霞月の里

そゆ

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第二任務 寂池村

現場検証

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 嗣己しき明継あきつぐ緋咲ひさきの編成に大紀を加えた霞月かげつの4人は寂池村じゃくちむらへ足を踏み入れた。
 この村は昔から土地が豊かで人も多く、不作の年があっても納税を怠ることは無かった。だが目の前に広がる風景はどうだろうか。
 田畑は雑草の管理がされず朽ちた物が放置され、作物は動物に食い荒らされている。そこら中に鳥が留まって餌を狙い、野生動物は民家を生活の拠点にしている。


「緋咲、何かいるか?」

 嗣己が村を見渡して問う。

「恐らく二つ。村の中にいる方が力は強そうね。山の中にもう一つ……だけど、さすがに正確な場所は割り出せないわ」


「二人で住むには広すぎる村だな」

 と、嗣己が独り言のように呟くと、大紀に村を囲む山の偵察を指示した。

「ここに何がいるんだ? 一人で行かせて大丈夫なのか?」

 心配そうに問う明継に嗣己は

「恐らく化け物じゃない。能力者だ」

 と、答えると緋咲に視線を向けて彼女が頷くのを確認した。

「山の捜索は大紀でなければ時間がかかる。やむを得ん」

 それから大紀を見て

「お前は戦闘能力が無いに等しい。対象を見つけても接触はするな」

 と言い渡すと、大紀は頷いて山へ向かった。


「明継。お前は民家を覗いてこい」

「ん? わかった」

 明継は嗣己に言われるままに近場の民家を覗きに行くと、中から立ち込める異臭に顔を歪めた。袖で鼻を抑えながら土間に入ると、その異臭は足を進めるほどに強烈になっていく。
 部屋に繋がる引き戸の隙間から中を覗けばそこには動物に食い荒らされた青白い何かがいくつも落ちていた。大半は鋭利な刃物で切り離されたような断面を見せていて、それが人間のバラバラ死体だと認識できるまでには時間が必要だった。
 明継は胃の不快感を感じて民家を飛び出した。

「ひどい有様だろ」

「何があるかわかってたな!? やめろよ!」

 顔を真っ青にした明継を見て

「確認さ」

 と、嗣己が楽しそうに笑った。
 口を押さえて「気持ち悪い」と呟く明継には、それ以上彼を咎める気力もないようだ。緋咲は明継を心配そうに見つめながら背中を擦った。

「誰かを秘密裏に痛めつけるなら、どこでする?」

 そんな二人を見ながら嗣己が問いかける。

「私なら行事品をしまう蔵ね。行事がなければ人は来ないし頑丈な鍵もついてる。都合がいいわ」

 明継は胃の不快感を感じながらも、即答する緋咲に複雑な表情を浮かべた。




 村のはずれまで行くと大きな蔵があった。扉にかけた南京錠は開錠され、鎖は落ちている。
 扉に手をかけた明継は、先ほどの臭いをまた感じ取った。

「この村はどうなってんだよ」

 眉間に皺を寄せながら袖で鼻を覆い、扉を開けるとそこには大量の肉が転がっていた。蛆が這いまわり、ハエが飛び、とてもじゃないが中に入る気はしなかった。緋咲の感知能力で調べてもらって終わらせようと早々に蔵の扉を閉めて振り返ると、彼女は明継に背を向けてクナイを構えている。


 その視線の先には暗い顔をした少年が立っていた。
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