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二章/少年よ、明日に向かって走れ!!
東京支部・二
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小走りで徹に追いついた当夜は、徹の服の裾をつかむ。
「こら、女性をあんな風に呼んだら失礼だろう」
徹が当夜の跳ねている髪を手で直しながら注意すると、当夜はえっと零した。
「そうなのか?」
「……まったく、お前は」
徹は指の先を額に当てて細い息を吐きだす。きょとんと目を丸くして、小首を傾げて見上げてくる。当夜の庇護欲を掻きたてる姿に徹は目元を和らげた。
「まあ、いい。嫌そうではなかったからな」
「ふぅん……?」
あまりよく理解していないのか、中途半端な声を出した当夜は、徹の横顔を見つめる。眉を下げ、切なそうな顔をしている当夜に気づいた。親指を顎の下に押し当てて上向かせる。
「あっ……な、なに?」
薄く開いた当夜の口を見つめた徹は、
「なにを考えている?」
と問いただした。
「それは、その」
目をうろたえさせる当夜の喉元を指の腹で撫でさすった徹は、ん? と低く促す。
「その……と、徹の」
「僕がどうした」
まるで猫を撫でるような徹の手の動きに、当夜は小さく声をもらした。
「徹、もう俺に隠し事してないよな……?」
これだけで感じているのか、薄ら目に涙の膜を張った当夜は、自分の頬に当てられている徹の手に触れ、閉じた唇をきゅっと上げた。
「それは」
「もう、こんな風に一人で抱えないんで欲しいんだ」
当夜の口から押し出された言葉に、徹は目を見張る。当夜は痛む左胸を庇うために、服の胸元を右手で握りしめた。
「徹が俺の知らない所で傷つくのは嫌だ……っ!」
徹は当夜を抱き締め、目の端から零れ落ちかけた涙を唇で掬い取る。
「ありがとう、当夜」
頭を撫でられた当夜はうんと言って、徹の服を握りしめた。だが、すぐに皺になるからと手を離させられる。
「僕に抱き付けばいい」
「で、でも……ほら、防犯カメラとか」
「ここにはない」
真面目な顔で否定した徹は、両手を広げてほら、と顔の表情筋を緩めた。瞬間怯んだ当夜は、そろりと徹の腕の中に納まり、腕を背に回す。
「お前がこうして悲しむような隠し事はもうない。些細なことだ」
「本当か……?」
探るように訊ねると、徹はああと目を伏せた。
「お前の心を、僕は守る」
眉を引き寄せた当夜は小さく馬鹿と呟き、徹の胸元にかじりつく。こら、と言って身を離した徹は、行こうかと囁きかけた。
「……うん」
当夜は徹に促されるようにしてエレベーターに乗り込む。ドアが閉まってすぐに手首を徹につかまれ、乱暴に引き寄せられた。
「きゅ、急になっ」
抗議のために開いた口を押し当てられた徹の唇で塞がれる。逃げようとする当夜を壁に追いやった徹は、手首をつかんでいない方の腕を壁につけ、膝を当夜の足の間に挟み込んだ。
「んっ、んむ……あぁっ」
背の低い当夜は持ち上げられるような形になり、床につま先がつくくらいになる。不安定な状態から安全を保つために徹にしがみつく。だが、そうするとますます調子に乗って口づけが深くなっていった。
「当夜」
耳に息と共に名前を吹きかけられ、背筋をゾクゾクと快感が駆け上っていく。
「ダ、ダメだって」
「なぜだ?」
首筋を舐められ、きつく吸われた当夜は自由を塞がれた身体を徹がどう扱うのか緊張と期待とがない交ぜになりながらも考えていた。
「気持ち良くて、た……勃っちゃう、から」
だんだん小さくなっていく当夜の声に、徹はくすりと笑い声をもらす。
「お前は本当に可愛い。可愛くて、滅茶苦茶にしてしまいそうだ」
「いっ、今はダメだ! ……エレベーターの戸、閉めてくれよ」
「ああ、ああ。分かっている」
徹はボタンを操作して、いつの間にか開いていたエレベーターの戸を閉じる。
服の上から胸を撫でられ、足の間を刺激された当夜は艶めいた声を上げる。このまま頭から丸ごと食べてしまいたい、全てを自分のものにしたい、汚したいという欲望が徹の胸中をどす黒く染めようとしてきた。だが、それを押さえて当夜から離れる。
「ぁ、はあ……っ」
ようやく解放された当夜はずるずるとその場にしゃがみ込んで息を整えようとした。
「すまない、大丈夫か?」
「う、うん」
頬を上気させ、しどけなく手足を投げ出している当夜はとろんと蕩けた目で徹を見上げる。
「大丈夫……」
その姿にまた当夜への想いがガタガタと徹の中で動き始めたが、当夜を立たせることに集中させて紛らわせた。
ドアが開いたエレベーターから下りた二人は、ホールを抜けて円形状の空間へと歩いていく。銀色の扉の左側に設置されているパネルを徹が操作すると、重苦しい音をさせて扉が開いていった。
「本当に秘密基地みたいだな」
普段の調子を取り戻した当夜がそう話しかけると、徹はそうだなと苦笑を浮かべる。
中へ進むと、そこには見慣れた作戦本部室があった。大がかりな機会と人々に囲まれた一室の中腹に、鏡子が立っており、指示をしているのが見える。周りの邪魔にならない程度に挨拶をして回りながら、近づいて行った。
「こんにちは、今お時間よろしいでしょうか?」
「こら、女性をあんな風に呼んだら失礼だろう」
徹が当夜の跳ねている髪を手で直しながら注意すると、当夜はえっと零した。
「そうなのか?」
「……まったく、お前は」
徹は指の先を額に当てて細い息を吐きだす。きょとんと目を丸くして、小首を傾げて見上げてくる。当夜の庇護欲を掻きたてる姿に徹は目元を和らげた。
「まあ、いい。嫌そうではなかったからな」
「ふぅん……?」
あまりよく理解していないのか、中途半端な声を出した当夜は、徹の横顔を見つめる。眉を下げ、切なそうな顔をしている当夜に気づいた。親指を顎の下に押し当てて上向かせる。
「あっ……な、なに?」
薄く開いた当夜の口を見つめた徹は、
「なにを考えている?」
と問いただした。
「それは、その」
目をうろたえさせる当夜の喉元を指の腹で撫でさすった徹は、ん? と低く促す。
「その……と、徹の」
「僕がどうした」
まるで猫を撫でるような徹の手の動きに、当夜は小さく声をもらした。
「徹、もう俺に隠し事してないよな……?」
これだけで感じているのか、薄ら目に涙の膜を張った当夜は、自分の頬に当てられている徹の手に触れ、閉じた唇をきゅっと上げた。
「それは」
「もう、こんな風に一人で抱えないんで欲しいんだ」
当夜の口から押し出された言葉に、徹は目を見張る。当夜は痛む左胸を庇うために、服の胸元を右手で握りしめた。
「徹が俺の知らない所で傷つくのは嫌だ……っ!」
徹は当夜を抱き締め、目の端から零れ落ちかけた涙を唇で掬い取る。
「ありがとう、当夜」
頭を撫でられた当夜はうんと言って、徹の服を握りしめた。だが、すぐに皺になるからと手を離させられる。
「僕に抱き付けばいい」
「で、でも……ほら、防犯カメラとか」
「ここにはない」
真面目な顔で否定した徹は、両手を広げてほら、と顔の表情筋を緩めた。瞬間怯んだ当夜は、そろりと徹の腕の中に納まり、腕を背に回す。
「お前がこうして悲しむような隠し事はもうない。些細なことだ」
「本当か……?」
探るように訊ねると、徹はああと目を伏せた。
「お前の心を、僕は守る」
眉を引き寄せた当夜は小さく馬鹿と呟き、徹の胸元にかじりつく。こら、と言って身を離した徹は、行こうかと囁きかけた。
「……うん」
当夜は徹に促されるようにしてエレベーターに乗り込む。ドアが閉まってすぐに手首を徹につかまれ、乱暴に引き寄せられた。
「きゅ、急になっ」
抗議のために開いた口を押し当てられた徹の唇で塞がれる。逃げようとする当夜を壁に追いやった徹は、手首をつかんでいない方の腕を壁につけ、膝を当夜の足の間に挟み込んだ。
「んっ、んむ……あぁっ」
背の低い当夜は持ち上げられるような形になり、床につま先がつくくらいになる。不安定な状態から安全を保つために徹にしがみつく。だが、そうするとますます調子に乗って口づけが深くなっていった。
「当夜」
耳に息と共に名前を吹きかけられ、背筋をゾクゾクと快感が駆け上っていく。
「ダ、ダメだって」
「なぜだ?」
首筋を舐められ、きつく吸われた当夜は自由を塞がれた身体を徹がどう扱うのか緊張と期待とがない交ぜになりながらも考えていた。
「気持ち良くて、た……勃っちゃう、から」
だんだん小さくなっていく当夜の声に、徹はくすりと笑い声をもらす。
「お前は本当に可愛い。可愛くて、滅茶苦茶にしてしまいそうだ」
「いっ、今はダメだ! ……エレベーターの戸、閉めてくれよ」
「ああ、ああ。分かっている」
徹はボタンを操作して、いつの間にか開いていたエレベーターの戸を閉じる。
服の上から胸を撫でられ、足の間を刺激された当夜は艶めいた声を上げる。このまま頭から丸ごと食べてしまいたい、全てを自分のものにしたい、汚したいという欲望が徹の胸中をどす黒く染めようとしてきた。だが、それを押さえて当夜から離れる。
「ぁ、はあ……っ」
ようやく解放された当夜はずるずるとその場にしゃがみ込んで息を整えようとした。
「すまない、大丈夫か?」
「う、うん」
頬を上気させ、しどけなく手足を投げ出している当夜はとろんと蕩けた目で徹を見上げる。
「大丈夫……」
その姿にまた当夜への想いがガタガタと徹の中で動き始めたが、当夜を立たせることに集中させて紛らわせた。
ドアが開いたエレベーターから下りた二人は、ホールを抜けて円形状の空間へと歩いていく。銀色の扉の左側に設置されているパネルを徹が操作すると、重苦しい音をさせて扉が開いていった。
「本当に秘密基地みたいだな」
普段の調子を取り戻した当夜がそう話しかけると、徹はそうだなと苦笑を浮かべる。
中へ進むと、そこには見慣れた作戦本部室があった。大がかりな機会と人々に囲まれた一室の中腹に、鏡子が立っており、指示をしているのが見える。周りの邪魔にならない程度に挨拶をして回りながら、近づいて行った。
「こんにちは、今お時間よろしいでしょうか?」
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