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一章/炎の巨神、現る
炎の声届く夜・一
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紅蓮の炎が渦を巻く。
黒い煙を伴ったそれは次第に一条の光へと姿を変えた。
中から現れたのは、赤い体躯の大きな鳥だ。真紅の瞳を持っている鳥は、クチバシを開けて耳をつんざくような雄たけびを上げる。
冴え渡るような青空に消えていく声の主に、手を伸ばした――
***** ***** ***** ***** ***** *****
ピピピッ、ピピピッと連続で高い機械音が鳴る。上に手を伸ばした状態で起きた当夜は呆けた顔のまま身を起こした。
青い掛布団を三つに折ってベッドの上に置き、首を傾げながらも寝巻にしている黒いスウェットの上下を脱ぐ。壁にかけているハンガーから制服を取り、身に着けた。
それからベッドの上に乗り、カーテンを引く。窓を開けて部屋の中に清々しい空気を舞い込ませると、気分を変えるためにすうっと吸い込んだ。初夏近くの風はまだ冷たいが、気持ちが良い。
「よしっ!」
ぐっと拳を握ってから、身を乗り出して塀を挟んで向かい側にある家の窓に手を当てる。元から鍵が開いている窓を横にすべらせると、開いた。桟に足をのせて、手を向こうの枠に手をついて猫のようにそろりと移動していく。
「とーおーるっ!」
窓から部屋に入ると、ベッドの上に寝ている人物の腰を跨ぐ形でのっかった。のっかられた相手はぐっと呻き、目を細く開ける。
「当夜……重いぞ」
「徹、おはよっ!」
にこっと笑った当夜がそう言うと、寝ぼけ眼の徹もおはよう、と丁寧に挨拶を返した。
「この起こし方は止めろと言っただろ」
「けど、これが一番なんだって」
シャギーの入ったうなじを隠す長さの黒髪に、人目を引く鮮やかな赤い目をしている渋木当夜。当夜は驚く程に白い自分の頬にかかっている髪を、桜色の爪がついている手ではらう。長いまつ毛を伏せた様子に、徹は顔を背けた。
天然がかっており、内側に巻きがちな水色の髪を肩よりほんの少し長く伸ばしており、満月のような金色の目を持つ暁美徹は、黄みがかった肌を赤く染める。水色の寝巻を着ている手を伸ばし、制服の硬い生地に守られている当夜の太ももに手を当てた。
「あっ! そうだ、徹!」
そろそろ下りてくれ、と言おうとした徹に、当夜は覆いかぶさる。
「うっ、わ、あああっ、起きる! 起きるから! 当夜っ」
「え?」
徹の腹の上に手を当てて起き上がった当夜はきょとんと目を丸くして徹を見つめた。
「とにかく着替えるから。朝食を食べながら聞いてやる」
「分かった。……ウチで食うよな?」
「ああ」
「んじゃ、準備してくる!」
にっと笑った当夜は徹の上から下り、また窓から窓へと移動していく。
「ちゃんと鍵を閉めろよ」
「はーい! わーかってるよっ!」
笑って手を振ってから窓と鍵を閉め、カーテンを引いた。部屋から出ていき、誰もいない二階建ての家の中を歩いていく。フローリングの床は冷たく、黒い靴下を穿いただけの当夜の足を冷やした。
黒い煙を伴ったそれは次第に一条の光へと姿を変えた。
中から現れたのは、赤い体躯の大きな鳥だ。真紅の瞳を持っている鳥は、クチバシを開けて耳をつんざくような雄たけびを上げる。
冴え渡るような青空に消えていく声の主に、手を伸ばした――
***** ***** ***** ***** ***** *****
ピピピッ、ピピピッと連続で高い機械音が鳴る。上に手を伸ばした状態で起きた当夜は呆けた顔のまま身を起こした。
青い掛布団を三つに折ってベッドの上に置き、首を傾げながらも寝巻にしている黒いスウェットの上下を脱ぐ。壁にかけているハンガーから制服を取り、身に着けた。
それからベッドの上に乗り、カーテンを引く。窓を開けて部屋の中に清々しい空気を舞い込ませると、気分を変えるためにすうっと吸い込んだ。初夏近くの風はまだ冷たいが、気持ちが良い。
「よしっ!」
ぐっと拳を握ってから、身を乗り出して塀を挟んで向かい側にある家の窓に手を当てる。元から鍵が開いている窓を横にすべらせると、開いた。桟に足をのせて、手を向こうの枠に手をついて猫のようにそろりと移動していく。
「とーおーるっ!」
窓から部屋に入ると、ベッドの上に寝ている人物の腰を跨ぐ形でのっかった。のっかられた相手はぐっと呻き、目を細く開ける。
「当夜……重いぞ」
「徹、おはよっ!」
にこっと笑った当夜がそう言うと、寝ぼけ眼の徹もおはよう、と丁寧に挨拶を返した。
「この起こし方は止めろと言っただろ」
「けど、これが一番なんだって」
シャギーの入ったうなじを隠す長さの黒髪に、人目を引く鮮やかな赤い目をしている渋木当夜。当夜は驚く程に白い自分の頬にかかっている髪を、桜色の爪がついている手ではらう。長いまつ毛を伏せた様子に、徹は顔を背けた。
天然がかっており、内側に巻きがちな水色の髪を肩よりほんの少し長く伸ばしており、満月のような金色の目を持つ暁美徹は、黄みがかった肌を赤く染める。水色の寝巻を着ている手を伸ばし、制服の硬い生地に守られている当夜の太ももに手を当てた。
「あっ! そうだ、徹!」
そろそろ下りてくれ、と言おうとした徹に、当夜は覆いかぶさる。
「うっ、わ、あああっ、起きる! 起きるから! 当夜っ」
「え?」
徹の腹の上に手を当てて起き上がった当夜はきょとんと目を丸くして徹を見つめた。
「とにかく着替えるから。朝食を食べながら聞いてやる」
「分かった。……ウチで食うよな?」
「ああ」
「んじゃ、準備してくる!」
にっと笑った当夜は徹の上から下り、また窓から窓へと移動していく。
「ちゃんと鍵を閉めろよ」
「はーい! わーかってるよっ!」
笑って手を振ってから窓と鍵を閉め、カーテンを引いた。部屋から出ていき、誰もいない二階建ての家の中を歩いていく。フローリングの床は冷たく、黒い靴下を穿いただけの当夜の足を冷やした。
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