忘却のカグラヴィーダ

結月てでぃ

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二章/少年よ、明日に向かって走れ!!

言葉はいらない・二

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 切符を改札に入れて通ると、横から駅員のありがとうございましたーという気だるそうな声がかかる。
「どっちだ?」
 当夜が左右に指を振りながら訊ねると、徹はこっちだと左側に歩き出した。
「なあ、徹がヤタドゥーエと出会ったのはいつなんだ?」
「……約三ヶ月前だ」
「高校に入る前?」
 徹は頷き、そうだと答える。桜の散った木は青々とした緑へと色合いを変えていた。
「四葉ちゃんは徹よりも前?」
「ああ。六条さんは半年程前に選ばれたらしい」
「……それより前の人はどこに行ったんだ」
 風が二人の間を走り抜け、徹は目を閉じて顔の前に腕を出す。再び目を開け、隣を歩いていたはずの当夜の方に顔を向けるが、そこにはいなかった。
「パイロットってさ、本当はもっとたくさんいたんだろ。格納庫に使い古された跡が残ってた。今、東京支部にいるパイロットは」
 立ち止まっていたのか、四歩程離れた所に立っている。俯きがちに考えていた当夜が顔を上げた。煌々と光を灯す赤い目に、獰猛な肉食獣が思い出される。
「七人だ」
 徹は無表情のまま目を合わせてきた当夜に言葉を失った。口の中があまりにも乾いてきたため、舌を動かす。
「……一度も来ない人と、別の支部に出向中の人も合わせると、五人だ」
「出向中の人の名前は?」
「岩草さんだが……」
 当夜はふうん、と言うと片眉をわずかに下げて苦い笑みになった。
「じゃあ、死んだんだ。始さんって人」
「なぜ……お前が、そのことを」
 当夜は口の両端を吊り上げ、細めた目で徹を見つめる。
「一番の所、ネームプレートがまだその人の名前のままだったんだよ……。徹の所はそのまんまだったから、他にも人がいるんだろうなって。それと、十番がやけに汚れてたのも気になった。あそこは、もうすぐ死ぬ人用の番号なんだろ?」
 徹は当たってると呟くと、額に右手を当てて重いため息を吐きだした。
「お前は本当に頭がいいな……」
「ごめん! 鏡子ちゃんだと多分はぐらかされるだろうなと思ってさ」
 当夜は笑いながら徹に駆け寄る。
「答えてくれてありがとな」
 そして、徹の左手を両手で握り、自分の額に押し当てて目を閉じた。
「なにがあっても、戦うから。花澄の世界のために」
「ああ。僕もお前と一緒に戦う。離れず、この目で見ている」
 徹は当夜の肩を抱き、二度叩くことで先に進むように促す。当夜は頷き、ゆっくりと歩き出した。閑静な住宅街には、人の姿がなくて静かだ。白いマンションから影が落ちている。
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