忘却のカグラヴィーダ

結月てでぃ

文字の大きさ
上 下
38 / 127
一章/炎の巨神、現る

空に向かって飛べ!・一

しおりを挟む
『想い人くんが来てしまうとは、災難だったね』
「……ええ」
 モニターに映った四葉に同情の言葉をかけられた徹が苦りきった表情で答えると、四葉はくすくすと笑う。
「なんですか?」
『いいや、私も君も同類だと思っただけだよ』
「それは、光栄です」
 いや、と視線を外した四葉が言うのに、徹はなんですか? と訊ねた。四葉は少しバツが悪そうな顔になる。
『大事にしすぎない方がいい。いつか、私のように相手を滅ぼしてしまう』
「そんな」
 そんなことはないと四葉に伝えると、彼女は少し微笑んでそうかと言った。
『ありがとう。……じゃあ、想い人のために頑張ろうか』
 ハッチへと向かっていく機体の動きに身を任せる徹は、はいと神妙な顔で頷く。目を閉じて呼吸を整え、発進の合図を待った。
「当夜は戦わせない、絶対に。僕が守るんだ」
 そう言い切った徹は勢いよくレバーを引き、機体を発進させていく。慣れた操作で空中へと飛び立つヤタドゥーエを安定させ、鏡子の指示に従って目的地へと急いだ。
『アクガミ、はっけーん!』
 四葉の明るい声にはじかれるように徹は地上を見て、眉をしかめる。口から自然と声が漏れた。
「なんだ、あれは」
『ちょ、ちょっと鏡子ちゃん!? なに、あれ? すっごい数だよー!』
 二人は信じられない物を見ていた。土と鉄の色で埋め尽くされている地上に、下りて行く勇気が出ない。
『あんなの、どうやって二人だけで倒せっていうの!?』
『そっ、それは……!』
 叫ぶ四葉と、焦る鏡子。このままでは当夜を出せという指示がくるのではないかと危ぶんだ徹は、モニターに向かって大声を放つ。
「アヤさんに緊急の呼びだしを! いくら彼女でもこの状況を知れば来るはずです!」
『で、でもね』
「それか、他の支部に要請を! 当夜にこの数を対処させるよりかは安全に終るはずです」
『だけど、徹くん……それでは遅いのよ』
 哀れむ鏡子の声と、申し訳なさそうな表面上の顔を見た徹は、舌打ちをした。何度見ても地上の色は変わらない、茶と黒の二色の世界だ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

アルバイトで実験台

夏向りん
BL
給料いいバイトあるよ、と教えてもらったバイト先は大人用玩具実験台だった! ローター、オナホ、フェラ、玩具責め、放置、等々の要素有り

ヤンデレBL作品集

みるきぃ
BL
主にヤンデレ攻めを中心としたBL作品集となっています。

王道にはしたくないので

八瑠璃
BL
国中殆どの金持ちの子息のみが通う、小中高一貫の超名門マンモス校〈朱鷺学園〉 幼少の頃からそこに通い、能力を高め他を率いてきた生徒会長こと鷹官 仁。前世知識から得た何れ来るとも知れぬ転校生に、平穏な日々と将来を潰されない為に日々努力を怠らず理想の会長となるべく努めてきた仁だったが、少々やり過ぎなせいでいつの間にか大変なことになっていた_____。 これは、やりすぎちまった超絶カリスマ生徒会長とそんな彼の周囲のお話である。

【完結】I adore you

ひつじのめい
BL
幼馴染みの蒼はルックスはモテる要素しかないのに、性格まで良くて羨ましく思いながらも夏樹は蒼の事を1番の友達だと思っていた。 そんな時、夏樹に彼女が出来た事が引き金となり2人の関係に変化が訪れる。 ※小説家になろうさんでも公開しているものを修正しています。

目が覚めたら囲まれてました

るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。 燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。 そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。 チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。 不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で! 独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?

名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。 そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________ ※ ・非王道気味 ・固定カプ予定は無い ・悲しい過去🐜のたまにシリアス ・話の流れが遅い

大学生はバックヤードで

リリーブルー
BL
大学生がクラブのバックヤードにつれこまれ初体験にあえぐ。

処理中です...