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一章/炎の巨神、現る
自由に空が飛べれば・四
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アクガミをズタズタに切っていくカグラヴィーダを見下ろしていた四葉は、徹の名前を呼んだ。
「なんですか」
四葉の弾んだ声に、徹は自分のテンションが急速に落ちていくのを感じる。
『また交渉決裂しちゃったみたいだね』
「ええ、聞いての通りです」
『想い人くん、つっこんでっちゃったねー』
「すぐに追いかけます」
明るく笑う四葉にそう返すと、四葉はえっ? と手の動きを止めた。
『追いかけるの?』
「勿論。当夜を守らなくてはなりませんから」
『愛だねー』
「愛ですよ」
徹は笑い返して、ヤタドゥーエを下降させていく。四葉は盛大に笑った後、自分も地上に向かっていった。
『当夜』
本気で一人でもアクガミを全て殺すつもりだったのかと思う程、鬼のような戦いぶりをするカグラヴィーダの近くには寄れず、徹は少し距離を取って高層ビルの傍に機体を下す。
「なんだよ!」
当夜は片眉をしかめつつアクガミの腹を刀で突き刺し、足で蹴って引き抜いた。
『一人で行くんじゃない』
「行くな、って……」
『この目が見えなくなるまで、必ずお前の傍にいる。一人にはさせない』
カグラヴィーダの背後から寄ってきたアクガミをビームで大穴を開けた徹は、モニターに手を差し伸べる。
『僕がお前を守るよ』
モニターを一瞬だけ確認した当夜は、まるで徹の手の温もりを頬に感じたような気持ちになり、ぐっと胸をつまらせた。
「うん……っ!」
それから、ようやく安心して笑う。その笑顔に徹は胸を撫で下ろした。
「お、帰ってきた帰ってきた」
格納庫に戻ってきた三体のロボットを見て、雅臣は満面の笑みを浮かべる。伸ばした手の親指を押し当てて下を見た。一人ゆっくりリフトに乗って下りてくる四葉が手を振ってきたため、手を振り返す。
「おーおー、これまた……若いねえ」
ヤタドゥーエから下りてきた徹が息せき切った様子でスタッフを押し切ってカグラヴィーダのリフトに飛び乗った。
上がっていき、開けてあるコックピットに上半身を乗り出した徹は、誰よりも大切に想っている人物の名前を呼ぶ。
当夜は徹に向かって両手を上げた。徹は仕方ないなと笑って、腕を伸ばして貧血気味の当夜をバスタオルでくるでから抱き上げる。
「ごめんな、ワガママばっかしで」
「もういい、お前は気にするな」
徹にそう言われた当夜は頷き、徹に体を預けた。徹は誰からも見えないように後ろを向いてから、当夜の額に唇を押し当てる。
「デコかよ」
「今はだ」
顔を赤くさせて照れる徹に、当夜は吹き出して笑った。
「なんですか」
四葉の弾んだ声に、徹は自分のテンションが急速に落ちていくのを感じる。
『また交渉決裂しちゃったみたいだね』
「ええ、聞いての通りです」
『想い人くん、つっこんでっちゃったねー』
「すぐに追いかけます」
明るく笑う四葉にそう返すと、四葉はえっ? と手の動きを止めた。
『追いかけるの?』
「勿論。当夜を守らなくてはなりませんから」
『愛だねー』
「愛ですよ」
徹は笑い返して、ヤタドゥーエを下降させていく。四葉は盛大に笑った後、自分も地上に向かっていった。
『当夜』
本気で一人でもアクガミを全て殺すつもりだったのかと思う程、鬼のような戦いぶりをするカグラヴィーダの近くには寄れず、徹は少し距離を取って高層ビルの傍に機体を下す。
「なんだよ!」
当夜は片眉をしかめつつアクガミの腹を刀で突き刺し、足で蹴って引き抜いた。
『一人で行くんじゃない』
「行くな、って……」
『この目が見えなくなるまで、必ずお前の傍にいる。一人にはさせない』
カグラヴィーダの背後から寄ってきたアクガミをビームで大穴を開けた徹は、モニターに手を差し伸べる。
『僕がお前を守るよ』
モニターを一瞬だけ確認した当夜は、まるで徹の手の温もりを頬に感じたような気持ちになり、ぐっと胸をつまらせた。
「うん……っ!」
それから、ようやく安心して笑う。その笑顔に徹は胸を撫で下ろした。
「お、帰ってきた帰ってきた」
格納庫に戻ってきた三体のロボットを見て、雅臣は満面の笑みを浮かべる。伸ばした手の親指を押し当てて下を見た。一人ゆっくりリフトに乗って下りてくる四葉が手を振ってきたため、手を振り返す。
「おーおー、これまた……若いねえ」
ヤタドゥーエから下りてきた徹が息せき切った様子でスタッフを押し切ってカグラヴィーダのリフトに飛び乗った。
上がっていき、開けてあるコックピットに上半身を乗り出した徹は、誰よりも大切に想っている人物の名前を呼ぶ。
当夜は徹に向かって両手を上げた。徹は仕方ないなと笑って、腕を伸ばして貧血気味の当夜をバスタオルでくるでから抱き上げる。
「ごめんな、ワガママばっかしで」
「もういい、お前は気にするな」
徹にそう言われた当夜は頷き、徹に体を預けた。徹は誰からも見えないように後ろを向いてから、当夜の額に唇を押し当てる。
「デコかよ」
「今はだ」
顔を赤くさせて照れる徹に、当夜は吹き出して笑った。
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