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クラスメイトだったYくん
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他人の夢の話ほどつまんない話はない、みたいに言いますけど、俺は昔から他人が見た荒唐無稽な夢の話は結構好きで。
だからというわけでもないんですけれども、ここはひとつ夢に関するちょっと怖かった話をします。
これは小学生のころにあった話です。
今三〇代前半の俺が小学生のときの話なので、かれこれ二〇年近く前の話になります。
あるとき――たぶん、六月が七月か、それくらいの蒸し暑い時期だったかな。
夏休みに入る前だというのはたしかで、まあそれくらいの時期。
俺のクラスでは複数人がまったく同じ夢を見るようになって、しばらくざわついていたことがあるんです。
きっかけが俺だったようなものなで、よく覚えています。
先述の通り俺は寝ているときに見る夢の話を聞くのが好きで、それは小学生のときからすでにそうだったので、俺が水を向けると友人たちは色々と語ってくれたものです。
はじめは――ふたりだったはずです。
俺とよくつるんでいる友人たちのうちふたりが、まったく同じ夢を見ていることに気づいたんです。
そのときはそんな偶然もあるんだなあという感じでした。
けれどもその夢を見る人数が、徐々に増えていったんですよ。
最終的には俺のクラスでは三分の一くらいの人数――だいたい、一〇人くらいが同じ夢を見たはずです。
女子なんかは本気で怖がっている子もいたみたいですが、男子は興奮しているやつが多かったですね。
そのころはオカルト系の番組なんかもまだまだテレビでやっていたような時代でしたし。
そうなると当然、夢に出てくるものがなんなのか探し当てようという話になります。
ところで一〇人くらいが見たまったく同じ夢というのには、一軒家が出てくるんですね。
しかしその一軒家、なんの変哲もない二階建ての家なんですよ。
あまりにありふれているから特徴がなくて。
俺たちが通っていた小学校は山を削って造成した土地にあって、周囲は「ニュータウン」なんて名づけられた住宅街に囲まれていたんですね。
そういうわけで二階建ての一軒家なんて周りにはありふれているわけです。
白っぽい壁があって、くすんだ青っぽい屋根があって、車が一台だけ入れる車庫があって、狭い庭があって――。
それに一〇人くらいが同じ夢を見ていたのはたしかなんですが、その一軒家について語られるディティールの解像度には各々差があったんですよね。
まあ夢の話なのでそんなものでしょう。
そういうこともあったし、そもそも夢の中に出てくる同じ一軒家が実在するのかどうかという話もあり、本気で探そうとしていたのはクラスでも二、三人くらいでしたね。
でもそこに、「その夢に出てくる一軒家知ってる」ってやつが出てきたんですよ。
仮にYくんとしますが――Yくんは教室にひとりふたりは必ずいるような、大人しくて目立たないクラスメイトでした。
勉強ができたとか、運動できなかったとかも覚えていないくらい、存在感のない陰の薄いクラスメイトでしたね。
で、そんなYくんが「知ってる」って言うんです。
結論から言うとその言葉は嘘じゃなくて、Yくんが教えてくれた場所にその夢に出てきた一軒家は存在したんですよ。
でもその一軒家には普通に人が住んでいましたし、周囲から浮いている様子もなかったですね。
夢の中に出てくる一軒家が存在した!
……というところでこの一連の不可思議な出来事の熱はピークに達しましたが、そこで終わりでした。
前述の通り人が住んでいるから忍び込もうなんてできませんし、住人に夢の話なんておかしな話をしたら学校に通報されるんじゃないか、と話し合うだけの知能は、小学生と言えども俺たちにももう備わっている年ごろでした。
なにもできることはなかったし、夏休みに入ったことと、その夢をもうだれも見なくなったことでこの一連の出来事は終わったように思えました。
実際に関係があるのかはわからないのですが、夏休みが明けるとYくんは転校していました。
Yくんと同じマンションに住んでいた子の話によると、引っ越したそうです。
夏休みの中ごろのことだったらしいのですが――だれが言い始めたかは忘れましたが――その時期からあの一軒家の夢を見なくなった、という話が持ち上がりました。
それから、真偽不明の噂も多数流れました。
あの一軒家には老夫婦が住んでいるそうで――それはたしかな話だそうなのですが――変な宗教にハマっていただとか、しつこい布教なんかをしてただとかいう噂です。
当時は数年前のオウムの事件の影響もあって、新興宗教に対する拒否感を持っていた人間は多かったように思います。
そういうこともあって老夫婦に関してそういう噂が流れたのか、実際に新興宗教を信仰していたために、そのような噂を流されたのか、真偽のほどは定かではありません。
Yくんについても、様々な噂がありました。
その老夫婦に呪われたというのがもっともスタンダードな噂で、ひどいものになると呪われて死んでしまったというものもありました。
けれどもそのどれもこれも、本当なのか嘘なのか、当時の俺たちには判断できませんでした。
親たちもYくん一家については本当に知らない様子で、俺が母親にYくん一家について聞けば、逆になにか理由を知らないか、兆候はなかったかなんて聞かれたのをうっすらと覚えています。
そういうわけで真偽不明の噂ばかりであったことと、担任にやんわりと釘を刺されたこともあって、一連の出来事に対する熱は急速に冷めていきました。
俺も、その同じ夢を見た一〇人くらいの中のひとりなんですが、三〇代に入った今になってまたその夢を見たんですよね。
山を造成したせいでやたら多いニュータウンの坂道を、頑張ってのぼって行く。
するとその坂道の途中に一軒家がある。
白っぽい壁があって、くすんだ青っぽい屋根があって、車が一台だけ入れる車庫があって、狭い庭があって――。
二階に窓がいくつかあって。
でもひとつだけ、子供のころに見た夢と違いがありました。
二階の窓から、Yくんがこちらを見ているんですよね。
ただそのYくん、俺が三〇代前半になっているのと同じように、三〇代前半くらいのおっさんになってるんですよね。
俺が最後に見た小学生のときの姿じゃなくて。
ここには書かないけど、Yくんの顔の一部分が特徴的なので気づいたんです。
そんなYくんが、あの一軒家の二階の窓からじっと俺を見ているんですよね。
まあそれだけの、他人からすれば「だからなんだよ」っていう、言ってしまえばつまらない夢の話です。
だからというわけでもないんですけれども、ここはひとつ夢に関するちょっと怖かった話をします。
これは小学生のころにあった話です。
今三〇代前半の俺が小学生のときの話なので、かれこれ二〇年近く前の話になります。
あるとき――たぶん、六月が七月か、それくらいの蒸し暑い時期だったかな。
夏休みに入る前だというのはたしかで、まあそれくらいの時期。
俺のクラスでは複数人がまったく同じ夢を見るようになって、しばらくざわついていたことがあるんです。
きっかけが俺だったようなものなで、よく覚えています。
先述の通り俺は寝ているときに見る夢の話を聞くのが好きで、それは小学生のときからすでにそうだったので、俺が水を向けると友人たちは色々と語ってくれたものです。
はじめは――ふたりだったはずです。
俺とよくつるんでいる友人たちのうちふたりが、まったく同じ夢を見ていることに気づいたんです。
そのときはそんな偶然もあるんだなあという感じでした。
けれどもその夢を見る人数が、徐々に増えていったんですよ。
最終的には俺のクラスでは三分の一くらいの人数――だいたい、一〇人くらいが同じ夢を見たはずです。
女子なんかは本気で怖がっている子もいたみたいですが、男子は興奮しているやつが多かったですね。
そのころはオカルト系の番組なんかもまだまだテレビでやっていたような時代でしたし。
そうなると当然、夢に出てくるものがなんなのか探し当てようという話になります。
ところで一〇人くらいが見たまったく同じ夢というのには、一軒家が出てくるんですね。
しかしその一軒家、なんの変哲もない二階建ての家なんですよ。
あまりにありふれているから特徴がなくて。
俺たちが通っていた小学校は山を削って造成した土地にあって、周囲は「ニュータウン」なんて名づけられた住宅街に囲まれていたんですね。
そういうわけで二階建ての一軒家なんて周りにはありふれているわけです。
白っぽい壁があって、くすんだ青っぽい屋根があって、車が一台だけ入れる車庫があって、狭い庭があって――。
それに一〇人くらいが同じ夢を見ていたのはたしかなんですが、その一軒家について語られるディティールの解像度には各々差があったんですよね。
まあ夢の話なのでそんなものでしょう。
そういうこともあったし、そもそも夢の中に出てくる同じ一軒家が実在するのかどうかという話もあり、本気で探そうとしていたのはクラスでも二、三人くらいでしたね。
でもそこに、「その夢に出てくる一軒家知ってる」ってやつが出てきたんですよ。
仮にYくんとしますが――Yくんは教室にひとりふたりは必ずいるような、大人しくて目立たないクラスメイトでした。
勉強ができたとか、運動できなかったとかも覚えていないくらい、存在感のない陰の薄いクラスメイトでしたね。
で、そんなYくんが「知ってる」って言うんです。
結論から言うとその言葉は嘘じゃなくて、Yくんが教えてくれた場所にその夢に出てきた一軒家は存在したんですよ。
でもその一軒家には普通に人が住んでいましたし、周囲から浮いている様子もなかったですね。
夢の中に出てくる一軒家が存在した!
……というところでこの一連の不可思議な出来事の熱はピークに達しましたが、そこで終わりでした。
前述の通り人が住んでいるから忍び込もうなんてできませんし、住人に夢の話なんておかしな話をしたら学校に通報されるんじゃないか、と話し合うだけの知能は、小学生と言えども俺たちにももう備わっている年ごろでした。
なにもできることはなかったし、夏休みに入ったことと、その夢をもうだれも見なくなったことでこの一連の出来事は終わったように思えました。
実際に関係があるのかはわからないのですが、夏休みが明けるとYくんは転校していました。
Yくんと同じマンションに住んでいた子の話によると、引っ越したそうです。
夏休みの中ごろのことだったらしいのですが――だれが言い始めたかは忘れましたが――その時期からあの一軒家の夢を見なくなった、という話が持ち上がりました。
それから、真偽不明の噂も多数流れました。
あの一軒家には老夫婦が住んでいるそうで――それはたしかな話だそうなのですが――変な宗教にハマっていただとか、しつこい布教なんかをしてただとかいう噂です。
当時は数年前のオウムの事件の影響もあって、新興宗教に対する拒否感を持っていた人間は多かったように思います。
そういうこともあって老夫婦に関してそういう噂が流れたのか、実際に新興宗教を信仰していたために、そのような噂を流されたのか、真偽のほどは定かではありません。
Yくんについても、様々な噂がありました。
その老夫婦に呪われたというのがもっともスタンダードな噂で、ひどいものになると呪われて死んでしまったというものもありました。
けれどもそのどれもこれも、本当なのか嘘なのか、当時の俺たちには判断できませんでした。
親たちもYくん一家については本当に知らない様子で、俺が母親にYくん一家について聞けば、逆になにか理由を知らないか、兆候はなかったかなんて聞かれたのをうっすらと覚えています。
そういうわけで真偽不明の噂ばかりであったことと、担任にやんわりと釘を刺されたこともあって、一連の出来事に対する熱は急速に冷めていきました。
俺も、その同じ夢を見た一〇人くらいの中のひとりなんですが、三〇代に入った今になってまたその夢を見たんですよね。
山を造成したせいでやたら多いニュータウンの坂道を、頑張ってのぼって行く。
するとその坂道の途中に一軒家がある。
白っぽい壁があって、くすんだ青っぽい屋根があって、車が一台だけ入れる車庫があって、狭い庭があって――。
二階に窓がいくつかあって。
でもひとつだけ、子供のころに見た夢と違いがありました。
二階の窓から、Yくんがこちらを見ているんですよね。
ただそのYくん、俺が三〇代前半になっているのと同じように、三〇代前半くらいのおっさんになってるんですよね。
俺が最後に見た小学生のときの姿じゃなくて。
ここには書かないけど、Yくんの顔の一部分が特徴的なので気づいたんです。
そんなYくんが、あの一軒家の二階の窓からじっと俺を見ているんですよね。
まあそれだけの、他人からすれば「だからなんだよ」っていう、言ってしまえばつまらない夢の話です。
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