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8*葵ちゃんも告白

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 2階の私が寝ている部屋へ。
 ふたりでベッドに座る。

「結芽、こっちの世界に来てから大丈夫だった?」

 葵ちゃんは目をウルっとさせながら、わたしの手をギュッと握る。

 心配してくれていたのが伝わってくる。
 つられて私も涙ぐむ。

「結芽が無事でよかったよ……すごく心配で。もう、ほんとに結芽のこと大好き!」

 私は今、葵ちゃんに嫉妬してて、葵ちゃんのことが嫌になっちゃったかもって思っていたのに。

 再会して、こんなことされて、言われて。やっぱり葵ちゃんのこと、好きで、仲良しでいたいなって思う。

 心はいつも複雑で、難しい。
 結局私は……。

「私も葵ちゃんのことが好……」

 最後まで言いかけた時、葵ちゃんは私の口を手でふさいだ。


「待って! 結芽も私に告白したら、私たちが一緒に帰ることになっちゃう!」

「わっ! そうだね!っていうか、葵ちゃんたちも帰る方法知ってるの?」

「うん。新井くんがタブレットを通してここの人たちとコミニュケーションとってて……」

「えっ? タブレットでそんなこと出来るの?」

「うん、そうみたい。それでね、教えてもらってたの」

「そっか、やっぱり知ってたんだ」

 さっきの新井くんの言葉、あきらかに知ってたっぽかったもんな。

「ねぇ、結芽聞いて? わたし、恋したかもしれない。彼と一緒に帰って結ばれたい」

「えっ?」

「なんかね、彼の隣にいるとね、ドキドキするの。こんなの、初めて……」

 そう言って葵ちゃんは自分の胸に手を当てた。
 頬が赤くなって、恋をしている顔をしている。その表情を見て、可愛いなって思った。

 ――でも、宮野くんのことだよね。

 そういえば、葵ちゃんからこんな話を聞くのは初めてかもしれない。でも初めて聞く葵ちゃんの恋の相手が、私の好きな人と同じで。

 しかも宮野くんも葵ちゃんが好きかもしれないし。



「なんとなく、分かってたよ」
「本当に? なんで分かったの?」
「だってふたり、すごく仲良しだし」

 言葉にすると、ギュッと胸が痛くなった。

 切ないなぁ。

 残念だけどその恋、素直に応援出来ないよ……。

「えっ? 同じクラスだけど、あんまり話したことなかったよ!」

「ウソだ! あんなに仲良しで……」

「だって、彼、クラスでひとりでいること多くない? いつも本とか読んでて」

「本、読んでなくない?」

「読んでるよ。だから新井くんって、ずっと私の中で本がすごく似合うイメージで……」

「ちょっと待って? 新井くん? 宮野くんでなくて?」

「そだよ。ってかなんで陽希の名前が出てくるの?私にとって彼は、ずっと友達かな? 恋の対象にはならないと思う」

 葵ちゃんはいつも、何でも正直にいう。

 だから葵ちゃんの言葉は本当だと思う。
 別の人が好きでほっとした。

「じゃあ、どうしてあの時、宮野くんとふたりであの場所にいたの?」

「結芽が彼を誘えなかったら、陽希が結芽を誘うように仕組もうと思ってね、一緒に場所の確認してたの」

「私のために?」

「そうだよ! それにね、陽希って多分……」

「宮野くんが何? 気になる」

「ううん、なんでもない。それよりも私も、ここに住んでいい?」

 なんだろう。上手く話をはぐらかされた気がするなぁ。


「いいよ。それにしても葵ちゃん、どうしてこの場所が分かったの?」

「新井くんが色々推理したりタブレットいじったりして、結芽たちがいる場所を調べてくれたの。メッセージ送る方法も教えてくれて……」

「そうだったんだ。新井くん、すごいね」

「そう、すごかったんだよ! 得意なゲームみたいだからって色々してくれて。普段とは違うイメージで、こっちに来てから積極的で、自信満々で……」

「そうなんだ……彼がそういう感じのところ、想像出来ないな」

「だよね。あとね、夜、散歩しようと思って外にでたら、なんか黒くて怖いの出てきて……そしたら新井くんが魔法のステッキをタブレットから出して、その黒いの消してくれたの!」

「そんなアイテムもあるの?」

「そうみたい。もう、その姿を見てから新井くんのこと見るだけでドキドキしちゃって……」

 話の途中で葵ちゃんは突然だまった。



「葵ちゃん、どうしたの?」

「いや、でも新井くんって、結芽のこと好きなんだよなぁって。結芽は新井くんのこと、好きにならないでね?」

「ならないよ! だって私はずっと宮野くんが好きだから」

「良かった! 私、新井くんに振り向いてもらえるようにがんばる!」

「私も、宮野くんに振り向いてもらえるようにがんばる!」

 葵ちゃんと一緒に笑いあった。

 モヤモヤが、すーっとどこかに飛んでいった。
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