16 / 127
一章/炎の巨神、現る
八咫烏の鳴く夕闇・一
しおりを挟む
スンと音をさせて当夜が鼻を啜る。すっかり空は夕暮れに包まれ、町は赤に染まっていた。
「はあ、ごめん。落ち着いた」
「謝らなくていい」
目と鼻を赤くさせて当夜に見つめられた徹は微笑んで、当夜の頬を撫でる。
「ありがとう。徹はホントに優しいな」
にこにこと笑う当夜に見惚れた徹の鞄から音が出た。二人はなにかと思って一瞬動きが止まるが、すぐに鞄の中に入っている携帯が鳴っているのだと気づき、徹は鞄を開けて取り出す。
「メール?」
「ああ、父からだ」
すいすいとスマートフォンの画面を指で操作してメールを確認した徹は、苦い顔になった。
「親父さん、なんか用あるのか?」
「ああ、そうみたいだ」
「んじゃ、行ってあげろよ。俺、一人で帰るからさ」
後押しをする当夜に、徹は気が進まない顔をしつつもベンチから立ち上がる。鞄に携帯をしまってから持ち上げた。
「どこにも寄らず、すぐに真っ直ぐ帰るんだ。いいな?」
「子どもじゃねえんだから平気だって」
「だといいが……とにかく、行ってくる」
「ん、いってらっしゃい。飯作って待ってるよ!」
名残惜しそうに自分を振り返って見る徹に早く行けって、と苦笑いする。徹の姿が見えなくなってから当夜は立ち上がり、スクールバッグを肩にかけて歩き出した。
公園から出て病院前にあるバス停まで行こうとした当夜の耳に、子どもの泣き声が入ってくる。辺りを見渡すと、当夜から十歩程離れた所で、子どもが二人泣きじゃくっていた。
怪我をしている様子も、喧嘩をしているようにも見えず、おもちゃも持っていない。保護者らしき人物の姿が見えないことを考えると、おそらく迷子であろう。
当夜は近くの交番まで一緒に行くだけだからそんなに時間はかからないだろうと判断をしてから、その子たちに近寄っていった。
「どーしたんだ?」
怯えさせてしまわないように優しい声音で言い、目線を合わせるためにしゃがむ。
にこっと目を和ませて笑いかけた。
「お兄ちゃんに喋ってみ?」
「はあ、ごめん。落ち着いた」
「謝らなくていい」
目と鼻を赤くさせて当夜に見つめられた徹は微笑んで、当夜の頬を撫でる。
「ありがとう。徹はホントに優しいな」
にこにこと笑う当夜に見惚れた徹の鞄から音が出た。二人はなにかと思って一瞬動きが止まるが、すぐに鞄の中に入っている携帯が鳴っているのだと気づき、徹は鞄を開けて取り出す。
「メール?」
「ああ、父からだ」
すいすいとスマートフォンの画面を指で操作してメールを確認した徹は、苦い顔になった。
「親父さん、なんか用あるのか?」
「ああ、そうみたいだ」
「んじゃ、行ってあげろよ。俺、一人で帰るからさ」
後押しをする当夜に、徹は気が進まない顔をしつつもベンチから立ち上がる。鞄に携帯をしまってから持ち上げた。
「どこにも寄らず、すぐに真っ直ぐ帰るんだ。いいな?」
「子どもじゃねえんだから平気だって」
「だといいが……とにかく、行ってくる」
「ん、いってらっしゃい。飯作って待ってるよ!」
名残惜しそうに自分を振り返って見る徹に早く行けって、と苦笑いする。徹の姿が見えなくなってから当夜は立ち上がり、スクールバッグを肩にかけて歩き出した。
公園から出て病院前にあるバス停まで行こうとした当夜の耳に、子どもの泣き声が入ってくる。辺りを見渡すと、当夜から十歩程離れた所で、子どもが二人泣きじゃくっていた。
怪我をしている様子も、喧嘩をしているようにも見えず、おもちゃも持っていない。保護者らしき人物の姿が見えないことを考えると、おそらく迷子であろう。
当夜は近くの交番まで一緒に行くだけだからそんなに時間はかからないだろうと判断をしてから、その子たちに近寄っていった。
「どーしたんだ?」
怯えさせてしまわないように優しい声音で言い、目線を合わせるためにしゃがむ。
にこっと目を和ませて笑いかけた。
「お兄ちゃんに喋ってみ?」
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
ヤンデレだらけの短編集
八
BL
ヤンデレだらけの1話(+おまけ)読切短編集です。
全8話。1日1話更新(20時)。
□ホオズキ:寡黙執着年上とノンケ平凡
□ゲッケイジュ:真面目サイコパスとただ可哀想な同級生
□アジサイ:不良の頭と臆病泣き虫
□ラベンダー:希死念慮不良とおバカ
□デルフィニウム:執着傲慢幼馴染と地味ぼっち
ムーンライトノベル様に別名義で投稿しています。
かなり昔に書いたもので芸風(?)が違うのですが、楽しんでいただければ嬉しいです!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
BL短編まとめ(甘い話多め)
白井由貴
BL
BLの短編詰め合わせです。
主に10000文字前後のお話が多いです。
性的描写がないものもあればがっつりあるものもあります。
性的描写のある話につきましては、各話「あらすじ」をご覧ください。
(※性的描写のないものは各話上部に書いています)
もしかすると続きを書くお話もあるかもしれません。
その場合、あまりにも長くなってしまいそうな時は別作品として分離する可能性がありますので、その点ご留意いただければと思います。
【不定期更新】
※性的描写を含む話には「※」がついています。
※投稿日時が前後する場合もあります。
※一部の話のみムーンライトノベルズ様にも掲載しています。
■追記
R6.02.22 話が多くなってきたので、タイトル別にしました。タイトル横に「※」があるものは性的描写が含まれるお話です。(性的描写が含まれる話にもこれまで通り「※」がつきます)
誤字脱字がありましたらご報告頂けると助かります。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集
あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。
こちらの短編集は
絶対支配な攻めが、
快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす
1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。
不定期更新ですが、
1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
書きかけの長編が止まってますが、
短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。
よろしくお願いします!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる