ひかるくんの太もも

2. もも太郎ときび団子

「ぼく、よかったねぇ。お父さんとお買い物？」

　お店の人がニコニコと、ぼくに声をかけてきました。
　ちがうよ、友達だよ。そう言おうとしましたが、「ははは、目に入れても痛くないんですよ」と、もも太郎が答えます。

「本当に可愛らしい子で…将来が楽しみですねぇ」
「はい、ますますかっこよくなりますよ。はははっ」
　二人でそんな風に盛り上がっていました。ぼくにはよくわからない話です。

　やがて公園まで戻ってくると、外は少しだけ暗くなっていました。そろそろ帰らないと、ママ達が心配します。
「もも太郎、今日はどうもありがとう。バットとグローブ、大切に使うよ」と、ぼくはお礼を言いました。

「そんなそんな、こちらこそありがとう。ひかるくん、またおじさんと遊んでくれるとうれしいな。好きなもの、なんでも買ってあげるからね」
　もも太郎は、またきび団子をくれるみたいです。ぼくはうわぁぁとテンションが上がり、「じゃあ今度はゲーム買って！もも太郎もいっしょにやろうよ、楽しいよ！」と、その大きな手をつかんでぴょんぴょんはねました。

「いいよ、また明日ね。でも、このことはナイショだよ？ママに取り上げられたら大変だからね」

　うん！もも太郎の言葉に、ぼくは元気よく返事をしました。そこでふと、あることに気づきます。

「そういえばもも太郎、やきゅうけんって…最後どうなった方が負けなの？」

　結局、一回しかやらなかったやきゅうけんです。ぼくは負けるのが大きらいだから、明日にでも勝負をつけて、負かしてやりたいと思いました。もも太郎はにこりと笑います。

　はだかになった方が負けさ。でもひかるくん、それはまた今度にしよう。また今度、ね……
　ももたろうはそう言って、どこかへ消えて行きました。