話したかった……二ヶ月ぶりだったのに。高校の入学式も、誰も来なかったのに)
キツく目を閉じ、当夜は車のドアにもたれ掛かる。初夏になりかかりの時期なのに、氷のように冷たく感じられた。
(愛とか、そんなの……全然分かんないよ、俺)
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