ぶどうの蔦が絡まるように

まめだだ

文字の大きさ
上 下
5 / 10

ごつぶめ

しおりを挟む
がっくり肩を落として城に戻る王子の背中を見送って、事の顛末を知った兄さまと翠峰さまには大笑いされた。

いい気味だ、と言った兄さまも、王子に思うところがあったのだろう。


それから国王様からも文が届いた。

『息子が迷惑をかけてすまない。これからも度々そちらに伺うことがあるだろう。嫌なら断ってくれて構わないが、わたしも妻もシャスラが戻ってきてくれると嬉しい』――だそうだ。


その言葉通り、王子は館をよく訪れるようになった。

城からはそれなりに距離があるというのに、どうしてるのかと思えば、近くの街で宿をとってるらしい。
一国の王子がなにをしているのかと呆れた。護衛の人たちも大変だ。


そのせいで、ぼくは折をみて本邸に戻るはずだったのに、父さまからしばらくそちらにいろと言われてしまった。


「さて、どうしようかな…」


王子が持ってきたケーキを頬張りながら考える。

はじめはけんもほろろに追い返していたけど、食べ物に罪はないし、つんけんしながら受け取ったら、それからずっと王子は生菓子ばっかり持ってくるようになった。
嫌いじゃないからいいんだけどさ。でも、ぼくの好物だと勘違いされてるみたいで困る。


「シャスラ、どうだ今日こそオレと結婚する気になったか?」

「王子はそればかりですね」


今日も今日とて、王子はやってくる。

行き場のない感情が雪のように降り積もって、自分でもこれからどうしたいのか見えなくなっていた。


もやもやしだしたぼくを気分転換だと兄さまたちが街へと連れだして、そして事件が起こる。


「王子の気持ちをなんだと思ってるのっ?」


そう叫んだのは、いつか王子が城につれてきた、あの平民の子だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

好きの距離感

杏西モジコ
BL
片想いの相手で仲の良いサークルの先輩が、暑い季節になった途端余所余所しくなって拗ねる後輩の話。

王様の恋

うりぼう
BL
「惚れ薬は手に入るか?」 突然王に言われた一言。 王は惚れ薬を使ってでも手に入れたい人間がいるらしい。 ずっと王を見つめてきた幼馴染の側近と王の話。 ※エセ王国 ※エセファンタジー ※惚れ薬 ※異世界トリップ表現が少しあります

キミの次に愛してる

Motoki
BL
社会人×高校生。 たった1人の家族である姉の由美を亡くした浩次は、姉の結婚相手、裕文と同居を続けている。 裕文の世話になり続ける事に遠慮する浩次は、大学受験を諦めて就職しようとするが……。 姉への愛と義兄への想いに悩む、ちょっぴり切ないほのぼのBL。

僕たち、結婚することになりました

リリーブルー
BL
俺は、なぜか知らないが、会社の後輩(♂)と結婚することになった! 後輩はモテモテな25歳。 俺は37歳。 笑えるBL。ラブコメディ💛 fujossyの結婚テーマコンテスト応募作です。

華麗に素敵な俺様最高!

モカ
BL
俺は天才だ。 これは驕りでも、自惚れでもなく、紛れも無い事実だ。決してナルシストなどではない! そんな俺に、成し遂げられないことなど、ないと思っていた。 ……けれど、 「好きだよ、史彦」 何で、よりよってあんたがそんなこと言うんだ…!

君に望むは僕の弔辞

爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。 全9話 匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意 表紙はあいえだ様!! 小説家になろうにも投稿

みどりとあおとあお

うりぼう
BL
明るく元気な双子の弟とは真逆の性格の兄、碧。 ある日、とある男に付き合ってくれないかと言われる。 モテる弟の身代わりだと思っていたけれど、いつからか惹かれてしまっていた。 そんな碧の物語です。 短編。

太陽に恋する花は口から出すには大きすぎる

きよひ
BL
片想い拗らせDK×親友を救おうと必死のDK 高校三年生の蒼井(あおい)は花吐き病を患っている。 花吐き病とは、片想いを拗らせると発症するという奇病だ。 親友の日向(ひゅうが)は蒼井の片想いの相手が自分だと知って、恋人ごっこを提案した。 両思いになるのを諦めている蒼井と、なんとしても両思いになりたい日向の行末は……。

処理中です...