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二章/少年よ、明日に向かって走れ!!
揺れるシャツの奥・二
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「なあ、徹。俺たちってもうしちゃったのか?」
起きてからずっと気になり続けていたことを、ようやく頭が動き始めたらしい徹に問いかけると、徹はぼっと火が点いたかのように顔を真っ赤にさせた。
「なあ、って!」
叫ぶと、徹は小さな声でまだだと呟く。当夜の顔を真っ直ぐ見上げ、
「当夜の許可なしに抱くことはしない。信じてくれ」
力強く言い切った。当夜は口に手を当てて目を伏せて、うんと言ったかと思うと、そっと微笑む。
「ありがとう。けど、だったらなんで二人共裸なんだ?」
「ああ……それは、たんに着替える気力を失くしただけだ。僕一人ではお前を家まで担いできて、服を脱がせるまでが限界だったんだ」
「逆だったら良かったな」
体力も腕力も当夜の方があるというのは二人共分かりきっていることだったので、徹もそうだなと首を縦に振った。
「そっか、じゃあまず風呂入ろうぜ!」
素早くベッドから下りて立ち上がった当夜に、徹はえっと顔を向ける。
「風呂入れてくるから、徹は先に入れよ! 俺、朝……」
壁にかかった黒ぶちの時計の針が一時を指していることを確かめた当夜はあーとだらしなく声を伸ばした。
「昼飯作ってから!」
「あっ、す、少し待て当夜!」
手を伸ばして引き止めようとしたが、当夜は全裸のまま部屋を出ていってしまう。今から追いかけても追いつきはしない。
徹は仕方なくタンスから二人分の着替えを用意し、下へ行く。真っ直ぐ風呂場へと向かうと、中から頬を上気させた当夜が出てきた。
「とっ、当……夜」
想い人のあられもない姿に、徹は自分の顔に血が集まってくるのを感じる。
「先にシャワーだけ使わせてもらった! シャツ借りてもいいか?」
「あ、ああ」
胸を高鳴らせつつも手渡すと、当夜はそれを身にまとった。ぶかぶかの袖を見て、当夜は徹の方に目をやる。
「折り曲げてもいい?」
訊ねると、徹は頷いたので、当夜は二度三度と大きく折り曲げ、よしと呟いた。
「じゃ、徹はゆっくり入ってくれよな!」
「ああ。上がったらお前の服を取ってくるから、少し待っていてくれ」
うんっと笑顔で頷いた当夜はパタパタとスリッパの音を響かせながら走っていく。ひらひらとシャツの裾が広がる光景を徹はじっと見つめた。
「ズボンも持ってきていたんだが……」
細すぎず太くもない、丁度いい柔らかさと細さの太ももに徹は見惚れてしまった。あの足に顔を挟まれたのだと考えると、直後の強烈な痛みでさえ吹っ飛んでしまう。
落ち着け、落ち着けと念じながら風呂に入り、上がってくるともう食卓に何品か皿がのっていた。淡い色合いをし、大根の添えられた出汁巻き卵に、湯通しされて出汁とネギと鰹節がかけられた豆腐、ジャコとほうれん草のあえ物、それに当夜特製の梅干と、キュウリと生姜のしょうゆ漬けと蕪のたくあんが並んでいる。主菜はまだの様子だったが、このままでも食べれてしまいそうだった。
「メインは魚と肉どっちがいい?」
「そうだな、魚がいい」
「わかったー」
ん、と頷いて歩いていった徹が玄関から出て当夜の家へと向かった。
起きてからずっと気になり続けていたことを、ようやく頭が動き始めたらしい徹に問いかけると、徹はぼっと火が点いたかのように顔を真っ赤にさせた。
「なあ、って!」
叫ぶと、徹は小さな声でまだだと呟く。当夜の顔を真っ直ぐ見上げ、
「当夜の許可なしに抱くことはしない。信じてくれ」
力強く言い切った。当夜は口に手を当てて目を伏せて、うんと言ったかと思うと、そっと微笑む。
「ありがとう。けど、だったらなんで二人共裸なんだ?」
「ああ……それは、たんに着替える気力を失くしただけだ。僕一人ではお前を家まで担いできて、服を脱がせるまでが限界だったんだ」
「逆だったら良かったな」
体力も腕力も当夜の方があるというのは二人共分かりきっていることだったので、徹もそうだなと首を縦に振った。
「そっか、じゃあまず風呂入ろうぜ!」
素早くベッドから下りて立ち上がった当夜に、徹はえっと顔を向ける。
「風呂入れてくるから、徹は先に入れよ! 俺、朝……」
壁にかかった黒ぶちの時計の針が一時を指していることを確かめた当夜はあーとだらしなく声を伸ばした。
「昼飯作ってから!」
「あっ、す、少し待て当夜!」
手を伸ばして引き止めようとしたが、当夜は全裸のまま部屋を出ていってしまう。今から追いかけても追いつきはしない。
徹は仕方なくタンスから二人分の着替えを用意し、下へ行く。真っ直ぐ風呂場へと向かうと、中から頬を上気させた当夜が出てきた。
「とっ、当……夜」
想い人のあられもない姿に、徹は自分の顔に血が集まってくるのを感じる。
「先にシャワーだけ使わせてもらった! シャツ借りてもいいか?」
「あ、ああ」
胸を高鳴らせつつも手渡すと、当夜はそれを身にまとった。ぶかぶかの袖を見て、当夜は徹の方に目をやる。
「折り曲げてもいい?」
訊ねると、徹は頷いたので、当夜は二度三度と大きく折り曲げ、よしと呟いた。
「じゃ、徹はゆっくり入ってくれよな!」
「ああ。上がったらお前の服を取ってくるから、少し待っていてくれ」
うんっと笑顔で頷いた当夜はパタパタとスリッパの音を響かせながら走っていく。ひらひらとシャツの裾が広がる光景を徹はじっと見つめた。
「ズボンも持ってきていたんだが……」
細すぎず太くもない、丁度いい柔らかさと細さの太ももに徹は見惚れてしまった。あの足に顔を挟まれたのだと考えると、直後の強烈な痛みでさえ吹っ飛んでしまう。
落ち着け、落ち着けと念じながら風呂に入り、上がってくるともう食卓に何品か皿がのっていた。淡い色合いをし、大根の添えられた出汁巻き卵に、湯通しされて出汁とネギと鰹節がかけられた豆腐、ジャコとほうれん草のあえ物、それに当夜特製の梅干と、キュウリと生姜のしょうゆ漬けと蕪のたくあんが並んでいる。主菜はまだの様子だったが、このままでも食べれてしまいそうだった。
「メインは魚と肉どっちがいい?」
「そうだな、魚がいい」
「わかったー」
ん、と頷いて歩いていった徹が玄関から出て当夜の家へと向かった。
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素敵な表紙お借りしました!
https://www.pixiv.net/artworks/98346398
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