霞月の里

そゆ

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終章

霞月の二人

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 能力測定から数日後、明継あきつぐは仕事に復帰した。
 まずは書類整理に追われ、徐々に軽い訓練が始まり、しばらくして任務復帰となった。
 療養期間を与えられていた緋咲ひさきもそれに合わせて復帰し、同時期に任務の再開を言い渡された。

 霞月かげつの門に集まった明継と緋咲は久々の任務にちょっとした緊張感を持って挑んだ。
 嗣己しきから告げられた任務内容を聞くまでは。

「また化け物退治!? この任務、いつ終わるんだよ!」

「さあな。霞月は大量に化け物を造り、放置してきた。どんな化け物がどこでなにをして、燻ぶっているのか把握もできていない」

「それだけ杜撰な管理がされていたってわけね」

 緋咲の物言いに、嗣己が不服そうに口を開く。

「クレームなら里のジジイどもに言ってくれ。あいつらは俺たち能力者の生みの親だと言ってふんぞり返っているが、満足にペットの管理もできない老いぼれどもだ」

「最近よく聞くけど、そいつらって今も組織にいるのか?」

 明継が口を挟むと嗣己が首を振る。

「お前の一件からうるさくなった。年齢的に一線は退いているが無駄に権力だけは持っている」

「なんか面倒くさそうだな」

「何を考えているか分からんジジイどもだ。お前らも気を付けておけ」

 嗣己はそう言うと体を門に向け、出発の姿勢を見せた。
 明継の顔が途端に緩む。

「どうしたの?」

 それに気がついた緋咲が聞けば、

春瑠はるたちが笑ってる姿を見ると、俺たちの能力や任務も悪いもんじゃないかもって思えてさ。これからどんな出会いがあるんだろうって、ちょっと期待してる自分がいる」

 と、にやけて答える。
 そんな明継に緋咲も穏やかな笑みで返す。

「そうね。私もそう思うわ」

 顔を見合わせる2人の表情は、円樹村えんじゅむらにいた頃と同じ穏やかさだ。

「表情が戻ったな」

 それを横目で見ていた嗣己がポツリと呟いた。
 2人が不思議そうに首を傾げれば、

「霞月では無理を強いたからな。ようやく円樹村の時のような表情が見られて安心した」

 と言いながら、嗣己がふわりと微笑む。
 明継と緋咲はぽかんと開けた口を閉じるのも忘れて嗣己を見つめた。

「なんだ」

「いや。今、すっごい良い顔してたから」

「優しいお兄さんみたいだった」

 明継と緋咲が口々に言うと、嗣己が顔を背けた。

「……そんな事は無い」

 珍しい素振りを見せた嗣己に2人は迫り、にんまりと笑う。

「いっつもツンツンしてるなーと思ってたけど、本当は俺たちの事を気にしてくれてたのか?」

「明継の一件といい、実は私たちのこと大切に思ってくれてる?」

「あ! もしかしてこの間の話と関係ある!?」

「ねぇねぇ~」

「し~き~~」

「「教えてよ~~」」

 質問責めをしてくる2人から、嗣己が逃げるように歩き始めた。

「今日の目的地は距離がある。空間移動で楽させてやろうと思ったがやっぱりやめだ」

「え!?」

 明継と緋咲が青ざめるが、嗣己は意地悪く笑みを浮かべるだけだ。

「考え直してよ!?」

「現地集合、現地解散。もう決めた。覚悟しろ」

「そんなこと言わずに!」

「だぁめ」

「「お願いします、嗣己様~!!」」

 明継と緋咲の叫びがこだまする。
 嗣己は笑みを浮かべたまま口の中で呟いた。

「おかえり」
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