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二章/少年よ、明日に向かって走れ!!
隙を無くして・三
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徹は更衣室の扉を開けて、その奥にあるシャワールームへと飛び込む。
四つある個室の内、一番奥に入り、薄っぺらい戸を閉める。二人が寝そべっても余りあるほどの広さだ。床に当夜を下ろすと、壁にかけられているシャワーを取り、水温を調節する。
「当夜、自分で体を洗えるか?」
「う、うん……っ」
くたりと座り込んで壁に背中を預けている当夜は、小さく頷きながらも手を伸ばそうとした。その手は震えていて、シャワーノズルを掴んでもすぐに落としてしまう。
「ご、ごめん」
息を詰まらせて自分の体を抱いた当夜は、膝を擦り合わせた。小さくうめき声に似たような囁きを口から零し、涙を落とす当夜を見つめた徹は、ごくりと唾を飲み込む。
「分かった、当夜。僕がやろう」
「え……?」
決意した徹は当夜の肩を抱き締め、真正面から顔を覗きこんだ。頬を上気させ、目を潤ませた当夜の唇は強く噛んだためか血が滲んでいる。顔を寄せ、その血を舐めた徹は当夜を抱き締めた。
「僕に身を委ねればいい」
「ほ、本当か……?」
不安に目を揺らす当夜に、徹はしっかりと首を縦に動かして見せる。
「ああ」
「けどっ、俺……体がおかしいんだ。痛いのに、痒くて。どっかおかしいんだ」
変態なのかもしれないと泣きじゃくる当夜に、徹は眉を強く引き寄せた。心中であの変態がと知り合いの男を罵る。
「当夜、お前は変態なんかじゃない。変態なのはお前をいたぶったアイツだ」
そう言って涙を舌で舐めとると、当夜はもう一度本当かと訊ねてきた。それを肯定して、当夜を刺激しないように頭をゆっくりと柔らかく撫でる。
「あのプールに入っている液体は、僕たち鉄神に適合した人間にのみ効力を発揮するものだ。液体に浸かるだけで健康状態や全身のサイズチェックができる。それと、鉄神への適合率もだ。あの液体に入った時に与えられた刺激が激しければ激しい程、鉄神に適合している……お前は余程強いらしいな」
そこまで説明すると、当夜はようやく安心したのか表情を和らげて徹に抱き付いてきた。怖かったんだ、と素直な気持ちを伝えてくる当夜を、徹はそうかと言いながら抱きしめる。だが、いつまでもそうしてはいられない。背中を二度軽く叩くと、徹はシャワーを手に取った。
「早いところ流してしまおう」
「うん、お願い」
我慢できるかという問いに当夜は頷いたので、徹は水で洗い流していく。肌を不必要に刺激しないように最低限の動きで流し終えた徹が、シャワーノズルを壁の金属部分にひっかける。
四つある個室の内、一番奥に入り、薄っぺらい戸を閉める。二人が寝そべっても余りあるほどの広さだ。床に当夜を下ろすと、壁にかけられているシャワーを取り、水温を調節する。
「当夜、自分で体を洗えるか?」
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「ご、ごめん」
息を詰まらせて自分の体を抱いた当夜は、膝を擦り合わせた。小さくうめき声に似たような囁きを口から零し、涙を落とす当夜を見つめた徹は、ごくりと唾を飲み込む。
「分かった、当夜。僕がやろう」
「え……?」
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「僕に身を委ねればいい」
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「ああ」
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「当夜、お前は変態なんかじゃない。変態なのはお前をいたぶったアイツだ」
そう言って涙を舌で舐めとると、当夜はもう一度本当かと訊ねてきた。それを肯定して、当夜を刺激しないように頭をゆっくりと柔らかく撫でる。
「あのプールに入っている液体は、僕たち鉄神に適合した人間にのみ効力を発揮するものだ。液体に浸かるだけで健康状態や全身のサイズチェックができる。それと、鉄神への適合率もだ。あの液体に入った時に与えられた刺激が激しければ激しい程、鉄神に適合している……お前は余程強いらしいな」
そこまで説明すると、当夜はようやく安心したのか表情を和らげて徹に抱き付いてきた。怖かったんだ、と素直な気持ちを伝えてくる当夜を、徹はそうかと言いながら抱きしめる。だが、いつまでもそうしてはいられない。背中を二度軽く叩くと、徹はシャワーを手に取った。
「早いところ流してしまおう」
「うん、お願い」
我慢できるかという問いに当夜は頷いたので、徹は水で洗い流していく。肌を不必要に刺激しないように最低限の動きで流し終えた徹が、シャワーノズルを壁の金属部分にひっかける。
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