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 ぞんぶんにキスをしたあと、汗ばんでいた肌から、するりと服を脱がされる。

 眼前にいる誠也くんは既に下着姿となっており、絵画モデルを務めるだけあって綺麗に引き締まった体が私の目に映る。

 次いで、誠也くんの指が背中に回り、簡素なブラジャーを紐解く。

 かすかな圧迫感を失った胸部が、急速に恥ずかしくなった。

 私の胸は大きくもないが小さくもない。たぶん、標準くらい。

 そんな日が当たらないせいで青白い胸の、その先端が緊張からかピンと立ってしまう。

「あ……」

 ブラジャーが、私の腹にズレる。

 あらわになった胸を、羞恥から腕で隠してしまう。

 それを見て誠也くんはかすかに微笑んだ。けれどもどこかいつもよりそれはぎこちない。

 互いに、緊張している。

 なぜなら私も誠也くんもこんなことは一度としてだってしたことがないからだ。

 未知の領域に、ふたりして突っ込む。そんな感じだった。

「……触るね」

 誠也くんの私より骨ばった指が、私の白い胸に触れる。私はおそるおそる、胸を隠していた腕を下げる。

 誠也くんは私に愛撫を加えようとしているのだ。

 そんなことをしなくても、発情期を迎えた私の女性器は、既に愛液にまみれているのだが。

 しかしムードを盛り上げるためにもこれは必要なことなのだろう。

 私はどこか冷めた理性的な部分でそう考え、ちらりと誠也くんの下着に包まれた股間へ目をやった。

 勃起、がどういう状態かはもちろん知っているが、実際に誠也くんのあれがそうなるとどんな感じになるのかは、まったく想像がつかない。

「怖い?」
「……ううん」

 ふにふにと私の胸を優しく揉みしだきながら、誠也くんが問うてくる。

 誠也くんのあそこについて考えてました、なんて言えないし、言う余裕もない私は首を横に振った。

 実際に、不思議なほどに怖くはない。

 これから待っている破瓜の瞬間はたしかにちょっと怖いのだが、誠也くんが相手なら無理をしないだろうという安心感があった。

「誠也くんだから……」
「うん。そっか……。……舐めてもいい?」
「うん……」

 心臓がドキドキと鼓動を打っている。けれどもそれは、決してイヤな感じではなかった。

 誠也くんがこれから与えてくれるだろう快楽に対する期待。それが私の心臓を高鳴らせる。

「んっ」

 外気に触れてピンと立った乳頭を、誠也くんのざらりとした舌が愛撫する。

 しばらくはチロチロと控え目に舐めるだけだった行為は、次第に激しくなって行った。

 甘噛みされ、舌でつつかれ、かと思えば焦らすように柔らかく敏感な乳輪を舌が円を描く。

 唾液の混じったちゅっちゅっという音を聞きながら、私は膣奥からドロリと愛液が垂れ出てくるのがわかり、興奮を煽られる。

 敏感な乳首から、ぴりぴりとした快感が私の背を伝って、子宮をうずかせる。

 そして同時にもどかしさが私の中に生まれる。

 それを誠也くんが察したのかは定かではないが、私の胸元から顔を上げると同時に、私の下着に指をかけた。

「……下、触るよ。大丈夫?」
「き、聞かなくても良いから……」
「そう?」

 顔が熱く、真っ赤になっているだろう私と比べて、誠也くんはまだまだ余裕がありそうだった。

 それでもシミひとつない頬はほのかに上気しているのが見て取れる。

 誠也くんは私の唯一残っていた下着に手をかけると、緩慢な所作で私の足からそれを引き抜いた。

 下着のクロッチ部はすっかり濡れてしまっていて、おまけに半白濁の糸を引いている始末だった。

 それが無性に恥ずかしくて、私は誠也くんから顔をそらす。

「だいぶ濡れてるね」
「……たぶん、オメガだから」

 オメガは濡れやすいと典医さんからレクチャーされていた私は、苦し紛れにオメガ性のせいにした。

 それは半分は真実だっただろうし、半分は真実ではなかっただろう。

 誠也くんとのセックスへの期待感に、私ははしたなくも大いに愛液をしたたらせ、彼のペニスを心待ちにしていたのだ。

 いよいよフェロモンの香りもどちらかのものか、わからないくらいに混ざり合っていた。

 甘ったるい柑橘系の香りが場を支配する中で、誠也くんの筋張った指が私のねっとりと濡れた膣口を撫でた。

「あっ……」
「ちゃんと慣らすから。大丈夫」
「うん……」

 声を上げたのは恐れからではない。予想以上の快さと、もどかしさが私の子宮を直撃したからだ。

 ろくに運動もしていないのに、眼下にある私の胸はあからさまに上下している。

 また膣の奥から愛液がドロリと流れ出る感覚がわかり、私は羞恥に顔を熱くした。

 私ばっかり興奮しているような気がした。

 かといって誠也くんを興奮させる方法は、よくわからない。ペニスに触れればいいのだろうか?

 でも、この態勢ではちょっと手が届かない。

 じゃあなにか言えばいいのかなと思ったが、もともとコミュニケーション能力が低い私に、誠也くんを興奮させる語彙はなかった。

 ……これって、マグロってやつなのかな?

 いや、でも、初めてのセックスだし、こんなもんなのかな?

「――ひぅっ?!」
「珠季、なにか別のこと考えてない?」

 不意を突かれ、誠也くんの私とは違う男の指が膣口に潜り込んだ。

 ゆるゆるとピストンするように動かされれば、愛液に満ちている膣内はちゅっちゅっと恥ずかしい音を立てて、誠也くんの指を迎え入れている。

 自分でも触れたことのない膣内。そこに侵入した誠也くんの指は、強烈な異物感を伴っていた。

 しかしそれは苦痛よりも快楽を呼び起こす。

 自分のものではない指が、自分でも触れたことのない場所を、侵略するかのように踏み入ってくる。

 そのシチュエーションが愛する誠也くんによってもたらされていると思うと、背中にゾクゾクとした快感が走った。

「そ、そんなことな――あっ、あぅっ」
「さすがにちょっとキツイかな……入るかな、これ」

 ぐいぐいと狭い膣内へ割入るようにして誠也くんの指が増えて行く。

 そのあいだにもピストン運動は止められることがなく、ざらざらとした私の膣壁を容赦なく愛撫して行く。

 ぐちゅっ、ぶちゅっといやらしい音を響かせながら、誠也くんの指によって私の膣穴は確実にこじ開けられて行った。

 浅く荒い呼吸が止まらず、私の胸はイヤと言うほど上下している。

 そして私の愛液にまみれた膣襞は、誠也くんの指をぎゅうぎゅうと食い締めている。

 まるで早くペニスを突き立ててとせかすかのように、侵入してきた誠也くんの指に甘えるように絡んでいる。

「ねえ、珠季ってオナニーするの?」
「あっ、あぅ、す、する、けど……? んっ、んぅっ」
「もしかしてクリトリスでイッてる? ナカではイッたことない?」
「く、クリでするけどっ、ナカは、ナカは、わかんなっ、あぅぅっ……!」

 終わりの見えない誠也くんの愛撫に息も絶え絶えな私は、冷静だったら答えられないような質問にも普通に返してしまう。

 すると今まで触れられていなかったクリトリスに、誠也くんの指腹が触れた。

 その瞬間、今までにないビリビリとした快楽が私の背骨を駆け上って行った。

「ひっ、ひゃぅぅっ――!」
「あ、珠季のナカ、きゅうってなった。クリが気持ちいいんだね」

 笑顔の誠也くんに対して、私はもう彼の顔を見ている余裕はなかった。

 誠也くんの柔らかい指の腹が、私のクリトリスを弄ぶ。

 ぐりぐりと押し込んだり、爪でひっかくような感じに愛撫を加えたり……。

 私はそのたびに面白いくらい体を跳ねさせ、腰を浮かせた。

 もちろんそのあいだにも私の膣穴は誠也くんの指に犯されていた。

 そしてクリトリスに愛撫が加わるたびに、私の膣穴は誠也くんの指を抱きしめるようにして収縮したのだった。

 気がつけば、私の膣穴には誠也くんの指が三本も入っていた。

 もはや、時間の感覚も曖昧で、そうなるまでにどれくらい経ったのかすらおぼろげだった。

「珠季……いれるね? 大丈夫?」
「んっ……う、だ、だいじょう、ぶ」

 膣穴から誠也くんの指が引き抜かれる。

 同時に、寝そべる私の頭に誠也くんが近づき、唇に軽くキスをされた。

「痛かったら言ってね? 無理しちゃダメだよ?」

 痛くても、多分私は我慢するだろう。

 だって、誠也くんとひとつになりたかったから。

 誠也くんと、「つがい」になりたかったから。

 その思いでいっぱいで、もう他にそれ以外の気持ちが入る余地はないくらいだった。

 それでも私を気遣う誠也くんの言葉がうれしくて、彼のことが好きだという気持ちで胸がいっぱいになった。

「……いれるよ」

 下着を下ろした誠也くんの股間では、既にペニスが勃起して臨戦態勢に入っていた。

 私の痴態がそれに貢献していたのであろうことを思うと、うれしさ半分恥ずかしさ半分。

 誠也くんはペニスを持って亀頭を私の膣口に密着させる。

 ちゅっ、とまるでキスでもしたかのような音が鳴って、私は興奮を煽られる。

 誠也くんは何度か亀頭を擦りつけるように動かしたので、何度もちゅっちゅっという愛液が擦れる音が聞こえた。

 同時に、膣口に当たる誠也くんの亀頭の感触に、私は期待に胸を高鳴らせた。

「んっ……」

 膣穴の入口へ潜り込むようにして、誠也くんの亀頭が侵入する。

 傘の張ったカリ部が、ぐいぐいと私の膣穴を拡げながら膣襞をこすって行く。

「大丈夫?」
「うんっ……ぜんぜんへいき」

 その言葉にウソはなかった。

 狭い膣洞を暴くかのような誠也くんのペニスは、どれだけ進んでも痛みはなかった。

 途中にひっかかりはあったものの、そこを超えてしまえば誠也くんのペニスが根元まで私の膣に収まるのはすぐだった。

 オメガは初めてでも痛みがあまりないと聞いていたが、それはどうやら本当のことらしかった。

 さすがに涼しい顔をしていた誠也くんも、ぐねぐねと蠕動し、オメガの本能か、ペニスをしゃぶりつくそうとせんばかりの私の膣内に、顔色を変えていた。

 誠也くんははあはあと軽く息を切らせて、頬が色っぽく上気していた。

「ごめん。あんま余裕ないかも」

 誠也くんはそう言うや、私の腰をつかんで、ゆっくりと前後に動き出した。

 指とは違う、圧倒的な質量と質感を持って、誠也くんのペニスが私の膣内を隙間など残さず犯して行く。

 異物感はあったが、その不快感を勝って快感が私の子宮を、脳を、直撃し、犯して行った。

 ぐちゅぐちゅと膣穴はペニスとの摩擦で淫音を立てる。

 私の膣内はイヤというほど熱くなって、とろけて、誠也くんのペニスを抱きしめている。

 次第に誠也くんの動きも容赦のないものになって、亀頭が私の子宮口を突き上げ始めた。

 腰を引いてペニスを私の膣穴からかろうじて出ないぎりぎりまで引き出すと、次の瞬間にはぐいっと私の子宮口までひと息に突く。

 少し乱暴なその動作すら、私にはもう快楽以外を与えない。

 私の足先はピンと張って、中空をゆらゆらと揺らめく。

 誠也くんが子宮まで犯さんとする勢いでペニスを突き入れるたびに、私の上で私の足がゆらゆらと揺れた。

 喉からは言葉が勝手に漏れ出て、止まらなかった。

 自分でも聞いたことない、高く、アルファに媚びるような、オメガの声。

 誠也くんは言葉もなく、ただ熱心に私を犯す。

 勃起したペニスで私の膣穴をかきまぜるように好き勝手動いて、カリで敏感な膣襞を擦り上げ、射精を促す蠕動を振り払うようにして子宮口を突き上げる。

 それは本能の動きだった。

 オメガを孕ませてやりたいと望む、アルファの本能からの動きだった。

「はあっ、はあ、はっ、ごめん、珠季っ、もう……!」

 いつもと同じ誠也くんの顔をしながら、その瞳はアルファの目をしていた。

 それがオメガにはたまらなくうれしかった。

 誠也くんアルファの子を孕みたくて孕みたくてたまらなくなって、子宮をうずかせて膣穴でぎゅっとペニスを抱きしめた。

 誠也くんの動きが早くなる。私の股のあいだに腰を叩きつけるようにして、何度も何度もペニスを出し入れする。

 私の口からは甘えるような声が何度も飛び出て、誠也くんの口からはまるで獣のような声が漏れ聞こえる。

 やがて誠也くんの動きが止まった。

 亀頭を子宮口のある膣穴の最奥へと突き入れたまま、びくんびくんとペニスが脈動するのがわかった。

 ベータよりも遥かに量の多いアルファの精液が、私の子宮口にかかり、そして膣穴すべてを満たして、膣口のペニスとの隙間からどろりと漏れ出た。

 そして誠也くんは子宮口へ放出した精液を送り込むかのように軽く腰をピストンさせた。

 私はその動きでゆるやかに絶頂を迎える。今までにない幸福感に包まれた、優しい絶頂だった。


 誠也くんはそれを見届けたあと、私のうなじに噛みついた。


 *


 ベッドの中でふたり並んで肩を上下させる。

 誠也くんは不意にわたしのうなじへと指を滑らせ、そして微笑んだ。

「それじゃあこれからも、末永くよろしくお願いします」
「こ、こちらこそ……ふつつか者ですがよろしくお願いします……」

 それはどこかぎこちなさのある、ともすれば他人行儀にも聞こえるだろう言葉だった。

 けれどもこれから新しいスタートを切る私たちには、それがぴったりだった。
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