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一章/炎の巨神、現る
暗い路でもあなたとなら・三
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「分館と本館、どちらに行くんだ?」
「うーん……本館の方が蔵書数が多いから、本館かな」
「分かった」
駅のターミナルと繋がっている分館と違い、本館は駅から十分ほど歩いた所にある。二人は坂道にある駅前の商店街を上りながら、花澄へはなにを持っていったらいいのかを話す。
「本は決まってるんだ。この前こんなのが読みたいって言ってたから。けど、土産がなあ……」
「食べ物は受け付けるのか?」
「……全然。もう、あんまり食べないよ。だから食い物以外がいいかと思っててさ」
あー、やっぱわっかんねえ! とわざと明るく笑う当夜に、徹は苦笑を浮かべる。
「花はこの前持っていったんだ」
「ぬいぐるみはどうだ?」
「これ以上置いたら母さんに怒られる」
「パズルとか、暇つぶしができる物は?」
「ちょっと前なら良かったんだけど、今はなあ」
自分がうつむきがちに歩いていることに気づいた当夜は、顔を上げた。そうすることで見えるようになった店舗の一つに、あっと声を上げる。
「CD! CDとかいいかも。耳はまだ大丈夫だからさ!」
笑顔になる当夜に、徹は無言で頷いた。ちょっと見ていいか? と言う当夜に、徹が勿論だと言って二人は中へ入っていく。
店内では、当夜が朝口ずさんでいた曲がかかっていた。明るい照明のきいた店内を、頭を動かして見る。
「当夜、この曲はどうだ? 人気なんだろう?」
「え? あ、そうだな。いいかも!」
上を指差しながら言うと当夜はにっこりと笑って、この歌手のCDはどこだろ? と呟きながら探した。
「あったあった!」
思い思いのポーズをとる五人の女の子のパッケージのCDが、J-POPの棚の一番上に顔を見せていくつも並べてあった。当夜はそれを目を輝かせながら、手に取る。
「じゃ、レジ行ってくるなっ」
「ああ」
当夜たちがいる所から真っ直ぐ行った所にあるレジに行き、プレゼント用の包装を頼んでいる当夜を見てから、徹はCDに目を戻した。一番上の棚で眩しい程の笑顔をこちらに向けている、栗色の髪を二つに結っている少女と目が合う。真ん中にいる彼女とじっと見つめ合い、曲の歌詞を思い出しそうになった徹は目を閉じて首を振った。
暗く沈んでいきそうな自分の思考と振り払うために当夜の元へと向かう。
「あ、ごめん。包装してもらってる」
「見れば分かる。それに、僕は構わないから気を遣わなくていい」
「うん、ありがとう」
ピンク色の袋に赤いリボンのシールを貼りつけてから、店員が明るくお待たせしました! と言いながら当夜に差し出した。
「ありがとうございます」
当夜がそれを笑顔で受け取り、鞄の中に入れながら店の外へと出ていく。
「喜んでくれるといいな」
「うん。……そうだなっ!」
袋をしまい終えた当夜は嬉しそうに笑った。
「じゃあ、図書館に行こうか」
「うんっ! 徹もなにか借りるのか?」
「ああ」
まだ赤く染まる気配も見えない空の下、二人は図書館へ向けて歩いていく。
「うーん……本館の方が蔵書数が多いから、本館かな」
「分かった」
駅のターミナルと繋がっている分館と違い、本館は駅から十分ほど歩いた所にある。二人は坂道にある駅前の商店街を上りながら、花澄へはなにを持っていったらいいのかを話す。
「本は決まってるんだ。この前こんなのが読みたいって言ってたから。けど、土産がなあ……」
「食べ物は受け付けるのか?」
「……全然。もう、あんまり食べないよ。だから食い物以外がいいかと思っててさ」
あー、やっぱわっかんねえ! とわざと明るく笑う当夜に、徹は苦笑を浮かべる。
「花はこの前持っていったんだ」
「ぬいぐるみはどうだ?」
「これ以上置いたら母さんに怒られる」
「パズルとか、暇つぶしができる物は?」
「ちょっと前なら良かったんだけど、今はなあ」
自分がうつむきがちに歩いていることに気づいた当夜は、顔を上げた。そうすることで見えるようになった店舗の一つに、あっと声を上げる。
「CD! CDとかいいかも。耳はまだ大丈夫だからさ!」
笑顔になる当夜に、徹は無言で頷いた。ちょっと見ていいか? と言う当夜に、徹が勿論だと言って二人は中へ入っていく。
店内では、当夜が朝口ずさんでいた曲がかかっていた。明るい照明のきいた店内を、頭を動かして見る。
「当夜、この曲はどうだ? 人気なんだろう?」
「え? あ、そうだな。いいかも!」
上を指差しながら言うと当夜はにっこりと笑って、この歌手のCDはどこだろ? と呟きながら探した。
「あったあった!」
思い思いのポーズをとる五人の女の子のパッケージのCDが、J-POPの棚の一番上に顔を見せていくつも並べてあった。当夜はそれを目を輝かせながら、手に取る。
「じゃ、レジ行ってくるなっ」
「ああ」
当夜たちがいる所から真っ直ぐ行った所にあるレジに行き、プレゼント用の包装を頼んでいる当夜を見てから、徹はCDに目を戻した。一番上の棚で眩しい程の笑顔をこちらに向けている、栗色の髪を二つに結っている少女と目が合う。真ん中にいる彼女とじっと見つめ合い、曲の歌詞を思い出しそうになった徹は目を閉じて首を振った。
暗く沈んでいきそうな自分の思考と振り払うために当夜の元へと向かう。
「あ、ごめん。包装してもらってる」
「見れば分かる。それに、僕は構わないから気を遣わなくていい」
「うん、ありがとう」
ピンク色の袋に赤いリボンのシールを貼りつけてから、店員が明るくお待たせしました! と言いながら当夜に差し出した。
「ありがとうございます」
当夜がそれを笑顔で受け取り、鞄の中に入れながら店の外へと出ていく。
「喜んでくれるといいな」
「うん。……そうだなっ!」
袋をしまい終えた当夜は嬉しそうに笑った。
「じゃあ、図書館に行こうか」
「うんっ! 徹もなにか借りるのか?」
「ああ」
まだ赤く染まる気配も見えない空の下、二人は図書館へ向けて歩いていく。
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