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二章/少年よ、明日に向かって走れ!!
東京支部・一
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「あれがそうだ」
当夜は白亜の施設を見上げ、でかいなと呟く。
「中はもっと広くて大きいぞ。地下があるからな」
「なんか秘密基地みたいだな」
「まあ、似たようなものだろう」
背の高い石状の壁の前で立ち止まった徹は、鉄製の門の横にあるインターホンをためらいなく押した。
「暁美徹です。同じくパイロットの渋木当夜も一緒に来ています。由川司令に許可を頂きたいのですが、おられますか?」
『……少々お待ちください』
話す間にもどこからか小さな機械音が聞こえてくる。
『お待たせしました、お入りください』
女性の声に続き、閂の外れる音がして鉄製の門が両側に大きく開いていく。徹の後を追って当夜が入ると、門は閉まっていった。
「こっちだ」
通い慣れているらしい徹に付き従うようにして歩く。中庭らしき場所には緑が多く、花壇と噴水がある。白い建物に伸びるコンクリートの両端には石の仕切りが敷き詰められていた。
建物の前には警備員が二人立っている。腰に棒を提げていて物々しい雰囲気だ。
「こんにちは」
だが、徹が話しかけると相好を崩す。当夜は捕まらないだろうかと心配をしつつも、こんにちはと頭を下げて玄関をくぐった。
自動ドアを通ると、受付に女性が二人いた。白いフロアーは化け物と戦う組織の支部だという感じはなく、どこにでもある一企業のビルに入ったような印象を受ける。
「いらっしゃい、徹くん」
「こんにちは。牧瀬《まきせ》さん、早川《はやかわ》さん」
淡いベージュのカウンターに近寄って行った徹は、二人の女性に手の平を向けた。
「こちらはアマテラス機関の事務センター窓口受付係の牧瀬《まきせ》愛《あい》さんと早川《はやかわ》恵実《えみ》さんだ。二人共もうお話は聞かれているかもしれませんが、彼は渋木当夜。僕の幼馴染で、新しいパイロットです」
「宜しくお願いします!」
当夜が頭を下げると、女性二人はきゃーっと明るい声を出して手を叩く。
「かっわいいー! この子が当夜くんなんだ~」
「雅臣さんから聞いていましたが、ああ……守ってあげたいです!」
ウエーブがかった茶色の髪を上の方で一つにまとめている、勝気そうな女性が牧瀬。黒いつややかな髪をボブショートにしている、理知そうな女性が早川。二十代後半に差し掛かるか否か、という程の年頃の女性に騒がれた当夜は照れながらも笑みを浮かべる。
「キレーなお姉さん! なっ、な、この人たちもアマテラス機関の人なのか!?」
「そうだと言っただろう」
「事務員ってことは、普通の会社って偽ってんの?」
徹の腕をつかんだ当夜が見上げてにっこり微笑むと、徹はまいったといった顔でため息を吐きだした。
「そうだよー。一応ここのことは国家機密になってるからね」
だが、牧瀬は軽い笑い声を上げて返してくる。徹とは違い、なんとも思っていないような爽やかさと強かさが見て取れた。
「私たちはここか司令部にいるけど、心はずーっとあたたたちと一緒に戦ってるから!」
「精一杯応援しています。相談にも乗りますし、なんでも言ってください」
そういって牧瀬は片手を振り上げ、早川はおしとやかに微笑む。当夜は目を細め、うん! と言って笑った。
「ありがとう! えっと……愛ちゃん、恵実ちゃん」
二人は顔を見合わせてから、照れ臭そうに髪に触ったり、目を宙に泳がせたり、頬に手を当てたりする。
「そろそろ行くぞ。二人共、お時間を取らせてすみませんでした」
「いいえ。またいつでも来てください」
手を振る二人に、当夜は手を振り返しながら一礼している徹の後を追った。
当夜は白亜の施設を見上げ、でかいなと呟く。
「中はもっと広くて大きいぞ。地下があるからな」
「なんか秘密基地みたいだな」
「まあ、似たようなものだろう」
背の高い石状の壁の前で立ち止まった徹は、鉄製の門の横にあるインターホンをためらいなく押した。
「暁美徹です。同じくパイロットの渋木当夜も一緒に来ています。由川司令に許可を頂きたいのですが、おられますか?」
『……少々お待ちください』
話す間にもどこからか小さな機械音が聞こえてくる。
『お待たせしました、お入りください』
女性の声に続き、閂の外れる音がして鉄製の門が両側に大きく開いていく。徹の後を追って当夜が入ると、門は閉まっていった。
「こっちだ」
通い慣れているらしい徹に付き従うようにして歩く。中庭らしき場所には緑が多く、花壇と噴水がある。白い建物に伸びるコンクリートの両端には石の仕切りが敷き詰められていた。
建物の前には警備員が二人立っている。腰に棒を提げていて物々しい雰囲気だ。
「こんにちは」
だが、徹が話しかけると相好を崩す。当夜は捕まらないだろうかと心配をしつつも、こんにちはと頭を下げて玄関をくぐった。
自動ドアを通ると、受付に女性が二人いた。白いフロアーは化け物と戦う組織の支部だという感じはなく、どこにでもある一企業のビルに入ったような印象を受ける。
「いらっしゃい、徹くん」
「こんにちは。牧瀬《まきせ》さん、早川《はやかわ》さん」
淡いベージュのカウンターに近寄って行った徹は、二人の女性に手の平を向けた。
「こちらはアマテラス機関の事務センター窓口受付係の牧瀬《まきせ》愛《あい》さんと早川《はやかわ》恵実《えみ》さんだ。二人共もうお話は聞かれているかもしれませんが、彼は渋木当夜。僕の幼馴染で、新しいパイロットです」
「宜しくお願いします!」
当夜が頭を下げると、女性二人はきゃーっと明るい声を出して手を叩く。
「かっわいいー! この子が当夜くんなんだ~」
「雅臣さんから聞いていましたが、ああ……守ってあげたいです!」
ウエーブがかった茶色の髪を上の方で一つにまとめている、勝気そうな女性が牧瀬。黒いつややかな髪をボブショートにしている、理知そうな女性が早川。二十代後半に差し掛かるか否か、という程の年頃の女性に騒がれた当夜は照れながらも笑みを浮かべる。
「キレーなお姉さん! なっ、な、この人たちもアマテラス機関の人なのか!?」
「そうだと言っただろう」
「事務員ってことは、普通の会社って偽ってんの?」
徹の腕をつかんだ当夜が見上げてにっこり微笑むと、徹はまいったといった顔でため息を吐きだした。
「そうだよー。一応ここのことは国家機密になってるからね」
だが、牧瀬は軽い笑い声を上げて返してくる。徹とは違い、なんとも思っていないような爽やかさと強かさが見て取れた。
「私たちはここか司令部にいるけど、心はずーっとあたたたちと一緒に戦ってるから!」
「精一杯応援しています。相談にも乗りますし、なんでも言ってください」
そういって牧瀬は片手を振り上げ、早川はおしとやかに微笑む。当夜は目を細め、うん! と言って笑った。
「ありがとう! えっと……愛ちゃん、恵実ちゃん」
二人は顔を見合わせてから、照れ臭そうに髪に触ったり、目を宙に泳がせたり、頬に手を当てたりする。
「そろそろ行くぞ。二人共、お時間を取らせてすみませんでした」
「いいえ。またいつでも来てください」
手を振る二人に、当夜は手を振り返しながら一礼している徹の後を追った。
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