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一章/炎の巨神、現る
自由に空が飛べれば・二
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「……徹」
モニターに映る徹の驚いた顔を見た当夜は微笑む。
『なんで、当夜が』
「自分勝手な王様を守りに来たんだ」
ごく自然に穏やかな調子で話す当夜を見て、徹は俯いた。帰れ、という言葉が小さく徹の口から出る。
「いやだ」
『帰れ』
「いやだっつってんだろ!」
首を振る当夜に、徹はなんでだと叫んだ。
『なんでお前はっ、僕に守られてくれないんだ!!』
当夜は目を丸くして息を短く吐き、徹の顔を見上げる。
「それは、」
薄く開けた唇の端を吊り上げ、微笑する。自分の心が、徹に届くようにと。
「徹が、好きだからだ」
端的な理由を聞いた徹は言葉を失い、呆然と当夜を見返した。
「徹にならなにされたっていいんだ。俺の全部を好きにしろよ」
『と、当夜。それは、そんなことはっ』
顔を赤くさせて口ごもる徹に、当夜は首をほんの少し傾げ、口を小さくすぼませる。
「したくないのか」
『そ、それは……その』
「ハッキリしろよ」
恥じらう徹に追い打ちをかけるように当夜が言葉を重ねると、徹はモニターをちらりと上目で見た。
『したい。お前に、お前と色んなことを……したい』
ようやく返事を貰った当夜は、破顔して笑う。
「んっ、じゃあしろよ。じゃなくて、しようぜ!」
なっ? と誘いかけると、徹は無言で首を縦に振った。
「あのさ、徹」
『な、なんだ』
まだ照れている徹を当夜は可愛いなと思いつつ、心を伝えるために口を開く。
「俺さ、まだ徹が苦しんだり、嫌がってる理由はよく分かってねえんだ」
『そうだろうな』
「けど、どんなトコだって徹についていくし、徹を嫌いになったりしねえ。徹が一緒なら、絶対に後悔なんてしねえから」
すがるようにモニターを見る当夜に、徹は腕を差し出したくなる。細くて小さい身体を、抱きしめたくなる。けれど、当夜は今傍にはいない。
「しねえから、置いていくなよ」
当夜の赤い目から涙が零れ落ちていく。大粒のそれは頬を伝い、黒い制服に丸いしみを作った。
「一人は怖いんだ、徹!」
『当夜……!』
徹もまた切なそうに眉を寄せ、愛おしい者の姿に見入る。
『だが、僕は』
「もしお前がダメだって言っても、ついてってやる」
まだ涙を流す当夜の目は先程とは違い、炎のような苛烈さを持っていた。
「徹がまだ納得できないなら、全部俺が殺してやる!!」
モニターに向かって怒鳴った当夜は、素早く手を動かし、叫ぶ。
「行くぞ、カグラヴィーダ!!」
『当夜!? お前、一体なにをっ?』
慌てふためく徹の横を通った当夜はカグラヴィーダの腹の砲口を開いていく。
『徹くん! あの子なにをする気なの!?』
「分かりません!」
モニターの回線を押し込んできた四葉に、徹も大声を返す。だが、カグラヴィーダの純白の姿を見て、肩の力を落として声を絞り出した。
「説得には失敗しました」
『……そうみたいね』
徹のため息が聞こえるが、機体の操作に夢中になっている当夜は片眉を顰める。呼びかけられるが、当夜は手を伸ばして回線のスイッチを切った。
「なにっ!? あ、あの馬鹿……!」
『え? なに、どしたの』
「回線を切られました。すぐに繋ぎ直します」
全体通信を使っているのか、遠くから回線をつなぎ直そうとしている徹の声が聞こえていた。
モニターに映る徹の驚いた顔を見た当夜は微笑む。
『なんで、当夜が』
「自分勝手な王様を守りに来たんだ」
ごく自然に穏やかな調子で話す当夜を見て、徹は俯いた。帰れ、という言葉が小さく徹の口から出る。
「いやだ」
『帰れ』
「いやだっつってんだろ!」
首を振る当夜に、徹はなんでだと叫んだ。
『なんでお前はっ、僕に守られてくれないんだ!!』
当夜は目を丸くして息を短く吐き、徹の顔を見上げる。
「それは、」
薄く開けた唇の端を吊り上げ、微笑する。自分の心が、徹に届くようにと。
「徹が、好きだからだ」
端的な理由を聞いた徹は言葉を失い、呆然と当夜を見返した。
「徹にならなにされたっていいんだ。俺の全部を好きにしろよ」
『と、当夜。それは、そんなことはっ』
顔を赤くさせて口ごもる徹に、当夜は首をほんの少し傾げ、口を小さくすぼませる。
「したくないのか」
『そ、それは……その』
「ハッキリしろよ」
恥じらう徹に追い打ちをかけるように当夜が言葉を重ねると、徹はモニターをちらりと上目で見た。
『したい。お前に、お前と色んなことを……したい』
ようやく返事を貰った当夜は、破顔して笑う。
「んっ、じゃあしろよ。じゃなくて、しようぜ!」
なっ? と誘いかけると、徹は無言で首を縦に振った。
「あのさ、徹」
『な、なんだ』
まだ照れている徹を当夜は可愛いなと思いつつ、心を伝えるために口を開く。
「俺さ、まだ徹が苦しんだり、嫌がってる理由はよく分かってねえんだ」
『そうだろうな』
「けど、どんなトコだって徹についていくし、徹を嫌いになったりしねえ。徹が一緒なら、絶対に後悔なんてしねえから」
すがるようにモニターを見る当夜に、徹は腕を差し出したくなる。細くて小さい身体を、抱きしめたくなる。けれど、当夜は今傍にはいない。
「しねえから、置いていくなよ」
当夜の赤い目から涙が零れ落ちていく。大粒のそれは頬を伝い、黒い制服に丸いしみを作った。
「一人は怖いんだ、徹!」
『当夜……!』
徹もまた切なそうに眉を寄せ、愛おしい者の姿に見入る。
『だが、僕は』
「もしお前がダメだって言っても、ついてってやる」
まだ涙を流す当夜の目は先程とは違い、炎のような苛烈さを持っていた。
「徹がまだ納得できないなら、全部俺が殺してやる!!」
モニターに向かって怒鳴った当夜は、素早く手を動かし、叫ぶ。
「行くぞ、カグラヴィーダ!!」
『当夜!? お前、一体なにをっ?』
慌てふためく徹の横を通った当夜はカグラヴィーダの腹の砲口を開いていく。
『徹くん! あの子なにをする気なの!?』
「分かりません!」
モニターの回線を押し込んできた四葉に、徹も大声を返す。だが、カグラヴィーダの純白の姿を見て、肩の力を落として声を絞り出した。
「説得には失敗しました」
『……そうみたいね』
徹のため息が聞こえるが、機体の操作に夢中になっている当夜は片眉を顰める。呼びかけられるが、当夜は手を伸ばして回線のスイッチを切った。
「なにっ!? あ、あの馬鹿……!」
『え? なに、どしたの』
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