君はぼくの婚約者

まめだだ

文字の大きさ
上 下
7 / 9

7

しおりを挟む
涙味のキスを繰り返して、互いの服を脱がし合い、全身を撫で辿られる。

はじめて見る直孝の大きく膨れた中心にオレは驚き慄いたが、直孝も直孝で、すでにどろどろに泥濘んでいるオレの後ろに触れてぎょっとしていた。


「もうこんななのか」

「ぬ、濡れやすいんだよ、オレ…」


ローションを使わなくても十分なほど滴るそこに自分がオメガであることを自覚する。

発情期でもそうじゃなくても、欲情するとすぐに後ろが濡れた。でもそこに触れるのは自分でも抵抗があって、身体はすでに直孝だけを求めていたのだとわかる。


「直孝、きて」


足の間に直孝を招く。
アルファのそれは直視できないくらい大きくて覚悟を決めるが、苦しくとも案外柔軟に飲み込むことができた。


「は……っ、智史…!」


番の雄が自分の上で喘いでいるだけで陶然とする。

直孝を受け入れた腹を上から撫でてオレはうっとりと目を細めた。番と肌を重ねる安心感がこれほどのものとは。


……直孝はオレにすべておさめたところで早々に極めてしまったのだけれども。


ずっとオレだけを求めて経験がなかったせいだ、と赤い顔であわあわ言い訳をするのがかわいくて、オレも「童貞なら仕方ないよな」とか余計なフォローをして墓穴を掘って。


「…どういうことだ?智史は違うのか?」

「え?あ、いやその、」

「挿入はしていないと言ってただろう」


それが後ろは未使用だが前は使ったことがある、と自白したときの直孝の形相といったら。


「なるほどなるほど。おまえは女が好きだったもんな。オメガ相手なら同じようなものか」

「待…!ちょっ、ちがうから!」

「頼むから言い訳はもっと上手にしてくれ」


ずしりと覆いかぶさって真上から見下ろす直孝が壮絶に笑った。


「智史はまだイケてないもんな。次はもっとがんばるから」

「あ……っ!」


暴発したくせにまだ大きい雄をぐいぐい奥に押し込んでくる。注がれた精液がまたちょうどよく滑りをよくして直孝を勢いづかせる。


「智史の期待に応えないと、な」

「頼んでなっ、あ、あぁっ、あ、あ、んんー!」


それからは体位を変えて何度も何度も、積年の恨みを晴らすように挑まれて、オレはひんひん泣いてよがった。とんでもない一夜だった。



***
ロマンチックには程遠いオレたちの初体験だったが、童貞を卒業した直孝は、元々男前だったがますます男振りが上がった。アルファとしての貫禄もついてきた。

オレもオレで色気がでたと言われるようになった。気恥ずかしくて仕方ないが、それ以上にオメガの衝動が強くなってしまった。
直孝がそばにいないと落ち着かない。他人の匂いをさせていたら不安定になって涙がでてくる。
拒否反応なのか、いままで使っていた抑制剤の副反応もひどく出るようになった。


まだ番になったわけじゃない、ただ直孝と触れ合っただけでこうとは。オレは自分自身に戸惑い動揺したが、直孝はじめ周囲から言わせるとこれが普通らしい。


『番になるアルファがそばにいて、平気でいられるオメガなんていやしないよ』とは主治医の談。

直孝からも『オレが隣にいても智史が平然としてたら、自信なくす…』としょんぼり言われて、きゅんきゅんしてしまった。ついでに後ろが濡れた。


オレはオメガだからこれが普通らしい。

そもそもオメガのオレがこれだけ長い間アルファの直孝から離れていられたことも異常らしい。頻繁にオンラインで顔を合わせていたとはいえ、画面越しでは匂いや体温は伝わらない。

次の発情期にはもっと強い反動が出ると思う、と医者に予告されてしまった。オレは緊張に息をつめたが、直孝は生唾を飲み込んでいた。なんでだ。


何をどうしようとオレはオメガだし、直孝はオレのアルファだ。それが自覚できただけでもよかったのだと思う。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

知らないだけで。

どんころ
BL
名家育ちのαとΩが政略結婚した話。 最初は切ない展開が続きますが、ハッピーエンドです。 10話程で完結の短編です。

オメガバースの言いなりにはならない

今野ひなた
BL
R-15ほどの性的表現が少しだけあります。 αである御影とβである晴人は幼馴染で恋人同士。だがΩである八雲が現れてからと言うもの、晴人は「運命の番」に家庭をめちゃくちゃにされたトラウマで不安が隠せない。晴人は別れようとするタイミングを探しながら日常を送るがある日、八雲のフェロモンに御影が充てられてしまう。 御影と晴人の運命は……? 過去別サイトに投稿していたものです。 お引越ししました。

【完結】何一つ僕のお願いを聞いてくれない彼に、別れてほしいとお願いした結果。

N2O
BL
好きすぎて一部倫理観に反することをしたα × 好きすぎて馬鹿なことしちゃったΩ ※オメガバース設定をお借りしています。 ※素人作品です。温かな目でご覧ください。

君はアルファじゃなくて《高校生、バスケ部の二人》

市川パナ
BL
高校の入学式。いつも要領のいいα性のナオキは、整った容姿の男子生徒に意識を奪われた。恐らく彼もα性なのだろう。 男子も女子も熱い眼差しを彼に注いだり、自分たちにファンクラブができたりするけれど、彼の一番になりたい。 (旧タイトル『アルファのはずの彼は、オメガみたいな匂いがする』です。)全4話です。

噛痕に思う

阿沙🌷
BL
αのイオに執着されているβのキバは最近、思うことがある。じゃれ合っているとイオが噛み付いてくるのだ。痛む傷跡にどことなく関係もギクシャクしてくる。そんななか、彼の悪癖の理由を知って――。 ✿オメガバースもの掌編二本作。 (『ride』は2021年3月28日に追加します)

なぜか大好きな親友に告白されました

結城なぎ
BL
ずっと好きだった親友、祐也に告白された智佳。祐也はなにか勘違いしてるみたいで…。お互いにお互いを好きだった2人が結ばれるお話。 ムーンライトノベルズのほうで投稿した話を短編にまとめたものになります。初投稿です。ムーンライトノベルズのほうでは攻めsideを投稿中です。

エンシェントリリー

斯波良久@出来損ないΩの猫獣人発売中
BL
短期間で新しい古代魔術をいくつも発表しているオメガがいる。名はリリー。本名ではない。顔も第一性も年齢も本名も全て不明。分かっているのはオメガの保護施設に入っていることと、二年前に突然現れたことだけ。このリリーという名さえも今代のリリーが施設を出れば他のオメガに与えられる。そのため、リリーの中でも特に古代魔法を解き明かす天才である今代のリリーを『エンシェントリリー』と特別な名前で呼ぶようになった。

君を変える愛

沙羅
BL
運命に縛られたカップルって美味しいですよね……受けが嫌がってるとなお良い。切なげな感じでおわってますが、2人ともちゃんと幸せになってくれるはず。 もともとβだった子がΩになる表現があります。

処理中です...