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『甥っ子と一緒に暮らすことになったんだ。すごく可愛い子でさぁ、ほら』
隣人はそう言い、男にくたびれたスマホを嬉しそうに見せてきた。思いがけない言葉に男は一瞬呆気に取られる。それでも、恐る恐る画面を覗き込むと ーー 写っていたのはこちらにピースサインを向ける男の子で、アイドル顔負けの愛らしさだった。
『…甥っ子?いたのか。なんでまた…』
『4月から大学生になるんだよ。オレんちから通えば安上がりだろ』
その隣人とは珍しく話が合い、それなりに仲が良かった。通院先の病院が偶然にも同じということが大きいだろう。隣人は何かしらの精神疾患を患っているようだった。
自分と同属の隣人に対して、何かを羨んだりすることなど特段ない。それでも、その手元に写るまばゆさには目を細めずにはいられなかった。
『顔……あんたにちょっと似てるな』
『そうかぁ?この子、姉さんによく似てるんだよ』
隣人は手元の画面をジーッと見つめ、言葉を続ける。『進之介っていうんだけどさ……はぁ……この子、女の子だったら良かったのになぁ。それなら…』と小さな声で何かをぼそぼそとこぼすのだ。男は妙な苛立ちを感じていた。
『それなら、何って言った?』と尋ねると、隣人はどこか虚ろな目でこう語り出していた。
女の子だったら姉さんの代わりができるのに……オレ、姉さんのことを愛してるんだよ。姉さんと一つになれたらいいのにってずっと願ってるんだ…この子に姉さんと同じ格好をさせたら、姉さんそっくりになるかな。そうしたら……
ほんの一瞬のことのように思う。気づくと、男の足元には隣人が横たわっていた。酷い形相で、身体中アザだらけ。見るも無惨な姿だ。
自分が手にかけたのだろうか……と男は静かに考える。そのためには動機が必要だ。なぜ、どうしてなぶり殺したのか……隣人があの可愛い男の子と顔が似ていることに腹が立ったような気がする。そう、血の繋がり ーー 自分にはどうあがいても流れ得ない神聖な血。
その上、隣人は男の子の母 ーー あろうことか実姉に対し汚らわしい思いを抱いていた。天使を産み落とした大聖母への侮蔑ともいえる。こんな畜生はすぐに殺してしまわないと……
隣人はそう言い、男にくたびれたスマホを嬉しそうに見せてきた。思いがけない言葉に男は一瞬呆気に取られる。それでも、恐る恐る画面を覗き込むと ーー 写っていたのはこちらにピースサインを向ける男の子で、アイドル顔負けの愛らしさだった。
『…甥っ子?いたのか。なんでまた…』
『4月から大学生になるんだよ。オレんちから通えば安上がりだろ』
その隣人とは珍しく話が合い、それなりに仲が良かった。通院先の病院が偶然にも同じということが大きいだろう。隣人は何かしらの精神疾患を患っているようだった。
自分と同属の隣人に対して、何かを羨んだりすることなど特段ない。それでも、その手元に写るまばゆさには目を細めずにはいられなかった。
『顔……あんたにちょっと似てるな』
『そうかぁ?この子、姉さんによく似てるんだよ』
隣人は手元の画面をジーッと見つめ、言葉を続ける。『進之介っていうんだけどさ……はぁ……この子、女の子だったら良かったのになぁ。それなら…』と小さな声で何かをぼそぼそとこぼすのだ。男は妙な苛立ちを感じていた。
『それなら、何って言った?』と尋ねると、隣人はどこか虚ろな目でこう語り出していた。
女の子だったら姉さんの代わりができるのに……オレ、姉さんのことを愛してるんだよ。姉さんと一つになれたらいいのにってずっと願ってるんだ…この子に姉さんと同じ格好をさせたら、姉さんそっくりになるかな。そうしたら……
ほんの一瞬のことのように思う。気づくと、男の足元には隣人が横たわっていた。酷い形相で、身体中アザだらけ。見るも無惨な姿だ。
自分が手にかけたのだろうか……と男は静かに考える。そのためには動機が必要だ。なぜ、どうしてなぶり殺したのか……隣人があの可愛い男の子と顔が似ていることに腹が立ったような気がする。そう、血の繋がり ーー 自分にはどうあがいても流れ得ない神聖な血。
その上、隣人は男の子の母 ーー あろうことか実姉に対し汚らわしい思いを抱いていた。天使を産み落とした大聖母への侮蔑ともいえる。こんな畜生はすぐに殺してしまわないと……
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