えっ?! レオンハルト先輩、シコらないんですか?!

やなぎ怜

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中編

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 レオンハルトの今の状況を一文で説明するならば、

『推しのエロいイラスト(アニメーション付き)でシコらなかったら後輩にオナサポ(?)してもらえることになった』

 だろう。

 レオンハルトの脳内で「そうはならんやろ」と未だ己が置かれた状況を飲み込めない自分と、「なっとるやろがい!」とツッコミを入れる自分とがせわしなく同居していた。

 そうしてレオンハルトがぼんやりとベッドのフチに腰掛け、現実逃避をしているあいだに、イナは制服のスラックスを脱いでいる。日に焼けていない、真っ白なフトモモが目に入って、レオンハルトは釘付けになった。

 紳士はイナの行為をたしなめたり、イナから目をそらしたりするのだろうが、残念ながら今この場にいるのは性欲旺盛な思春期の男子高校生であった。

 そうなれば次に目に入るのはイナのパンツだ。純白のソレの、クロッチ部分に視線が行き、その布に隠された場所へ思いを馳せてしまうレオンハルトの理性は、崩壊寸前だった。

「これでいいですか?」
「えっ……」
「あれ? これじゃオナネタにならないですか?」
「えっ、あ、うん……ハイ……ソンナコトハ」
「挙動不審な先輩オモロ」

 視線をあっちへ向けたりこっちへ動かしたりとせわしなく泳がせているレオンハルトを見て、イナはくすくすと笑う。

「全部脱いだり、下着姿になるよりもこっちのほうがエロいと思いません?」
「それは同意」

 イナの上半身はブレザーとブラウスをきっちりと着込んだまま、ネクタイもしっかりと締められている。けれども下半身はパンツ一枚と、黒い靴下をはいただけの心許ない姿である。

 けれども――

「着エロっていいですよね!」
「いい……」

 レオンハルトの本能のままに言うならば、エロい。上半身はいつも通りなのに、下半身はとてもそうだとは言えない、ひとことで言えば非常事態。その非日常感がレオンハルトの股間をうずかせ、性欲を煽った。いや、うずかせるどころか既に芯を持ち始めている。

「じゃあオナネタになりますよね? 先輩のちんこ見せてください!」
「……いいの? いや、すごい今さらだけど……イナは、いいの? オナネタとか……フツーはなりたくないでしょ?」

 残った理性でレオンハルトはイナに問う。

 しかし――

「イヤだったらこんなことしません! わたしはエッチいの大好きなんです!!!!!!」

 イナ本人にそう力説されてしまえば、

「あ、そ、そう……ならいいけど……」

 などと情けない声音で引っ込むしかないレオンハルトであった。

「こーいうエロ同人みたいなことしたかったんですよ!」
「イナって一八歳未満……」
「今さらすぎません? 先輩だって一八歳になる前からエロ絵とか見てましたよね?!」
「ウッ……。ま、まあ、そうだね……」

 レオンハルトは置かれたシチュエーションや、目の前にいるパンツを晒しているイナというオナネタを前にして、もうなにがなにやらわからなくなりかけていた。

 けれどもイナはイナで先ほどからずっとテンションがおかしい。しかし自分のことでいっぱいいっぱいなレオンハルトは、そこに気を配れるほどの余裕は既にないのであった。

「先輩のちんこ、見せてください」
「は、ハイ……」

 もはやレオンハルトから「本当にいいのか」と念押しで問えるような雰囲気はなかった。場のイニシアチブはレオンハルトではなく、イナのほうにあったからだ。

 イナに促されるまま、レオンハルトはスラックスのジッパーを引きおろし、前をくつろげてボクサーパンツから少し硬くなったペニスを取り出した。

 レオンハルトのわずかに残された理性的な部分は「後輩の前で自らポロリとか……なにやってんだ?」と思いはするものの、目の前に吊るされたニンジン……もとい、下着姿のイナを見せられて、理性はどんどんと目減りしていくようだった。

「先輩のちんちん、思ったより長いですね!」
「そうなのかな……?」
「チン長測ったことないんですか?!」
「そこびっくりするところ?! べ、別に気にしたことないっていうか……女の子に見せるとか考えたことなかったし……。っていうかイナは長いとかわかるの……?」

 「別の男にもこういうことをしているのではあるまいな」との疑念を抱いたレオンハルトはイナに問うが、イナはあっけらかんと「わかんないです」と言う。

「想像の中のちんちんより長いなって思っただけです」
「そ、そう……」
「でも思ったよりグロくないですね!」
「そ、そう……?」
「テカテカした赤黒い亀頭とかオモロカワイイです!」
「オモロカワイイとは一体……? っていうか、全然オナニーする雰囲気にならんのだが……」
「もうシコシコしていいですよ! あ、近くで見てもいいですか?」

 なんかもっと淫猥でムーディーでとってもエロいアレソレを期待したレオンハルトであったが、イナはイナなのだった。猥雑な空気ではあったものの、カラッと明るい雰囲気のままだ。

 「この空気のままオナれだと……?」と、レオンハルトの中で多少の葛藤が生じたあいだに、イナは膝を折って、ベッドに腰掛けているレオンハルトの股間へ――ボクサーパンツから露出したペニスへと顔を近づける。

「ん……なんか体臭~って感じのにおいがしますね」
「えっ、嗅がないで?! 毎日ちゃんと洗ってるけど、嗅がないで?! 恥ずかしい!」
「えー? 後輩の前で情けなくちんぽ晒してシコシコオナニーしようっていう状況なのに?」
「きゅ、急に言葉責めするじゃん?」
「こういうのイヤですか?」
「いつも通りでいいよ……」

 そう言ったあとで、レオンハルトは「いつも通りってなんだ……?」と思う。イナが下着姿を晒して、レオンハルトはペニスを晒している。既に日常からは一歩どころか五〇歩ははみ出している状況だった。

 けれどもイナには一応伝わったらしく、「わかりました!」という明るい声が返ってくる。

「それじゃあわたしはいつも通りでいますので、先輩の勃起チンポの先から精液をびゅって出すところ、見せてください!」

 イナの言葉選びにはちょっと、正直、グッとくるものがあったものの、相変わらず見られながらの自慰行為に励む空気ではないなとレオンハルトは思うのであった。
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