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マサキはいったいどこのだれなんだろう?
当然といえば当然の疑問を、棗は今になって抱く。
マサキとの突然の再会から早くも一週間が経っていた。
そのあいだ、どういう風に日々を過ごしていたのか、棗は思い出そうとして失敗した。
おそらく、いつものようにつまらない平凡な毎日を送っていたのだろう。
小心者の棗には友人というものは今も昔もほとんどとしていない。
例外は、マサキくらいのものだった。
であれば親ならばなにかしらマサキについての情報を持っているかもしれない――と棗は思ったが、しかし両親のどちらにもそれを聞く勇気は持てなかった。
マサキと遥か昔から肉交を重ねていたという事実が、棗の中に恥という感情を生んだのだ。
性に関する事柄は、親にも伏せていたいと思ってしまうのが、棗の性であった。
まさか、マサキとそのような関係にあるとは昔も言ってはいないだろうが、なんとなく彼について問うのはヤブヘビではないかと、被害妄想的に考えてしまう。
「だれにもいわないでね。ふたりだけのヒミツだよ」
マサキが悪戯っぽくそういったので、棗はだれにもあのことを言ったことがない。
言おうと、言ってしまいたいとも思ったことはなかった。
それに、マサキがどこのだれだっていいという思いもあった。
棗の中にはなんとなく、マサキに対する幻想が出来上がっていた。
謎めいた美しい友人……そういう人間がひとりくらいいてもいいのではないか、と少々夢見がちに思ってしまうのである。
マサキは「また遊ぼう」と言い残して去って行った。
ということは、彼はまた棗の前に姿を現すつもりはあるのだろう。
なら、そのときに問いただせばよい。
棗はそう結論を出して、またぼんやりとしたルーティーンを繰り返す日々へと戻って行った。
そしてやはりというか――マサキは棗の前に現れた。
艶やかな黒い髪をなびかせて、今度はどこで手に入れたのだろうか? 棗の学校の女子制服を身にまとっている。
「やあ」
ネコのようなツリ目でにんまりと笑みを作り、気安げな様子でマサキは笑う。
それに釣られて棗も突然の再会に動揺しながらも、愛想笑いを浮かべる。
場所は棗の通う学校の廊下。時間は、日直である棗以外は――部活動に興じる生徒を除いて――みんな帰ってしまっているような時間だった。
「どうしたんだよ、それ」
どうにかこうにかそれだけを口にするが、なぜか舌の根がカラカラに乾いていて、言葉は少しだけもつれていた。
けれどもマサキは特にそれについて気を払う様子はない。
「これ?」そう言って紺色のスカートの裾をつまみ、持ち上げる。
白くまぶしい太ももが当然のように露わになって、棗は自然と生唾を飲み込む。
スカートの裾はギリギリのところまで持ち上げられて、けれどもマサキの股のあいだは巧みに見えない。
それがまた棗の妄想と興奮を加速させた。
マサキは今日も女物の下着をつけているのだろうか?
平素、そのような乱暴な感情はだれに対しても浮かばないと言うのに、今だけはマサキのスカートをはぎ取ってやりたい――そんな感情に支配される。
ぼくがそうしたら、マサキはどんな顔をするんだろうか?
「どうでもいいじゃん、そんなの」
マサキの言葉に棗は納得したわけではなかったが、しかし彼にそう言われると、「それもそうだな」となぜか思ってしまう。
彼の言う通り、今はそんなことはどうでもいいことだった。
どうしてマサキが棗の学校に現れたのか――どうして棗の学校の制服を着ているのか――。
マサキが再び現れたということは、そういうことなのだ。
今度は、棗がマサキの手を取った。
そして足早にひと通りのない別館の男子トイレへと連れ込む。
決してキレイではない個室の白い壁を見ていると、自然と以前マサキとまぐわった公園の公衆便所を思い出す。
「ねえねえ、ナツメくん」
そう言ってマサキは棗を個室トイレにある洋式便器の便座へと座らせる。
マサキは座った棗の前に立って、またにんまりと悪戯っぽいネコ目で笑った。
紺色のスカートがマサキの手でまくり上げられる。今度は、下着まで露わだ。
今日もやはりフリルがあしらわれた紐パンであったが、色はややドぎついピンク色だった。フリルの端には黒で縁取りがある。
マサキは蝶々結びにされた下着の紐下へするりと指をもぐらせる。
棗は、そんなマサキの白い指先から目が離せない。
そしてマサキはにやにやと、生唾を飲み込む棗を見下ろしていた。
しゅるり。そんな音が聞こえたような気がした。
ビビッドなピンク色をした蝶々結びが解かれるのは一瞬だった。
布面積の小さなマサキの煽情的な下着の紐は、彼の腰骨から解放され、重力に従い下へと落ちて行く。
「はい♪」
マサキはそれをつかんで、棗に渡す。
先ほどまでマサキが身にまとっていたものだ。それは、棗の手の中で温かみを持っていた。
「あげるよ」
「もらっても……」
棗が素直な感想を口にこぼせば、マサキは片方の頬を膨らませて不満そうな顔をする。
「俺のパンツだよ? 持って帰って好きにすればいいじゃん」
「好きに……って」
カマトトぶっているわけではなかったが、しかしそんなことをしてみたいと思ったことが一度もない棗である。マサキの言葉には、困惑を見せるしかなかった。
頭の中で妄想してみようとも思ったが、しかし目の前にある圧倒的な「本物感」を前にしては、それは上手く行かなかった。
「好きに、だよ。俺のこと思って、しこしこしていいんだよ♥」
「……しないって。下着に……」
「ええー? 結構いい生地使ってるんだよ? このパンツ。さわり心地、いいでしょ♥」
「……まあ、うん」
にぎにぎと手の中にあるピンク色の布地を弄ぶ。
まだ温かなそれを手のひらで弄んでいると、なんとなく妙な気持になった。
「俺、そんな頻繁に会えないからさあ。ソレでしこしこやって、俺のこと待っててよ」
マサキはそう言ってまた悪戯っぽく笑った。
棗は、マサキの言葉でようやく彼に会ったら聞きたいことがあったのだ、ということを思い出す。
「マサキは今どこに住んでるんだ?」
「どこって……うーん……――ヒ・ミ・ツ♥」
人差し指を唇にあてるという、いかにもそれらしい――そしてわざとらしい――仕草を見せて、マサキはウィンクする。
しかし棗はそれでは納得できない。食い下がってみるが、マサキはしかしあれやこれやといつぞやのようにはぐらかして、答えてはくれない。
「連絡先くらい教えてくれてもいいじゃないか」
「とは言ってもね……。――あ、そうだ♪」
いいことを思いついたとばかりにわずかに目を見開いてから、マサキは便座に座る棗を見下ろした。
そしてするりとスカートの裾をまくり上げて、まるで棗に向かって誇示するかのように、むき出しのペニスを見せつける。
棗はといえば、それがなんだか見ていられなくて――見てはいけないもののような気がして、思わず視線をそらしてしまう。
その視界のはしで、マサキがまた笑ったような気がした。
「じゃあ俺の体に聞いてごらんよ♥」
「――は?」
「俺が『負けたー!』って思ったら、いってあげてもいいかなー♥ 連・絡・先♥」
そういうや、「よいしょ」といってマサキは便座に座る棗の膝にまたがった。
棗のものよりかは幾分かかわいらしいペニスが、棗の目線の下でぷるんと揺れる。
「『負けたー』って……」
「いいじゃん別に。ナツメくん、ホントはどっちでもいいんでしょ? 俺とヤれるんならさ♥」
「そんなことは――」
「ウソつき♥ ナツメくんのおちんちんのほうが素直だぞ♥♥♥」
「――うぁっ」
このあいだのように棗のペニスをズボン越しにわしづかみにすると、マサキはやわやわと巧みに指を動かして行く。
マサキの手淫は上手かった。自分で慰めるときよりももどかしいものはあったが、それでも他人の指がそうしているのだと思うと、その背徳感がスパイスとなって棗を興奮させた。
「やっ、やめ――」
「そんなこといってー♥ ホントは俺にこうされるの好きでしょ? ホラホラホラぁ♥」
「あっ、うっ、うぅっ……!」
情けなく、あっという間に勃起した棗の若いペニスのカリをマサキはぐりぐりと刺激する。
人差し指と親指で輪っかを作り、繰り返し棗のカリ首をくりくりと責め立てた。
どうしようもない、ビリビリとした刺激的すぎる快感が棗の背骨を伝って、脳を直撃する。
腰に熱が渦巻いて、びくびくと玉袋も震えてしまう。
気がつけばトランクスの中はまた先走り液でべちょべちょになっていた。
マサキにカリ首を責め立てられるたびに、鈴口からどうしようもなく、やや白濁した粘液を垂れ流してしまう。
「ナツメくん、きもちいーい?」
「うぅっ、あっ、うぁあっ……!」
「でもナツメくんばっかりきもちよくなるのはダーメ♥」
「――あっ……」
マサキが棗のペニスから手を放す。
名残惜しい情けない声が自然と棗の口からこぼれ落ちた。
そんな棗の前でマサキは腰を浮かせると、スカートの裾をめくり上げる。
スカートの裏から現れたのは、明らかに勃起している、マサキのペニスだった。
「――俺のことも、きもちよくして?」
そういうやマサキは手早い動作で棗の前をくつろげ、先走り液でべちょべちょになった勃起ペニスを取り出すや、その亀頭を自身のアナルにあてがった。
さすがに慣らしていなければ入らないだろうし、それにこちらが痛いのでは?
そんな棗の思考を読み取ったように、マサキは悪戯っぽい目で彼を見上げた。
「だいじょーぶだいじょーぶ♪ もうここに来る前に慣らしておいたから♥」
「――うぁっ」
ちゅっと粘液がまるでキスしたかのような音を立てる。
と、同時にぐっとした抵抗感が棗の亀頭を襲った。
けれどもそれは痛みを与えるほどではなく、抵抗もすぐになくなって、次にふわふわと柔らかな腸壁が棗の亀頭を包んだ。
「――んっ♥ おっ♥ うぁっ♥」
「……だ、だいじょうぶか?」
「……あー♥ んっ♥ だいじょうぶだいじょうぶ……っ♥ はあはあ♥ ひさしぶりだからっ♥ コーフンしちゃってるだけだから♥」
ゆるゆるとマサキが腰を動かし始める。
その動きに合わせてふるふるとマサキの勃起ペニスが揺れる。
亀頭の先、鈴口からは透明な粘液がこぼれており、トイレの灯りを受けて、それはきらきらと輝いていた。
「――あんッ♥♥♥」
気がつけば、棗は指先でマサキの亀頭をつついていた。
マサキの口から大きな甘い声が漏れ出て、きゅっと直腸内が収縮する。
ぎゅっと責めるように抱きついてきたマサキの腸壁に、若い棗は思わず射精しそうになった。
「あっ♥ ダメだってば♥♥♥」
「ぜんぜん、ダメじゃない、だろ?」
「ダメダメダメーっ♥♥♥ 俺の敏感なトコロいじっちゃダメっ♥♥♥」
そうはいっても涙でうるみ、紅潮したマサキの顔を見れば、よがっているのは明らかだった。
こうしているあいだ以外はいつも棗よりも上の位置にいるマサキが、弱っている姿は面白い。
棗はマサキのペニスをいじる手を止めることなく、同時に腰を動かし彼の甘えん坊なアナルも責め立てて行く。
「ひあっ♥ ダメえっ♥ ダメだってばあ♥♥♥」
「さっきはぼくのことイジめたくせにっ」
「あんっ♥ だってえ♥ ナツメくんおもしろいからぁ♥ イジめたくなっちゃうのぉお♥♥♥ あんっ♥ あうっ♥ ゆるしてぇっ♥ ナツメくんゆるしてえぇっ♥♥♥」
顔を真っ赤にし、背をそらせながら甘い嬌声を上げるマサキ。
そんなマサキを見ていると、棗は普段感じたことのない征服欲や嗜虐心が満たされて行くのを感じた。
マサキはイヤイヤと首を振るが、アナルの中はとろとろだった。
熱く、中に挿入したペニスがとろけてしまいそうな、ふわふわのアナル。
腸壁は甘えるように棗のペニスを抱きしめて、蠕動を繰り返しては射精してもらおうと必死になっている。
ぎゅっと棗のペニスの根元を締めつける、きつい入口も棗にとっては快楽にしかならない。
「マサキのケツマンコは全然イヤがってないぞっ。熱くてトロトロですぐに射精しちゃういそうだっ」
「あっ♥ ち、ちがうのぉ♥ ナツメくんのおちんちんがよすぎるからあ♥♥♥ ナツメくんのおちんちんのせいなのお♥ ナツメくんのおちんちんで俺のケツマンコおかしくなっちゃったのお♥♥♥」
ペニスを突き上げれば突き上げるほど、マサキのアナルは蟲惑的にわなないて、棗を魅了して行く。
きゅうきゅうと甘えてくる腸壁に、棗の腰の弾みは止まらない。
それにあわせてぷるんぷるんと上下に震えるマサキのペニスはいつの間にか射精を迎えており、紺色のスカートの裾を白濁液で汚していた。
そしてマサキの二度目の絶頂はすぐそこまで迫っていた。
「あっ♥ あんっ♥ あうううぅっ♥♥♥ きちゃうっ♥ おおきいのきちゃううう――♥♥♥」
「イけっ、マサキっ。イってケツマンコ締めろっ!」
「ああぅっ♥ ケツマンコいくっ♥ ケツマンコいっちゃうぅうっ♥ ケツマンコでイくうぅっ♥ やあああああ――――♥♥♥」
大きく背をそらせ、マサキはアナルをわななかせながら、だらしなく射精した。
同時に、きゅうきゅうと締まるマサキの直腸内に棗は射精する。
どくりどくりと、そんな音が聞こえてきそうなほど、もったりとした精液をマサキのアナルに放出した。
はーっはーっと互いに荒い呼吸を繰り返しながら、絶頂の余韻に浸る棗とマサキ。
先に動き出したのはマサキで、棗と繋がったままその唇にちゅっと口づけを落とした。
「ナツメくん、サイコーだったよ♥」
これが棗のファーストキスだった。
当然といえば当然の疑問を、棗は今になって抱く。
マサキとの突然の再会から早くも一週間が経っていた。
そのあいだ、どういう風に日々を過ごしていたのか、棗は思い出そうとして失敗した。
おそらく、いつものようにつまらない平凡な毎日を送っていたのだろう。
小心者の棗には友人というものは今も昔もほとんどとしていない。
例外は、マサキくらいのものだった。
であれば親ならばなにかしらマサキについての情報を持っているかもしれない――と棗は思ったが、しかし両親のどちらにもそれを聞く勇気は持てなかった。
マサキと遥か昔から肉交を重ねていたという事実が、棗の中に恥という感情を生んだのだ。
性に関する事柄は、親にも伏せていたいと思ってしまうのが、棗の性であった。
まさか、マサキとそのような関係にあるとは昔も言ってはいないだろうが、なんとなく彼について問うのはヤブヘビではないかと、被害妄想的に考えてしまう。
「だれにもいわないでね。ふたりだけのヒミツだよ」
マサキが悪戯っぽくそういったので、棗はだれにもあのことを言ったことがない。
言おうと、言ってしまいたいとも思ったことはなかった。
それに、マサキがどこのだれだっていいという思いもあった。
棗の中にはなんとなく、マサキに対する幻想が出来上がっていた。
謎めいた美しい友人……そういう人間がひとりくらいいてもいいのではないか、と少々夢見がちに思ってしまうのである。
マサキは「また遊ぼう」と言い残して去って行った。
ということは、彼はまた棗の前に姿を現すつもりはあるのだろう。
なら、そのときに問いただせばよい。
棗はそう結論を出して、またぼんやりとしたルーティーンを繰り返す日々へと戻って行った。
そしてやはりというか――マサキは棗の前に現れた。
艶やかな黒い髪をなびかせて、今度はどこで手に入れたのだろうか? 棗の学校の女子制服を身にまとっている。
「やあ」
ネコのようなツリ目でにんまりと笑みを作り、気安げな様子でマサキは笑う。
それに釣られて棗も突然の再会に動揺しながらも、愛想笑いを浮かべる。
場所は棗の通う学校の廊下。時間は、日直である棗以外は――部活動に興じる生徒を除いて――みんな帰ってしまっているような時間だった。
「どうしたんだよ、それ」
どうにかこうにかそれだけを口にするが、なぜか舌の根がカラカラに乾いていて、言葉は少しだけもつれていた。
けれどもマサキは特にそれについて気を払う様子はない。
「これ?」そう言って紺色のスカートの裾をつまみ、持ち上げる。
白くまぶしい太ももが当然のように露わになって、棗は自然と生唾を飲み込む。
スカートの裾はギリギリのところまで持ち上げられて、けれどもマサキの股のあいだは巧みに見えない。
それがまた棗の妄想と興奮を加速させた。
マサキは今日も女物の下着をつけているのだろうか?
平素、そのような乱暴な感情はだれに対しても浮かばないと言うのに、今だけはマサキのスカートをはぎ取ってやりたい――そんな感情に支配される。
ぼくがそうしたら、マサキはどんな顔をするんだろうか?
「どうでもいいじゃん、そんなの」
マサキの言葉に棗は納得したわけではなかったが、しかし彼にそう言われると、「それもそうだな」となぜか思ってしまう。
彼の言う通り、今はそんなことはどうでもいいことだった。
どうしてマサキが棗の学校に現れたのか――どうして棗の学校の制服を着ているのか――。
マサキが再び現れたということは、そういうことなのだ。
今度は、棗がマサキの手を取った。
そして足早にひと通りのない別館の男子トイレへと連れ込む。
決してキレイではない個室の白い壁を見ていると、自然と以前マサキとまぐわった公園の公衆便所を思い出す。
「ねえねえ、ナツメくん」
そう言ってマサキは棗を個室トイレにある洋式便器の便座へと座らせる。
マサキは座った棗の前に立って、またにんまりと悪戯っぽいネコ目で笑った。
紺色のスカートがマサキの手でまくり上げられる。今度は、下着まで露わだ。
今日もやはりフリルがあしらわれた紐パンであったが、色はややドぎついピンク色だった。フリルの端には黒で縁取りがある。
マサキは蝶々結びにされた下着の紐下へするりと指をもぐらせる。
棗は、そんなマサキの白い指先から目が離せない。
そしてマサキはにやにやと、生唾を飲み込む棗を見下ろしていた。
しゅるり。そんな音が聞こえたような気がした。
ビビッドなピンク色をした蝶々結びが解かれるのは一瞬だった。
布面積の小さなマサキの煽情的な下着の紐は、彼の腰骨から解放され、重力に従い下へと落ちて行く。
「はい♪」
マサキはそれをつかんで、棗に渡す。
先ほどまでマサキが身にまとっていたものだ。それは、棗の手の中で温かみを持っていた。
「あげるよ」
「もらっても……」
棗が素直な感想を口にこぼせば、マサキは片方の頬を膨らませて不満そうな顔をする。
「俺のパンツだよ? 持って帰って好きにすればいいじゃん」
「好きに……って」
カマトトぶっているわけではなかったが、しかしそんなことをしてみたいと思ったことが一度もない棗である。マサキの言葉には、困惑を見せるしかなかった。
頭の中で妄想してみようとも思ったが、しかし目の前にある圧倒的な「本物感」を前にしては、それは上手く行かなかった。
「好きに、だよ。俺のこと思って、しこしこしていいんだよ♥」
「……しないって。下着に……」
「ええー? 結構いい生地使ってるんだよ? このパンツ。さわり心地、いいでしょ♥」
「……まあ、うん」
にぎにぎと手の中にあるピンク色の布地を弄ぶ。
まだ温かなそれを手のひらで弄んでいると、なんとなく妙な気持になった。
「俺、そんな頻繁に会えないからさあ。ソレでしこしこやって、俺のこと待っててよ」
マサキはそう言ってまた悪戯っぽく笑った。
棗は、マサキの言葉でようやく彼に会ったら聞きたいことがあったのだ、ということを思い出す。
「マサキは今どこに住んでるんだ?」
「どこって……うーん……――ヒ・ミ・ツ♥」
人差し指を唇にあてるという、いかにもそれらしい――そしてわざとらしい――仕草を見せて、マサキはウィンクする。
しかし棗はそれでは納得できない。食い下がってみるが、マサキはしかしあれやこれやといつぞやのようにはぐらかして、答えてはくれない。
「連絡先くらい教えてくれてもいいじゃないか」
「とは言ってもね……。――あ、そうだ♪」
いいことを思いついたとばかりにわずかに目を見開いてから、マサキは便座に座る棗を見下ろした。
そしてするりとスカートの裾をまくり上げて、まるで棗に向かって誇示するかのように、むき出しのペニスを見せつける。
棗はといえば、それがなんだか見ていられなくて――見てはいけないもののような気がして、思わず視線をそらしてしまう。
その視界のはしで、マサキがまた笑ったような気がした。
「じゃあ俺の体に聞いてごらんよ♥」
「――は?」
「俺が『負けたー!』って思ったら、いってあげてもいいかなー♥ 連・絡・先♥」
そういうや、「よいしょ」といってマサキは便座に座る棗の膝にまたがった。
棗のものよりかは幾分かかわいらしいペニスが、棗の目線の下でぷるんと揺れる。
「『負けたー』って……」
「いいじゃん別に。ナツメくん、ホントはどっちでもいいんでしょ? 俺とヤれるんならさ♥」
「そんなことは――」
「ウソつき♥ ナツメくんのおちんちんのほうが素直だぞ♥♥♥」
「――うぁっ」
このあいだのように棗のペニスをズボン越しにわしづかみにすると、マサキはやわやわと巧みに指を動かして行く。
マサキの手淫は上手かった。自分で慰めるときよりももどかしいものはあったが、それでも他人の指がそうしているのだと思うと、その背徳感がスパイスとなって棗を興奮させた。
「やっ、やめ――」
「そんなこといってー♥ ホントは俺にこうされるの好きでしょ? ホラホラホラぁ♥」
「あっ、うっ、うぅっ……!」
情けなく、あっという間に勃起した棗の若いペニスのカリをマサキはぐりぐりと刺激する。
人差し指と親指で輪っかを作り、繰り返し棗のカリ首をくりくりと責め立てた。
どうしようもない、ビリビリとした刺激的すぎる快感が棗の背骨を伝って、脳を直撃する。
腰に熱が渦巻いて、びくびくと玉袋も震えてしまう。
気がつけばトランクスの中はまた先走り液でべちょべちょになっていた。
マサキにカリ首を責め立てられるたびに、鈴口からどうしようもなく、やや白濁した粘液を垂れ流してしまう。
「ナツメくん、きもちいーい?」
「うぅっ、あっ、うぁあっ……!」
「でもナツメくんばっかりきもちよくなるのはダーメ♥」
「――あっ……」
マサキが棗のペニスから手を放す。
名残惜しい情けない声が自然と棗の口からこぼれ落ちた。
そんな棗の前でマサキは腰を浮かせると、スカートの裾をめくり上げる。
スカートの裏から現れたのは、明らかに勃起している、マサキのペニスだった。
「――俺のことも、きもちよくして?」
そういうやマサキは手早い動作で棗の前をくつろげ、先走り液でべちょべちょになった勃起ペニスを取り出すや、その亀頭を自身のアナルにあてがった。
さすがに慣らしていなければ入らないだろうし、それにこちらが痛いのでは?
そんな棗の思考を読み取ったように、マサキは悪戯っぽい目で彼を見上げた。
「だいじょーぶだいじょーぶ♪ もうここに来る前に慣らしておいたから♥」
「――うぁっ」
ちゅっと粘液がまるでキスしたかのような音を立てる。
と、同時にぐっとした抵抗感が棗の亀頭を襲った。
けれどもそれは痛みを与えるほどではなく、抵抗もすぐになくなって、次にふわふわと柔らかな腸壁が棗の亀頭を包んだ。
「――んっ♥ おっ♥ うぁっ♥」
「……だ、だいじょうぶか?」
「……あー♥ んっ♥ だいじょうぶだいじょうぶ……っ♥ はあはあ♥ ひさしぶりだからっ♥ コーフンしちゃってるだけだから♥」
ゆるゆるとマサキが腰を動かし始める。
その動きに合わせてふるふるとマサキの勃起ペニスが揺れる。
亀頭の先、鈴口からは透明な粘液がこぼれており、トイレの灯りを受けて、それはきらきらと輝いていた。
「――あんッ♥♥♥」
気がつけば、棗は指先でマサキの亀頭をつついていた。
マサキの口から大きな甘い声が漏れ出て、きゅっと直腸内が収縮する。
ぎゅっと責めるように抱きついてきたマサキの腸壁に、若い棗は思わず射精しそうになった。
「あっ♥ ダメだってば♥♥♥」
「ぜんぜん、ダメじゃない、だろ?」
「ダメダメダメーっ♥♥♥ 俺の敏感なトコロいじっちゃダメっ♥♥♥」
そうはいっても涙でうるみ、紅潮したマサキの顔を見れば、よがっているのは明らかだった。
こうしているあいだ以外はいつも棗よりも上の位置にいるマサキが、弱っている姿は面白い。
棗はマサキのペニスをいじる手を止めることなく、同時に腰を動かし彼の甘えん坊なアナルも責め立てて行く。
「ひあっ♥ ダメえっ♥ ダメだってばあ♥♥♥」
「さっきはぼくのことイジめたくせにっ」
「あんっ♥ だってえ♥ ナツメくんおもしろいからぁ♥ イジめたくなっちゃうのぉお♥♥♥ あんっ♥ あうっ♥ ゆるしてぇっ♥ ナツメくんゆるしてえぇっ♥♥♥」
顔を真っ赤にし、背をそらせながら甘い嬌声を上げるマサキ。
そんなマサキを見ていると、棗は普段感じたことのない征服欲や嗜虐心が満たされて行くのを感じた。
マサキはイヤイヤと首を振るが、アナルの中はとろとろだった。
熱く、中に挿入したペニスがとろけてしまいそうな、ふわふわのアナル。
腸壁は甘えるように棗のペニスを抱きしめて、蠕動を繰り返しては射精してもらおうと必死になっている。
ぎゅっと棗のペニスの根元を締めつける、きつい入口も棗にとっては快楽にしかならない。
「マサキのケツマンコは全然イヤがってないぞっ。熱くてトロトロですぐに射精しちゃういそうだっ」
「あっ♥ ち、ちがうのぉ♥ ナツメくんのおちんちんがよすぎるからあ♥♥♥ ナツメくんのおちんちんのせいなのお♥ ナツメくんのおちんちんで俺のケツマンコおかしくなっちゃったのお♥♥♥」
ペニスを突き上げれば突き上げるほど、マサキのアナルは蟲惑的にわなないて、棗を魅了して行く。
きゅうきゅうと甘えてくる腸壁に、棗の腰の弾みは止まらない。
それにあわせてぷるんぷるんと上下に震えるマサキのペニスはいつの間にか射精を迎えており、紺色のスカートの裾を白濁液で汚していた。
そしてマサキの二度目の絶頂はすぐそこまで迫っていた。
「あっ♥ あんっ♥ あうううぅっ♥♥♥ きちゃうっ♥ おおきいのきちゃううう――♥♥♥」
「イけっ、マサキっ。イってケツマンコ締めろっ!」
「ああぅっ♥ ケツマンコいくっ♥ ケツマンコいっちゃうぅうっ♥ ケツマンコでイくうぅっ♥ やあああああ――――♥♥♥」
大きく背をそらせ、マサキはアナルをわななかせながら、だらしなく射精した。
同時に、きゅうきゅうと締まるマサキの直腸内に棗は射精する。
どくりどくりと、そんな音が聞こえてきそうなほど、もったりとした精液をマサキのアナルに放出した。
はーっはーっと互いに荒い呼吸を繰り返しながら、絶頂の余韻に浸る棗とマサキ。
先に動き出したのはマサキで、棗と繋がったままその唇にちゅっと口づけを落とした。
「ナツメくん、サイコーだったよ♥」
これが棗のファーストキスだった。
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