忘却のカグラヴィーダ

結月てでぃ

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二章/少年よ、明日に向かって走れ!!

君の×・二

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「さっ、そろそろ検査結果も出たでしょうし……黒馬はもう仕事に戻りなさい」
「承知いたしました、司令」
 微苦笑をしながら席を立った黒馬の背を、鏡子が軽く叩く。意味深な視線を送られた黒馬は、心配しないでくださいと唇に人差し指の背を当てる。
「いずれにしろ、こうなることは理解できていましたからね」
「……そう。それならいいのよ」
 鏡子は立ち上がって当夜たちの方に歩み寄ると、徹の頬に手を当てた。頬を両手で包み込んで、下から覗き込む。
「あなたは悪い子ね」
 その言葉に当夜の胸が跳ね、目が見開かれる。
 近距離から鏡子に真顔で見つめられた徹は、緊張から唾を飲み込んだ。
「記憶を共有できる人がいることは幸せなことなのよ。その大切さを忘れるのなら……あなたには神様からの罰が下るわ」
 青ざめる徹の頬から手を離して、鏡子は私からの話は以上ですと言い切る。
「失礼するわ」
 ファイルを手に歩き出した鏡子の背中に、徹は叫びを投げかけた。
「待ってください、由川司令!!」
 鏡子は立ち止まると、振り返りもせずに息を漏らす。
「……なにかしら」
「ぼ、僕たちは……相談があって来たんです。当夜が、当夜が失うものは一体な」
 鏡子がハイヒールの踵を鳴らして振り返った途端、警報が鳴り響いた。ピンと張りつめた糸が鏡子と徹の間に張られたまま、当夜は駆けだす。
「六条四葉、出動します!!」
 一人下がった所で様子を伺っていた四葉も、敬礼をしてから出動準備をするために走り出していく。残った徹は鏡子と睨み合ったまま動けないでいた。
「どうしたの、戦いなさい」
 ファイルを手で打った鏡子は、徹にそう命じる。鏡子の口から戦えという言葉を初めて聞いた徹は目を驚きに満たし、言葉を聞き返した。
「驚くことではないでしょう。私はここの司令なんですからね」
 雅臣と黒馬、どちらもアクの強い性格をしている。その二人と知り合いなのだから、鏡子が一筋縄でいかない人なのだろうということは徹も頭の隅の中では理解していた――はずだった。
 鏡子は徹に背を向け、首を傾けて視線を徹にやる。オレンジ混じりの赤い口紅を塗った口の端を、不敵そうに吊り上げて微笑した。
「今日の私は、本気で殺すわよ」
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