2 / 124
一章/炎の巨神、現る
炎の声届く夜・一
しおりを挟む
紅蓮の炎が渦を巻く。
黒い煙を伴ったそれは次第に一条の光へと姿を変えた。
中から現れたのは、赤い体躯の大きな鳥だ。真紅の瞳を持っている鳥は、クチバシを開けて耳をつんざくような雄たけびを上げる。
冴え渡るような青空に消えていく声の主に、手を伸ばした――
***** ***** ***** ***** ***** *****
ピピピッ、ピピピッと連続で高い機械音が鳴る。上に手を伸ばした状態で起きた当夜は呆けた顔のまま身を起こした。
青い掛布団を三つに折ってベッドの上に置き、首を傾げながらも寝巻にしている黒いスウェットの上下を脱ぐ。壁にかけているハンガーから制服を取り、身に着けた。
それからベッドの上に乗り、カーテンを引く。窓を開けて部屋の中に清々しい空気を舞い込ませると、気分を変えるためにすうっと吸い込んだ。初夏近くの風はまだ冷たいが、気持ちが良い。
「よしっ!」
ぐっと拳を握ってから、身を乗り出して塀を挟んで向かい側にある家の窓に手を当てる。元から鍵が開いている窓を横にすべらせると、開いた。桟に足をのせて、手を向こうの枠に手をついて猫のようにそろりと移動していく。
「とーおーるっ!」
窓から部屋に入ると、ベッドの上に寝ている人物の腰を跨ぐ形でのっかった。のっかられた相手はぐっと呻き、目を細く開ける。
「当夜……重いぞ」
「徹、おはよっ!」
にこっと笑った当夜がそう言うと、寝ぼけ眼の徹もおはよう、と丁寧に挨拶を返した。
「この起こし方は止めろと言っただろ」
「けど、これが一番なんだって」
シャギーの入ったうなじを隠す長さの黒髪に、人目を引く鮮やかな赤い目をしている渋木当夜。当夜は驚く程に白い自分の頬にかかっている髪を、桜色の爪がついている手ではらう。長いまつ毛を伏せた様子に、徹は顔を背けた。
天然がかっており、内側に巻きがちな水色の髪を肩よりほんの少し長く伸ばしており、満月のような金色の目を持つ暁美徹は、黄みがかった肌を赤く染める。水色の寝巻を着ている手を伸ばし、制服の硬い生地に守られている当夜の太ももに手を当てた。
「あっ! そうだ、徹!」
そろそろ下りてくれ、と言おうとした徹に、当夜は覆いかぶさる。
「うっ、わ、あああっ、起きる! 起きるから! 当夜っ」
「え?」
徹の腹の上に手を当てて起き上がった当夜はきょとんと目を丸くして徹を見つめた。
「とにかく着替えるから。朝食を食べながら聞いてやる」
「分かった。……ウチで食うよな?」
「ああ」
「んじゃ、準備してくる!」
にっと笑った当夜は徹の上から下り、また窓から窓へと移動していく。
「ちゃんと鍵を閉めろよ」
「はーい! わーかってるよっ!」
笑って手を振ってから窓と鍵を閉め、カーテンを引いた。部屋から出ていき、誰もいない二階建ての家の中を歩いていく。フローリングの床は冷たく、黒い靴下を穿いただけの当夜の足を冷やした。
黒い煙を伴ったそれは次第に一条の光へと姿を変えた。
中から現れたのは、赤い体躯の大きな鳥だ。真紅の瞳を持っている鳥は、クチバシを開けて耳をつんざくような雄たけびを上げる。
冴え渡るような青空に消えていく声の主に、手を伸ばした――
***** ***** ***** ***** ***** *****
ピピピッ、ピピピッと連続で高い機械音が鳴る。上に手を伸ばした状態で起きた当夜は呆けた顔のまま身を起こした。
青い掛布団を三つに折ってベッドの上に置き、首を傾げながらも寝巻にしている黒いスウェットの上下を脱ぐ。壁にかけているハンガーから制服を取り、身に着けた。
それからベッドの上に乗り、カーテンを引く。窓を開けて部屋の中に清々しい空気を舞い込ませると、気分を変えるためにすうっと吸い込んだ。初夏近くの風はまだ冷たいが、気持ちが良い。
「よしっ!」
ぐっと拳を握ってから、身を乗り出して塀を挟んで向かい側にある家の窓に手を当てる。元から鍵が開いている窓を横にすべらせると、開いた。桟に足をのせて、手を向こうの枠に手をついて猫のようにそろりと移動していく。
「とーおーるっ!」
窓から部屋に入ると、ベッドの上に寝ている人物の腰を跨ぐ形でのっかった。のっかられた相手はぐっと呻き、目を細く開ける。
「当夜……重いぞ」
「徹、おはよっ!」
にこっと笑った当夜がそう言うと、寝ぼけ眼の徹もおはよう、と丁寧に挨拶を返した。
「この起こし方は止めろと言っただろ」
「けど、これが一番なんだって」
シャギーの入ったうなじを隠す長さの黒髪に、人目を引く鮮やかな赤い目をしている渋木当夜。当夜は驚く程に白い自分の頬にかかっている髪を、桜色の爪がついている手ではらう。長いまつ毛を伏せた様子に、徹は顔を背けた。
天然がかっており、内側に巻きがちな水色の髪を肩よりほんの少し長く伸ばしており、満月のような金色の目を持つ暁美徹は、黄みがかった肌を赤く染める。水色の寝巻を着ている手を伸ばし、制服の硬い生地に守られている当夜の太ももに手を当てた。
「あっ! そうだ、徹!」
そろそろ下りてくれ、と言おうとした徹に、当夜は覆いかぶさる。
「うっ、わ、あああっ、起きる! 起きるから! 当夜っ」
「え?」
徹の腹の上に手を当てて起き上がった当夜はきょとんと目を丸くして徹を見つめた。
「とにかく着替えるから。朝食を食べながら聞いてやる」
「分かった。……ウチで食うよな?」
「ああ」
「んじゃ、準備してくる!」
にっと笑った当夜は徹の上から下り、また窓から窓へと移動していく。
「ちゃんと鍵を閉めろよ」
「はーい! わーかってるよっ!」
笑って手を振ってから窓と鍵を閉め、カーテンを引いた。部屋から出ていき、誰もいない二階建ての家の中を歩いていく。フローリングの床は冷たく、黒い靴下を穿いただけの当夜の足を冷やした。
10
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
ヤンデレだらけの短編集
八
BL
ヤンデレだらけの1話(+おまけ)読切短編集です。
全8話。1日1話更新(20時)。
□ホオズキ:寡黙執着年上とノンケ平凡
□ゲッケイジュ:真面目サイコパスとただ可哀想な同級生
□アジサイ:不良の頭と臆病泣き虫
□ラベンダー:希死念慮不良とおバカ
□デルフィニウム:執着傲慢幼馴染と地味ぼっち
ムーンライトノベル様に別名義で投稿しています。
かなり昔に書いたもので、最近の作品と書き方やテーマが違うと思いますが、楽しんでいただければ嬉しいです。
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
【BL】国民的アイドルグループ内でBLなんて勘弁してください。
白猫
BL
国民的アイドルグループ【kasis】のメンバーである、片桐悠真(18)は悩んでいた。
最近どうも自分がおかしい。まさに悪い夢のようだ。ノーマルだったはずのこの自分が。
(同じグループにいる王子様系アイドルに恋をしてしまったかもしれないなんて……!)
(勘違いだよな? そうに決まってる!)
気のせいであることを確認しようとすればするほどドツボにハマっていき……。
目が覚めたら囲まれてました
るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。
燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。
そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。
チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。
不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で!
独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
普通の男の子がヤンデレや変態に愛されるだけの短編集、はじめました。
山田ハメ太郎
BL
タイトル通りです。
お話ごとに章分けしており、ひとつの章が大体1万文字以下のショート詰め合わせです。
サクッと読めますので、お好きなお話からどうぞ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる