すべての世界で、キミのことが好き♥~告白相手を間違えた理由

立坂雪花

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✩.*˚第1章 告白のふたり

★悠真(ゆうま)

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 俺は今、告白された。

 知っていたんだ。本当は結愛が陸に告白するはずだったことを。
 陸と間違われて告白されたのは予想外だったけれど。

 
 こんな感じになったのには、理由があった。

***

 そのメールが来たのは、中学一年生の冬だった。

 初めてスマホを持った日から一週間ぐらいがたち、日曜日ひとりで昼ご飯のチャーハンを作っている時に突然それは来た。

『過去の悠真へ』

 過去? 

 友達がふざけて送ってきたのかな?
 それとも、噂で聞いていた迷惑メール?
 
 とりあえず題名をクリックしてみた。

 メールにはこんなことが書いてあった。

『結愛と、もっと分かりあって欲しい。素直に気持ちを伝えてほしい。素直に伝えることは格好悪いことではないから。またメールします』

「はぁ? なんだこれ」

 いきなりこんな不思議なメール。訳が分からなかった。

 でもその言葉は、俺の心の中に澄み渡り、響いた。

 


 結愛は幼なじみだ。

 小さい頃は仲が良かった。
 俺が彼女のことを “好き” だと意識するまでは。

 意識するようになったのは、小学四年生の頃だったと思う。

 うちは、両親が離婚していて、母さんとふたりで暮らしていた。母さんは毎日休む暇もなく働いていて、忙しそうで、遅くまで働く日も多かった。

 結愛と俺の通う保育園が一緒だった繋がりで、母親同士の仲も良く、母さんが仕事で帰りが遅い日には結愛の家で一緒にご飯を食べさせてもらったりもしていた。

 結愛が家族と楽しそうに話をしていると、突然心がズキンと痛くなる日があった。

 なんだろう。今思えば、自分もこんな風に家族と沢山話をしたかったのかな?

 家ではひとりでいることが多かったから。

 その日はいつもよりも痛くて。バレないようにその気持ちを隠していたのだけど。

 ご飯を食べ終えて、一緒にテレビゲームをしている時だった。

「大丈夫?」

 突然結愛が眉を寄せ、なんともいえない表情で質問してきた。

「えっ? 何が?」

「なんか、いつもよりも元気の無い顔だったから」

 気づかれないように隠していた気持ちに、唯一、結愛は気がついてくれた。

 そしていきなり俺を抱きしめてきた。

「結愛はずっと、悠真の味方だからね!」

「えっ?」

「これね、私が寂しい時や泣きたい時、いつもお母さんが気がついてくれてね、こうしてくれるの」

 胸が締め付けられて、鼓動が早くなる。

「あ、敵にやられる!」

 このタイミングでゲームの敵が迫ってきて、操作していたキャラクターがやられそうになった。そんなことはどうでも良かったけれど、ドキドキした気持ちを悟られないように、彼女から離れた。それからゲームを再びやり始めた。

 心臓の鼓動の速さはなかなか元に戻らなかった。

 ゲームを終え、片付けを始める。

「さっきギュッてした時、元気になれた?」

 ゲームソフトを片付けながら結愛は聞いてきた。

「う、うん」

 俺は微妙に視線をはずす。

「良かった!」

 彼女は、キラキラをまといながら可愛い笑顔で俺を見つめてきた。

 ――ドキッ!

 ゲーム本体とコントローラーを持っていた俺は、思わずコントローラーをひとつ落としてしまった。

 結愛に対しての気持ち、それが恋だと気がついたのはその時だったけれど、今思えば、もっと前から実は、好きだったのかも知れない。

 ――うん、好きだった。

 結愛が人混みに紛れている時も、彼女だけが浮き出ているように見えて、すぐに見つけられたし、彼女が悲しい時には隣にいて寄り添いたくなったし、彼女が楽しそうにしている時は、俺も幸せだった。他の人に対しては冷たくて、そんな感情にはならないのに。

 そして、独り占めしたいと常に思っていた。
 今も――。

 これからも当たり前に、仲良しのまま、ずっと一緒にいられるものだと思っていた。

 けれど、結愛に対しての感情が恋なのだと強く意識してから、俺の態度のせいで、心の距離が少しずつ離れていった。

 メールが来た時、怪しいとも思ったけれど、このままもっと離れてしまったら嫌だなって考えてもいたから、悩んだあげく、アドバイスを頭の中に取り入れてみることにした。

 意識はしてみたけれど、実際、元に戻るのは難しくて。

 結愛への気持ちを意識しすぎて、話すチャンスはあるのに、なかなか自分から話しかけることも出来なくて、目が合うとすぐにそらしてしまうし。

 ――どうしよう。

 友達は一応いたけれど、恋の相談なんて出来る人はいなかった。


✩.*˚

 冬休みに入る。

 学校は休みだし、母さんが仕事で遅い日には自分でご飯の準備をするようになったから、ご飯を食べさせてもらいに結愛の家に行くことはなくなって、姿さえ見られなくなった。

 寂しい時には、結愛に抱きしめられた時のぬくもりを思い出す。

 それから、彼女の表情、声とか。他のことも考えたりはするけど、九割ぐらいは彼女のことだった。

 怪しいメールを思い出して、読み直してみた。

 いたずらや迷惑メールだと思うけれど、もしも本当に未来の自分からだったなら?

 俺は、怪しいメールが来たら返事したらダメだってことを知っていたけれど、返してみた。

『未来の俺へ 今、中学一年生の俺は、結愛と、仲良かった頃に戻りたくて。でもどうしたらいいのか、分からない』

 すぐに返事が返ってきた。

『メールありがとう。気持ちと行動がしょっちゅうバラバラになっちゃうし、なんでも自分で解決しようとしてしまう俺だよね。悩むよね。いきなり元に戻るのは難しい事だから、少しずつ気持ちを結愛に話したりして、心を近づけて、焦らないで少しずつ進んでいけば良いと思うよ』

 そうなんだよな、俺は不器用だし、周りに相談することが苦手で、自分の頭の中で悩みをいつもグルグルさせている。

 このメールの相手、本当に未来の自分かな?

 なかなか思った通りに、すぐには前に進めなかったけど “ 未来の自分 ” と名乗る人からのメッセージ通り、少しずつ前に進もうと思った。

 まずは、結愛との壁を取り除きたい!

 目を合わせるだけでドキドキしすぎたけど、勇気をだして話しかけたり、自分が今出来ることをしてみた。


✩.*˚

『中学二年になると早速嬉しいことが起こる。結愛に、嬉しい気持ちを伝えたかった。もう、伝えられなかったことを全部伝えたかった。辛いことも起こるけど、頑張れ!』

 三月にそんなメッセージが来た。

 何が起こるのかな?

 これからのことなんて、予想は出来ない。前のメールにも書いてあったけど、相当気持ちを伝えずに後悔したんだな。

 なんか、分かる気がする。
 俺自身、そんな未来が予想できる。

『あと、お願いしたいことがある。結愛は自分のやりたいことを押し殺してしまうから、彼女に、もっと自分の気持ちを周りに伝えてって、言って欲しい』

 連続でメールが来た。

 たしかに彼女は自分の気持ちを伝えずに、流されてしまうタイプだ。

 お願いまでしてくるってことは、未来の結愛に何かあったのだろうか。


✩.*˚

 二年生になり、クラス発表を見た時にメールで書いてあった、嬉しいことが分かった。

 自分の名前を見つけたすぐ後に、無意識に“ 綾野結愛 ” の名前を確認している自分がいた。

 綾野結愛、いた!
 同じクラスなのを確認した。

 ――素直に。
 
 結愛に話しかける。

「綾野、同じクラスだな。良かったわ」

 自分の気持ちを伝えた。
 もう、その言葉を伝えるだけでいっぱいいっぱいだ。

 それから靴箱の場所へ逃げるように行きながら考えた。

 今、結愛に言った言葉、変じゃなかったかな? 
 表情や動き、大丈夫だったかなって。

 頭の中で何回も何回もさっきの自分の言動をリピートさせる。

 朝、結愛と挨拶をした後も何回もリピートさせている。

 いつも結愛の足音が後ろから聞こえてきて、彼女の足音だけはすぐに分かって。

 本当はすぐに振り向いて「おはよう」って自分から声をかけたいのに、気が付かないふりをしてそのまま前を歩いていた。

 メールが来てから、まずは振り向くことを頑張った。

 挨拶を交わせるようになった。

 結愛と朝の挨拶を交わせた日は、ただそれだけで周りをまとう空気が、吹く風も、全て心地よかった。

 
✩.*˚

『陸が犬の飼い主を探して、結愛にお願いをしてふたりの仲は急接近するんだけど、飼ってもいいのか、結愛は親に結局聞けなくて、彼女が俺に飼えないか聞いてくる。結局はうちで飼うことになる。犬の名前は“ マロン ” 』

 犬? マロン?

 そのメールの意味はすぐに分かる。

 教室で結愛たちがその犬の話をしていたから。メールで知らされてなければ、ただ俺の知らない話をして盛り上がっている、そんな風景だった。

 席は離れていたけど、結愛の声だけは特別に、はっきりと聞こえてくる。

 陸と話して、はしゃいでいる、聞きたくない声さえも。

 この犬の話が結愛と陸が仲良くなるきっかけだとメールの言葉があったから、どうしようか考えた。

 そんな中、放課後、結愛と陸がふたりっきりで下校しているのを見た。

 しかも、結愛の家の方向へ向かっている。

 素直に
 素直に――。

 俺は走って追いかけた。
 
 
 そのまま合流して、犬の名前を決めたり、一緒に買い物に行ったり、本来ならきっと、結愛と陸がふたりでやるようなことを俺も加わり三人でやった。

 ほんの少しの勇気で、目の前のことが変わるんだ。
 そんなことを実感した時だった。


✩.*˚

『今日、結愛が陸に告白をする。ふたりは付き合った。どうする?』

 朝、起きてすぐに、そのメッセージは来た。

「はっ? どうする?って、いきなりそんなこと……」

 夏休みに入る、少し前のことだった。

 突然、思いがけないメッセージ。
 焦った。

 結愛が陸に、告白する?
 しかも今日?

 頭の中が真っ白になる。結愛と陸が付き合うところを想像した。俺以外のやつが結愛と付き合って、隣にいるのを想像しただけで腹が立った。

 頭が痛くなる。

 もしも本当に告白したら、陸がOKしそうな予感がした。普段から結愛を目で追っていると、陸も目に入る。

 彼も結愛に好意を寄せている気がしたから。

 でもそれを知ったからって、どうしようもない。
 でも、ふたりが付き合うのは嫌だし。
 でも……。

 もしかして、告白させなければ良いのか?

 でもきっと結愛は、自分の気持ちを伝えるのが苦手だから、きっとものすごく、精一杯の勇気をだして告白をするのに。
 彼女の幸せになる道をじゃますることになるかも知れないのに。

 未来の俺は、何も出来なくて、結愛と離れ離れになって、後悔している様子だった。

 ずるい考えかもしれないけど、告白を阻止したい気持ちが心の中で大きな割合を占めた。

 いつ告白するんだろうか。

 告白させない具体的な方法なんて、すぐに思いつかないけど、聞いてみよう。

 俺は、未来の自分に

『どのタイミングで告白するのか分かる?』

と、メッセージを送った。



 すぐに返事が返ってきた。
『放課後に教室に呼び出されて、告白されたって話を次の日、陸が部活中に友達に話していたんだ』

 放課後、か……。

 時間と場所を聞いたからって何も変えられない。




 その日、ふたりの動向をいつもよりも観察した。

 早めに学校に着く。まだふたりは来ていない。先に陸が登校してきて、教室に入り、席に着く。

 いつもと変わらない光景だ。

 しばらくすると、誰かに呼ばれたみたいで、廊下に出ていく。

 陸の視線の先には結愛がいた。

 何か話している。告白か? でもメッセージでは放課後って書いてあった。今話しているのは放課後に告白するための待ち合わせ場所の約束だとか、そんなのかも知れない。

 陸に向かって話をする結愛の表情にモヤモヤした。


 未来の自分からのメッセージのおかげで、これから起こることが分かっているのに何も出来ないことにもモヤモヤした。

 ついに放課後になった。
 陸と俺は部活のため、グラウンドへ行く。

 サッカー部のミーティングが始まる。それが終わると、普段はトレーニングとかやるんだけど、陸は参加せずに校舎へ向かっていった。

 迷わず、陸の後をついていく。

 なんだか、探偵みたいだ。

 この方向……。
 陸は早歩きで教室に向かっていく。

「ちょっと待って!」

 行かせたくなくて、気がつけば俺は陸を呼び止めていた。

 陸が肩をビクッと震わせて振り向いた。

「わぁ! びっくりした。悠真だ。どうした?」

 自分がたった今起こした行動は、自分でも予想していなかったことだから、次の言葉が見つからない。

 どうしよう。

 このまま行かせたくない。
 結愛に告白させたくない。

「こ、これからどこ行くの?」
「ん? 教室だけど」
「何か用事あるの?」

 したことのない、陸への質問。
 今、必死に続けている。

「えっ? なんか結愛ちゃんが用事あるから、部活終わったら教室に来てって」

 陸から“ 結愛 ” って名前を聞いた瞬間、イラッとしてしまう。彼が彼女の名前を口にするだけで。
 
 今、彼が教室に行ってしまえば、ふたりは付き合ってしまう運命なんだ。

 恋人になってしまうんだ。

 本当に今ふたりを会わせたくないと思った。

「あぁ、結愛ね『やっぱり何でもないわ! 教室来なくて大丈夫だよ』って陸に伝言しといてって言っていたわ」

 こんなこといきなり言われても、ウソかもってあやしむかも。

「……そうなんだ、分かった! 伝えてくれて、ありがとな!」

 意外にもあっさり信じた様子。

 でも、陸は再び教室に向かおうとする。

「結愛、いないって! 帰ったよ!」

 俺はあせった。

「あぁ、今聞いたよ、それ。教室に荷物があるから取りに行くのさ」

 これで教室に結愛がいれば、ウソついたことがバレるし、ふたりが付き合う展開になってしまう。

 ――どうか、いませんように!

 心の奥底から願った。
 願うしかなかった。

 陸が勢いよく教室のドアを開ける。


 教室には誰もいなかった。
 ほっとした。

「はぁ、良かった!」

 思わず心の声を呟いてしまう。

 自分の机の中をあさり、教科書を取り出している最中の陸。

「ん? なんか言った?」
「なんも言ってない」

 彼は教科書をカバンに入れている。

「よし、もう悠真は帰るの?」

 陸が聞いてくる。

「いや、俺、また部活に戻るから」

「僕も練習したいから、部活戻ろうかな……あぁ、でも、なんかそんな気分じゃなくなったな。帰ろうかな? うん、帰るわ!」

 早く、早く帰って本当に。

「分かった。じゃあ、また明日な!」
「おぅ、またな、悠真!」

 陸が教室から出ていき、ほっとした。
 ほっとしたけど、もしばったりふたりが廊下で出会ったら……。

 まだ油断は出来ない。

 静かにバレないように、二階にあるこの教室から陸が玄関に着くまで距離をあけてついていく。ふたりは出会うことなく、陸は無事に玄関へ。

 はぁ、今度こそ大丈夫かな? 
 結愛は今、部活で美術室にいるのかな?

 今いる玄関から、廊下の一番端まで歩くと、美術室がある。

 そっと覗いてみると、結愛が絵を描いていた。

 とりあえず俺は、サッカーなんてする気持ちになれずに、部活に戻らず陸と結愛がこれから会うはずだった教室に戻ってみた。

 窓から外を見る。普段自分がいるサッカー部の様子が見える。

 他のサッカー部のみんなはシュート練習をしていた。

 陸、時間さえあれば誰よりもサッカーの練習をしているのに、そんな気分じゃなくなったとか言って帰るのが珍しい。結愛に呼び出されて、何か期待していたのかな……。

 結愛、これからここに来るんだよな。

「陸、用事出来たから帰ったわ」って言っても、後から嘘ついたことバレそうだし。

 でもなんか結愛にも言わないと、明日結愛と陸がなんだかんだ学校で会話をして、確実にバレそう。

 どうしようかな。
 何も思いつかない。

 ただの勢いでこんなことをやってしまったことに後悔する。

 今からここに来る結愛。
 正直に話そうかな。



 そんなことを考えながら外を眺めていると、ドアの開く音がかすかに聞こえた。

 ドアの向こう側にいたまま姿を見せてこない結愛が、話しかけてくる。

「ドアの前まで来てもらえる? 絶対にドアを開けないでね!」

 ドアを開けないで?
 なんで?

 てか、これ絶対に陸だと思ってるよな。

 だって、陸と話す時の彼女の声は、俺と話す時よりも甘い声なんだ。

 普段、陸にだけはそんな風に話すんだなと改めて考えると、胸がズキンと痛くなる。
 
 もう、どうにでもなれ!

 言われた通りに動いてドアの前まで、来た。

 下の方でゴトンと音がする。
 ドアの窓から覗くと、彼女はドアにもたれて座っていた。

 俺も同じように、ドアにもたれかかる。
 これからどうなるんだ?

 しばらくすると、彼女は言った。

「ずっと、好きでした。付き合ってください」

 いきなり告白!
 顔を合わせないまま告白をするとは想定外。

 あぁ、これか。結愛が陸に伝えようとした言葉。

 俺は陸よりもずっとずっと長く、結愛のそばにいたのに。
 誰よりも結愛のことが好きな自信があるのに、なんで陸?

 こんなに可愛い結愛に、こんなに可愛く告白されたら、断るやつなんていないよな。

 返事に悩む。
 実は陸ではないことを伝えるべきか。

 彼女は姿の見えない俺のことを陸だと思っている。
 でも、実際には俺がここにいて、その言葉を俺に当てて言ったんだ。

 もうよく分からなくなってきた。

 ずっと好きだった結愛が俺に――。

 俺が告白されたってことにして返事をすれば良いのかな。

 俺に言ったんだ。そう、陸じゃなくて俺に!
 だから俺の、今の気持ちを素直に出せばいいんだ。

「おう、いいぞ!」


 頭がぐるぐるしすぎて、何が正解か分からなくなり、そのままの俺の気持ちを、返事した。

「……!」

 ドアが勢いよく開いた。

「えっ? 何で悠真が?」

 結愛は目をまんまると見開いていた。
 その姿も可愛かった。

 もう、その告白、取り消せないからな、結愛……。


 自分が本当に告白された気持ちになってきた。
 心が踊り、気持ちが高まる。

 今まで心の奥底にぎっしり押し込められていた“結愛が好きな気持ち”が、一気にあふれだす!



 未来の俺からメールが来なかったら、絶対に結愛が陸に告白するのを阻止することはなかったし、告白もこうして受けることはなかった……今の俺はない。

 ひっそりと、ずっと結愛への気持ちを隠したまま生きていったのだろう。

 未来の俺、ありがとう。
 でも、これでいいのだろうか。

 だって、結愛は陸が、好きだし――。

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